広告に偽りなし!ルアーフィッシング史に大きな爪痕を残した伝説の猛虎 タイガー Tiger #1020 / ヘドン Heddon

へドン Heddonウェイクベイトシャローダイバーショートビルダーター

 

 

ロックスターやアイドルタレント、プロスポーツ選手など憧れの存在が世代によって違うのは皆さん御存知の通り。

もちろんそれは釣具にも言えること。

ということで今日の千一夜はそんな憧れの的だったルアーのオハナシ。

そうです。ヘドンのタイガー。

アラフィフアラカンのおっさんアングラーならば誰もが憧れたアメリカンルアーの星です。

 

タイガーとは

ミノーではなくライブリー

 

タイガーは米国ルアー界の老舗ヘドンが1967年に放ったライブリーベイト。

デビュー当時からヘドンは一貫してタイガーをミノーとしてではなくLively Bait(=生き物っぽいエサ)として紹介しています。

生き餌(Live Bait)ではなく、あくまでも Lively なところにヘドンらしさが見え隠れしていますね。

 

”The new bait with the killer instinct is always on the prowl”

常に(獲物を求めて)彷徨う、殺人本能を持った新ルアー

 

これはタイガーのデビュー広告に使われたキャッチフレーズ。

Killer という単語には殺人という意味以外に、無慈悲なほどの強さというニュアンスもあることが分かるとニヤリとせずにはいられません。

更にこのフレーズは、1800年代にロンドンを恐怖の渦に巻き込んだ連続切り裂き魔ジャックザリッパーJack The Ripperを意識していることは明らか。

ジャックザリッパーは何度も小説や映画になるなどアメリカでも非常に人気がありますが、爪で獲物を引き裂く(=Rip)獰猛な虎のイメージにピッタリだったのかもしれません。

そんなイメージにまんま乗っかったビルルイスのルアーもありましたがw

 

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タイガーのサイズ・重さ

 

タイガーのサイズは95ミリ、10.5g。

バスフィッシングには大き過ぎず小さすぎないという丁度いいサイズ感。

のちにタイガーカブ、マグナムタイガーとなるサイズも同時にリリースされましたが、当初の名称はタイガーカブ以外はタイガーで統一されており、品番でサイズを区別していました。

ちなみに当時の定価は1030タイガー(後のマグナムタイガー)は2.35ドル、1020タイガー(オリジナルサイズ)は2.15ドル、1010タイガーカブは1.95ドル。

今の貨幣価値に換算すると2,000円前後である事から、ルアーとしては比較的高級な部類だったことが分かります。(当時のバスルアーの相場は0.80〜1.50ドル)

 

上からマグナムタイガー(1030タイガー)、タイガー(1020)、タイガーカブ(1010)。 これ以外にビッグタイガー、ディープタイガーなどの派生モデルもある。

 

各所に見られるヘドンらしさ

頭上げ姿勢をサポートするセッパリボディ

 

タイガーの特徴はなんといっても大きな側面を持つセッパリフォルム。

タイガー登場以前のヘドンにはコブラというスリムなミノーがありましたが、それとは対局となるファットなシェイプがタイガーの最大の特徴となっています。

見た目に引っ張られがちですが、実はこのフォルムは大型リップやコンポーネントの重量にも負けない浮力をもたらす容積を確保するためのもの。

アクションについては後述しますが、大きな浮力をもたらすこのフォルムでなかったら大成しなかったとまで言われるタイガーの超重要なファクターとなっています。

 

”科学的根拠”に基づくギザギザリップ

 

そしてタイガーのアイデンティティでもあるギザギザリップ。

独特の切り欠き加工が口を開けて襲いかからんとする虎を連想させる事からタイガーの名が付いたとの説もありますが真相は不明。

しかしカタログが言うところの ”Scientifically-placed Notch(科学的根拠に基づいて配置されたノッチ)” には偽りは無いようで、実戦で唸らされた事は数知れず。

耐衝撃性がそれほど高くないのでラフに扱うと折れてしまう事を除けば、史上最強のリップかもしれません。

 

希少なポップドアイ

 

そしてタイガーといえばこの出目も忘れてはいけません。

意外と思われるかもしれませんが、ヘドンのプラスチックルアーでポップドアイを採用しているのはパンキンシードとシュリンプだけ。

非常に貴重な存在なのです。

これが釣果に与える影響はぶっちゃけほとんどないと思いますが、オタ的には非常に重要な要素。

オトコはいつになってもポッチを愛でるのが好きなイキモノなのです😁

 

超絶ワイドなロールアクション

ヘドンからラパラへのメッセージ

 

気になるアクションは超絶ワイドなグワングワン系のローリングアクション。

ラパラのオリジナルフローティングのような魚っぽいアクションの対局となる、大きくテールを振るローリングからは U.S.A.!! U.S.A.!!とペイトリオットコールが聞こえてきそうで、フラットサイドとまでは言わないまでも、それに近い大きな側面を左右に倒して水を撹拌してます。

”本物のエサよりもライブリーだ” というヘドンの力技を見せつけられているかのよう。

 

”水を掴み過ぎないリップ” がもたらすもの

 

そしてこのリップの仕事ぶりがスバラシイ。

絶妙なアングルと “科学的根拠によるノッチ” を持つリップが、ベイトフィッシュが水面でモジる動きを勝手に演出してくれます。

つまりギルが水面の落水昆虫を捕食して小さなポップ音と共に身を翻し、さらにジワーッと水面に戻るあの動きが誰でも簡単に出せるのです。

何年か前、”ヘッドアップ姿勢でジワーッと浮上する” コンセプトが新しいとして販売された国産ルアーがありましたが、ヘドンは50年以上前からそれを実現していたのです。

詳しくはタイガーカブの記事でも書きましたが、この挙動こそがタイガーの真骨頂と行っても過言ではないでしょう。

 

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しかしこのリップ単体ではその良さはなかなか理解しにくいですよね。

そんな時はタイガーのパチモンと比較してみると、いかにタイガーのリップが優れているのかが分かります。

 

 

画像はかつてオリムピックが販売していたタイガーのパチ、フレクトライトミノーとのリップ比較ですが、フレクトライトのリップにはタイガーのような切り欠き加工がありません。

重量やボディシェイプが全く同じではないので厳密な意味では比較になりませんが、両社を泳がせてみると、フレクトライトは水を受ける面が大きいのでリトリーブスピードを上げていくと割と早い時点で泳ぎが破綻するのに対し、タイガーはかなりの高速リトリーブでもしっかりと追随してくるのです。

 

 

タイガーはバスフィッシング専用に作られたルアーではなく、レイクトローリングやストリームでの使用、もちろんソルトウォーターも想定されているため、あらゆる状況や使用法に対応できるポテンシャルを備えているのです。

もちろんフレクトライトにはタイガーにはない大胆なウォブリングと潜行深度の深さなどメリットもあるのでどちらが良い悪いではないのですが、開発段階から考えうる全てのプレデターが想定されている時点でもう白旗モノですよねw

余談ですが、あのコーモランもタイガーのパチを連射しており、その代表としてビッグボーイが有名。

ビッグボーイはサイズ的にはマグナムタイガーのライバルとなりますが、マグナムにはないタイトアクションが特徴なので気になる人はこちらもチェックしてみてください。

 

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カラーバリエーションはさすがのヘドン

 

画像のカラーはヘドンのコードでいうところのBSM。

ヘドンはのんだくれの担当外なのでこのコードの正式名称は分かりませんが、のんだくれのオキニカラーのひとつ。

水に馴染むグリーンバックからチャートを経て膨張色であるホワイトへの強いコントラストがタイガーの強いローリングアクションとマッチして最強のアピールを誇ります。

なーんて言うとそれっぽいのですが、単にこのカラーで一番釣ってるだけw

カラーにはそれほどこだわらないけれど個人的にヘドンは地味目のカラーを選ぶ傾向があり、それで実際釣ってるので、緑スイカや反射板入りなどの人気カラーはほとんどスルーしてます。

とはいえカラー数ではラビリンスとも言えるバリエーションを誇るヘドンですから、沼にハマったら最後、生きて帰れなくなるのでご注意を。

個人的にはプレイフィッシュPreyfishに施されたようなキモ系ナチュラルプリントをタイガーのラインナップに加えて欲しかったなと思ってますが。

あ、今気が付きましたがプレイフィッシュもポップドアイでしたねw

 

ショートシャンクワイドゲイプを採用

 

フックは前後とも#4サイズ。

ショートシャンクのラウンドベンドワイドゲイプを採用しています。

画像のモデルは90年代の再販モデルなのでカドミウム防錆フックが装備されていますが、デビュー当時はブロンズフックがデフォルトで、最後期はマスタッド系のフックが装着されていました。

スプリットリングを介さないリギングになっているのは大きなアクションでラインを拾わないため。

リングを入れるとトゥイッチ一発でエビに変身するのでご注意を。

 

 

タイガーのリグといえばオープンアイのサーフェスリグを使用している事も忘れちゃいけません。

通常ヘドンのルアーに使用されているリグは前後ともクローズタイプですが、タイガーの1020オリジナルサイズだけはオープンアイを採用しています。

 

タイガーとオリジナルザラスプークのサーフェスリグ比較

 

おそらくフックの自由度を考慮しての事だと思われますが、この1020モデルにだけこのリグが採用されている理由をご存じの方はぜひご一報を。

 

あっさり過ぎるネーム

 

ネームはヘドンの掟に従ってハラにステンシル。

担当者のスキルによってボケ具合とクッキリのばらつきが出るのがヘドンの良いところ。

しかしマグナムもカブも全てTIGERで済ませてしまうというあっさり対応なのがなんとも惜しいところ。

せめてそれぞれ別のステンシルで吹いて欲しかった。

 

入手はそれなりの覚悟を

 

そんなおっさん憧れの星だったタイガーですが、既に生産を終了しているため入手は中古市場で探すしかありません。

しかも元々人気のあるルアーのため、入手にはそれなりの覚悟が必要となります。

タイガーだから釣れる!というワケではありませんが、疑似餌としての面白さが凝縮されたルアーなのは間違いないので、チャンスと予算が合えば是非とも入手して欲しいなと。

いや、ルアーの普遍性というか基本を知ることが出来るものとしては多少予算オーバーしてでもゲットして欲しいですが。

 

おわりに

 

水面派アングラーの中にはタイガーをエサ認定して禁じ手としている人もいるぐらいの実力者。

そのパフォーマンスを水面〜サブサーフェスアングラーだけの楽しみにしておくのは勿体なさ過ぎですぞ。

そしてコレクションで集めている人もガンガン投げてタイガーの凄さの伝道師になって欲しいなと。

Let the tiger loose on your favorite lake or stream(虎をフィールドに解き放つんだ)とヘドンも言ってますしね😁

 

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