思いつくままルアーをピックアップして書いてるように思えるこのブログでも実は積極的に書かないルアーがあります。
それはめちゃくちゃ釣れるのに生産が終わってしまったルアーたち。
だってそんなの紹介したらますます手に入りにくくなっちゃいますから😁
釣り人特有のイヤらしい独り占め根性がそうさせているんですが、時には書き手としての欲求が上回ることも。
今日のゲスト、スパターバグはそんな書き手の欲求が勝ったうちのひとつです。
スパターバグは1970年代(1972年?)に発売されたフレッドアーボガストの代表的なルアーのひとつです。
スパター Sputter の意味のとおり、ツバを飛ばして早口で喋るが如くノイズを発しながら飛沫を撒き散らすバズベイトですが、浮力体となるボディを持ったフローティングであることが特徴です。
フローティングのバズベイトはこれ以外にもあらゆるメーカーから多数発表されていますが、サカナを誘う力はおそらくこのスパターバグがナンバーワンではないかと。
かれこれ30年以上、のんだくれのボックスに指定席を持つ必殺水面ルアーなのです。
スパターバグはボディ長55ミリ、自重1/4oz(実測では8.5g)の小型トップウォーターです。
本来ならばテールにフラットラバースカートを装着している、いかにもアーボガストな一品ですが、今のルアーにはないキテレツさが原因なのか、中古屋でぶら下がっていても誰も気にしないというちょっと可哀想な存在でもあります。
G1800と呼ばれる兄貴サイズのバリエーションとしてこのG1830モデルが発売されたわけですが、実はこの弟が兄貴の存在を完全に食ってしまうほど釣れるのです。
その釣れっぷりを一言でいうと、”無慈悲”。
のんだくれは一体どれだけこのルアーに救われたことか。
どこにでもありそうなバズブレード付きプラグなのに不可解なほど釣れるのです。
しかしこのルアーの細部をこまかく見ていくと、”そりゃ釣れちゃうよね” な納得ポイントがテンコ盛りなので、ひとつずつ見てゆきましょう。
スパターバグといえば、この大きくオフセットされたオフセンターアクシスブレードが特徴です。
もともとはハワイアンウィグラーというインラインスピナーに配備されたブレードでしたが、これがそのサイズからは考えられないほど大きなバイブレーションを生み出します。
ラインアイの口が空いているなど大した仕事をしなさそうな見た目ですが、実はこのブレードはアーボガストの知を集結したと言っても大袈裟ではないほど考え抜かれた傑作なのです。
そんなブレードのキモの一つ目は、素材の厚さが違う事。
一般的なバズベイトに採用されているブレードは軽量化のため大体0.6〜0.8mm厚のものが多いのですが、スパターバグはこのサイズにも関わらず1.0mmの極厚ブレードを採用しています。
これはブレードの自重を増やすことで回転による慣性モーメントをより大きくするのが狙い。
ボディ自体が浮力を持っているのでブレード軽量化のために素材の厚さに神経を尖らせる必要がなく、そしてバズベイトのように浮上のための揚力を稼ぐ必要がないので回転の妨げとなる平面部分を確保する必要もないため、機能をより強調できるのです。
二つ目はブレードのバランスをあえて不均衡にしていること。
画像ではわかりにくいのですが、下側のウィングを僅かに大きくすることで回転をより不安定にし、強いバイブレーションを作り出します。
そしてこのブレードが重心の軸を外してセットされることにより、不安定でありながらも強い振動を伴った回転を生み出すのです。
そのバイブレーションを文字にするならば、まさにストンピング。
ドンドンドンと足を踏み鳴らすかのような強い振動でプレデターの側線を刺激しまくります。
そしてそのバイブレーションをボディに伝達するコネクターも非常にユニークです。
一見なんじゃコレ?な造形ですが、これは横方向にブレードが振れないように制限をかけるためのワイヤーワーク。
この一手間があることにより、水面でトゥイッチしたときにエビになりにくいという効果を発揮します。
しかしこのワイヤーは90年代の始め頃、生産合理化のためか一時期シンプルなリング構造に変更されたことがあります。
ところがしばらくして、また元のワイヤー形状に回帰しました。
この変更が何を意味するのかは不明ですが、わざわざ手間のかかる元の仕様に戻したということは、メリケンお得意の”合理化” 方程式で割り切れない機能があったんでしょうね。
そんな紆余曲折がありながらも長生きできたのは、やはり釣れるルアーだから。
小さなボディにも関わらずしっかりとした浮力で浮くので、超スローリトリーブはもちろんのことメリハリをつけたジャーク&キルなど、ワイヤーのバズベイトでは不可能とされる多様な演出が可能です。
バズベイトでありながら、まるでクランクベイトを巻いているかの様な強い振動が手元に伝わってくるので、アングラーのモチベーションをキープし続けてくれるのもスパターバグのウリのひとつ。
中でも恐ろしく釣れるのが、水面直下のスローリトリーブです。
ロッドティップを水中に突っ込んでブレードが水面を割らないギリギリのところを引いてくると、ブレードの水攪拌とボディの振動が最大限に活かせるのか、バスの反応がめちゃくちゃイイのです。
バスのサイズは全く選べませんが、先行者が散々叩いた後でも簡単にバスが出たりするので笑いが止まりません。
のんだくれはほぼリトリーブでしか使わないので、実釣ではフロントフックにスプリットリングを入れてリアフックを取ったものを使用していますが、色んな演出をしたいなら変にイジらずにデフォルトのままで使った方がベター。
なぜならアーボガストのサーフェスリグはへドンなどのそれに比べて足が長い上にロングシャンクフックを採用しているので、バスの乗りが良いのにバレやトラブルが少ないという高性能なリグだから。
のんだくれは吸い込み系のショートバイトも取れる様にスプリットリングを入れていますが、リングを入れた状態でストップ&ゴーなどラインスラックが出る使い方をするとエビになりやすく、非常にストレスフルな釣りになってしまいます。
つまり、あらゆるセッティングを試してみましたが、結局スパターバグはデフォルトのままがイチバンだったというオチです😭
そう考えると、このセッティングを50年も前に生み出していたアーボガストってスゴいなぁと。

上がプラドコ期、下が最初期。
でもスパターバグが刺激するのはバスの側線だけじゃないんですよ。
製造時期によるマイナーな違いが多数見られるところがヲタマインドを刺激してくれるのです。
誕生からブラドコ最後期バージョンに至るまでの間に複数のボディ形状が存在し、それに伴いリグやコンポーネントが何度も変更されているのでその組み合わせの数は確認できないほど。
なにしろラバースカートをぶら下げるチンコの穴も時期によって違うんですから。
ジタバグやフラダンサーのポストでも書きましたが、アーボガストのリグを追っかけるのは廃人への一歩を踏み出すことになるので、余程の覚悟と金と暇がない限りは首を突っ込まない方が身のため。
うかつに手を出すと、大火傷をしながらも抜け出せないというこの世の地獄が待っているのです😅

そしてアーボガストといえばネームですよね。
特徴的な大柄ステンシルがフレッドアーボガストのDNAを主張している様です。
そして嬉しいのはカラーによってちゃんとステンシルのカラーや位置を変えたりしてくれているところ。
ほとんどのカラーは画像の様に背中に吹かれていますが、フロッグカラーは脇腹だったり、そもそもネームが吹かれていないものも存在します。
年代によってステンシルのサイズやフォントが変わっているところも見逃せません。
時々向こうのオールドルアーコレクターの間でネームステンシルの型が取引されることがありますが、フレッドアーボガストの型の遭遇率が高いのはそれだけいろんな種類が存在したからなんでしょうね。
そんな具合に実釣派はもちろんルアヲタまでも魅了するスパターバグですが、残念なことに既に生産を終えているので供給は中古市場のみという悲しい状況です。
しかし先述の通り誰も見向きもしないので意外と遭遇率は高く、時には2〜300円で買えることも。
よって見つけたら絶対にゲットして欲しいのです。
例え最新の入手困難ルアーをスルーしてスパターバグを買ったとしても、損しないどころか目ウロコで貴重な体験ができると思います。
そしてバスを釣りまくると同時に先人が考え抜いた構造を理解すれば、バスフィッシングは話題性やテクニックでは語れないという根幹に改めて気付かされるはずです。
2022/04/25追記:
90年代後半に生産を休止していましたが最近再販されました。
プラドコ系アイテムを置いているショップであればまっさらな新品を入手できるので、この貴重な機会をお見逃しなきよう。
プラドコの事だからおそらく今季限り… というかワンロット生産だと思います。