コロナによるアウトドア熱の高まりにより、急激な盛り上がりを見せている100均タックル。
元々プラスチック製品の多い釣具の分野は100均が得意とするところでしたが、釣りブームの高まりでその需要が炸裂したことで各社から次々と新商品が投入されています。
遅かれ早かれ既存メーカーの脅威になる製品が出てくるだろうなと思ってたらもう出てきました。
それがこのクランクベイトシャローです。
クランクベイトシャローとは
クランクベイトシャローは100均大手キャンドゥが2022年春から販売するクランクベイト。
直球ど真ん中ストレートなネーミングで笑わせてくれます。
同じキャンドゥ扱いでポッパーもラインナップしているので、見かけたことがある人も多いでしょう。
このルアーをキャンドゥに供給しているのは大阪に拠点を置く”株式会社まるき” なる会社。
元々は爪楊枝や箸など木製のキッチン用品を得意とするブランドのようですが、ブラスチック製品を扱っていく過程でルアーを製造する中国工場と出会ったんでしょうね。
そして以前より取引のあったキャンドゥに爪楊枝などと同じくルアーを売り込んだ、というのがのんだくれの予想w
そしてこの企画の背後には間違いなく釣り好きの担当者がいると確信しています😂
サイズ・重さ
クランクベイトシャローのスペックは全長45ミリ、自重8g。
パッケージには約5.5cmとの表記がありますが、これはリップも含めた長さになってます。
潜行深度の表記はありませんが、感覚値では大体1m前後の潜行能力があるんじゃないかと(フロロ16lb使用時)
よってスペック的にクランクベイトとしてストレスを感じることはほぼありません。
キャストでは楽に20m飛ぶし、巻き心地も及第点。
同じく100均で売られている初心者用のコンボタックルでも十分投げられるスペックになってます。
特徴
このルアーの最大の特徴は、まんまジップベイツのBスイッチャーな見た目。
もう言い逃れ出来ないほどのBスイッチャー感ですw
まあ言い逃れするつもりもないでしょうけど。
当たり前ですがこのクランクベイトシャローにはマグドライブは搭載されていません。
その代わりに大きめのラトルを内蔵し、カラカラとカタカタの中間音で小気味良いサウンドを奏でます。
購入直後はラトルが固着する事象が散見されましたが、この記事を書くために小一時間投げていたらいつの間にかラトルがちゃんと動くようになってましたw
おそらく使ってるうちにラトルチャンバー内にあったバリが取れたんでしょうね。
このサイズのクランクにしては厚めで頑丈なリップを持っているのも特徴のひとつ。
のんだくれのようにロックエリアでガンガン当てて誘いたいアングラーにとっては嬉しい仕様。
そしてこのサイズのシャロークランクにしてはリップのリーチが長めなところも特徴。
リップのアングルとリーチの長さはBスイッチャーとは明らかに違う部分なのでこれはメリットとして活かしたいところです。
アクションは典型的なウォブリング
気になるアクションは典型的なウォブリング。
目の辺りを支点として小気味よくテールを振ります。
しかしアクション的には特に目立ったところはなく、キレがあるとは言い難いフツーの泳ぎ。
このサイズの他社クランクベイトはタイトでハイピッチな泳ぎの物が多いので、その動きを期待すると間違いなくズッコケます。
しかしキレがないから釣れないという事ではないので、ハイピッチクランクとローテーションで使うと面白いかも。
そしてシャロークランクならばもひとつ気になるのがカバー抜け能力ですが、やや大人し目の泳ぎもあってぶっちゃけカバー回避能力はあまり褒められたものではありません。
特に弱いのは倒木、ブラッシュなどのベジテーション系のソフト系障害物。
これらを越える時、結構な確率でスタックします。
おそらく柔らかい障害物に当たった時のヌルンと越える動きがよろしくないんでしょうね。
しかし反対に岩などの硬い障害物にはめっぽう強く、リップのリーチと当たった時のトリッキーなリアクションでスルスルと抜けてきてくれます。
対象物によってスタック率に違いが発生する理由について考えてみましたが、これはおそらく低重心構造ではないというマイナス要因がプラスに作用した結果じゃないかと。
つまり、通常のクランクならば当たって跳ねてもすぐに姿勢を戻して泳ぎ続けるのですが、このクランクベイトシャローは低重心ではないため、当たっても姿勢を戻さずにムーンサルトローラーコースターのようにクルンと一回転して回避することが多いのです。
一回転するから釣れるとかの話ではありませんが、100均ルアーをそこまで考えて作り込むとは思えないのでこれは明らかに偶然の産物。
ルアーにおいて、この手の偶然の産物はポジティブに楽しんだもん勝ちなのです😁
ちなみに箱出しの状態での泳ぎの精度はサイテーなのでアイチューンは必須。
でもラインアイのエイトリングが妙に伸びてるのでチューニングのしやすさはバッチリです。
ハッ!もしやアイチューンを見越して長いラインアイを装備してたのかっ😨
最低限の塗装工程で最大限の効果
カラーリングは100均のルアーとしてはかなりイイ感じ。
セリアのクランクベイトと比較するまでもなく、100均とは思えないクオリティに仕上がっています。
これは塗装技術もさることながら、最低限の工程で最大限の効果が得られるようなカラーリングを選んだ担当者の勝ちですね。
割とちゃんとした3Dドームアイを使っているところも効果アップに貢献しているかと。
ちなみにこのカラー以外に、クロームオイカワとキンクロという3色のカラーバリエーションで展開していますが、どの水質にも対応できるラインナップを見る限り、株式会社まるきの担当者は相当やり込んでるアングラーのにほひがします。
余談ですが、この手のカラーリングは工場が予め用意したサンプルの中から選んで微調整することがほとんど。
細かいカラーリング指定も可能ですが、コスト増になるので100均ルアーの場合はまずないと思われ。
逆に言えばここまで映えるカラーリングのサンプルが出せる工場は、メジャーなブランドからも受注しているような、ルアー生産ではかなり手慣れた工場ではないかと。
フックは#8サイズが標準だが…
フックは前後とも#8サイズのブランド不明ブラックニッケルを採用していますが、言うまでもなく交換は必須。
画像だと見づらいのですが、スプリットリングのワイヤーは極細だし、フックも箱出しの状態で画像のように曲がっている時点で察して知るべしですね。
この辺りのコンポーネントにどのサプライヤーの製品が使われるかは ”工場の責任者次第” なので、どこの製品のものが採用されているかはおそらくまるきの担当者でも分からないでしょう。
ちなみにフックは先出の水中画像のようにショートシャンクであれば#6サイズにアップしても問題ありません。
ただしスプリットリングも替えてフックもサイズアップすると重量増により先述のムーンサルトアクションはやや控えめになってしまいます。
このあたりのフックセッティングはまだまだ余地はありそうなので持ってる人はいろいろ試してみて。
フックついでの余談
ちなみに ”工場の責任者次第” で仕様が変わるというのは中国では割と普通のこと。
なぜならルアーに限らず全ての工業製品は、無数のサプライヤーから供給された製品によって構成されており、どのサプライヤーの製品を採用するかは工場責任者の一存で変わってしまうから。
そんな過当競争の中でサプライヤーが生き抜くとなると当然接待が絡んでくるわけですが、向こうの接待はサプライヤーにとってなかなか過酷です。
サプライヤーと工場責任者の会合に出席したことが何度かありますが、高級ホテルでのディナーから夜のお楽しみまで盛り沢山のフルコースとなっていて、一晩でものすごい額の金が動きます。
たまたま一緒になったフックサプライヤーの社長が英語が話せたので、色々と話を聞かせてもらいましたが(というか無理やり聞き出したw)それはそれはエグい世界で、のんだくれが立ち会った ”接待” なんてまだまだ可愛い方でした。
逆に言えば、納入の仕事さえ取ってしまえばしばらくは安泰という事なのですが、日本とは比べ物にならないくらいの接待を受ける工場責任者は、まさに王様なのです。
この話だけを聞くとサプライヤー側が資本主義社会の犠牲者に思えてしまうのですが、実はサプライヤーも地方からの出稼ぎ労働者を低賃金で使うなど一方では搾取する側だったりします。
つまりそれぞれが搾取のピラミッドを構成している一員というわけです。
一時期ユニクロで話題になった労働搾取の構造がルアー製造業界にも間違いなく存在しているのがこいうところからも見えますね。
ネームは”もちろん”ノーネーム
クランクベイトシャローにはネームが一切ありません。
なぜなら100均で売るためにはネームという個性が邪魔になるから。
一般の釣具店での販売ではないので、誰が見ても分かるシンプルなネーミングが必須条件なのです。
ゆえに ”クランクベイトシャロー” という直球ネーミングとなっているのです。
ネームを入れると一工程増えるのでコストがアップするし、ネームがなければパッケージを変えるだけで納入先を増やすことも可能だから。
逆にネーミングにこだわるような商品ならわざわざ100均で売ったりはしませんよねw
ネームが無い事で身元が分からず、キイロなどの中古屋で100均ルアーが300円で売られるという事故が多発していますが、それはそれで面白いのでオッケーでしょう😁
おわりに
この手の商品は常に厳しい目に晒されるのであまり好意的な評価はされないのが常ですが、個人的には ”フックとリングを変えてシビアなアイチューン” という条件付きであれば十分にアリ。
どんな商品でも厳しい目で見れば足りない部分が出てくるもの。
だったらポジティブに捉えて、100円のパフォーマンスを最大にするのがユーザーとしての楽しみじゃないかと思う訳ですよ。
例えば泳がない100均ルアーを徹底的に更生チューンしてイケてるヤツにするとか、100均縛りのH-1もアリだし、フックを曲げてアラバマのティーザーにしたってイイんですから。
つまり100円を100円以上の価値にするのはアングラーのスキルと創造力次第だということ。
100均ルアーは使い手次第でゴミにも最終兵器にもなるのです。