インターネット通信環境、ならびに動画が気軽に見られるSNSの発達はルアーの開発にも大きな影響を与えました。
それは、より詳しいルアーの使い方、動かし方が動画で伝えられるようになったからです。
その環境は、今までメーカーとしてはあまり突っ込めなかったニッチな状況に対応するルアーを効果的にプロモーションできる事を意味し、近年そういった “ピンな状況を埋めるルアー” が続々と発表されるようになりました。
今日のゲスト、アラシカバーポップは、まさにそんなインターネットの時代が産んだルアーです。
“ピンな状況を埋めるルアー” と言われても、いまいちピンと来ないかもしれません。
なぜなら昔から日本のルアーメーカーは、〇〇な状況で効く!などなど、ピンな状況に対応するルアーばかりを開発&リリースしてきたから。
日本はピンな状況に対応しないと結果が出せないタフなフィールドが多いという事と、細部にまでこだわる日本人特有の気質とが合わさったジャパンスタイルと言えるものなので、良いとか悪いとかの話ではありません。
でもインターネットが登場するずっと前から、カタログには動かし方のイラストと共に詳しいトリセツが掲載されるなど、手取り足取り状態で商品がアピールされてきたので、そういった環境が当然だと思ってしまっているフシすらあります。
でも世界広しといえども、ここまでやるのは日本だけなんですよね。
本国アメリカでは一部のマニュアルビデオなどを除いて、動かし方までレクチャーするメーカーなんてほとんど存在しません。
国土が日本とは比較にならないほど大きく、あらゆる条件のフィールドが存在するので、ピンポイントに対応したルアーなんて作ってたら逆に間口を狭くすることになり、その結果売れなくなってしまうという危険性もあるからです。
しかしストームは、このアラシカバーポップであえてそこに突っ込んでくれたのです。
アラシカバーボップはその名の通り、カバー周りの攻略に特化したポッパーです。
全長80mm、ウェイト1/2ozというサイズは、アメリカンブランドのポッパーとしては大きな部類ですが、テールを細く絞り込むというデザインマジックでボリュームがあるようには見えなくしています
アメリカンメイドのポッパーといえば、どこかポップRやイエローマジック、リオリコなどの匂いがするものが多いのですが、アラシカバーポップはこのルックスだけでも完全オリジナルであることが伝わってきます。
ブランドン・パラニュークをはじめ、著名バスプロ達が開発に携わった点もそうですが、アラシクランクやアラシラトリントップウォーカーが作り上げてきた良い流れを停滞させてはならないという背水の陣的な覚悟もあったんでしょう。

このルアーの最大の特徴はカップの深さとその大きさです。
断面が約60度にスラントした大型カップ (最大深なんと10mm!!) がしっかりと水を掴み、ポップ音はもちろん、ルアーの移動を最低限に抑えてプロダクティブゾーンの滞在時間を長くしようというコンセプトがそのまま造形に顕れていますね。
へドンのチャガースプークと比べると、その違いが良くわかります。
こんなカップ形状なのでさぞかしツバ吐きが得意かと思いきや、意外にもスプラッシュは普通レベル。
一応スプラッシュを飛ばせるには飛ばせるのですが、ポップRのように細かい飛沫を広範囲に飛ばすというものではなく、大きな水のカタマリを前に投げる程度のものなので、やはりこのカップはサウンドと移動距離抑制の二つに性能を集中させたものなんでしょう。
カップを完全に水面上に出した状態で約70度で浮くので、ロッドをチョンとやるだけでカップが良い感じに水面に覆い被さり、ブゴッ!という良い音を発します。
さらにテールのウェイトがしっかり役目を果たしてくれるので、ポップ音を出した後はすぐにケツを下げて命令待ちの状態に戻り、連続ポッピングでもストレスなく動かせます。
もちろん首振りアクションもばっちりのセッティングがなされているので、カバーの奥深くにタイトにつくバスにしっかりとアピールする事が可能になっています。
動きだけではなく、ボディ形状にもカバー攻略のアイデアが詰まっています。
ヘッド部のボリュームに対してアンバランスと言えるほど細く絞り込まれたテールは、着水時に水に刺さることで音を減らしてバスをスプーク(警戒)させないためのデザイン。
背中側に掘られたグルーブは着水時のスプラッシュを減らす効果があるんだそう。
通常のキャストではなく、ラバージグを送り込むかのようにピッチングで静かにカバーの奥に撃ち込んで食わせるコンセプトで作られたポッパーであることが良くわかります。
実際には着水時の繊細なサミングを要するなど、全部ルアー任せでは着水音は殺せませんが、それでもストームのヤル気は伝わってきますよね。
でもここまで読んだ方はもうわかると思うんですが、このルアーはボートからの使用を前提としたルアーなんですよね。
バスが潜んでいると睨んだカバーだけをマシンガン的に、次々と撃っていくために開発されたルアー。
オカッパリでももちろん使えるけれども、このルアーの性能を最大限に引き出せるシチュエーションは、ボートから使うよりもかなり限られるんじゃないかと。
つまり先述の “こういう状況でこういう風に使ってね” と詳しく説明できるSNSなどのツールありきのルアーなんです。
そういう意味では、アメリカのバスフィッシングの動向は、従来から日本が得意としてきた至れり尽くせりスタイルにちょっと近づいているのかもしれません。
造形は良くも悪くもアメリカンな抽象デザイン。
のんだくれは情念ともいえるぐらいに感情移入されたリアルフィニッシュがあまり好きではないので、これはこれでイイ感じですけどね。
アレですよ、とりあえずシャウトはしてるけど、あまり心がこもってないアイアンメイデンの初代ヴォーカルみたいなテキトーさが心地イイんです。
あ、キモヲタな話なのでスルーしてください😂
それはそうと、このルアーはパッケージでもラトル入りを大きくアピールしてますが、そのサウンドは小さくカチカチぐらいなので期待しない方がイイですね。
ラトル音というよりも、ウェイトルームに少しだけ隙間があるからウェイトが動いてる程度なので、基本ノンラトルだと理解する方が精神衛生上もよろしいかと。
フックはこのサイズのポッパーには異例とも思えるショートシャンクのラウンドベンド#2サイズを採用。
デカいのも逃がさないぜ!という気合が感じ取れますね。
フックをサイズアップした分、フックハンガーをロテート(横アイ)にすることでフック同士の干渉を解消しています。
もうこのロテートフックハンガーと3Dの流し目はアラシシリーズの共通仕様になりましたね。

カバーに付いたバス、特にプリスポーン期のカバーバス攻略に使うポッパーとしてはかなり優秀だけれども、サスペンドしているバスを水面まで引っ張り上げたいとか、フィーディングモードに入ってるバスのスイッチを強制的に入れるとかの点では正直ちょっと弱いかなぁ。
個人的には、もうちょっとアメリカ的な大らかさというかマルチパーパス性は欲しかったかな。
だってここまでピンポイント向けに振ってるとストームらしくないですもん。
とはいえ、メーカーのコンセプト通りに使ってデカいのを釣るってのもそれはそれで楽しいから、やっぱ皆さんボックスに一個は入れときましょ! ⇦ 一体どっちだよ😂