日本のルアーメーカーではほとんど見られませんが、会社のM&Aが珍しくない米国では組織改変による製品やサービスの見直しは日常的に起こっています。
新オーナーによる合理化ってやつですね。
それに伴い生産終了に追いやられるルアーも数知れず。
会社やブランドが消滅してしまうよりはマシなのですが、それでもオキニのルアーが廃番になったりすると泣けてきますよね😭
今日紹介するレッジ250はそんな ”大人の事情” によって消えてしまった不遇のルアーの一つです。
レッジ250とは
レッジ250はバンディットがプラドコに買収される前の2012年にリリースされたクランクベイトです。
旧バンディットの中では最深ダイバーであるシリーズ700の後に発表され、オリジナルバンディット最後期のひとつとして知られています。
この時期のバンディットはブラックスターやスピッティンイメージで名を上げたジェームズ・ゴーウィング James Gowing をデザイナーに迎えるなど、いろいろな変革に挑戦していました。
そんな中で100や200といったオリジナルシリーズとは明らかに違うレッジ250を出してきたのは、そういった背景があったんだろうなと想像できますね。

しかし先述の通り、バンディットのプラドコ参加により生産終了に。
個人的にかなりのオキニだったので、生産中止のニュースを聞くと同時に確保に奔走しました。
レッジ250のサイズ・重さ
レッジ250のサイズは68ミリ、25g。
潜行深度はカタログ値で12〜14フィートのミディアムダイバーです。
250という番手からシリーズ200と300の間を埋めるモデルなのかと思いきや、予想に反して300よりもデカい体躯だったりします。

シリーズ300とレッジ250
サイズ・形状共にストライクキングのプロモデルクランクシリーズ5に非常に近いので、既存シリーズのサイズ展開というよりは、ストライクキングの勢力拡大を抑える対空ミサイル的な位置付けと理解すべきでしょうね。
この時期ストライクキングの成長ぶりはKVD効果もあって凄かったですから。

プロクランクベイトシリーズ5との比較
そもそもレッジって何?
さてさて。
ルアーの説明に入る前に ”レッジとは何ぞや” について少し触れておきたいと思います。
レッジを理解していないと、このルアーのコンセプトも見えて来ませんからね。
レッジ Ledge をひと言でいうと、”短い距離で大きく水深が変わるスポット” のこと。
日本語で言うところの「かけ上がり」や「ドロップオフ」に相当しますが、バスフィッシング上の定義ではメインリバーチャネル、もしくはクリークチャネルに面したスロープや壁を指し、反対側に同様の地形が存在する事がかけあがりとの明確な違い。
レッジは急な落ち込みであることが多いため、常に快適水温のレンジを求めているバスにとっては絶好のサスペンドスポット。
水通しが良い上にシャッドなどのベイトフィッシュも付きやすいので、真夏のビッグレイク攻略では外せないスポットとされています。

レッジの一例 画像出典:texasfishingforum.com
そんなレッジを攻略するための定番ルアーとされているのが、ベイトフィッシュを強く意識させるフラッタースプーンやヘアージグです。
これらのルアーはリフト&フォールによる上下の緩急アクションが得意なのでレッジを攻めやすい上、ベイトフィッシュの急なパニックアクションを模しており、バスの反射行動を誘発しやすいルアーとされています。
…… というところまでは理解できました?😁
レッジ250の特徴
急潜行が得意なダイビングリップ
レッジ250の特徴はやはり大きなリップです。
どこにでもある何の変哲もないリップですが、このルアーのコンセプトを実現するための重要なカギを握っています。
そのカギとは、急角度でダイブする能力。
ダイビングリップなんだからそんなの当たり前でしょ!と言われそうですが、このルアーは同サイズのクランクベイトと比べると明らかに急角度で潜るのです。
そのダイブ性能は、”潜っていく” のではなくまるで ”スライドフォールしている” かのよう。
最大潜行深度が14フィートなので、いわゆるディープダイバーではありませんが、この能力は取水塔などの縦ストラクチャーを攻める時にも役に立ちますね。
超ラウドサウンドを発するマルチラトル
そんなダイバーであるレッジ250の内部には大量のラトルが封入されています。
内部が確認できるカラーを持っていないのであくまでも想像ですが、大小各一個のラトルチャンバーと内部を激しく跳ね回る複数の遊動ラトルによるマルチサウンド構成になっています。
そのラトルサウンドはまさにザ・ノイズメーカー。
よく響くプラ素材との相性はバッチリで、強烈なジャラジャラ/ジキジキサウンドを発します。
のんだくれはラトルのうるさいクランクが大好物なのでノイズメーカーと呼ばれるあらゆるクランクを試していますが、その中でもこのレッジ250は間違いなくトップ5には入るであろう騒々しさ。
大量のラトル封入によって重量が増えるため、浮力は弱めでいわゆるスローフローティングになりますがこの弱い浮力が急潜行との組み合わせで良い仕事をしてくれます。
つまり派手なラトルサウンドを鳴らしながら急角度でダイブし、リトリーブを止めるとゆっくりと浮上するレッジ250のアクションは、フラッタースプーンなどと同じ様に緩急のある ”上下運動” としてレッジを攻めるのにピッタリなのです。
レッジ250のスイミングアクション
しかしレッジ250は単に急角度で潜るだけではありません。
ベイトフィッシュのパニックアクションを模した、タイトでありながらも強いローリングアクションによってアングラーに小気味良い鼓動を伝えてくれます。
これはおそらくラトルを効果的に鳴らすためのセッティングだと思われますが、浮力とウォブリングが強めだがラトル音は控えめなプロクランクシリーズ5とは真逆の味付けなので、思わずニンマリとしてしまいます。
レッジ250の使い方
それらの点を理解すればレッジ250の効果的な使い方は自ずと見えて来ます。
レッジに沿ってキャストしたら静と動のメリハリを意識しながら、ガーっと早巻きしてフワーッと浮かせるのを繰り返すだけ。
ジャークで急に跳ね上げてフラフラと沈ませるフラッタースプーンとは逆のパターンですが、上下のアクションで刻んでいくイメージで巻くだけでいいのです。
実はコレ、フィッシングショーでバンディットのスタッフから直接聞いた話の受け売り。
レッジという名前が気になったのんだくれが名前の由来を聞いたところ、この使い方を教えてくれたというワケです。
ネーミングが気になって聞いただけだったのに、意外な収穫があったので案外ネームヲタも悪くないなと思ってみたりw
もちろん通常のクランキングにおいても類まれなる大音量クランクとして活躍してくれるのでご安心を。
オカッパリだからこそ活かせるレッジ250の特性
…..と、ここまで書いてみましたが、”ビッグレイクで釣りしない俺にはレッジなんてカンケーねーし” と思ってる人もいますよね?
でもご安心を。
このレッジ250はオカッパリだからこそ使えるキモもちゃんと抑えてくれています。
実はレッジに相当するスポットはオカッパリの方が多いんです。
例えば水門脇の垂直岸壁や水通しのいい斜め護岸もレッジと同じ様な条件だし、ウィードエッジも壁だと思えば立派なレッジとして見立てることができます。
そういう”壁”スポットで潜らせて浮かせてを繰り返すのにもこのレッジ250はピッタリなのです。
特に水深2mぐらいまでのシャローの場合、ほとんどのクランクベイトアングラーはシャロークランクしか投げませんが、急潜行のレッジ250を使って上下動で刻んでいくことによって、先行者と全く違ったアプローチが可能に。
のんだくれはシャローでDD22をザリガニ巻きするのが大好きなのですが、バンディットスタッフの話を聞いて、案外同じことをやってたんだなとニンマリしてしまいました。

又、サスペンドではなく、スローフローティングであることにも大きなメリットが。
ゆっくりと浮上する浮力設定は、低水温期のクランキングの基本でもある、”当たったら止める” メソッドが非常にやりやすいのです。
そういう意味ではこれからの季節、水温が底を打ったタイミングで炸裂するクランクに化けるかもしれませんね。
レッジ250のフック
フックは前後ともブラックニッケルの#4サイズを装備していますが、リアフックのサイズを落として浮上スピードを加速させたり、逆にフロントフックをサイズアップしてよりスローな浮力にすることも可能です。
レッジ250のカラー
カラー数が多い事でも有名なバンディットなので好きなカラーを選び放題!…. なんですが、強めのロールアクションであることを考えると、上下ではっきりと色が分かれるカラーを選んだ方が明滅効果の恩恵が受けやすいのではないかと。
その中でもこのナチュラルシャッドは特に明滅が出やすいのでおすすめ色のひとつ。
水に溶け込みやすいブルーバックに膨張色であるパールホワイトを ”シャッド” の名の下に融合させた、バスにもアングラーにも好かれるド級の定番色。
レッジ250のネーム
そんなエクストリームパフォーマーなレッジ250ですが、バンディット家の掟によりネームを入れることは許されていません。
これはホントもったいないオハナシ。
実力があれば名前なんて要らん!という考えなんでしょうけど、名前がないことで出処不明クランクとしてゴミの様な扱いを受けてることもあるので無念でなりません。
その反面、当時のレアカラーなんかも雑に扱われていたりすることもあるので、バンディットマニアにとっては嬉しいことだったり😂
ちなみにこのルアーの判別ポイントはボディサイドのバルジと呼ばれる盛り上がりと飛び出た目。
バンディットは3Dアイを採用せずにポップアイの上にペイントを施すブランドなのですが、その中でもレッジ250は特に目が飛び出ているので見ればすぐに分かります。
おわりに
実質製造期間が3年ほどと短かったこともありタマ数は多くはありませんが、良いのか悪いのかあまり人気がなかったので、今でも探せば見つかると思います。
つい最近も某釣具屋のハンガーの奥で新品を見かけましたし。
使い所がイマイチ分かりにくいので人気がなかったのかもしれません。
しかし実際にレッジで投入するかどうかはともかく、ストライクキングのプロモデルクランクシリーズ好きならばローテーション要員として買っておいて損はないでしょう。
それよりもプラドコ前バンディットのチャレンジ精神を垣間見ることができる存在として、クランク好きには是非とも持ってて欲しいなぁ。