誰しも食わず嫌いってありますよね。
そしてルアーフィッシングをやってたら食わず嫌いで後悔した事は一度はあるはず。
今日紹介するチマチマディープリスクはそんな思い込みで悔しい思いをしたルアーのひとつです。
チマチマディープリスクとは
チマチマディープリスクは、ズイールチマチマシリーズのダイビングバージョンとして1980年代中頃に登場しました。
チマチマとは文字通り小さなプラグの事で、ウルトラライトタックルとチビプラグの組み合わせによって、チビバスも楽しんじゃおー!というコンセプト。
その後、チマシリーズはベイトキャスティングでも使えるB-チマなど大きく拡充し、チマプラグ用のロッドなどもリリースするほどの大ヒットとなりました。
しかしこのチマチマディープリスクに関しては、トップウォーターのイメージが強いズイールが出したダイビング系、しかも名前に【ディープ】と付くだけあって、敬遠する層も少なからずありました。
かくいうのんだくれもそのひとり。
当時はズイール=トップのイメージにガチガチに縛られていたこともあり、半ば蔑んだ目で見ていたのです。
チマチマディープリスクのサイズ・重さ
チマチマディープリスクのサイズは42ミリ、1/4oz “Class”。
”クラス” となっているのは、ズイールの重量表記はあくまでも目安でしかないから。
実際このルアーも実重は4.7gだったりと、超テキトーですw
実はのんだくれがこのルアーを敬遠していたのはこの軽さが原因でもありました。
今でこそ高性能ベイトリールのおかげで5g以下のルアーも問題なく投げられますが、当時のリールでこれを使うのはちょっとストレスフルだったのです。
チマチマディープリスクの特徴
このルアーの特徴は、テラー譲りのスピンドル形状ボディと大きなダイビングリップです。
変にクランクベイトシェイプにしなかったところがズイールらしいですね。
旋盤加工でクランクのシェイプを削り出すのは歩留まりも上がらなかったでしょうし、塗装やリグの組み付けの手間を考えると、消極的な理由によりこうなったと見た方が近いかもしれません。
しかし細部をよく見ていくと、実はめちゃくちゃ手間が掛かったルアーであることが分かります。
その最たるものがリップとラインタイのリギング処理でしょう。
ボディから伸びた真鍮ワイヤーをリップの裏から通すという、それまでのズイールルアーでは無かった制作手順は、制作現場を相当な混乱に陥れたであろうことが容易に想像できます。
よーく見ると、リップの接着剤が溢れてもっこりしてますが、現場の苦労を思うと、まあこれはこれで仕方ないよねと思わせるだけの説得力がなきにしもあらずw
しかしリップは特注品だけあって、エッジがちゃんと斜めに処理されてるなど、こだわっているのが分かります。
アクションはタイトなウォブリング
気になるアクションはタイトなウォブリング。
ピリピリとした緊張感のある泳ぎで、アングラーの手元に小気味いい鼓動を伝えてくれます。
自然素材のウッドゆえ厳しい目で見ればアクションの個体差もありそうですが、そんな細かいことは気にしないのがズイールルアーの使用上の心得その2。
そしてこのピリピリアクションがスゴいのです。
サイズは全く選べませんが、バスの反応がめちゃくちゃイイのです。
恥ずかしながらのんだくれがその威力を知ったのはかなり経ってから。
たまたまボックスに入ってたチマチマディープリスクを遊びで投げたら連発が始まったのです。
何を投げても無反応だったのに!
もうその瞬間から神様!仏様!チマディープリスク様!の扱いですw
そしてそれは使わず嫌いで長い間スルーしていたことを後悔した瞬間でもありました。
と同時に、のんだくれの頭の中に一つのルアーが浮かびました💡
これってディープタイニーNのウッド版じゃん!と

ノーマンルアーズのディープタイニーN(下)
ご存知ディープタイニーNは、チビプラグでありながらモンスタークラスも釣れてくるその威力から、ノーマンの最終兵器とも言われている傑作クランク。
このチマチマディープリスクはDTNの特性に非常に似ているのです。
両者の泳ぎを比較するとチマチマディープリスクの方がアクションにキレがあり、DTNはちょっとヌメヌメとした泳ぎ。
浮力自体は両者ともほぼ同じですが、チマチマディープリスクがDTNよりもプラス30cm潜ってるイメージです。
ズイールは潜行深度を公表していませんが、1.2mぐらいは潜ってるのではないかと。
つまりチマチマディープリスクは、DTNよりも深く潜ってキビキビと泳ぐウッドクランクと解釈することが出来るのです。
この事実に気づいた瞬間、長年スルーしていた反動からか、スイッチが入ってポチりまくったのは言うまでもありませんw
お約束の割れる塗装も
しかしDTNのウッド版だー!なとど諸手を挙げて喜んでもいられません。
なぜならズイールルアーの宿命でもある塗膜の剥がれもセットだから。
のんだくれは今でこそ塗膜の剥がれは気になりませんが、昔はヒビが入ったらその都度細かく補修して使っていました。
補修して使うこと自体は問題ありませんが、このルアーは意外と泳ぎがデリケートなので、その都度アイチューンの必要が出てきます。
しかも補修しても必ずひび割れは発生するので、このルアーと付き合っていく以上、ずっと補修し続けなければならないのです。
つまりズイールプラグの扱いに慣れていないクランカーがこの現状を受け入れられるかどうかは、それらのケアが出来るかどうかにかかっているのです。
フックはイーグルクローの#10
フックは前後ともイーグルクローの#10サイズを採用。
このシャンクの長さはおそらく#L375Gで間違いないでしょう。
ズイールといえばダブルフックのイメージですがやはりクランクベイトではトレブルに分があるでしょうね。
大きめのヒートンをウェイト代わりにすることでボディにはウェイトを仕込まないチマチマプラグの手法がここでも生きています。
ズイールでは貴重なダブルネーム
ネームは従来のステンシルに加え、リップにはエンボースモールドも付加した超豪華?仕様w
通常ネームはボディに入っているだけのズイールルアーでは非常に貴重な存在です。
しかしコレが発売されてもう20年も経つんですね。
この後ズイールに悲劇が訪れるなど、この時は誰も予想していませんでした。
個人的には2002年当時はまだ会社勤めをしていて、日々クソ役員とバトルを繰り返すなどジンセイで一番タフな時期でした。
まあ彼が居たからこそ今の自分があるので今となっては良かったと思えますが、当時は釣りで日々のバトルの憂さ晴らしをするしか無かったのでズイールやメガバスのように年号が入ってるルアーを見ると色々フラッシュバックします。
誰しもルアーの年号には色んな思いが重なりますよねw
どこで入手できる?
そんなチマチマディープリスクですが、入手はやはり中古市場に頼ることになるでしょう。
というのも、このモデルはのんだくれの知る限り2002年以降レギュラーではリリースされていないのです。(ショップの限定モデルはあったようですが)
おそらく制作に手間が掛かり過ぎるので採算が取れないんでしょうね。
なのでクランカーならば見つけたら即買い!であることはマチガイナシ。
先述の通り、塗膜が剥がれる先天的疾患があることを考えたら、できれば複数確保しておきたいところです。
おわりに
食わず嫌いの成分はほとんどの場合、その人の先入観。
なんとなく好きになれないという程度の、ふわっとした感覚だけのオハナシなのです。
釣りに限らず、趣味はそういう心理が働くからこそ面白いのですが、ことルアーに関してはその主観によって大きな機会損失となることも多いので、アングラーである以上は主観に左右されないフラットな視点を持っていたいもんです(自戒)