ご存知の通りルアー業界はパクりパクられが横行する問答無用弱肉強食の世界です。
どんなにオリジナリティがあったり特許申請していても、理屈が通じない相手に対しては独自性の盾は通じません。
しかし同時に、コピー品のほとんどはオリジナルを超えることが出来ないという不文律も存在します… 一部のルアーを除いては。
今日紹介するサーフクレイフィッシュはそんな不文律を打ち破った優れたルアーの一つです。
サーフクレイフィッシュとは
サーフクレイフィッシュはコピーの権化コーモランが80年代中頃にリリースしたサーフェイスクランクです。
各有名ブランドの人気商品のコピー物ばっかりを揃えたナチュラルナイス21シリーズの一員として登場。
もちろんサーフクレイフィッシュもバグリーの名作、スモールフライクレイフィッシュをまんまパクったパチモンである事は言うまでもありませんね。
当時のコーモランは無敵状態で、同シリーズの中には同じボディでダイビングリップを装備したダイブクレイフィッシュという兄弟とダブルでラインナップさせるという史上最強の厚顔ぶりでした。
サーフクレイフィッシュのサイズ・重さ
サーフクレイフィッシュはボディ長56ミリ、自重8.6gの小型クランク。
本家バグリーの当時のラインナップには無かった絶妙なサイズで出してくるあたりにコーモランの狡猾さが見え隠れしてますねw
サーフクレイフィッシュの特徴
屹立したリップ
このルアーの特徴の一つがアンバランスなほど大きく、そして屹立したリップです。
ウェイクベイトが一つのカテゴリーとして定着した今でこそ違和感はありませんが、これが発売された当時はウェイクベイトという名前はもちろん、先駆者となったマンズのワンマイナスすら登場していない時期でした。
そんな時期にバグリーのスモールフライクレイフィッシュのこのモデルをパクろうと思ったコーモランはスゲーなと。
あ、コーモランじゃなくてバグリーがスゲーのかw
リップ周りに接着剤がはみ出しまくりなところは安心安定のコーモラン。
ザリっぽくないフラットサイド
リップだけでなくボディもなかなかの仕上がりです。
ザリガニっぽくないフラットサイドぶりもこのルアーの特徴の一つ。
当時のバグリーのオリジナルはやや丸みを帯びた形状なのに(製造時期によって違う)、コーモ物はアイガーの北壁も真っ青のフラットぶり。
当時はフラットサイドというワードすらなかった時期なので意図してコーモランがこのシェイプにしたとは考えにくいので、これは完全に偶然の産物。
しかしルアーに限らず、名品と呼ばれる物の多くは偶然から生まれている事を考えると、この偶然は必然だったのかもしれません。知らんけど。
貫通フレーム方式を採用
ラインアイ、フックハンガーは近年の定番エイトリングではなく貫通式のワイヤーフレームを採用。
この時期のコーモランはまだワイヤーフレームとヒートンが主流でしたね。
バグリーのシェイプをそのままパクった状態だとリアのフックハンガー周りの強度が不足していたのか樹脂を盛って補強しているのが分かります。
コーモランと強度というワード同士はどこか縁遠い感じがしますが、パチ屋はパチ屋なりに考えていたんですねw
ちなみにサーフクレイフィッシュはノンラトルです。
謎の穴
そしてラインアイの横には謎の穴も確認できます。
おそらくこれはカラーリングの際に使用したペイントスティックホールではないかと思われますが詳細は不明。
こういう謎めいた要素があるとオタは燃えるのですw
予想を大きく上回る暴れん坊アクション
気になるアクションは大きくボディを揺さぶるローリングアクション。
リップ形状と大きさからその動きは予想出来ますが、実際に泳がせてみると、よくこれでバランス崩さずに泳げるなと誰もが驚く暴れん坊ぶり。
しかもアクションの立ち上がりも俊敏で、わずかなテンションでもボディを揺らし始めるクイックさなのです。
それだけではありません。
加速を続けても強い水攪拌をキープしながら水面直下を疾走するのです。
それはルアーの後ろ水面に残るスワール(渦)の大きさと残存時間を見れば一目瞭然。
スワールが長続きするルアーのひとつにデプスのバズジェットがありますが、それはあのボディサイズならば妥当な長さでしょう。
しかしこのサーフクレイフィッシュはたった5.6cmのボディでそれをやってのけてしまうのです。
もちろんリップの大きさと角度ゆえに超早巻きには追従しきれませんが、ウェイクベイトとしての実用速度を考えたら全く問題ないと言えるでしょう。
バグリーのクレイフィッシュはバルサ材ゆえ個体差が激しいが、サーフクレイフィッシュは当時実売価格500円そこそこだった事と、入手のしやすさを考えたら完全にオリジナルを上回っていたなと。
カラーはザリガニオンリー
カラーはボディシェイプに合わせてザリガニのナチュラルプリントが施されています。
ぶっちゃけプリントのクオリティは本家には及びませんが価格を考えたらかなり頑張ったと言えるでしょう。
カラーリングは確認できているのは上記4色ですが、もっと黒っぽいものもあった記憶があるのでのちに追加されたのかもしれません。
画像では目玉が付いていますが、目玉付きのクレイフィッシュを一度も見たことがないので、おそらくこれはカタログ写真用に盛ったんじゃないかと推察しています。
なにしろコーモランはウィグルワートのパチモンのカタログ写真に本家ウィグルワートを掲載するなど無茶する会社ですからね。 それは十分考えられます😁
「ストーム・ウィワートのパチモン出すぞ」
「でもカタログ入稿に画像が間に合わないなー」
「よし!良いこと思いついた💡」
「どーせそっくりだから分かんねーよ😁」まるで自社製品であるかの如く本家の元ネタをカタログ掲載してしまうコーモランの傍若無人っぷりを御覧ください。 pic.twitter.com/bXX4O8GhE6
— ルアー千一夜🌛公式 (@lure1001) October 17, 2022
フックはイーグルクロー#6
フックはフロントが#4、リアが#6になっていますが、パケ出しの状態では前後ともイーグルクローの#6でした。
そのままでも使えますがノーマルのままだとフロントの荷重が少なくて波っ気のある状況だとすぐにトビウオになるなど泳ぎが安定しないので#4にサイズアップしています。
もちろんシビアなトゥルーチューンは言うまでもありません。
ネームはリップ刻印式
ネームはコーモランのロゴとともにリップにエンボスされています。
スペースの問題なのか”サーフクレイ”で終わってるのがコーモランらしいところw
ちなみにコーモランの言うところの「サーフ」はサーフェイスの事で、シャローランナーであることを表しています。
同様にディープダイバーはダイブ、トップウォーターはトップとなっていましたがある時期からより分かりやすいトップ、ミッド、ディープ、バイブに変更されました。
最初のうちはそのルールが適用されていましたが、途中からコーモダンサー、どじょっこ、スペシャルバッカスなどルールを逸脱したネーミングも登場するように。
ネーミングが面倒になったのか、それとも担当者が変わったのかその原因は今も謎のままですw
入手はなかなかタイヘン
そんなサーフクレイフィッシュですが、手に入れるとなるとちょっと苦労します。
もう生産していない上に、近年のオールドコーモラン人気で競争率が上がっているのです。
さらに実力を知っているマニアがチマナコになって探しているのも影響しています。
コーモランにはレーベルクローフィッシュをパクったモデルもあり、そちらは時々見かけますがサーフクレイフィッシュはなかなか出物がないのでレア度が高いのです。
もしどこかで見つけたら是非とも確保しておいて欲しいものです。
終わりに
パクリ、コピー、インスパイア、リスペクトなど模倣を表すワードはたくさんあるけれど、良い悪いはともかく日本のルアーフィッシングに多大な影響力を及ぼしてきたコーモラン。
今第一線で活躍している著名なルアーデザイナーだってコーモランを愛用していた時期もあるんだから、日本ルアーフィッシングの歴史的価値と言う意味でいま一度評価しても良いんじゃないかと思っとる訳です。ぶっちゃけ近年も無慈悲なパクリをやったりしてるので、その基本理念wは変わってないかもしれませんが😁