近年ペンシルベイトの人気がありません。
いやもう人気がないどころの騒ぎじゃなくて、不人気ルアーランキングのトップ争いしてる感じすらします。
ペンシルベイトの実力を知っている人に言わせれば、あんなに釣れるルアーはないのに!となるのに全く人気がない😭
マグナムサイズはシーバス界隈で注目されてるけど、市場全体で見たらまだまだですからね。
しかし釣れると言われても、不人気でSNSにすら上がって来ないんじゃ何を使うべきなのか分からないという声も。
そんなペンシルベイト初心者にオススメしたいのがペンシルロングポップリン。
惜しまれつつ廃業してしまったベルズ水面部隊の一員です。
ペンシルロングポップリンとは
ペンシルロングポップリン(以下ロングポップリン)は90年代のバスブーム期にマジェンダやアレックスなどの名品を送り出した独立系ブランド、ベルズインターナショナルが生んだペンシルベイトの隠れた名作。
初代ポップリンが大ヒットする中で出てきた「もっと大きなサイズを」という声に答えるべく登場しました。

当時ポップリンの破壊的な釣れっぷりに陶酔していたのんだくれは発売直後に速攻ゲットし、期待を裏切らないそのパフォーマンスにひとりシビれておりました。
サイズ・重さ
ロングポップリンは78ミリ、9.2g。
当時のトップウォータープラグとしては標準的なサイズにまとめられています。
初代ポップリンを使用しているとどうしても感じてしまう、あとほんの少し飛べばあのスポットに入れられるのに!というストレスは概ね解消されています。
初代との重量差は1.5gしかありませんが、当時のリールの性能ではこの差は大きかったのです。
1/8ozの虫系ルアーをベイトタックルで飛ばすようになった現在ではあまりピンと来ませんけどね。
ロングポップリンの特徴
初代の良さをそのまま生かしたボディ

ロングポップリンと初代ペンシルポップリン
ロングポップリンの特徴はなんといってもこの大型化したボディ。
ショート&ファットシェイプの初代ポップリンと並べると、スレンダーな印象です。
細くなったらポップリンのセールスポイントであるクイックなポップアクションが死んじゃうんじゃないの?と思いがちですが、そこはさすがのベルズ、しっかりとボディ幅を確保して浮力をキープしてくれています。
ラトルサウンドは中低音
ウェイトシステムはテール側に一つだけラトル兼用のボールが仕込まれているワンウェイト方式を採用。
初代ポップリンのペンシルらしくないゴトゴトラトルサウンドもそのまま引き継がれ、水に入れる前から「あーこれ釣れちゃうヤツだよね」とニヤニヤスイッチは強制的にON。
ボディ前方のスペースにはグラスラトルも入っておらず、中低音ラトルにこだわったところも初代譲りとなっています。
近年のラトルサウンドはボーン素材によるハイトーンだのワンノッカーだのが主流となっていますが、ロングポップリンがリリースされた90年代は、ゴトゴト低音ラトルがデカバスに効く!という通説?めいたものがあったので、おそらくそれに対応していたんでしょう。
ロングポップリンならではのスネ夫顔
ポップサウンドも初代譲りの虫捕食系を踏襲。
しかしノーズを伸ばしたスネ夫顔にすることで、初代ポップリンには備わっていなかったツバ吐き性能を大幅に向上させています。
アクションについては後述しますが、アピールという点ではちょっと弱かった初代ポップリンの弱点をロングポップリンで完璧に克服してくるあたり、製作者の鈴木氏自身が物足りなさを感じてたんだろうなと。
ロングポップリンのアクション
ファットなドッグX?
ロングポップリンのアクションをひと言で表すならば、【ファットなドッグX】です。
水面での斜め浮き姿勢からスムースに動き出すそのレスポンスはさすがのひとこと。
タックルセッティングに関わらず、ポップもスライドもテーブルターンも自在に操れるユーザビリティは特筆に値します。
初代ポップリンがテーブルターン系のピンポイント攻撃用兵器だったのに対し、ロングポップリンは大きなスライドアクションを生かした広範囲爆撃が可能に。
メガバスのオリジナルドッグXにもうちょっと水押し要素があればなぁ… というアングラーを狙い撃ちしたかのようなセッティングには思わずニヤリとさせられます。
”あえて斜め浮きにした”は後付け?
しかし当時広告などで謳われていた【あえて斜め浮き姿勢にした】というコピーには少々ギモンが残ります。
ベルズ曰く、この斜め浮き姿勢は ”ワンアクション目の動き出しをスムーズにするために最初からスライドしやすい姿勢にした” との事ですが、ぶっちゃけあまり機能していないのです。
それは使ってみるとすぐに分かります。
ワンアクション目のレスポンス向上のためと言いながらも着水後のルアーの向きまではコントロールしきれないので、1/2の確率で反対側を向いて浮き、そのまま背中に水を受けて泳ぎだします。
ルアーが動き出してしまえばちゃんとカップで水を掴んでツバを吐くのですが、”ワンアクション目” という点ではうーん… と言わざるを得ないのが現状。
なのでこの斜め浮き姿勢は、【アクションを突き詰めて行ったらこの浮力がベストであり、結果的に斜めになってしまった】ものなのではないかと。
で、ここからはのんだくれの勝手な推測ですが、当時は【真っ直ぐに浮かないルアーは不良品】という考えが一般的だったので、おそらくその点に対する不信感やクレームへの先制攻撃として斜め浮きセッティングの正当性を謳ったんじゃないかと。
ベルズは80年代にエマーソンクイックやウッドトリッカーなど名作トップウォーターをリリースしており、その辺のノウハウやスキルは十分あるはずなので、総合的な判断として ”後付け” が必要だったんじゃないかと。

でもそれでもイイんです。
いや、むしろ後付けだった方が嬉しい。
だって後付けの方がデザイナーやメーカーの熱意や工夫が伝わってくるじゃないですか。
そもそも全てのルアーはニンゲン側の思い込みと後付けで出来てるんですよ。
アングラーがベイトフィッシュだと思って使ってるルアーを、魚もベイトフィッシュだと認識しているという確証はありません。
ルアーは過去のデータの積み重ねから出てきた、”これが効くんじゃないか” をカタチにしてるだけなのです。
それをどう受け止めるかはアングラー次第だし、釣れたら釣れたで ”やっぱ斜め浮きだからワンアクションで食わせられるよねー” とドヤ顔で釣果の箔付けができるじゃないですかw
つまりルアーは思い込みという名の後付けがカタチになったものであり、後付けがあるからこそアングラーもニヤニヤできるのです。
こいつ何言ってやがると思った人は、特許検索サイトでルアーに関するパテントを検索してみて下さい。
思い込みの大洪水で溺れ死にそうになるからw
カラーは良くも悪くも90年代
カラーリングは90年代に人気だったホログラム系。
メガバスほどリアルで緻密な作り込みはせず、ホログラムのメリットを活かす形でカラーリングする手法はマナークなど他のベルズのルアーに共通するものでした。
今となってはもう少しクリア系やクラシック系のペイントが欲しかったなとも思いますが、当時はクラシックカラーが壊滅的に売れない時代だったので仕方ありませんね。
だって当時はオールドのヘドンとかをタダ同然で処分してメガバスなどのリアル系を買い漁るような風潮だったんですよ。
そんな時期にSSカラーとか出したって完全スルーされるのがオチですからね。

ベルズのマナーク
本題からは逸れますが、マナークのこのカラーは何故かよく釣れました。
当時は単に釣れるカラーとだけしか思ってませんでしたが、後でよく考えてみたらズイールのMPカラーと同系の配色なんですよねコレ。

当時ズイールの社長だった柏木氏とベルズの鈴木氏は同郷?の釣り仲間だったらしいので、二人の間で ”この色ヤバいでしょ” 的な話があったのかもしれません😁
フックは#4が標準
フックは前後とも#4サイズが標準で、リアのみフェザードフックとなっています。
初代ポップリンよりもボディ容積が大きくなったので、大きめのダブルフックに変えてもアクションがスポイルされないのも大型化のメリットでした。
個人的に初代ポップリンではフェザーを取って使っていますが、ロングポップリンは高速ドッグウォークでの安定性を考慮してノーマルのまま使用しています。
ポップRのように使っているうちにタイイングスレッドがほつれて来ることがないのは地味に嬉しいポイント。
ネームがないのは何故?
しかし残念なことにネームがないのです、コイツには。
ルアーが良く出来ているだけにこれは大きなマイナスポイント。
マジェンダやマナークの背中にはロゴネームがプリントされてたのに😭
これがベルズのルアーが過小評価されてる一因だと思うんですよねー。
ネームがあれば口頭伝播されやすいだけでなく検索もされ易いのに、ノーネームであるがゆえ表舞台で紹介されづらくなっちゃってる。
近年ベルズのルアーを再評価する動きが活発化してるだけに、名前がないのはホントもったいないなぁと。
どこで買える?
そんなロングポップリンですが、既に生産は終了しているものの入手は比較的簡単です。
中古屋ではあまり見かけませんが、釣具屋のハンガーの奥で当時プライスのまま息を潜めていたりするので、意外と新品遭遇率が高いルアーだったりします。
当時の実売価格は1,000円前後ですが、それ以上の価値をもたらしてくれるルアーなので、もし見つけたら迷わずレジへ連れて行ってあげてください。
おわりに
ペンシルベイトが釣れるよ!と聞いて、マジか!とトキメキながらもそれを実行に移す人はおそらく20%もいないでしょう。
そしてそのままペンシルベイトを投げ続ける人は、行動を起こした人の半数以下になります。
つまりちゃんと投げ続ける人は10%以下ということ。
これは行動心理学や統計学で立証されているので間違いのない事実。
しかしペンシルベイトを信じて投げ続けた10%未満のアングラーは、バイトを思い出してニヤニヤしながら眠りにつけるのです。
クソ上司の長い説教の間も、生意気な口をきく部下とのやり取りの間も、新しい釣具を見てキーーッ!ってなってる奥さんの小言すらも親指のザラザラがあれば耐えられるのです。
そんな至福の時が訪れるなら、誰も使っていないペンシルベイトを今こそ投げてみようという気になりません?😁