「 人は見た目が9割 」
かつてこんなタイトルの書籍が話題になったことがありました。
“その人となり” は外観の印象で決まるという事を言いたいんだと思いますが(実はまだ読んでない)、当たらずとも遠からずではないかと。
というのも、のんだくれ自身がその出立ち(スキンヘッド、アゴ髭、一重の三白眼というトリプルコンボな極悪面w)から誤解されたり、色眼鏡で見られることが多いので、それは本能的に危険を回避するという点では仕方のないことなのかなと😂
しかし、ことルアーとなると、話は違ってきます。
のんだくれの経験上、見た目がイマイチなルアーにはトンでもない実力を秘めているモノが多数あるのです。
今日のゲスト、スクエアビルサンフィッシュはその典型的な例ではないかと。
このスクエアビルサンフィッシュは、フランス人デザイナーパトリックセビル率いるセビルルアーズが2013年にリリースした米国マーケット攻略用クランクベイトです。
セビルルアーズは、欧州デザインならではの独特の雰囲気を持つルアーブランドとして既にある程度の知名度がありましたが、ルアー自体がパイクやパーチなど欧州系ゲームフィッシュ向けということもあり、北米マーケットでは苦戦を強いられていました。
ピュアフィッシング傘下で頑張ってはいたものの、バスフィッシング向けルアーがラインナップしていないという致命的な立ち後れがあったのです。
そこで社運を掛けてリリースされたのがこのスクエアビルサンフィッシュでした。
スクエアビルサンフィッシュは全長64mm、自重11.5gのフラットサイドクランク。
サンフィッシュという名前からお分かりの通り、ブルーギルなどのパンフィッシュを模したクランクベイトですね。
アクションファーストシリーズ Action First Series としてファット系クランクのブルクランクと一緒にリリースされたので記憶している方も多いのでは?
ボディの最大幅は15mm。
体高に対する扁平率にすると55%というなかなかのフラット具合から、セビルの背水の陣とも見て取れるヤル気が透けて見えるようです。
このクランクベイトの特徴は、フラットサイドボディでありながらスクエアビル形状のリップを装備していること。
フラットサイド&スクエアビルという、当時としては珍しい組み合わせ(なぜその組み合わせが少ないのかを説明すると長くなるので各自GGってplz)だったので、ちょっとした話題にもなりました。
このルアーがリリースされた当時は、2011年に起きたKVDの乱によりスクエアビルクランクが市場で幅を利かせていたので、セビルはスクエアビル搭載がシェア拡大の必須条件だと思っていたのかもしれませんね。
リップの付け根をボディサイドまで伸ばす意匠はKVDスクエアビルクランクそのまんまなので、意識していなかったとは言わせません😁

そしてボディラインの処理が個性的なのもこのルアーの特徴。
これでもか!と言わんばかりに角を立てたデザインにすることにより、フラットサイドであることを強く主張しています。
このかっちりと角が立ったスクエア形状が機能的にどんな効果をもたらすのかは全くの未知数ですが、フラットサイドであることを視覚的にも訴えるという意味においては効果はあったかもしれませんね。
そしてボディ下部には、フックハンガーと一体となった剥き出しの低重心ウェイトが組み込まれています。
ジャッカルでいうところのアウトメタルシステムというやつですね。
同じタイミングでリリースされたブルクランクにも搭載されているウェイトシステムなので、アクションファーストシリーズのセールスポイントなのかと思いきや、このウェイトに特別な呼称が付されることはなく、カタログなどでは小さく外部低重心ウェイト(Low, External Weight)とだけ記しているのみ。


セビルのブルクランク。スクエアビルサンフィッシュと同じ専用設計ウェイトの搭載により超低重心バランスであることが分かる。
パトリック本人に聞いても、低重心設計だからね… 程度のあっさりした答えしか返って来ず、ちょっと肩透かしを食らったような感じになったのを覚えています。
これはのんだくれの勝手な想像の域を出ませんが、あのパトリックの対応からするとこのルアーはおそらくパトリック自信が設計したのではなく、外部のデザイナーによるものなんじゃないかと。
でも仮に外部デザイナーを使ったとしても、もうちょっと説明してくれてもいいと思うんだけど笑
あ、もしかしてズケズケと聞いてくるアジア人が嫌だったの?😂
そんなちょっと個性的な存在のスクエアビル君ですが、実は泳がせるとスゴいんです。
まずフラットサイドとしてのアクションが素晴らしい。
助走なしで一瞬で立ち上がるアクションは、スローではローリング、ミッド〜ファーストでは強いウォブリングと、一昔前の表現を使うならば、リトリーブスピードによって泳ぎが変わる可変スイミングアクション。
その上、泳ぎのピッチが非常に早いのです。
かつてスタンフォードルアーズがシャローレイザーシャッドをリリースした際、デザイナーのディーター・スタンフォードはそのアクションを “X-Crossing Action”(泳いでいるルアーを上から見るとXの文字に見えるほど早いピッチでウォブリングする)と呼び、これは誰にも真似できない!とドヤ顔していましたが、はっきり言ってこのスクエアビルサンフィッシュはそれを余裕で上回ってます。

しかもスピードが上がれば上がるほど泳ぎが安定するというオマケ付き。
そして持ち前の浮力の強さと低重心設計により、障害物に当たってバランスを崩してからの姿勢回復スピードが素晴らしい。
さらに特筆すべきは内蔵ラトルのサウンドがこれまたサイコーなのです。
ボディの空洞部分に大きなラトルボールが放り込まれているだけのいわゆる遊動ラトルなのですが、ウェイトを外に出すことによってチャンバーとなるエリアが拡大しているのでその分助走距離も大きくなり、ラトルがぶつかった時の衝撃がスゴいんです。
その音はコトコトとかカチカチのレベルではなく、硬質かつ高音でカカカカカカカ… と水中に響き渡る感じ。
その凄さは現物を使ってもらわないと理解できないと思いますが、このルアーにラトルサウンドで対抗できるクランクベイトはカベラスのポークチョップぐらいのもんでしょう。

もちろんその音量もハンパなく、アングラーにもしっかりと聞き取れる音圧に仕上がっているのです。
おそらくルアーが見えなかったらラトルトラップと間違える人もいるかもしれません。
ここまで強くサウンド特性を出すにはプラスチック素材の吟味はもちろん、アクション特性にまで徹底的に拘らないと実現できないはず。
そんなスゴいルアーに仕上がってるのに、パトリックったら全然ヤル気ないんだもん、一体どうしちゃったんでしょ。
しかし、そんな最強のパフォーマーなんですが、そのパフォーマンスに辿り着くまでのハードルがなかなか高いのです。
つまり外見がユニーク過ぎて、ショップで手に取ろうと思わないんです。
この目はセビルルアーのアイデンティティでもあるのですが、釣れる釣れない以前にアクが強過ぎるのでそもそも購買の候補にも上がらないというちょっと厳しい状況。
カラーリングが独特だったのもその理由かもしれません。
サンフィッシュというざっくりとしたネーミングが良くなかったのか、日本人だけでなく米国人からも冷ややかな目で見られてしまい、そもそもラインに結ばれることもないという、ルアーの性能以前の問題です。
事実のんだくれの友達が勤める西海岸のタックルショップでも、壁のハンガーから早々にバーゲンビン Bargain Bin (セールワゴン) に移籍させられるなど悲惨な扱いでした😭
どんなに優れたルアーを作っても使ってもらわなければ実力が分からない、しかも釣れるかどうかはアングラー次第という、ルアービジネスの難しいところを全部背負っちゃってる可哀想な奴なんです。
フックはショートシャンクのラウンドベンドを採用。
パトリックが言うにはVMCのフックを採用してるらしいのですが、ピュアフィッシンググループにはターミナルタックルを扱ってるブランドがあるのにわざわざライバルでもあるラパラ/ノーマーク系のトコを使うかぁ?と、のんだくれはちょっと薄目で見てます。
そんな具合にセビルの命運を背負ってリリースされたこのスクエアビルサンフィッシュ君ですが、その力及ばず、ゼビルルアーズはピュアフィッシングのブランド再編に伴い、消滅してしまいました。
結果的にはブランドを救うどころか、ピークを過ぎたブランドのトドメを刺してしまった形に😭
アメリカ人から見てもどーよ?なクランクベイトにブランドの未来を賭けること自体がちょっと無謀な気がしないでもありませんが、ビジネスはトライ&エラーの連続ですからね。
ここは素直にセビルの健闘を称えるのが正しいヲタの在り方ってもんです。
てな具合に前置きが長くなりましたが、このクランクは見た目こそアレですが持っておいて絶対に損はしないので、どこかのセールワゴンや中古屋で見つけたら、その見かけに惑わされずにサルベージしてあげてくださいな。
使ったら絶対にスペアが欲しくなるはずですから😁