ザリガニだと思ったら負け!固定観念を捨てれば頼もしい相棒に ディープウィクローフィッシュ Deep Wee Crawfish D76 / レーベル Rebel

クランクベイトミディアム・ディープダイバーレーベル ルアーズ Rebel Lures

我々アングラーはルアーの外見イメージに沿ってルアーを使います。

サカナの形のルアーはサカナが泳いでいるように使うし、カエルならばカエルっぽく、ミミズならばミミズっぽく。

実際メーカーもそういったイメージ通りに使われるように作っているので、それ自体は間違っていませんが、あまり外見イメージに縛られ過ぎるとルアーの可能性を殺ぐことにもなりかねません。

今日紹介するディープウィクローフィッシュはまさにそんな諸刃の剣なルアーです。

ディープウィクローフィッシュとは

ディープウィクローフィッシュはアメリカンルアーの御大レーベルが1977年にリリースしたザリガニ型クランクベイト。

緻密な樹脂成形技術とナチュラルプリント技術を駆使した当時最先端をいくフラッグシップ商品でした。

アメリカでは発表と同時に大ヒットとなり、発売から45年経った今でもレーベルクリーチャーズ/クリッターズ Rebel Creatures/Critters(水棲小動物や昆虫をリアルに模したシリーズの総称)の大親分として君臨し、今でもウォルマートなどの量販店には必ず置いてある超ド定番なルアーです。

豊富なバリエーション

上からビッグクロー、ウィクローフィッシュ、ミドルウィクローフィッシュ、ティーニークローフィッシュ。

ヒット商品ゆえ、バリエーションが豊富なのもクローフィッシュの特徴。

上記4種類のボディサイズを軸に、シンキング/シンキングウィードレス/ダブルディープ/ファストラック/スクエアビルなど多数のモデルがリリースされました。(シンキングモデル、ファストラック、スクエアビルは既に生産終了)

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今日はその中から一番汎用性が高いディープウィクローフィッシュについて掘り下げてみようと思います。

ディープウィクローフィッシュのサイズ・重さ

ディープウィクローフィッシュ(以下、DWC)のサイズは60ミリ、3/8oz(実測9.5g)。

ショートリップのシャローモデルと同時リリースされたフローティングダイバーです。

しかしアメリカンルアーにありがちな製造時期の違いによるバラツキで、フローティングを謳いながらも沈んだりサスペンドしたりとなかなか楽しい仕様になっています。

プラドコになってからはそんなお楽しみはなくなってしまいましたが、かつてはザリガニちっくに使うため ”沈むフローティングモデル” が当たりとされていた時期もありましたw

特徴

アングラーのイメージ通りのザリガニ造形

このルアーの最大の特徴はなんと言ってもこのリアルなザリガニ造形でしょう。

当時日本では【本物のザリガニから型取りした】として紹介されており、その殺し文句にチンコを固くしていたかつてのバス少年は少なくないはず。

実際のところ、本当にザリガニから型取りしたのかどうかは微妙ですが(その事が書かれた本国カタログや文献を未だ一度も見たことがない)、ピンチ(ハサミ)の間のブランキング処理やナウシカの王蟲っぽい甲殻の造形を見ると、アングラーが抱くザリガニのイメージと寸分違わないデフォルメ感を実現したレーベルは無敵だなと。

これこそナチュラルプリント技術とナチュラル造形技術のコンボ技が炸裂した傑作と言っても過言ではないでしょう。

ボトムを”掘る”ためのリップ

DWCはボディ形状にばかり目が行きがちですが、リップもザリガニ形状に合わせて”最適化”されています。

リップはボトムに当たっても大きく跳ねることなく、底にへばりつくように砂煙を巻き上げ続けられるラウンド形状を採用。

当時のカタログに ”Digs the bottom at 8 and 1/2 feet”(8.5ftのボトムを”掘る”ことが出来る)と明記されている通り、ボトムに当てることを前提とした設計になっていることが分かります。

リップはシンキングと共用だった

ちなみにリップ先端に設置されているカップはウェイトボールをはめ込んでシンキングにするためのもの。

デビューした当時のリップは単に穴が開いているだけのシンプルなもので、シンキングモデルは穴に鉛の板をはめ込む手法を採用していましたが、発がん性物質を規制するカリフォルニア州の条例Prop65への対応でスチールボールへと変更され、さらに生産効率アップとボールが抜け落ちない様にはめ込み式に変更されました。

右が初期リップ

実はリップは上記以外にもいくつかの違ったリップが存在しておりますが、そこに触れるとエンドレスになるので今回は割愛。

しかしこれらのリップの変遷から、レーベルが好調なセールスにあぐらをかくことなく地味な改良を続けていたことが伺えます。

アクションは大きめのウォブリング

DWCのスイミングアクションは典型的なアメリカンクランクのそれ。

大きなウォブリングで派手に水を撹拌します。

ぶっちゃけこんな派手な泳ぎ方をするザリガニなんて世界中探しても何処にもいませんが、南部水系に多いマディウォーターでもしっかりとサカナにアピールするには、この大きなアクションが必須なのです。

その泳ぎを他のルアーに例えるなら、ヘドンのタドポリーってトコでしょうか。

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もうお気づきだと思いますが、DWCは見た目こそザリガニですが、形状的にはフラットフィッシュなどに代表される「への字型ルアー」なのです。

その派手なアクションは、DWCを使うアングラーはビギナーが多いことも関係していると思われます。

何故ならこのルアーは先述の通りどこでも簡単に買えるため、エントリー層がメインのルアーであるという事と、初期リップから現行モデルになるにつれアクションのブルブルが強くなっているから。

つまり大きなアクションによって視覚的にも泳いでいることが確認できるだけでなく、ロッドに伝わってくる振動という体感的にも初心者を飽きさせないように改良されてきたんじゃないかとのんだくれは考えてるワケです。

ま、いつものヲタ妄想による仮定話なので7割引ぐらいで聞いといて頂けるとありがたいんですがw

ザリガニであることを忘れろ

さてさて肝心の使い方ですが、基本的にはザリガニルアーのイメージ通りで全く問題ありません。

ボトムを這わせるのもよし、ウィードトップに絡めつつスローに巻くのもよし、それだけで十分釣れちゃいます。

しかしここでよーく考えて下さい。

皆さん自身も含めて、まわりにこのルアーをバスフィッシングでガチ使いしてる人います?

管釣りトラウトやメバルやハゼ狙いならそこそこいると思いますが、バスフィッシングとなると途端に実戦投入率が下がっちゃうんですよねコレ。

外見がオモチャっぽいのでビギナー用に思われてるという部分を差し引いても、一軍ボックス指定席をキープし続けてるというアングラーはほとんどいません。

実はこれが冒頭で述べた ”イメージに縛られてる” というやつなんです。

つまりほとんどの人がザリガニのイメージ通りに使うので、ザリガニがイメージできない、もしくは居なさそうなフィールドではなかなか投入されないのです。

よってその解決策は超簡単。

ザリガニのルアーだと思わなければ良いのです。

そもそもバスがDWCをザリガニだと認識してるかどうかも分からないのに、人間側が勝手な思い込みでザリとして使ってるケースがほとんどなので、その思い込みを捨てて普通のクランクベイトとして使えばいいのです。

そうなると一気に使い所が広がります。

今まではボトムコンタクトや障害物周辺での使用がメインだったのに、巻き倒し用のルアーとして登録することも出来ます。

しかもアクションが大きく水を撹拌するアピール系なので、ピリピリ系タイトアクションのシャッドとローテーションしても使えます。

事実アメリカでDWCはスモールマウスに効くルアーとして定評があり、のんだくれ自身も中層を泳ぐDWCめがけてボトムから一気にスモールが浮上してくるというケースにも遭遇しています。

釣りが上手い人は想像力と創造力が豊かだと言われていますが、その前提として先入観や既成概念に囚われない柔軟さもあるのです。

他にも、のんだくれの知人はDWCのダウンストリーム使いで川バスをめっちゃ釣ってます。

その彼曰く、DWCはカジカ系の底棲魚を見事に再現しており、強い縄張り意識を持っているせいか、時にはカジカ自体が釣れちゃうとのこと。

それが何を意味しているのかはもう言わなくても分かりますよね😁

膨大なカラーバリエーション

そんな釣れ釣れのルアーでロングセラーとなれば、当然カラー数も膨大になります。

定番のザリカラーに始まり、トランスパレント系、ファイヤーテール系、クローム系にはじまり、レーベルお得意のリージョナルカラー(日本で言うところのご当地カラー)までありとあらゆるカラーが出ています。

そういえば近年、ジュンバグ系のシリーズも追加されました。

のんだくれも一時期追っかけてましたが、ただでさえカラー数が多い上にレーベルお約束のイレギュラーが多すぎて、釣った事があるモノだけを残して早々に退却しましたw

米国には日本では想像出来ない種類のザリガニが棲息していて、それぞれ色や特徴が違うのでDWCにオリジナルのペイントを施すアングラーも。

使えばちゃんと釣れるし、コレクション沼の要素もテンコ盛りなので、そういう意味では完璧なルアーと言えるかもしれませんw

かつてメガバスがリリースしたカスタムペイントモデルは近年人気なので、コレクション目的の場合はちょっと覚悟が必要ですが。

フックは#6サイズが標準

フックは前後とも#6サイズが標準となっています。

レーベルのクローフィッシュシリーズは一貫してブロンズフックが採用されているので、見た目のナチュラルさを意識しているのかも。

かつてはクローポイントフックを採用していた時期もありました。

ただ、障害物周辺での使用がメインなら、フックはショートシャンクにしておくことをおすすめします。

そういえばフロントフックを#4にして、リアフックを取った痕に2本の長めのラウンドラバーを結ぶヒゲチューンなんてのもありましたね。

ネームはリップ刻印のみ

ネームはリップの刻印のみ。

ナチュラルプリントなのでボディに入れにくいのは分かりますが、ボディ側に何もネームがないのはちょっとさみしいですね。

でもこれでもマシになった方なんですよ。

デビュー当時はこのリップ刻印すらもありませんでした(先出の旧リップ比較画像参照)

刻印を入れたのは、プロデューサーズなどのパチモンが登場してきたことで、オリジナルである事をアピールする必要があったと思われ。

それを裏付けるかように、80年代中頃からカタログでも “The Original Crawfish” というコピーが添えられるように。

俺たちがオリジナルなんだからオメーらパクってんじゃねーぞ!という牽制ですねw

パイオニアにはパイオニアなりの苦悩があるのです。

クローフィッシュ?クレイフィッシュ?クローダッド?

ネームついでにザリガニの呼び方について、ちょっとだけ寄り道してみましょう。

皆さん御存知の通り、米国にはクローフィッシュ、クレイフィッシュ、クローダッド、マドバグなど、”ザリガニ” の呼称が複数存在します。

一体どれが正しいんだ?となってしまいますが、これは地域によって呼び名が変わるだけなのでどれも正解。

日本でもオイカワの呼び名がハエ、ヤマベなど地方によって変わるのと全く同じです。

出典:revolutionanalytics.com

大まかに言うと、クローフィッシュと呼ぶのはルイジアナ州から東海岸にかけて。

ルイジアナの北、アーカンソー、ミズーリ、カンサス、オクラホマと太平洋岸北西地区はクローダッド、五大湖周辺のアッパーエリアはクレイフィッシュと呼んでいます。

そして当然のことながらザリガニルアーの名称は、そのメーカーの拠点が何処にあるのかで変わってきます。

ちなみにDWCの生みの親であるレーベルはルイジアナ寄りのアーカンソーなので、クローフィッシュですし、西海岸オレゴン州に拠点を置くルーハージェンセンが出すザリガニルアーの名前は、この分布の通りクローダッドとなっています。

ルーハージェンセンのクローダッド

ちなみにルイジアナ州の名物料理として有名なザリガニ料理、クローフィッシュボイルは全米どこへ言ってもクローフィッシュボイルであり、”クローダッドボイル” などにはなりませんw

余談ですが、ザリガニはオーストラリアではヤビーYabbie、もしくはクーラKouraと呼ばれています。

かつてリバー2シーがスタンディンヤビーStanding Yabbie という名前のソフトジグを販売していましたが、これはR2Sが元々オーストラリアの華僑によって興された会社だったのでローカルの呼び名であるヤビーを採用したため。

もしこのルアーのデビューが北米エリアだったら、スタンディンクローフィッシュという名前になってたかもしれないと思うと、商品名とはいえ深いなぁとw

リバー2シーのスタンディンヤビー。ボトムにストンと落とすだけで良く釣れたルアーだが、今思うと完全にネドリグですねコレw

DWCはどこで入手できる?

DWCの入手は超簡単。

中古市場でウジャウジャ湧いていますw

極小サイズのティーニーモデルは管釣りトラウトアングラーに人気があるので見つけにくいかもしれませんがウィサイズは難なく見つけられるでしょう。

しかしこのルアーの中古はコンディションが悪いものが多く、さらにリップを削るなどモディファイの痕が見られるタマが多いのでレジへエスコートする前に綿密に身体検査することをお忘れなく。

おわりに

このDWCに限らず、見た目のイメージに引っ張られるルアーは沢山あります。

しかし先に書いた通り、そのイメージ通りで使ってばかりいるのは超もったいないオハナシ。

かつてスイミングワームが紹介された時、誰もが ”まっすぐ泳ぐミミズなんて居ねぇし!” と思うも小魚のイミテーションだと理解したことで結果を出すことが出来たように、今市場に出回っているルアーの中にも視点を変えたら大化けするルアーがまだまだ沢山あると思います。

そんな誰も使っていないルアーの埋もれた可能性を見つけていくのも楽しい作業ですぞ😁

 

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