どんなルアーも避けては通れないのが個体差。
同じルアーなのに泳ぎや喫水線が微妙に違うアレです。
個体差はハンドメイドやウッドなどの自然素材ルアーの”特権”と思われがちですがプラスチックのインジェクションルアーにだってあるのです。
そしてこれをどう捉えるかでルアーの楽しみ方も大きく変わります。
今日のゲストはそんな個体差について考えさせてくれるフードラーです。
フードラーとは
フードラーはルーツをギルモアタックルカンパニーに持つトップウォータープラグ。
ギルモアは1950年代にアーカンソーで産声を上げたウッド専門のブランドで、80年代にティムコが日本に紹介したことで日本のマーケットで知られるようになりました。
本物のヘビ皮を張ったルアーで名を馳せたメーカーとしても知られていますね。
途中ビルノーマンなどいくつかの会社を経ましたが、今でも独立系メーカーとして健在なのはProudly made in the USAにこだわるアメリカ人気質ならではといったところでしょうか。
現行モデルはあまりにも安っぽい作りでちょっと悲しくなっちゃいますけど😭
そんな中から今回はノーマン期のモデルにフォーカスしてみましょう。
フードラーのサイズ•重さ
フードラーのサイズは103ミリ、17.5g。
このモデルはラージと呼ばれるものですが、素材がウッドなのでスペックは個体によってまちまち。
ベイビーフードラーという使いごろの一口サイズもラインナップしていましたが、ルアーとしては全くの別物なので詳細はまた別の機会に。
フードラーの特徴
これでもかと突き出た下顎
フードラーの最も大きな特徴はこれでもかレベルで突き出た下顎と上方にリグられたラインタイ。
まるでSASUKEのそり立つ壁のようです。
ダーターとして有名なルアーにヘドンのラッキー13がありますが、ラッキーのように上顎が出ていないのと支点が上方にあるのでカップに水を受けるとダートしやすくなっています。
そんなカップが発するサウンドはラッキーよりもやや控えめ。
音が小さいというよりも艶っぽいサウンドを出すといった方が近いかも。
とはいえ強めのジャークではしっかりとエアを巻き込んで水中に響き渡るサウンドを発するので派手にボコボコやりたいアングラーでも物足りなく感じることはないでしょう。
いい意味で回らないスピナー
そしてテールには打ち抜きのペラが装備されています。
が、このペラが笑っちゃうぐらい回りませんw
いや、一応回るには回るんですが、プロップペッパーをはじめとした近年流行りのチリチリ系スイッシャーを使い慣れてるアングラーが見たら、こんなショボいの使えるかー!とちゃぶ台をひっくり返すレベルの回らなさ。
しかしそれだけの理由でこのルアーを見切ってしまうのは勿体無い。
回らないペラであるが故のメリットもあるのです。
ペラが回転しないことで水の逃げ場がないので、ヘッドのカップと同様に大量のエアを水中に引き込めるのです。
つまりルアーの前と後ろ両方でエアを巻き込んでくれるという訳。
さらにブレーキの役目も果たすのでルアーの移動を最小限に留めてくれます。
かつて道楽の山根氏も回らないペラの効能について雑誌などで説いていましたが、日本人は機能に正直でないと許せないのか、回らないペラは今もあまり受け入れられていません。
そもそも回らないペラはこの手のクラシックトップウォーターにしか似合わんので受け入れられなくても構わないんですが。
一切首振りなしの漢気アクション
アクションは首振りなど小技は一切無し。
ダイブ時のサウンドとダートで誘うルアーなので基本的にストップ&ゴーの間合いで誘うものと理解すべきでしょう。
なので釣れる釣れないは全てアングラーの演出にかかっています。
ダーターの使い方が分からないというアングラーは多いので、そういう意味では難しいと感じるかも。
でもご安心を。
このフードラーは水面直下をゆっくりとフラフラ巻くだけでも十分釣れるルアーですから。
立ち上がりこそ遅いものの、ただ巻きではちゃんとペラも回ってカリカリ音を発するのでアピールもバッチリ。
スローにスイープすればブジュブジュという下品な音と共に潜ってくれるなど、意外と多彩な芸を持っている事にも気付くはず。
そして何よりも、このルアーは個体差というプラスアルファのお楽しみも。
製造時期によってボディ成形が微妙に違うのに始まり、カラーによる塗膜の厚さの違い、リグなどのコンポーネントの違い、ヒートンの差し位置の違いなどにより、アクションの特性が全く変わって来るのです。
そもそもウッドなので浮力からして違いますからね。
ルアーの個体差をバラツキと称して貶すアングラーも居ますが、個人的にはこんなに楽しいオプションは無いと思っているぐらい。
同じルアーなのにこっちはダートしやすいとか、これはチャグサウンドがデカいとかそれぞれ性格が違うなんてサイコーに楽しいと思いません?
まあそれがあるから無駄に買い足してしまうんですが😢
伝家の宝刀ゲルコート
そして90年代ノーマンといえばゲルコートを忘れちゃいけません。
ゲルコートは90年代にノーマンが火蓋を切ったグリッター戦争の主役なのですが、大量のホログラムラメを含んだトップコートは独特の存在感で今もGGYアングラーを楽しませてくれます。
とはいえベースは基本的にギルモアのレギュラーカラー。
企業買収によって権利を得たギルモアのルアー全てにゲルコートを施して、ノーマン(買収当時の社名はビルノーマンインターナショナル)としての存在感をアピールしています。
ノーマンは同時期にフロントランナーの権利も買ったり、強気の営業展開をしてましたね。
丁度その頃は日本のバスフィッシングブーム真っ只中で上州屋のハンガーに大量に掛かったGilmore Genuine Wooden Lures のパッケージを記憶している人も多い事でしょう。
ちなみに一般的にゲルコートが施されていない地味なカラーのものはギルモアタックル時代の物という認識が定着していますが、ノーマンパケに入ったノンゲルコート物も存在しているのでその判断基準はちょっと疑問符付き。
おそらく買収後も製造はそのままギルモアの工場で行い、塗装とパッケージングのみノーマンの工場で行っていたと思われるのでこういうイレギュラーが出てきても不思議ではないんですが。
ちなみにゲルコートの塗膜は弱いですw
トップコート分の上塗りで強いと思われてますが、実はその強度はズイール並。
塗装の耐久性という点ではオリジナルである旧ギルモアの方が強いんじゃないかというぐらいw
まあこれも個体差のうちなんですけどね。
フックはストレートポイントの#4
フックは3本ともレギュラーシャンクのストレートポイント#4を装備。
他のクラシックトップウォーター同様、交換時には同じ形状のフックを選ばないと雰囲気が変わってしまうという欠点もあります。
DD22などノーマンのメインラインナップががまかつのフックを採用していた関係でギルモアにもがまかつが採用されていた時期がありましたが、その違和感ったらもう😭
最近はこの手のクラシックルアーに似合うフックが入手しづらくなっていますが、色々調べた中ではイーグルクローのストレートポイント774が一番近いんじゃないかと。
ネーム無しのクラシックスタイル
そんなフードラーですが、ギルモアの頃からの伝統でボディにネームや刻印の類は一切ありません。
でも大丈夫。
ギルモアのアイデンティティとなっている黒目でちゃんと判別できるようになってます。
むしろこの手のクラシックルアーにはヘンテコなネームなんて必要ありませんよね。
ちなみにこのルアー、名前がフードラーに始まり、ホッドラー、フッドラーなど呼び方のバリエーションも豊富。
最初に日本に紹介したティムコのカタログにはホッドラーの表記がされていたのでこんなベイヨンボギィ状態になってしまったワケですが、Hoodlerというスペリングだとフードラーの方が近いかも。
まあ話が通じれば表記なんて何でもオッケー。好きに呼べばイイのです。
ちなみにネイティブ発音だとホドゥラに近い感じです。
市場価格は上昇気味
そんなフードラーはギルモア、ノーマン物共に生産が終了しているので探すなら中古市場ということに。
一時期はキイロでもよく見かけましたが、最近はすっかり希少種になってしまいました。
とはいえ見た目が今っぽくないので出物があれば比較的安く入手できるでしょう。
対してオークションやフリマ市場では総じて高値推移なのでそれなりの出費を覚悟すべし。
このルアーを探してるのが、ガキの頃欲しくても買えなかったGGY層なのでどうしても高めになっちゃってます。
おわりに
ルアーの個体差に対する考え方をつらつらと書いてみましたが、これも人それぞれ。
ルアーの品質は均一じゃないと許せない人も居るし、のんだくれのようにアバウトなのが好きな人も。
こればっかりは性格による違いもあるでしょうね。
でもこういうのは解釈もせんぶ含めてひっくるめてルアーフィッシングの楽しみのひとつですからね。
さてあなたは個体差許容派?それとも絶対許せない派?