かつては一軍ボックスに指定席があったのに、いつの間にか使わなくなったルアーってありますよね。
そして久々に引っ張り出して投げてみると、”やっぱコレだよなー” となることがあります。
なんというか、長年付き合ってたけど事情があって別れた彼女と何年ぶりかで再会した時の安心安定感というかw
今日紹介するビッグNは、そんな安心感を思い起こさせてくれるクランクベイトです。
ビッグNとは
ビッグNは、そのアルファベットからおわかりの通り、1970年代に勃発したアルファベット戦争時にビルノーマンルアーズ(現ノーマンルアーズ)がリリースしたクランクベイトです。
ノーマンのイニシャルであるNをその名に冠したビッグNは、リトルNと共に激しい戦禍を生き抜きました。

ビッグNとリトルN(右)
当時はリトルNが爆発的に釣れると話題になったため、いつもリトルNの後塵を拝していたビッグNですが、途中幾度かの生産休止を挟みつつもプラドコに買収されるまで生産され続けていたロングセラーです。
余談ですが、当時のリトルNの売れ行きは凄まじく、その圧倒的な釣れっぷりはオリジナリティ勝負のマンズにリトルNのモロパク、ハンクパーカーズGO2(ゴートゥー)を作らせてしまったほど。
このハンクパーカーモデルの詳細はここでは触れませんが、このルアーにも超ディープな話があるのでそれはまた別の機会に。
ビッグNのサイズ・重さ
ビッグNはその名前に恥じない76ミリ/20.5gのビッグプロファイル。
歴史の長いクランクゆえ、その製造時期、素材によって重さが微妙に変わってくるというお楽しみつき。
画像のものはプラドコ買収直前のモデルで、いわゆるボーン素材と言われるものですが、ノーマンのルアーでよく見かける透明プラ素材だと1gほど重くなります。
ビッグNの特徴
ビッグNの特徴はなんと言ってもファット&バルキーな体型。
クランクベイトの覇者、コーデルのビッグOと真っ向勝負するために生まれたルアーなので、ボディも横綱級に仕立てられています。
マグナムサイズのクランクを普通に投げるようになった今では驚くことはなくなりましたが、ガキの頃、釣具屋のショーケースにビッグO#8000、ヘドンのビッグヘッドらと並んで収まっていたこのビッグNを見て、こんなの食うブラックなんてホントに居るんかいなと思ったものですw
とはいえ、ビッグOよりはちょっとスリムですけどね。
リップはエッジが処理された一体成形型を採用。

リトルNとのリップ比較
よくビッグNはリトルNのアップサイズ版と言われますが、リップの形状を見るとラウンド形状のビッグNに対し、リトルNはスクエアっぽくなっているなど、性格が変えられている事がよくわかります。
アクションの違いについては後述しますが、このリップだけ見てもクランクとしては完全に別物であるのが理解できますね。
ちなみにボディ内部には独立したチャンバーが奢られた2つのラトル兼ウェイトが入っていますが、これも製造時期や素材によってサウンドが違うのでラトルマニアには萌える要素となっています。
しかし初期の鉛ウェイトのモデルはチャンバー内で固着する事象が多発するのでノンラトル化したものが多く見られるのもノーマンルアーの特徴。
もしラトルが鳴らなくてもそれはそれでノンラトル版と受け止めればいいので、ラトル固着に関して誰もブーイングしないのもノーマンクランクの売りだったりします。しらんけど。
そうそう、ノーマンのルアーはこのパーティングラインの凹凸を楽しむこともお忘なく😁
ビッグNのアクション
気になるアクションは、大きく体を揺さぶる強いウォブリング。
シャッド系のピリピリタイトアクションが売りのリトルNとは正反対の味付けです。
ルアーはボディの大きさに比例して水抵抗が増えるのでボディが大きくなるほどほどアクションにキレがなくなりもっさり感が出てくるのですが、ビッグNはもっさりとは無縁のキレブリ。
巻いてて楽しいクランクベイトです。
今回このポストを書くに当たり、買ったまま開封もしていなかったこのビッグNを投げてきたのですが、巻いた時の ”あーコレよ、コレなのよ😁感” は何物にも代えがたいものがありました。
そしてビッグNは浮上スピードが早いのも特徴のひとつ。
ラインの抵抗などものともせず、水平姿勢を保ったままウルフギャングペーターゼンも真っ青のUボート浮上を見せてくれます。
実はビッグNのキモはこの強い浮上パワー。
昔はロッドを大きくリッピングさせ、ダイブからの浮上ポーズの繰り返しで良く釣りました。
そのバイトのほとんどは浮上中に出るので、”見てて。来るよ。ゴン!ほらね(ドヤ顔)” という流れで楽しめるのもビッグNのイイところ。
当時は釣れるからというだけで何も考えずに使ってましたが、今思えばユラユラと揺れながら浮上するシミーアクションに反応してたのかもしれませんね。
ただファットクランクには珍しく首振りは苦手なので、クランクの一点ネチネチ演出を楽しみたい場合はワンマイナスを使うことをオススメします。

ノーマンならやっぱりゲルコートカラー
歴史あるノーマンクランクなのでカラー数も多いのですが、個人的にオススメしたいのはやっぱり画像のゲルコートカラー。
大量のラメフレークが混入した溶剤にどっぷりと浸けることで厚い被膜を作り、ルアーをスクラッチから守るといういかにもアメリカンな考え方がイカしてると思いません?w
何処かの記事でも書きましたが、ノーマンがパテントを取得しているこの塗装方法はその見た目とトップコートの強靭さから大ヒットとなり、バグリーのダズルカラーやストームのフラッシュカラーなどなど多くのフォロワーを生み出し、ギラギラ戦争の火蓋を切りました。
ラメだらけのカラーは日本ではイマイチ受けが悪いのですが、米人はホログラムなどのギラギラが大好き!
ウォルマートやホームデポなどホームセンターに行くと、日本の手芸用品店など足元にも及ばない種類のラメフレークが売られており(しかもサイズが巨大w)一体こんな大量のラメを何に使うねん!と突っ込みたくなります。
こういうところにも日米の感性の違いが見えて面白いですね。
そういえば、いつだったかゲルコートのパテント仕様説明を読んだことがあるんですが、その説明にはラメの形は六角形であることまで明記されており、ほえーっと感心した覚えが。
今回このポストを書くにあたり、そのドキュメントを探したんですが見つからなかったので発見した際にはまた画像をアップします。
ちなみにゲルコートをジェルコートと呼ぶ人もいますが同じものなのでお間違いなきよう。
英語の発音的にはジェルの方が合ってますが、個人的にゲルという響きが好きなのでずっとゲルで通してます。
どうでもいい話ですが、超人バロム・1の怪人はみんな好きです。
当初のフックは#4サイズだった
フックは前後とも#2サイズが装備されていますが、これは近年になって仕様変更されたから。
80年代までは#4サイズが標準となっていました。
ノーマンに限らずボーマーなど多くの米国ブランドは70-80年代に出したルアーのフックサイズよりも現行モデルの方が大きくなっていることが多いのでそれ系ですね。
言うまでもありませんが。テールフックをサイズダウンすれば更にアクションが強くなるのでその辺の調整はお好みで。
ビッグNに限らず、クランクのフックを交換して好みのセッティングを出す方法はよく知られていますが、実際にやっているアングラーはほとんど居ないので、やったことがない人は是非トライしてみてください。
特に国産クランクは泳ぎの変化が分かりやすいので、やる価値はアリアリのアリ。
もしかしたらイマイチ好きになれなかった三軍ボックスのクランクが溺愛クランクに昇格するかも。
ビッグNはどこで買える?
そんなナイスなビッグNですが、残念ながらプラドコになってからはレギュラー生産されていないようでスポット生産モノを探すことになります。
しかし近年のクランクブームでこれも品薄なのか、なかなかお目にかかれない状況。
なので手っ取り早いのはメルカリなど中古サイトでの検索でしょう。
近年プラドコが見せているバックトゥクラシックの流れでこのビッグNもがっつり再販してくれると良いんですけどね。
おわりに
ルアー歴が長ければ長くなるほど使わなくなったルアーが増えていきます。それらに共通するのは、使わなくなった明確な理由が無い事。
ただ単に他のルアーを使うようになって、そのまま存在を忘れたというだけの話。
コレって、オトコが他の女の子に目移りするのと何ら変わらんと思いません?
彼女はいるんだけど、他に気になる子が出来てそっち行っちゃったみたいなw
でも離れたからこそ分かる彼女の良さがあるのと同じで、ルアーも久しぶりに使ってみると良さがより理解出来たりするもんです。
なので今度の釣行には久しく使ってなかった昔の彼女を連れ出してみては?
でもその際には ”今さらフザケてんじゃねーよ!” とビンタされる覚悟もお忘れなく。