バスフィッシングの概念が登場して既に140年が経とうとしていますが、その過程で無数のルアーが生まれては消えていったのはみなさんご存知の通り。
しかしそんな弱肉強食の世界でも、ヘドンのザラなどスタイルを変えながらも長く生きながらえているルアーも数多く存在します。
興味深いのは、それらご長寿ルアーにはそのスタイル/世代ごとにファンがついている事。
バスアングラーならば誰しも一度は『バスオレノはサウスベンド期に限るでしょ』とか『やっぱフットルースは初期ボーンでしょ』といったこだわりトークを耳にしたことがあると思います。
今日紹介するキラーBIIもまさにそんなトークの常連組。
潜行深度によるシステム方式を世界で初めて導入したクランクベイトの名品です。
キラーB IIとは
キラーBIIは、バグリー(当時はバグリーズベイトカンパニー)が1970年代にリリース。
最小サイズのBI から長兄BIIIまで3サイズのボディと、ノーマル/ダイビング/ディープダイビングの3タイプのリップとの組み合わせによる分厚いラインナップで展開し、バルサBやダブルオーセブンとともにバグリーの金看板を背負ったシリーズでした。

キラーB IとB II
さらにラトルやバルジンリップを装備したものなど、派生モデルも多数輩出。
80年代にバスフィッシングを齧った人ならば誰でも知っているクランクベイトで、今日紹介するモデルもまさに80年代中盤のバグリー全盛期とされている頃のものです。
キラーB IIのサイズ・重さ
キラーB IIは65ミリ、12gの標準的サイズ。
バルサという自然素材である上に製造時期によってサイズやボディシェイプ微妙に変わるので、個体によって重さも浮力もまちまちなのはバグリークランクのお約束。
この場合は80年代の場合ですが、個人的にこの時期のキラーB IIが一番使いやすくイイ思いをしているので一番思い入れがありますが、90年代のモデルが良いというアングラーもいるのでこの辺りは完全に好みの問題ですね。
要するに沢山釣ったモデルがその人にとって最高のモデルなのです😁
キラーB IIの特徴
バルサBよりもスリムな形状
シュッとテールが伸びた細身でスタイリッシュなシェイプがキラーB IIの特徴。
この形状からファットなバルサBシリーズとは全く性格が違うのがわかります。

バグリーはのちに激しいロールによる明滅効果を狙ったバッシンシャッド(90年代に入ってシャッドスナックというダサい名前に改名w)というシャッドプラグをリリースしますが、そのバッシンシャッドが登場するまでは、キラーB IIはスモールフライシャッドと並んでバグリーラインナップの中のシャッド寄りのポジショニングでした。


スモールフライシャッド(上)とバッシンシャッド
激しいアクションを生むラウンドリップ
そしてキラーBといえばこのラウンドリップです。
デビュー当時はスクエアビルを搭載していましたが、バルサBシリーズとの棲み分けを考慮してか途中からラウンド形状リップに仕様変更されたという経緯があります。
レキサン樹脂のこのリップはぼってりと厚みがあり、今のクランクベイトの基準で見ると動きにキレがなさそうに見えますが、実は驚くほど早いピッチの持ち主。
今のショボいクランクなど足元にも及ばないほどのパフォーマンスを見せてくれます。
もちろんボディとのバランスや相乗効果もあっての泳ぎなので、このリップの性能だけが突出しているわけではありませんが、このセッティングにはバグリーとしてのプライドを感じずにはいられません。
余談ですが、このリップを製造していた会社が2008年頃に操業を止めてしまったことで、それまでに市場に出回っていたリップが一部のクランクベイトビルダーによって買い占められるという事態が起こりました。
キャッチングコンセプトのハーマンも買い漁ったビルダーの一人で、彼曰く、このリップは粘るような強度と適度な比重を備えていてクランクベイトには最高だ、と。
サーキットボードのような薄くて軽いリップも良いが、レキサン樹脂の厚さと重さがないと出せない泳ぎがあると熱弁しながら、ドン引きするぐらいの量のリップ在庫を見せてくれました。
別筋からの話ではスタンフォードルアーズのビルダー、ディーター・スタンフォードもこのリップを買い漁ったらしく、こういった事からもリップの性能の高さが伺えますね。
キラーB IIのアクション
気になるアクションはほぼロールなしの強いウォブリング。
しかもかなり早いピッチのキレッキレ水攪拌アクションに仕立てられています。
その泳ぎはまさにキラービーKiller Bee(殺人バチ)が舞い踊るかの如し、人間もバスもヤラれちゃう動きなのです。


デビュー当初からキラーBシリーズのパッケージを飾っていた ”殺人バチ” おっさん世代にはみなしごハッチに見えなくもない?w
でもバルサクランクゆえ耐久性に難アリなので、塗装が割れて浸水した途端に泳ぎがもっさりになってしまうところが玉に瑕😭
バルサ製クランクなのでこればっかりは割り切るしかないのですが、コレクション的要素の強い70年代モデルとは違って80年代モデルは未だに実釣派がチマナコになってる事もあって、もっさりの代替えが見つけにくいのがツラいところですね。
80年代バグリーといえばやはりクローム
カラー数が多い事で有名なバグリーの主力商品だけあってカラーの豊富さはピカイチですが、個人的なオキニはこのクロームメッキカラーです。
バルサ素材にクローム塗装という、従来のメーカーでは出来なかったことを成し遂げた80年代バグリーの凄さがわかる色ですね。
ただこのクロームカラーもキズに弱いので、数キャストするだけでフックサークル付きまくりで、終日投げ倒すと塗膜が削れてバルサが剥き出しになるものもありました。
80年代中盤当時、キラーB IIの米国内での平均販売価格は約8ドル。
日本国内では1,700円前後で売られていた高級プラグなので決して消耗品ではありませんでしたが、その耐久性の低さゆえ消耗品と割り切らなければならない事も😭
その代わりに価格に見合うだけのバスを連れてきてくれましたけどね。
ちなみに当時のバスプロショップスにおけるバグリーの販売価格は約4ドルでぶっちぎりの安さ。
当時の為替レートが160円前後なので、州税を加算しても700円前後で購入する事ができた計算になります。
さらに店頭ではカタログ価格よりも安く出ていて、当時はバスプロショップスの仕入れ/販売力の大きさを見せつけられてクラクラしたもんです😂
フックはクラシカルなクローポイント
この時期のフックは#6サイズを採用。
ゲイプがやや開き気味の、ストームなども採用していたクローポイントフックです。
リアのフックハンガーは横アイヒートンですが、のちにオフトが復刻させたキラーBIIのフックハンガーはワイヤーになっているので、見分ける時の目安になります。
ちょっと本題からは逸れますが、90年代にオフトが復活させたバグリーの仕様クオリティを疑問視する記事やツイートを時々見かけますが、あれは当時使用可能なマテリアルでリップやリグを最大限アジャストしたリメイク物なので、オールドと同軸で語る事自体がナンセンス。
趣味の世界なので好き嫌いは有っても構いませんが、まずはCA prop 65基準に適合させて再生産してくれた事に対し、素直に感謝すべきなのです。
キラーBの名前に隠されたヒミツ
このキラーB IIにはリップのロゴ刻印はありますが、いつもネームがスタンプされている腹には何もありません。
これがロットによるものなのか、たまたまなのかは分かりませんがネームオタとしては嬉しいやら悲しいやら。
まあちゃんと腹に入っていたとしてもベースがクロームだとすぐに消えてしまう運命なので入ってなくても変わらんのですが😂
ところでこのキラーBという名前にはちょっとしたヒミツが隠されているのをご存知でしょうか。
そのヒミツは英語スペルの Kill’r Bにあります。
殺人バチという意味を被せたいだけであれば普通に Killer B でも構わないのに、なんでわざわざ ‘ (アポストロフィマーク)を入れているのか気になりません?
実はコレ、e を消すと キラーともキルアール Kill R とも読めるんです。
勘が鋭い人ならもう分かりますよね。
これは70年代当時に猛威を奮っていたレーベルのRシリーズクランクベイトを駆逐してやるぜ!という挑戦状になっているのです。
マスコットの蜂が挑発するような顔付きになっているのもそれに寄せたんでしょう。
長く伸びた毒針なんて殺意マンマンですwww
当時、バグリーの社長とレーベルを擁するプラスチックリサーチデベロップメント社(現プラドコ)の社長は親しい間柄で、いがみ合うような関係ではなかったのでこれはあくまでもジョークとしての “殺害予告” ですが、こういう関係性が名前から読み取れるのはアメリカンルアーならではですね。
キラーB IIはどこで買える?
先述の通りキラーB IIはガチの実釣派が探している上に、カラーバリエーションの多さからコレクターからも狙われている存在なので相場も高値推移で中古屋でもあまりお目にかかれません。
世代にこだわらなければ現行モデルもありますが、バルサとプラでは全くの別物ですからね。(プラはプラでなかなかイイ感じではありますが)
信じられるかい?
3つともバグリーのキラーB2なんだぜ。 pic.twitter.com/syDIkP1BAB— ルアー千一夜 【公式】 (@lure1001) March 14, 2022
でもバグリーの中古品はある法則で動いているので、それに従って探せばイイ出物に遭遇できるかも。
その法則とは ”四つ葉のクローバーの法則” です。
実はバグリーのルアーはヘドンなどと違って、同じ人から大量に放出される傾向が強く、中古屋は一挙大量買い取りとなるケースが多いのです。
みなさんの周りにも一人や二人居ましたよね? ボックスをバグリーで満タンにしてたバグリー信者が😁
先述のルアーの耐久性問題もあってバグリーはやたらと買い足したくなるルアーなので、中古で放出される時も大量となり、その結果、陳列の際にもドカッと一挙放出される事が多いのです。
よって、ひとつのバグリーのまわりには同一人物からの放出物が出ている可能性大。
これ、まさに四つ葉のクローバーなんですよね😁
もちろんタイミングはありますが、過去にのんだくれはこのパターンでウェッジリップのバルサBなどなど美味しいバグリーを沢山味わせて頂きました。
そのタイミングに出くわすには日頃から徳を積んでおく必要はありますが、意識してるとそうでないのとでは結果は大きく変わるので、釣り場のごみを拾うなど徳の貯金をしておく事をオススメします。
おわりに
ルアーは世代による違いを気にしだすと泥沼へ一直線だし、そもそもそんなに拘ってないというアングラーの方が圧倒的に多いと思います。
でもそこまで拘らずとも単に動きの違いを知っているだけでローテーション組めたりしと釣りが楽しくなることだけは間違いないので、知っておいて損はないでしょう。
その後沼にハマる事になってものんだくれは一切関知しませんがw
しかしそう考えるとオトコってのはつくづくメンド臭いイキモノだなぁ