90年代から00年代初めにかけてのズイール人気は相当なものでした。
柏木氏のキャラクターを全面に押し出したビデオ ”だからバスはやめられない” やアライくんの大ヒットもあって、ズイールのルアーがメガバスと並んで常に入手困難ルアーの筆頭だった時期もありました。

そんな騒乱がひと段落ついた頃に登場したのが今日のゲスト、テラー90。
歴代テラーシリーズの中では不人気に位置付けられてしまう可哀想な存在ですが、実はめちゃくちゃ使えるやつだったりするのです。
テラー90とは
テラー90は2003年にリリースされました。
ピンコ勃ちペンシルが大好物ののんだくれは、90という数字を見ただけでマジか!と先走り液タレ流し状態に。
ズイールに詳しくない方のためにちょっとだけ解説すると、テラーは過去に35、45など番号が振られたモデルをいくつか発売しているのですが、この数字は全て浮き角を表しており、そのルアーの特性を意味します。
つまり90は水面に対して90度の角度で浮く、つまり垂直浮きを表しているのです。
ズイールはこのテラー90に先んじて立ち浮きペンシルのチョッパーを発売していたのですが、チョッパーの動きを見て、”この流れで立ち浮きテラーも出してくれんかな” と思ってた矢先の登場だったのでそりゃ先走りますってばw
しかしいざ浮かせてみると、これが90度ではなかったんです。
まるで棒ウキのように浮くミスウィックのトゥースピックをイメージしていたのでこれにはちょっとガッカリ。
当時、のんだくれと同じような感想を持ったアングラーは少なくなかったんじゃないかと。
テラー90のサイズ・重さ
テラー90のサイズは全長110ミリ、自重16.5g。
チマチマとは対極にある、いわゆるハチゴーサイズのトップウォーターですが、テラーのオリジナルサイズで釣ったことのあるアングラーにとってはタマらないサイズ感になっています。
テラー90の特徴


同時期(2002年)にリリースされたテラー5/8oz
テラー90の特徴はスレンダーなボディシェイプであること。
オリジナルモデルであるテラー5/8ozと比較するとかなりスリムになっている事がわかります。
しかしこの形状の違いが意味する事がうまく伝わらなかったのか、発売当初から売れ行きはイマイチでした。
ズイーラーと呼ばれるズイールファンにとって立ち浮きのテラーは受け入れ難かったのか、出せば即完売で普通に売ってる所を見たことなかったオリジナルのテラーなどと比べて、このテラー90は明らかに遭遇率が高かったのです。
そしていつまでもレジ横で身請け人が現れるのを待っていました。
その頃はすでにブームが落ち着いていたことも理由の一つですが、ズイールが売れ残っているのはちょっと不思議な光景でしたね。


左からピボーテ、チョッパー、テラー90
そしてもうひとつの特徴はテールエンドに大きなウェイトが仕込まれていることです。
ノーウェイトのテラーとの大きな違いですね。
こうして並べてみるとチョッパーで採用したテールウェイトを流用したシリーズ展開だったことがよく分かります。
テラー90のアクション
そんなテラー90のアクションをひとことで表すと、”素直に首を振るダイビング系ペンシルベイト”。
ロッドアクションに機敏に反応し、テラーのお家芸でもある素直な首振りに加え、ショートタグでは美味しそうな飛沫と共にダイブした後、静かに水面に戻ります。
この素直な挙動は立ち浮き系ペンシルベイトの入門にはピッタリと言えるでしょう。
しかし逆の見方をすれば、どこにでもある特徴のないアクションとも言えます。
なんというか、ズイールらしさが見えないんですよね。
さらに広告では ”移動距離を抑えた小さなアクションで… ” 云々と書かれていたのですが、実際のところ移動を抑えたアクションはあまり得意ではありません。
細かく刻んでいくなら他のトップウォータールアーを使った方がイイ、と思ってしまうぐらい。
しかしご安心を。
このテラー90は水面専用兵器としては普通ですが ”水面直下型ジャークベイト” として使うととてつもない威力を発揮するのです。
実はこのルアーは、スイープ気味にジャークすると水面直下を大きくスライドします。
水面下10センチで見せるそのスライド幅はまさにテラーの血統。
その辺のジャークベイトなんてメじゃないほどの横っ飛びです。
そして連続してスイープさせれば水面に復帰することなく鋭角ターンで身を翻し、逆方向でまた稲妻スライドを披露してくれます。
水面上等!なトップウォーター至上主義アングラーが見たら怒り出しそうな挙動ですが、この特性を利用しないのはアカンでしょ!というパフォーマンスの持ち主なんです。
テラー90の使い方


この浮角の違いからもテラー5/8ozとテラー90では全く違う性格のルアーであることが分かる
そんな魚雷パフォーマンスに秀でたテラー90なので、ペンシルベイトとしてだけ使うのは勿体無いお話。
のんだくれはジャークによる水面直下型のサーチベイトとして使用しています。
例えば初夏の琵琶湖の水面まで伸びきっていないウィードがあるスポットでひたすらジャークして魚を探す感じ。
リップレス&ダブルフックなのでウィードを拾いにくい上に、潜ってもせいぜい10センチ程度なのでウィードのツラを効率よく探るのに最適なのです。
オリジナルのテラーも同じような特性を持ってはいるのですが、テラーでその動きを出すにはちょっとコツが要るので、何も考えずにジャカジャカやるだけで仕事してくれるテラー90は神。
長時間ジャークしても手首が死なない引き抵抗の軽さも嬉しいですね。
そして超ロングキャストした先でもちゃんと動いてくれるという安心感もマル。
唯一の欠点はテールベビーの細身ボディゆえ着水時に深く突き刺さってしまい、いきなりウィードにスタックするなど場を荒らしてしまいかねない事ですが、これはほぼサミングで回避できるのでモウマンタイ。
”ジャークベイトが使いにくいところで使えるジャークベイト” として、テラー90はめちゃくちゃ重宝するのです。
なによりも大きくダートしてくれるので、釣れなくても動かしてて楽しいというのは大きなプラス要因かと。
テラー90のカラー
カラーリングはズイールそのもの。
このカラーの名前は忘れちゃいましたが、ダート時にオレンジベリーとのコントラストによる明滅効果が大きく出るので多用しています。
元々はチャートグリーンバックをメインで使っていてかなりイイ思いをしていましたが、先述の着水ダイブによる根掛かりで帰らぬ存在となりました😭
ズイールルアーのお約束のアレも
そしてズイールのウッドプラグで忘れてはならないのはグラスアイと塗装の弱さでしょう。
塗装割れに関して個人的には目くじらを立てるほどではありませんが、こういうのは気になる人は気になりますからね。
塗装を強化する方法はいくらでもあるにも関わらず、最後まで(というか今でも)この塗装を貫いているのは天晴れと言えるかも。
テラー90のフック
フックはクローポイントのズイール謹製ダブルフックを採用。
ジャークベイトとして使ったらフッキングしにくいんじゃないの?という疑問も生まれますが、これも特に問題ナシ。
もちろん乗せられなかったバイトもあるけど、バイトが取れる取れないよりもウィードが掛かりにくいというメリットに注目したいですね。
しかしこのフックも手に入らなくなりましたねー
マスタッドなどのフックは見た目合わないので、スペアフック入手問題はズイール好きの当面の課題でもあります。
一時期倒産流れのズイールフックが黄色に大量に出回った事がありましたが、最近は全く見なくなりました。
ズイーラーのみなさんはスペアフック問題にどう対応してるんでしょうか。
テラー90のネーム
ハラにステンシルを吹くネームはズイールのトレードマーク。
リグの刻印入りカップとともに酒の肴にピッタリです。
しかしこのルアーが発売されてからもう18年も経つんですね。
買った時のことをはっきり覚えてるので18という数字を見るとクラクラしますが、ちょうど2003年頃は仕事で悩んでた時期でもあるので、これを見るだけでいろんなことがフラッシュバックします。
ルアーを見て人生の転機を思い出すのがイイ事なのかどうかは分かりませんがw、少なくともルアーとともに歩んできたのは間違いないなぁと。
テラー90はどこで買える?
テラー90の入手は超イージー。
なにしろ黄色ですらダブついてますから、カンタンに見つけられますw
そして他のズイールルアーよりも安く出てるので財布にも優しかったりします。
一度しか販売されていないはずなのに、それだけ余ってるって一体どんだけ不人気なんだ😭というハナシですが、釣れるルアーが安く入手できるのはイイ事なのでその恩恵は積極的に受け入れましょうw
おわりに
ズイールに限らず、どのメーカーにも不人気ルアーというのは必ず存在します。
でも不人気の理由って意外と大した事ないものが多いんですよね。
見た目がイマイチとか、イメージに合わないとか、使い方が分からんとかアングラーが表面的なところしか見ておらず、実釣性能はまったく問題ないケースがほとんど。
それは逆に言えばアピール不足だったり、アプローチの仕方が間違っているなどメーカー側の問題でもあるんですが、それによって自分だけのシークレットルアーが出来るならそんなにオイシイことはありませんよね。
だって誰も使ってないルアーが実はすげー釣れるルアーだったりするんですよ?
ツリビトが持つイヤラしい心をこれほど満たしてくれることって他にあります?www