中古屋に行くといつもの位置にぶら下がってるアイツ。
ずっと前から身請人が現れるのを待ってるけど誰も引き取ってくれないアイツ。
黄色い値札に変わっても定位置から飛び立てないアイツ。
でもそんな哀しい奴らの中にもめっちゃ使えるヤツがいるんだよ、というのが今日のオハナシ。
そうです。
今日のゲストは誰もがスルーしたことがあるであろう隠れた名作、ベイブオレノです。
ベイブオレノとは
ベイブオレノは言わずと知れた老舗サウスベンドがリリースしたバスオレノの弟分。
サウスベンドからエバンス、そしてルーハージェンセンへと置屋は変わりましたが、生産終了となった近年までずっと作り続けられていた、いわゆるレジェンドなルアーです。

ところが冒頭で書いた通り、このルアーったら泣けてくるぐらい超絶不人気なんです。
しかし侮るなかれ。
実はコイツは最新のルアーでも太刀打ち出来ない特技の持ち主。
これを読めば80年近くにわたって販売されている理由がわかるはずです。
ベイブオレノのサイズ・重さ
ベイブオレノは全長63ミリ、自重3/8oz(実測9.5g)のミニサイズダーターです。
先述の通りベイブオレノは置屋を転々としてきたこともあり、製造会社や時期によってそのサイズや仕様が違いますが今回は不人気のルーハージェンセン物が基準。
タックルを選ばない重さ、そして美味しそうな一口サイズゆえ人気が無いのが不思議なぐらいですが、どう使えばいいのか分かりにくいダーターというカテゴリーな上に、水面プラッガーがあまり使うことがない3/8ozというビミョーなサイズ、そしてルーハージェンセンに移籍してからのアグリーなボディシェイプと、見事な三重苦を背負っているため誰も好んで買わないのです。
ベイブオレノの特徴
ベイブオレノの特徴はなんといっても兄貴譲りのこのヘッド形状でしょう。
ヘッドをスラントさせるだけでなく、強い凹アールをつけることでダイビングリップとし、水の抵抗をあえて逃げにくくしています。
そして大きな体積のボディが生み出す浮力とのコンビネーションにより、人為的でない不規則なダートアクションを作り出すことに成功しています。
この不規則な動きこそがバスオレノファミリーがロングセラーであり続けた最大の秘密で、唯一無二であり続けられる理由と言ってもいいでしょう。
サウスベンドやエバンス期のモノはふくよかなボディラインがあったのでまだ可愛げがあったのですが、ルーハーに移籍した途端、丸材を旋盤にかけました候な直線的シェイプになりました。
これはこれで悪くはないのですが、どうしてもルーハー特有の粗雑なイメージがついてまわるのか敬遠の対象に。
いわゆる ”ああ、ルーハーね” 現象が起きてしまうのです。
ま、ルアーを安っぽく仕上げるのはルーハージェンセンのお家芸ですから仕方ないんですけどね。
ベイブオレノのアクション
しかし一旦水に入ると、ベイブオレノは野暮ったい造形からは想像もできない泳ぎを見せてくれます。
そのアクションをひと言で表すならば、予測不能な動きを勝手に演じてくれるダーター。
ベイブオレノは強い浮力を押し殺しながら水面直下をユラユラと不規則に蛇行するのですが、オリジナルサイズであるバスオレノのユラユラダートアクションと違って、そのアクションがよりクイックに、そしてより不規則になっているんです。
バスオレノよりもボディが小さくて水の抵抗が少ない分、よりトリッキーな動きになっていると思われ。
もちろんポッパー/チャガーとしての機能も持ち合わせているので、水面ポーズからスイープ気味に引っ張ればブジュッと押しつぶすような捕食音も出せちゃいます。
ベイブオレノの使い方
一般的なダーターはいろんな動きを自分なりに組み合わせて演出するのが基本的な使い方ですが、ベイブオレノに関してはそんなややこしい事をしなくても大丈夫。
キャストしたらクランクベイトのようにタダ巻きするだけで自動的にあっちへこっちへとダートして魚を連れてきてくれます。
ポーズだのポップだのトップウォーターフィッシングで重要とされる”間”なんて考える必要もありません。
ただ投げて巻くだけ。
それだけでクイックで予測不能なダートが楽しめるんです。
実はこのトリッキーな動きこそが長年愛され続けてきたベイブオレノの武器。
この動きはクランクベイトなど他のルアーはもちろん、兄貴のバスオレノですら真似できない唯一無二のものなんです。
動きのイメージとしてはズイールのジョイントアンカニーに近いのですが、瞬間移動するかのようにフッと横ダートするアクションはベイブオレノだけのものでしょう。

そしてタダ巻きこそがベイブオレノの真価を引き出す最強の方法なのです。
だってよく考えてみてください。
このルアーが登場した1930年代初頭のタックルは今では考えられないほどローテックでした。
リールやロッドの性能の低さはもちろん、ナイロンラインすらない時代にこんな小さなプラグをストップ&ゴーとか細かい演出で使うなんてやってられませんよね。
当時のリールはゴワゴワのブレイデッドラインを巻き取るだけのものだったので、タダ巻きで最高のパフォーマンスが発揮できるルアーこそが正義でした。
そんな状況を制したのがバスオレノ兄弟だったのですから、タダ巻きで使わなくて一体どうしろと?w
もちろんちょこまかと虫のように動かす水面使いも効果的ですが、それはとりあえず一匹釣ってから試せばオッケー。
まだ入魂が済んでないルアーで演じ続けるのはなかなか辛いもんがありますからね。
ベイブオレノのフック
フックは前後とも#4サイズが標準で、ヒートン直付けになっています。
フロントのカップがボディにめり込んでいるのはルーハーのお家芸ですね。
フック交換の簡素化のためかスプリットリングを入れた個体を中古屋で見かけますが、リングを入れるとエビになりやすいので直付けが基本です。
兄貴のバスオレノもそうですが、ダブルフックとの相性が良いルアーなので状況に応じて試してみてください。
その際、フロントのカップは外さずにそのままで。
理由は…… やってみれば分かります😀
ベイブオレノのネーム
残念ながらベイブオレノにはネームは入っていません。
ルーハー移籍〜90年代の中頃までは ”BASS ORENO” のスタンプが押されていましたが、それ以降は何もないのっぺらぼう状態になっています。
誰もが知ってるルアーだからネームプリントなんて要らなくね?とメーカーが思ったかどうかは分かりませんが、兄貴のバスオレノの方はスタンプやドット印字などいろんなバージョンがあるだけにネームがないのはちょっと寂しいですね。
なのでネームを愛でる代わりにフォイルを貼った後の凸凹でニヤニヤさせてもらいましょう😁
ベイブオレノの改造・チューニング
誰も連れ帰らない上に捨て値で売られているベイブオレノはチューニングネタとしても最適です。
カップのエッジを落として動きを変えるのもよし、顎下にBBウェイトを埋め込んで急角度ダイブ仕様にするもよし、素体がシンプルなので応用範囲が広いルアーでもあります。
そんな中でのんだくれがオススメするのはバズブレードチューンです。
人に見せると大抵出オチで笑われるんですがw、画像のように小さめのブレードをインラインで装着するだけでベイブオレノは化けてくれます。
実はこのブレードは水面でジャバジャバするためのものではなく、バイブレーションを発生させるためのもの。
こうすることでベイブオレノ特有のクイックなダートを生かしつつ、クランクベイトのような細かいバイブレーションを加味することが出来ます。
そしてブレードを装着することによって本来の暴れアクションを少し抑えることができるので、高速リトリーブでも泳ぎが破綻しにくくなるといううれしい副産物も。
バイブレーションを増幅するためにオフセット幅を大きくするリフトアップ加工が施してあるので、シングルウィングのチョッパーブレードよりも強いブルブルが実現できます。
このチューンドベイブでは実際に結構釣っているので、手元に使わなくなったベイブオレノが有るなら是非。
ベイブオレノの使い所が分からずにいるアングラーにこの動きを見せると、高確率でおぉ!となるのでオススメです。
これ以外ではラインアイにジグスピナーのアームを装着して、水面直下でダートするスピナーベイト的なチューン法もあるので、他のアングラーからの失笑に耐えられるメンタルをお持ちならどうぞw
ベイブオレノの入手方法
既にルーハージェンセンはこのベイブオレノの生産を終了しているようですが、中古市場には大量に出回っていて、しかも激安なので入手で苦労することはないと思います。
現在豊富に市場在庫があるのは、90年代のバスフィッシングブーム時に大量に供給されたおかげでしょうね。
とはいえ、ルアーはナマモノ。
いつでも手に入ると思ってたら、いつの間にか絶滅危惧種に認定されてたなんてのは日常茶飯事ですから、日頃からアンテナ感度を上げておくのをお忘れなく。
おわりに
かつてのゼニス Zクローがそうだったように、誰も見受けしてくれない不人気ルアーの中にはダイヤの原石が隠れていることがよくあります。
いうまでもなく人気と実力の間には何の関係もないのです。
もう時効なので話しちゃいますが、1〜2年前、琵琶湖でガチ釣りをしている友人から ”ノーマンのレイザーミノーを持ってたら譲ってほしい” と懇願されたことがあります。
彼曰く、とある使い方をするとデカいのがメチャクチャ釣れるんですと。
でもレイザーミノーもその昔はあまりの不恰好さゆえ、ワゴン落ちしても売れなかった類のルアーなんですよね。

黄色でも100円とかで出てましたし😭
一般には知られていない、もしくは人気のないルアーの実力を見出すのもアングラーとしてのスキルだと思うと、エグリもまた違った楽しみ方が出来ると思いません?