いつの時代も先駆者は逆境に晒されるものです。
ビッグベイトだってアラバマリグだって最初は笑われていました。
もちろんマグナムクランクだって。
今日のゲストはそんな嘲笑にも負けずスタンダードとなったマグナムクランクの祖、ブルでございます。
ブルとは
ブルはラッキークラフトが2000年初頭にリリースしたマグナムサイズのウェイクベイト。
サーチベイトというサブネームの通り、広大なフィールドでバスを探す事をメインコンセプトに据えた、当時としては画期的なクランクベイトでした。
当時このルアーと店頭で対面したほとんどのアングラーは『デカっ😳!!』と驚くと同時に、こんなのどうやって使うねんと半笑いするしかありませんでした。
マグナムクランクが市場に溢れかえっている今ではそれほどサイズに対する抵抗を感じませんが、当時はネタにされてしまうほどのインパクトだったのです。
ブルのサイズ・重さ
サーチベイトブルのサイズは全長100ミリ、自重2オンス。
比較対象のオリザラがプーチに見えてしまうほどの存在感です。
あの時代にこのサイズのウェイクベイトをリリースするのはそれなりの決断力を要したはずですが、そのディシジョンを下したラッキークラフトはアッパレでしかありませんね。
驚愕の仕様
屹立したリップ
ウェイクベイト以外の何物でもない存在感を放つリップがサーチベイトブルの売り。
しっかりと強度を確保した厚みのあるリップは着水時の強大な衝撃に耐えるのはもちろん、立ち食いや護岸のエッジにガシガシ当ててもビクともしません。
しかし4mmもの厚さがありながら、エッジをトリムしてアクションのキレにも配慮。
アクションの詳細については後述しますが、このサイズとしてはかなりクイックな動きを実現しています。
おむすび形状の低重心ボディ
そんなリップによって揺さぶられるボディは全幅39ミリもの弩級クラス。
どっしりと安定したおむすび形状はクランクベイト界の戦艦長門と言ってもいいでしょう。
超絶バルキーボディでありながらも両サイドはフラットラインを取り入れているのもブルの特徴のひとつ。
一部フラット化による体積削減で暴力的な浮力を抑制する目的もあると思いますが、ラウンドボディよりもスッキリしたイメージに仕上げたのはラッキークラフトのデザイン力でしょうね😁
ベアリング内蔵のプロップ
テールにはベアリング内蔵のプロップを装備。
当時このプロップの回転性能について否定的な意見が散見されましたが、回らないプロップは ”仕様” なのでモウマンタイ。
詳細は後述しますが、プロップをあえて回さない事による効果を引き出したという意味においてブルは貴重な存在なのです。
パッケージには好みによって付け替えが可能なブレードが同梱されていましたが、個人的にブレードは全く不要。
この回らないプロップがあってこそのブルなのです。
超弩級のラトルサウンド
そしてこのルアーの最大のウリは内蔵ラトルが奏でる超弩級のサウンド。
一般的なクランクベイトが発するようなカラカラゴトゴトというレベルではなく、大きなボディ幅の利点を最大限に生かしたグワッシャグワッシャというとてつもないサウンドを発します。
そのサウンドを何かに例えるならば、シェイカーを振るバーテンダーの如し。
シェイカーにドライジンとライムジュースを注ぎ、大粒の氷と共に振って空気を沢山含んだ上質のギムレットを作っているかのようなサウンドなのです。
それもカッコばかりのアルバイト店員のシェイカー捌きではなく、数多の客の人生を覗いてきたベテランバーテンダーの生き様が伝わってくるような、静かだけれども重厚なサウンド。
このラトル音を聞くためだけに購入しても決して損はしないでしょうw
全てにおいて他を圧倒するアクション
Theトルクモンスター
そんなブルのアクションをひと言で表すとグワングワン系のパワフルウォブル。
フロントフック辺りを支点とし、ウォブリング7割ローリング3割ぐらいの比率で大きくボディを揺さぶるトルクモンスターに仕上がっています。
水を撹拌するという意味ではこれ以上のウェイクベイトは存在しないかもしれません。
これが泳いでたら少しぐらい離れててもバスは釘付けになっちゃうよね、というぐらいの撹拌力なのです。
しかしリトリーブ抵抗は見た目ほど大きくはなく、長時間巻き続けられるようになっています。
とはいえお世辞にも ”軽い” とは言えませんけど😁
回らないプロップの効果
そしてなんと言っても回らないプロップがいい仕事をしてくれます。
というのも、このプロップは回らないことでスプラッシュを撒き散らしつつ、細かいエアを水中に引き込んでくれるのです。
プロップテールのノイジーとしては初代トリプルインパクトが有名ですが、トリパクのプロップが回転によってノイズとスプラッシュを発するタイプならば、ブルのプロップはあまり回転せず、時々角度が変わることで不規則にスプラッシュやバブルを生み出すタイプと言えるでしょう。
これはどっちが良いとか悪いとかではなく、バスにどうアプローチするかで使い分けたいところ。
かつて道楽の山根社長も回らないプロップの有効性を説いていましたが、ブルのこの回らないプロップこそがそれなんじゃないかと。
しかしそうなるとギモンも出てきます。
なんでわざわざプロップにボールベアリングを仕込んだの?と。
これに関しては当時のデザイナーに聞くしかありませんが、こういうのは全部解き明かすよりも少しだけ謎を残しておいたほうが楽しいので疑問のまま置いておきましょう😁
首振りも出来るが…
アクション的には首振りでもバッチリ使うことが出来ます。
が、それはあくまでもオマケみたいなもの。
だってどのウェイクベイトにも真似できない強大なトルクを誇る泳ぎが出来るのにチョコチョコと首振りで使うなんてセコすぎると思いません?
唯一無比ともいえる大波動アクションを生かさなくてどーする!😤と。
しかしショートジャークによる捕食音演出は是非とも使って欲しいところ。
グワッシャグワッシャとゆっくり巻いてきて、ここぞというスポットでジュボッ!とショートジャークを入れてリアクションを誘発する感じ。
ジャークを入れるとエビになりやすいルアーなのでラインテンションには注意を払わなければなりませんが、やってみるだけの価値はあると思ひます。
カラーはリフレクト系がメイン
画像のカラーはバスですが、スモールマウスにもライギョにも見えるユニバーサルカラーになっています。
リアクションベイトということもあってカラーはクロームや反射板入りなどのリフレクト系が中心。
個人的には艶消しソリッドのブラックとかパープルが欲しかったですね。
身体デカけりゃフックもデカい
フックは前後とも#1サイズのビッグバス対応。
ボディがバルキーなのでこのぐらいの大きさじゃないと見た目のバランスが取れないしフッキングもしないでしょうね。
そしてテールのフックハンガーがボディエンドでなくやや前に設置されている細かい気配りも嬉しいところ。
プロップを設置するからというのもありますが、これだけ重量のあるルアーだとキャストミスで橋脚や護岸に軽くヒットするだけでフックハンガーが潰れて使い物にならなくなっちゃいますから。
そういえばジャークによるエビ化を抑えたいならフロントフックにフェザーを巻いてフックの暴れを抑制するのもひとつの手なので参考まで。
ネームは大きなデザインロゴ
ネームは腹に大きくプリントされていますが、なんというかちょっともったいない気も。
せっかく大きなキャンバスがあるのに汎用フォントだけなんて、もうちょっと他にやりようがあったんじゃないかと思ってしまうのです。
そしてテールエンドにはブルドックのイラストも入れて、それなりに考えているようなんだけど、このイラストを使うならもっとブルドッグのイメージをアピールしても良かったんじゃないの?と。
ラッキークラフト曰く、ブルという名前はBig Unit Lucky Lure の頭文字らしいのですが、それはどう考えても後付けの当て字でしょうw しかもそのダサさは夜露死苦レベル。
全盛期の極悪同盟のブル中野の試合を観たことがある者としては、ブルを名乗るならもっと気合を入れて欲しかったなと😁
今となっては入手困難
そんなブルですが、追加生産されていないのとマグナムクランクが市民権を得たことで、今やなかなかお目にかかれないルアーに。
よって入手はオークションやフリマアプリで探すのが一番手っ取り早いでしょう。
個人的にはこういうのこそNWメンバー向けにリメイクして欲しいんだけどな。
そして再販の際にはペラのベアリング抜いて欲しいなとw
おわりに
このルアーに限らずですが、発売当初はネタ扱いされていたのに、時を経てリーサルウェポンのポジションを獲得したルアーは多数存在します。
それらのほとんどに共通するのは、”最初は否定的な意見が多かった” ということ。
それを思うと、手堅いルアーデザインばかりになってしまった昨今のルアー市場は新たなリーサルウェポンが生まれにくい環境なのかもしれませんね。