バグリーの絶頂期から終焉までを見届けたタイニーファットクランクの逸品 ダイビンファットキャット Divin’ Fat Cat DFC2R / バグリー Bagley’s Bait Co.

クランクベイトシャローダイバーバグリーズベイトカンパニー Bagley's Bait co.

星の数ほどあるルアーの中には、コレクターと実釣派の両方から追っかけられているルアーが多数存在しています。

へドンのタイニートーピードや旧ストームのウィグルワートなどがその代表的存在として知られていますが、それらはレアカラーになると数千ドル飛び交ったりとなかなかクレイジーな世界。

人も魚も狂わせるという意味においては ”完璧なルアー” と言えるワケですが、そんなルアーになりつつあるのが今日紹介するバグリーのファットキャットです。

 



ファットキャットはどんなルアー?

ファットキャットはバグリーズベイトカンパニーが1987年にリリースした小型クランクベイトです。

Darling… But So Deadly! (かわいいけど… めちゃくちゃ危険!)をキャッチコピーに掲げ、今までのバグリーラインナップにはなかった Like Turkish Belly Dancer’s Action (トルコのベリーダンサー的アクション) の持ち主として登場しました。

ファットキャットをリリースした頃のバグリーは、次々と新製品を打ち出すなど一番波に乗っていた絶頂期であり、強力なプロモーションもあって全米で爆発的ヒットに。

そして大ヒットを受けてバグリーはラージサイズとなるママキャットも追加リリースします。

ママキャットとファットキャット

ママキャットの胸の部分にはおっぱいのイラストを描くなど、米人らしいジョークもウケてこれまた大ヒット。

当時、日本でも大量に販売されていたのでその人気ぶりを覚えている方も多いと思います。

バグリーはフロリダ州ウィンターヘイブンWinter Haven の工場をドミニカ共和国に移転する際に生産モデルの見直しを行ったのですが、ファットキャットはその選抜にも生き抜き、ブランド末期まで生産が続けられました。

人気者ゆえメイン商品から外さなかったワケですが、結果的にこの選択がバグリー弱体化のいち要因にもなってしまったのでした。(詳細は後述)

 

ファットキャットのサイズ・重さ・バリエーション

ファットキャットのサイズ・重さは45ミリ、9.5g。

バグリークランクの中では最小として知られるビティBが43ミリなので、かなり頑張ってましたね😁

ダイビングモデルの他に、FC2Rのコードを持つシャローファットキャットも用意されました。

ダイビンファットキャット(左)とシャローファットキャット

カタログではシャロー版は5フィート、ダイビング版は7フィートまで潜行するとなっていましたが、感覚ではそれぞれマイナス2フィートぐらいの潜行能力でした。

 

ファットキャットの特徴

米国クランクらしからぬ愛らしいルックス

 

ファットキャットの最大のウリは、球体ボディでありながら、キュッと細く引き締まったテールを持つユニークなデザイン。

ウッドの量産ルアーでここまで極端なボディラインを持つものは、後にも先にもファットキャットぐらいのもんでしょう。

フロリダ工場のモデルはノンラトルでしたが、ドミニカ工場の後期にはこんな小さなボディにラトルを封入する荒技も。

その気合からも当時のファットキャット人気が伺えますね。

 

バスハンターとは兄弟だった?

そんなユニークな形状ゆえ、一部ではダイワのバスハンターとファットキャットは共同開発されたという噂も流れたりしていました。

その真偽は不明ですが、両者のフォルムを見ればそんな噂が出ても不思議ではないぐらい酷似しています。

しかし現実問題として、ウッドとプラスチックで全く素材が違うのに共同開発するという話はちょっと無理がありますよね。

でも当時のバグリーの勢いだったら案外本当に共同開発してたかも😁

 

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2022/04/18 追記:

この記事公開の後、ダイワとファットキャットの関係性について複数の方から連絡をもらいしました。

その内容は人によって若干の差異はあるものの、

・ダイワが発注した
・ヒロ内藤氏が絡んでいた

という点は共通しているので、共同開発かどうかはともかくファットキャット誕生の裏にダイワの存在があったのは間違いない事実のようです。

そういえば当時の内藤さんはバグリーの社員(セールスレプリゼンタティブ?)でしたしね。

頂いた情報の中には ”日本は少年アングラーが多いのでママキャットにおっぱいを描くのは如何なものか” と内藤さんが反対したという現場ならではのエピソードもあったりして、こういう裏情報が大好物ののんだくれはニヤニヤが止まりませんw

ママキャットの発売時期はファットキャットより後なので、そうなるとママキャットプロジェクトまで内藤さんが担当していたのか、もしくはファットキャット発売当初からママキャットを発売するプランが存在したのかなどなど、新たな???が生まれてきますが、こういうのは一気に解明されるよりもジワジワと小出しで事実が判明していく方が楽しいので、これ以上の疑問解明はなりゆきに任せることとします😁

いずれにしても情報をくれた方々には深く感謝いたします。

ありがとうございました。

 

リップはキラーB1のものを流用

リップはバグリー伝統の差し込み&ワイヤーリギング方式を採用していますが、リップ自体はキラーB1に採用されているものを流用しています。

ダイビンファットキャットとダイビンキラーB1

ダイビングファットキャットにはダイビングキラーB1のリップを、そしてシャローファットキャットにはキラーB1のリップをそのまま使用しています。

とはいえ、そのリップは製造時期によって微妙に大きさや形状が変わっているので、流用と言えるのかどうかはビミョーですが。

 

製造時期によって違うボディシェイプ

デビュー当初のファットキャット(上)と90年代中頃のファットキャット

製造時期といえばボディラインも時期による変遷があります

この画像はいずれもダイビンファットキャットですが、テールの太さが明らかに違います。

上のモデルはデビュー直後にアメリカで購入した最初期モデルですが、太めのテールで断面がややデルタ形状になっているのに対し、その後のモデルでは断面がより丸くなってスリム化され、少しだけ伸びているのがわかります。

カップが装着されているのも大きな変更点。

このようなマイナーチェンジはファットキャットのボディブランクの成形が難しく、歩留まり率がなかなか上がらなかった(不良品率が下がらなかった)ことを物語っています。

近年でこそウッドブランクの成形精度は高くなりましたが、80年代の精度ったらそれはそれは低いものでした😭

それはスミスのウッド製量産ハトリーズのバラツキ具合からも想像できると思います。

 

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日本のブランドですらそんな状況ですから、海外ブランドの、しかも複雑な形状であるファットキャットのブランクには相当苦しめられていたのではないかと。

この件について、かつてバグリーの社長を勤めた事があるマイクに質問したことがあるのですが、その際に彼は全てのモデルの成形も含めた製造過程がもたらす高コスト体質と、それに対する対策にも言及していました。

つまりこのボディラインの変遷は、高コスト体質から抜け出すために現場がもがき苦しんだ証。

90年代後半、徐々にボディシェイプが変わっていくバグリーに嘆き悲しみ、もう知らん!と見切るファンも数多く見られましたが、その裏で彼らは歩留まり率を上げるべく日々戦っていたのです。

しかし結果的にそれらの対策は合理化の決め手とはならず、人気商品だったファットキャットは高コストでも作り続けなければならないという負のスパイラルが始まってしまいます。

そしてその連鎖から抜けだそうともがくあまり、中国工場の甘い囁きに乗って安易なインジェクションに手を出し、さらなる顧客離れを招くことに。

旧バグリーが行き詰まった原因がすべてこのファットキャットにあるわけではありませんが、かつてはアングラーの憧れだったブランドがこうして堕ちていくのを見るのは辛いものがありますね。

あ、誤解がないように言っておきますが、ヤルモ・ラパラが参画してからの新生バグリーのインジェクションモデルはイイ感じですからね。

ぶっちゃけ昔のバタ臭さというかアメリカらしさは影を潜めてしまったので好き嫌いは分かれると思いますが、ルアーとしてのクオリティは格段に上がっています。

特にバングオーのインジェクションモデル、ミノーBはプラスチックとは思えないレスポンスの良さを備えているのでスピナーモデル共々、超オススメです。

 

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アクションはハイピッチのタイトウォブル

さてさて話を元に戻しましょう。

気になる泳ぎは球体ボディの特性を活かした超ハイピッチのウォブリングアクション。

その動きは外見からおおよそ検討がつきますが、その期待を裏切らないピリピリぶりです。

動きを見た瞬間に誰もが、あーこれなら釣れちゃうよね😍と納得させられてしまうアクション。

シャローモデル、ダイビングモデルいずれもタイトなウォブリングですが、アクションの強さではダイビングモデルに軍配が上がります。

とはいえ当時はクランクベイトアクションのわずかな違いなど誰も気にしていないおおらかな時代。

ファットキャットめっちゃ釣れるー!としか認識していませんでしたがw

そんな泳ぎを撮影した動画があるので、気になる方はこちらをどうぞ。

 

 

もちろん製造時期や個体によって泳ぎが少しづつ変わってくるのは言うまでもありません。

でもファットキャットでデカいの釣った事ないんですよね。

とりあえずボウズは回避できるんだけど… な感じ。

まあそういうところが憎めないんですが😁

 

カラーが多いのもファットキャットの特徴

人気商品ゆえカラー数が多いのもファットキャットの特徴です。

人気&定番のテネシーシャッドやイエローブラックバック、クロームなどなど、そのカラースキームは多岐に渡ります。

さらにオフトが発注した日本特別カラーも加わって、コンプリートの難易度は最高クラス。

実は米国コレクターの間ではオフトカラーが最も垂涎寺清子で、のんだくれの元にはカラーの実態を知りたいコレクターからオフトのカタログの捜索依頼が舞い込んで来るほど。

こういう ”可愛いけどなかなか征服できない” という要素がコレクター心を揺さぶるんでしょうねw

こういった事からもオフトの存在がいかに偉大だったかがわかりますね。

と同時にオフトの廃業がつくづく惜しまれます。

当時オフトのバグリー担当であり広告塔でもあった竹内さんならば、現場でしか知り得ない情報をもっともっと知っているはずなので、旧バグリーもオフトも無くなってしまった今こそ何らかの形でエピソードなどを公開してもらいたいものです(切望)

だって米国内では販売していないバルジンリップ搭載モデルとか、オフトのオリジナル商品が沢山あるんですよ。
そんな企画と交渉の過程で面白いエピソードが出てこないワケがないですもん😁

余談ですが最近コレクターの間で最もホットなカラーは、ピスタチオ Pistachio

ポップなカラーリングがファットキャットに似合う上に、製造時期によって色味が違い、エラの有る無しなどのイレギュラー性もあってコレクター魂に火をつけています。

 

ファットキャットのフックは#6サイズ

フックはラウンドベンド&ディープスロートの#6サイズが標準。

デビュー当初はイーグルクロー系のクローポイントフックが採用されていたとの情報もありますが、そのモデルは見た事がありません。

ちなみにドミニカ工場製は他のバグリークランク同様、テールがヒートンではなくワイヤーによるリギングになっています。

ドミニカ工場モデルについてはバルサB3の記事で触れているのでこちらもどうぞ。

 

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ネームはリップ&ボディの”バグリークラシック”

ネームプリントが他のバグリークランクのように腹ではなく背中にスタンプされているのは、急テーパーなボディシェイプゆえ。

リップにエンボスモールドされたロゴマークには老舗の威厳すら漂っていますね。

残念ながらこのリップのロゴもドミニカ後期にはなくなってしまいますが😭

ちなみにファットキャットという名前の由来について、過去にツイッターに投稿した事があるのでリンクを埋め込んでおきます。

 

 

ファットキャットはどこで買える?

そんなファットキャットですが、生産が終了してから既に20年近く経っている上に先述の通りコレクターがチマナコになっていることもあり、なかなか競争率が高くなっています。

でもまだ日本はアメリカ市場ほど価格高騰していないので探すならヤフオクやメルカリでしょう。

今は高いと思っても今後高騰する事も十分考えられるので、あの時いっとけば良かった!😭というお約束の展開にならないためにも、気になってる人は今のうちにゲットしておくことをオススメします。

しかし黄色ではたまに300円ぐらいの値札が付いていることがあるので、そんな掘り出し物に出会った時には、叫びたくなるキモチをグッと抑えて何もなかったかのように涼しい顔でレジへエスコートするのがコレクターの心得その3です😁

 

おわりに

ファットキャットに限らずこの手のヴィンテージクランクはロストが怖いので、実戦投入するにはなかなかの勇気を必要とします。

しかしそれを乗り越えて使ってみると、良くも悪くも製品のバラツキがあったりと今のクランクベイトにはないテイストを楽しむ事ができます。

それが釣果につながるかどうかは別として、先人たちが歩んできた道を知った上で今のクランクを使えば、今まで見えてなかった ”何か” を知る事もできたりするので、機会があれば是非トライしてほしいなと。

それがきっかけでコレクションの沼にハマってものんだくれは関知しませんけど😁

 



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