今更ですが、市場には似たようなルアーが氾濫しています。
視覚的に似ているのはもちろん、機能的に似ているものも含めたらその数は無限大。
しかし外観が似ていても内容的には全く別モノだったなんてケースもチラホラ。
今日紹介するプランクはまさにそんな別モノの代表と言ってもいいのではないかと。
プランクとは
プランクは2017年にブーヤベイトカンパニーがリリースしたルアー。
ポッパーの魔術師との異名を持つかのゼル・ローランドによってデザインされました。
米国ではポッパーとクランクベイトの機能を融合した!と結構な話題になりましたが、日本では ”これビバのマッジーポッパーだし” と冷めた目で迎えられるなど、ちょっと寂しいデビューを果たしたルアーでもあります。
サイズはまんまポップR P60
プランクのサイズは60ミリ、7.5g。
もう既に気付いた人もいると思いますが、コレ、ポップRのP60サイズそのまんまです。

ポップR P60とプランク
ゼルローランドが設計したという触れ込みですが、このサイズをそのまま踏襲したということは、ゼル自身がこの60ミリというサイズに絶対的な自信を持っていたんでしょうね。
このBYPRK2サイズのヒットを受けて、のちに70ミリのBTPRK3をリリースすることになりますが、そっちはまさにP70サイズのまんまですから、もうポップRの派生モデルと言っちゃってもイイかもしれませんw
プランクの特徴
取ってつけた感満載のリップ
プランクの特徴はなんと言ってもこのリップ。
ポッパーにリップを付けました。以上。とでも言わんばかりの取ってつけた感がいかにもアメリカンw
形状的にリップは差し込み式なのかと思いきや、思いっきり一体成型というフェイント感もタマりません。
これはのんだくれの勝手な想像ですが、おそらくゼルが作った原型はポップRにリップを差し込んだもので、それを元に型を起こしたからこんな中途半端な造形になったんじゃないかと。
カップは浅めでエッジも控えめ
しかし細部はポップRとは全く仕様が違っています。当たり前だけどw
両者を比べてみるとプランクのカップは浅く、カップのエッジもかなりマイルドにシェイビングされているのが分かります。
おそらくエッジが立ったままだと水を掴み過ぎてリトリーブでちゃんと泳いでくれなかったんでしょうね。
大小2つのマルチラトル
ボディ内部にはラトルを内蔵。
テール側のメインウェイトは前後の動きで鳴り、フロントフック後ろに配された小ラトルは横方向の動きで鳴るマルチシステムを採用。
ポップRのようにテール側にだけウェイトを入れるとスイムアクションをスポイルしちゃうんでしょうね。
でもマルチラトルにしては音量も音域も小さいので、ラトルとしての機能はあんまり期待しないほうがよろしいかと。
背中には謎の切り欠きも
特徴といえばボディにはこんな切り欠きのフラット面もあります。
あれこれ思いを巡らせてみましたが、これがどんな意味を持ち、どんな役割を果たしているのかは不明。
でも何も意味がない方がアメリカンルアーっぽくて笑えるんだけどなw
プランクのパフォーマンス
さて、気になるアクションですがルアーの特性上、総合的に判断するのは難しいので機能毎に切り分けて解説します。
ポッパーとしてのプランク
まずメインディッシュとなるポッパーとしての機能ですが、ひと言でいうとスバラシイ。
リップによって潜ろうとする力が働くのでイイ感じでカップが水面に覆いかぶさり、ポムッという甘美はもちろん、ゴフッ!な野生までラインテンションひとつで自在に演じ分けることが可能です。
ぶっちゃけ音の使い分けは他のポッパーでも出来ますが、プランクのイイ点は水面の状況やタックルセッティングに関わらず、テンションの強弱だけで音を操れること。
そして何よりも優れているのは、他のポッパーと比べてアクション時の移動距離が非常に短いということ。
リップがブレーキの役割を果たしているので、通常のポッパーのように不用意に移動せず、オーバーハングの奥や岩盤の割れ目などプロダクティブゾーンが狭いスポットでもじっくりとアピール出来ます。
しかし反対にワンアクション毎に頭を突っ込むので、ポップRが得意とする連続ポッピングやスィープによるスプラッシュは苦手。 …というか出来ません。
これらポップRとの特性の違いを見る限り、ゼルはポッパーよりもチャガーとしての機能を強調したかったんだろうなと。
クランクベイトとしてのプランク
対してクランクベイトとしてのプランクは、ハッキリ言ってオマケのレベル。
まず第一に泳ぎがかなり弱い。
一応ウォブリングするにはするが、フェザードフックの抵抗もあって日本人が考えるクランクベイトのイメージからはかけ離れたフラフラ泳ぎです。
正直なところ、この程度ならズイールのプロップの方がよっぽど強いスイミングアクションかと。

ブーヤのプロモーションでは ”Whole new lebel of versatility (新次元の多機能性)” を謳ってますが、ぶっちゃけ騒ぐほどのことでもないと言ったところ。
勝手な想像ですが、おそらくゼルは当初クランクベイトの要素は全く考えていなかったが、セールスポイントは多い方がいいというブーヤ側のプロモーション的思考によりクランクベイト要素が後付けされたんじゃないかと。
その真相はともかく、クランクベイトアクションはオマケ程度で捉えておいた方が買ってから ”チクショー!金返せ!” にならないので精神的にもよろしいかとw
マッジーポッパーとの違い
そうなると今度はマッジーポッパーとの違いも気になりますよね。
ざっくり言うと、マッジーポッパーは捕食音が出せるSSRクランクなのでサーチベイト的に演出を組み立てる場合には圧倒的に有利。
マッジーポッパーの、ベビーワンマイナスを彷彿とさせる強いローリングアクションはクランクベイト単体で考えても高レベルなので、ブーヤの言うところの ”新次元の多機能性” をより実現しているかと。
しかしマッジーポッパーにはポップ音を使い分け出来るような繊細さは備わっていないので、じっくり誘いたい場合にはちょっと役不足。
要するに適材適所での使い分けが求められるということ。
ちなみにマッジーポッパーはコレね。
画像をアップするつもりでしたが、現物が行方不明だったのでご勘弁をw
いかにもなメリケン色
プランクのカラーラインナップはいかにもなメリケン系カラーが中心。
画像のカラーはサマーギルSummer Gill ですが、もし国産ルアーのラインナップに有ったら一番売れ残るであろう地味めのカラーです。
しかし地味だからと侮ってはなりませぬ。
実はコレ、水に入れて太陽光線が当たるとめちゃくちゃ視認性が高くなるというマジックカラーなのです。
先出の水中画像でもなんとなく分かると思いますが、半透明のボディは水中で光線透過により明るく”光る” のでアピール抜群。
そして背中に散りばめられたブルーのフレークは紫外線が当たるとより輝きを増すのでアングラーからの視認性もバッチリ。
おそらくサマーギルというネーミングも、昼間の時間帯が長く紫外線量が多い夏に有効なカラーだという思惑も込められているんだろうなと。
当たり前の話ですが、ルアーのカラーは水に入れてナンボ。
このサマーギルのように一見地味だけど、水に入れた途端化けるカラーは他にも沢山あります。
ヘドンの地味系定番カラーを見ればそれがよく分かりますね。

逆に人間にはアピールするけど、水中に入るとナンジャコレなカラーも沢山あります。
魚のカラー識別能力はどこまで行っても人間側の想像の範疇から脱することは出来ませんが、良く釣れると言われている定番カラーには地味めの色が多いということは覚えておいてソンはないかと。
ちなみにこのサマーギル、腹側はこんな大雑把なラメワークが施されています。
これだけでも我々ジャポネの美的感覚とは大きくズレてますよねw
でもこのヘキサゴン形状のフレークにもちゃんと意味があるんでしょうね。
フックは#6が標準
フックは前後とも#6がデフォルトで、リアのみフェザード仕様。
フェザーはティンセル入りで長めなので、ポップ時のスタビライザー効果以外にスイミング時はミノーを模す役割もあるんだろうなと。
小さな事ですが、タイイングスレッドがしっかり固められているのは嬉しいですね。
ポップRのようにヘッドセメントで簡単に止めてあるだけだと使っているうちにスレッドがほどけきてお代官様あーれー状態になるので、これは高ポイント。
残念ながらネームは無し
残念なのはこのプランクにはネームプリントらしきものがないこと。
これだけ特徴のあるルアーだけに名前がないのは勿体なさすぎですね。
おそらく ”これはオンリーワンなんだからわざわざネーム入れる必要なんてない” という米人マインドゆえのノーネームだと思いますが、オンリーワンだからこそネームをいれて権利を主張しないとね。
プランクはどこで入手できる?
そんなプランクですが、日本の小売店にも問屋を通して結構な数が入ってきているので入手は比較的簡単。
米系ルアーを置いてる店ならそこそこ置いてあるし、フリマサイトでも頻繁に見かけるのでその気になればすぐに買えます。
しかし問題はその価格。
こんな簡単な作りwなのに2,000円弱と結構なお値段なのです。
この価格設定は昨今の円安の影響ではなく、元々の小売価格がそれなりなのでちょっと手が出にくくなってます。
実際のんだくれも向こうのショップで12ドル弱という値札を見て買うのを一瞬ためらいました。
プランクの横にはポップRが5〜6ドルで並んでたので、それを見ちゃうと尚更ですw
ゆえにこのルアーを買う決め手となるのは、”その差額分の価値をこのルアーのどこに見出すか” によるでしょう。
もしこのルアーの特性を読んで、”これならあのスポットで使えるかも” とイメージ出来たならば間違いなく買いだし、そうでなければやめといた方が良いかと。
まあこれはどのルアーにも言えることですけどね。
おわりに
ルアーに複数の機能を盛り込むのは日本人の十八番でもあるので、先述のマッジーポッパーの二番煎じ感は否めませんが、ポップRの派生モデル的な感覚で色々なサウンドを楽しみたいアングラーにはイイかもしれません。
そもそもゼルローランドもポップRで出来なかったコトをこのプランクで実現したはずなので、マッジーポッパーも含めて同じ括りにしちゃうのは失礼ですよね。
これぞまさしく”魔ゼルな規犬” ではないかとw
おあとがよろしいようで….