毎週のように新製品が登場しては消えてをくり返すルアーインダストリー。
そのサイクルのあまりの速さに、実力がありながらも消費の波間に消えてしまったルアーも少なくありません。
今日紹介するフラットマックスはそんな ”離岸流” に消されてしまったうちのひとつです。
フラットマックスとは
フラットマックスは、バンディットルアーズがプラドコに買収される前の2012年にリリースしたフラットサイドクランクです。
それまでのバンディットにはフラットサイド系がラインナップしていなかったので、その穴を埋めべく、シャローモデルとディープモデルの二本立てで登場。
日本では話題にもならなかったルアーでしたが、デザイナーにスピッティンイメージやエクスキャリバーフックを開発した巨匠ジェームズゴーウィング James Gowingを迎えたことが話題になるなど、本国アメリカでは華々しいデビューを果たしました。

フラットマックスのサイズ・重さ
フラットマックスは全長68ミリ、自重1/2oz(実測13g)の標準サイズを持ったクランクベイトです。
画像のシャローモデルは3〜6フィートをカバーし、ディープモデルは8〜12フィートをカバーするとなっていますが、この時期のバンディットの潜行深度はパッケージとカタログとでは表記がまちまちなので全くアテになりませんw
のんだくれの感覚では16lbナイロン使用でぎりぎり5フィートに到達するかどうかといったところ。
そもそもアメリカンルアーの潜行深度表記なんて誰も気にしてないのでモウマンタイなんですけどね。
フラットマックスの特徴
フラットではないフラットサイド
フラットマックスの特徴はなんといってもこのシンボディThin-Body。
当時のセールスキットには、ファーストリトリーブでの安定性を高めた云々のストーリーが綴られていましたが、その言葉に偽りはなく、早巻きでの安定性はかなりのもの。
おそらくボディ側面を完全なフラットではなくラウンド形状にすることで水流の乱れを極力排除する狙いがあったんでしょう。
キレキレの泳ぎを生み出すコフィンリップ
リップは典型的なコフィン形状を採用しています。
クランクベイトではもはや必須となった、リップ両サイドのエッジを落として薄くするなどの処理は全くされていませんがアクションはキレキレです。
バンディットに限らずアメリカのクランクベイトはリップラップなどでラフに当てて使うことも想定しているので、リップの耐久性(デュラビリティ)は必須項目。
障害物に当てたらリップが欠けちゃった😥 ではオハナシにならんのです。
安定性重視の固定ウェイト
それらボディとリップの効果をさらに引き立てているのが固定重心ウェイトです。
飛距離重視の重心移動ウェイトではなく大きなラトルボールによる固定重心とすることでファーストリトリーブでの高い安定性を実現するとともに、フラットサイドクランクらしからぬノイズを発生させます。
ラトル音はカタカタとジキジキの二重奏。
ボディの共鳴トーンがどことなくスピッティンイメージに似ているように聞こえるのはあながち気のせいでもなさそうです😁
フラットマックスのアクション
アクションは典型的なピリピリ系のタイトウォブリング。
往年のスピードシャッドを彷彿とさせる緊張感のある泳ぎです。

しかしスピードシャッドとの違いはリトリーブスピードが増すにつれて軌道が左右に振れる、いわゆる千鳥テイストが顔を出すところ。
しかしそれはラパラのスキャッターラップのような大きく振れる千鳥アクションではなく、進行方向をわずかに変える程度の微細なもの。
なーんだその程度かと思うかもしれませんが、早巻きの状況下ではそれが妙に生っぽかったりします。
この辺のセッティングは鬼才ジェームズの本領発揮といったところでしょうか。
もちろんその生千鳥アクションを引き出すにはシビアなトゥルーチューンが必須項目となりますが、その手間さえ惜しまなければ極上のエスケープアクションを楽しむことができます。
フラットマックスの使い方
そんなフラットマックスの性能を効果的に引き出す使い方はやはり早巻きでしょう。
ウィードのエッジラインに沿ってガン巻きするのもよし、ウィードトップをバーニングするもよし、フラットマックスの持ち味である緊張感のあるピリピリアクションをどう使うかで勝負は決まります。
高速でガーッと巻いて一瞬キルを入れるようなイレギュラーな動きを入れれば尚よろし。
ウィードトップに引っ掛けて外すハングオフメソッドもイケますね。
ここまで読めば勘のいいアングラーなら気付いていると思いますが、実はこのフラットマックスは早巻きの安定性やラトルサウンド、急制動など、いろんな面でスピードトラップの特性と被っています。
いや、むしろ打倒スピードトラップ!を開発理念に掲げて設計されたんじゃないかと思うぐらいのスパークっぷり。

それは両者を巻き比べてみるとよく分かります。
先述の千鳥アクションや高速安定性は言うに及ばず、扁平ボディ&固定重心なのに安定した飛行姿勢や、トゥイッチしてもエビになりにくいフックセッティングなど、要所要所にスピードトラップを彷彿とさせ、そして唸らせるネタが散りばめられているのです。
極め付けはリトリーブ抵抗の軽さ。
実はこのフラットマックス、巻き抵抗がびっくりするぐらい軽いのです。
ボディサイズはほぼ同じにも関わらず、リップの大きさなどもあって、フラットマックスの巻き抵抗はスピードトラップの2/3ぐらいに抑えられています。
元々スピードトラップの巻き抵抗も軽い方ですが、それを上回る軽快さなので長時間に及ぶバーニングでも全くの疲れ知らず。
そんな軽快な巻き心地なのにも関わらずアクションはキレキレで、手元にもしっかり振動を伝えてくれるのです。
フラットマックスがデビューした当時、米国サイトのレビューで ”スキニーウォーター(痩せた水、つまり魚影が薄い水域)でバスを見つけることが出来るルアー” と書かれているのを読んだことがありますが、それは強い波動だが巻き抵抗は軽く、長時間投げ続けられるということを言いたかったのかもしれません。
フラットマックスのカラー
バンディットは玄人御用達のブランドゆえカラーも豊富です。
プラドコ傘下になってからカラー数は減ってしまいましたが、買収される直前はご当地カラーであるリージョナルカラー、ディックスなどのスポーツグッズ量販店がオーダーしたカスタムカラーなどなど、カタログに掲載されていない色がテンコ盛りでした。
そしてガチクランカーの大好物、スプラッターカラーも複数ラインナップ。
その中でも画像のD39アラバマクローは特に人気がありました。
フラットマックスのフック
フラットマックスには前後ともブラックニッケルの#4サイズが標準装備となっています。
基本的にカバークランクではないので障害物回避能力は期待しないほうがいいと思いますが、ライトカバーぐらいであれば割とスムースに抜けてくれるので、それ用にフックセッティングを試してみる余地はあるのではないかと。
フラットマックスを入手するには
フラットマックスはプラドコによる買収のタイミングで生産が終わってしまったので、入手するには中古市場で探すしかありません。
しかし生産された期間が3年弱と短く、冒頭で述べた通り消費サイクルの波に飲み込まれて出回ったタマ数も多くはなく、さらにその実力を知るアングラーが血眼になって探していることもあって、あまり中古屋で出会うことがないというのが現状です。
その反面、ボディにネームがないのでメーカー不明クランクとして捨て値がついていることもあるなど、エグリ魂が掻き立てられるルアーだったりもします。
ぶっちゃけ早巻きをしないアングラーのハートには刺さらないと思いますが、リップレスクランクの早巻きを多用するアングラーならばどストライクだと思うので地道に探す価値はアリかと。
おわりに
おそらく今回の記事で初めてフラットマックスの存在を知ったというアングラーも多いことでしょう。
しかし実力がありながらも消えていった不遇のルアーは他にも多数存在しています。
いや、むしろ不遇のルアーの方が圧倒的に多いのでは?
最新の釣れ釣れルアーを追っかけるのもルアーフィッシングの楽しみですが、名声に恵まれなかった実力者を発掘して人知れずニヤニヤするのも釣りの楽しみを広げる方法のひとつであることをお忘れなく。