日本人はカテゴリー分けが大好きです。
なんでもきっちり仕分けして線引きしたがる性格は、島国ならではの国民性と言ってもいいでしょう。
その傾向はルアーの世界にもしっかり現れており、このルアーは何用でそれは何用と言った具合に、用途を限定したがる傾向があります。
しかーし!そんなカテゴリーに囚われてると大きな機会損失に泣く事になるよ、というのが今日のオハナシ。
ということで、今日のゲストはルーハージェンセンのホットショットでございます。
ホットショットとは
ホットショットという名前を聞いて、あーアレね!となるのは由緒正しきおっさんアングラーかトラウトアングラーのどちらかでしょう。
ホットショットは元々キャスティークレイクの近く、ヴァレンシアを拠点に活動していたエディポープ Eddie Pope社が1950年代に発売したトラウト向けルアーがオリジナル。
フラットフィッシュの大ヒットに触発されて登場した ”への字系ルアー” のワナビーズのひとつでした。
当時エディポープはカリフォルニアローカルではメジャーなブランドでしたが、その販売権利をルアー界のサルベージ船、ルーハージェンセンが買い取ったことで事態が大きく動き出します。
ルーハーといえばオレゴン州が誇る一大ルアー帝国。
そしてオレゴン州はモンスター級レインボー、ブラウン、レイクトラウトが潜む数多くのサンクチュアリを擁するトラウトカントリーとして名を知られていました。
その2つの要素が合わさった事でホットショットは爆発的とも言えるヒットを記録したのです。
その凄まじさは半端なく、ローカルガイドの間では ”ホットショッティング Hot Shotting” というワードが飛び交っていたというエピソードもあるほど。
そしてその声は70年代の日本にも届き、80年代の初めまで芦ノ湖や中禅寺湖のトラウトキラーとしても名を馳せていました。
ホットショットのサイズ・重さ
今回紹介するホットショットは、69ミリ、7.5gの、#35と呼ばれる中堅モデル。
ホットショットはサイズ、仕様により#10から#70まで豊富なバリエーションを抱えており、エディポープ時代のサイズ規格である#1〜#7や仕様違いなどを含めると、その種類たるやもはや常人では追っかけられないほどの膨大な量となります。
ゆえに米国ではヴィンテージホットショットだけを集める狂ったコレクターが多数存在しており、レアカラーともなると鼻血が吹き出しそうな金額で取引されています。
その状況はホットショットの名前をほとんど聞かなくなった日本ではちょっと異様な光景に映りますが、向こうにはカラー数がゆうに1,000を超えるヴィンテージのルースターテールをガチで集めるコレクターもいるぐらいですから、それに比べたら可愛いもんでしょうw
ホットショットの特徴
ホットショットの特徴はなんと言ってもこのヘッドレスのスラントノーズ。
先述の通り、フラットフィッシュ系への字ルアーの流れを組むボディシェイプが目印です。
見るアングルによってクワガタ虫に見えることから、コレクターの間ではバグの愛称で呼ばれるなどご長寿ルアーならではの愛され方も。
しかし愛嬌があるのは外見だけで、中身は正真正銘のフィッシュハンティングマシーン。
アップストリームはもちろん、複雑な水流変化により泳ぎが不安定になりがちなダウンクロスストリームでもしっかり泳ぎ切るスタビリティはさすがのひとこと。
地味ながらもしっかり仕事をこなす性能は、長年ガイドたちに愛されてきただけの事はありますね
特にこの#35は勢いのあるチャラ瀬でも強くアピールできるスクエア形状リップのラトリン仕様となっており、ジキジキカラカラと響くそのサウンドたるや、ヘタなリップレスクランクを蹴散らすほどのノイズメーカーに仕上がっています。
ホットショットのアクション
気になるアクションはほぼロールなしのウォブリング。
ラインアイとフックの中間点あたりを支点とした早いピッチの泳ぎで強く水を撹拌します。
特筆すべきはそのアクション特性。
ノンウェイト構造ボディの内部に大型ボールを放り込んだ遊動式ラトルなので、ウェイトの偏りからか、アクション中に時々イレギュラーな動きを織り込んでくるのです。
まっすぐリトリーブしていると、一瞬だけフッとリトリーブ軌道から逸れる挙動です。
いわゆる一般的な千鳥アクションとは明らかに違う、意図的には出せない動き。
もうお気づきだと思いますが、実はこれウィグルワート/ウィワートの泳ぎなんですよね。

ウィグルワートをスクエアビル&ワンフッカーにしたら、おそらくホットショット#35にかなり近いものが出来上がると思います。
そりゃホットショットがサーモンキラーって呼ばれるはずですよ。
しかしイマイチ理解できないのはこのテールエンドの尾ヒレのような処理。
元々ホットショットにはこの尾ヒレが突いているのですが、なぜか#35の尾ヒレは上だけがないのです。
さらにケツにヒートンをねじ込んだらピッタリ収まるような凹みがあるのですが、このボディには2フッカーモデルは存在しないのでこれもナゾ。
どなたかこのテールの形状の意味を知ってる方、いらっしゃいます?
ホットショットの使い方
そんな有能なホットショットをトラウトだけのルアーにしておくのは超もったいない!
だってバスにもめちゃくちゃ効くんですから!
使い方は超簡単。
投げて巻くだけ。
ファーストリトリーブ一択で、不規則な動きが出やすい速度をキープするだけ。
これだけで普通に釣れます。
実はこのルアーの破壊力については、随分前からいろんな人に案内していました。
仕事柄のんだくれの元には ” ウィグルワートみたいに暴れるクランクを探してるんだけど ” という質問が数多く寄せられます。
それらのほとんどは一般アングラーですが、時には新商品を探しているショップ関係者からも。
そんな人達にホットショットを案内しているのですが、その反応は総じて ”ふーん… ” なレベル。
泳ぎもラトルサウンドもピカイチだよと言っても、テンションは低いままw
おそらくワンフッカーの見た目に抵抗があるんでしょうね。
特にショップ関係者はその見た目だけで “不良在庫化” のワードが脳裏をよぎるのか、なかなかの拒否反応を示します。
こういう優秀なルアーをちゃんと案内してあげるのが本来のショップの役目なのにねw
カラー地獄のホットショット
そんな釣れ釣れホットショットはカラーも豊富です。
元々歴史がある上に、トラウトだけでなくバスやウォールアイを始めとした淡水プレデター一般に効くだけあってリージョナルカラーまで含めるとその数は天井知らず。
とはいえ、クローム系やフローセント(蛍光)系のカラーがそのほとんどを占めているのでパターン的にはそれほど多くはないかも。
中でも人気なのが、このシルバーブルーパイレートSilver/Blue Pirate。
トラウト/サーモン狙いでは超定番のクラシックカラーですが、これを見てピンと来た人も居ますよね。
実はこのカラーはウィグルワートにも初期の頃から採用されているんです。

画像出典:rapara.com
アクションやカラーリングの相似性から、のんだくれはウィグルワートの誕生には少なからずホットショットが影響しているんじゃないかと想像しています。
これと同じ考えを持っている米国のワートヘッズ(ウィグルワートに取り憑かれたアングラーの事をこう呼ぶ)もいることから、自分ではかなり核心を突いた推察じゃないかと思ってるんですがw
一方でウィグルワートの特許出願にはゼブコが深く関わっていたようなので、真相はまだまだ闇の中。
ちなみにこのシルバーブルーパイレートのカラーパターンはありとあらゆるブランドから出てるので気になった人は調べてみては?
各レギュレーションに対応するリギング
トラウト/サーモン系がメインなので、各河川のレギュレーションに対応できるように敢えてヒートン仕様、しかもややオーバースペック気味のものが採用されています。
これは河川のレギュレーションなどによりシングルフックに交換した場合に、フックアイの向きによって針先の方向を変えられるようになっているのと、ボールチェーンを介するリグも考えての堅牢仕様。
日本と違って向こうのレギュレーション違反は、パークレンジャーに逮捕&何千ドルもの罰金で終わらず、ローカル新聞などにマグショットが載るなど完全犯罪者の扱いwとなるので、ルアーもそれに合わせて対応できるようになっています。
それを思うと日本の規則はガバガバだなーw
ちなみに写真のフックはバス用に交換したもの。
デフォルトでは巨大なサーモンがきてもビクともしない防錆太軸フックが装備されています。
フックサイズによってもアクションの大小を変えられるので、いろいろトライしてみる価値はアリアリのアリ。
フックついでに言っておくと、過去には#25サイズという2フッカーモデルも発売されていましたが、アクション的にはこの#35よりもマイルドになるので、気になるけど暴れすぎるのはどうも… という方は#25を使ってみるのも手かと。
逆に言えば、#35モデルはワンフッカーだからこその暴れ馬とも言えるので、これを機にワンフッカー仕様のクランクベイトの威力をチェックしてみれば自分だけのシークレットが見つかるかも知れませんよ? 例えばウバンジとかwww
ネームは誇らしげなエンボスモールド
ネームは腹にしっかりエンボスモールドされた豪華?仕様。
モデルナンバーまでちゃんと入れてくれてるトコがシビれますね。
のんだくれはフレッドアーボガストのマドバグが大好物なのでこういうのはタマリマセンw

ちなみに日本では ”ルーハー” と表記/発音されていますが、ネイティブ発音だと ”ルーァ” に近いので、トラウトやサーモンのガイドを雇う予定がある人は覚えておくと、会話がスムースに進むかも。
というか、向こうのガイドのルーハージェンセンに対する信頼度はとてつもなく高く、”あぁ、ルーハーね” と失笑で終わってしまう日本市場の冷めっぷりとは雲泥の差なので、もしガイドを頼むならルーハーの予習をしておくだけで釣行の満足度は飛躍的に上がると思います。
あと全然関係有りませんが、むかーしよく通っていた夜のお店がホットショットって名前だったので、今もこのルアーを投げる時は嫌でも熱いショットを思い出しますw
ホットショットはどこで買える?
と、ここまで散々褒めちぎっておきながらアレですが、実はルアー、日本では気軽に入手出来るとは言えない第三種希少指定を受けています。
つまり輸入代理店もなければ、個人輸入しているショップもほとんどないのです。
よって頼みの綱は海外ネット通販となりますが、海外発送してくれるところを探さなければならない上にホットショットは種類が多いので違うモデルが届く可能性も無きにしもあらずと、入手はちょっとハードルお高め。
まあそこまでしてゲットして欲しいルアーかどうかは人それぞれだと思いますが、苦労して入手したルアーには愛着が湧くので、その過程も楽しみたい人は是非。
おわりに
メーカーのアナウンス通りに対象魚を分けて考えるのは合理的なのかもしれませんが、のんだくれが思うに、”ルアーフィッシングの意外性” をスポイルしてしまっているんですよね。
釣りをやってる以上、えー!こんなルアーでも釣れちゃうんだ!という驚きはやっぱり捨ててほしくないなと。
だって中にはその垣根を取り払ったことでこんな美味しい思いをしているアングラーだって沢山いるんですよ?
マザーリバー最上川の必殺ルアーにデッドスロー巻き等で使用しております。
1日でラージ・スモール・雷魚・ナマズ・ニゴイ・ウケクチの6目達成してくれた可愛く奴です!!
恥ずかしい話ですがコイツでシーバスは、釣った事ありませんwww#ボロボロルアー pic.twitter.com/7lgizzrkF0— 最上ネ申 (@mogamigami1) May 21, 2022
もしかしたらカテゴリーや先入観に縛られ過ぎないってのは、楽しい思いをするための第一歩なのかもしれませんね。