オリジナルの人気を上回った?数少ないパチルアー
この世に星の数ほど存在するルアーの中には、コピー商品の方がオリジナルよりも脚光を浴びるケースもまれに存在します。
今日のゲスト、ビッグボーイはまさにそんな下克上?を成し遂げたルアーではないかと。
そうです。
コピーの帝王ことコーモランが80年代に発射した、へドンタイガーのパチもんです。
このルアーが発売された80年代、すでにコーモランはクレイジークローラーに始まり、ソニック、カズン、メドウマウス、ブラッシュポッパーなどなどへドンの名品達をパクリまくっていました。
しかしそれらはパチモンであるがゆえに日陰の存在であり、マニアにしか相手にされていませんでしたが、このビッグボーイだけが何故か人気者になっていくのです。
コーモランの狡猾な計算が透けて見えるサイズ設定
人気の理由はこの絶妙なサイズ感です。
なんとコーモランのビッグボーイは、マグナムタイガーとオリジナルタイガーのちょうど中間サイズに設定されているのです。
それはあたかも “ビッグボーイはタイガーシリーズのサイズバリエーションのひとつなんだよ” と言わんばかりに!
どうです、コーモランのこのしたたかさ。
しかしコーモランのパクリ哲学はこんな程度じゃ終わりません。
他社の財産を盗むことには何の罪悪感も抱かない?無敵のコーモラン
なにしろワカメの通称で親しまれ、スミスのアイデンティティでもある、あのS2カラーもシレッとパクっちゃってるんですもん。
この所業に、当時のチビっ子たちも度肝を抜かれました。
いや、驚いたというよりも、”こういう事をしても許されるんだ” というオトナの世界を知ったという方が近いかもしれません笑
しかしアングラーの声なんかに全く聞く耳を持たないコーモランの暴走は止まりません。
『すばらしいルアーフィッシングに』という経典の下、このビッグボーイを単品販売はもちろん、シーバスセットの構成員にしたりアソートメントセットにも派兵したりとやりたい放題。
35年振りの再会 pic.twitter.com/A5bEpsuyoj
— のんだくれ@ルアー千一夜 (@lure1001) February 22, 2021
コーモランはバス少年達に夢を与えるという大義名分を掲げながら、一方では知的財産権を侵害しまくっていたのです。
それはまるで子供たちの健全な育成を図るはずの保育園が、裏では条例違反しまくりの銭ゲバだったかのごとく!… ってちょっと言い過ぎか?😅
かくして、へドンとスミスのダブルネーム?なパチとなったこのビッグボーイは、コーモランのルアーの中でも1、2位を争うほどの人気ルアーとなったのです。
その人気ぶりは、コーモランなのに某オークションサイトで諭吉に近い価格がついた事もあるというエピソードでお分かりいただだけますよね。
しかーし!
コレクション対象としてならいざしらず、果たしてこのビッグボーイにオリジナルの人気を凌ぐほどの実力が備わっているのかが気になりますよね。
ということで千一夜では、実釣で使うことを基準にこのビッグボーイを検証してみたいと思います。
しかしその動きは模倣ではないワンアンドオンリー
まず気になるのは、ビッグボーイのアクションはどーなの?という点ですよね。
これを理解するためにはボディの寸法から説明しなければなりません。
ビッグボーイの全長は100mmと、マグナムタイガーの106mmよりもやや小ぶりですが、実はボディ幅ではビッグボーイが18.4mmに対してマグナムタイガーは16.9mmでビッグボーイの方が1.5mmファットな体型。
体高はマグナムタイガーの方がありますが、フックなどの艤装品やプラスチック自体の重量があるので、実はビッグボーイの方が圧倒的に浮力が強いのです。
それはこの比較画像を見れば一目瞭然。
タイガーはオリジナル、マグナム共にボディの後ろの方を水面下に沈めているのに対し、ビッグボーイはテールまでしっかりと浮いているのがわかります。
画像はありませんが、ビッグボーイはボディの上から1/3を出して、まるでピンポン球のようにポッコン!と水面に浮くのです。
狙ったのか、それとも偶然なのか。小さなリップが生み出すじゃじゃ馬アクション
次に注目したいのは、ビッグボーイのリップの大きさです。
タイガーのしっかりと水を掴みつつも過剰な抵抗は受け流す構造のギザギザリップに対し、ビッグボーイのリップはラパラのフローティングのように細いのがわかります。
ピンポン球のように強力な浮力と、華奢にも思える細いリップ。
この二つがコンビを組んだらどうなるかはもう皆さんお分かりですよね。
そうです。
このリップの水流処理能力ではボディの強大な浮力をコントロールしきれないので、リトリーブスピードがある速度を超えるとすぐに泳ぎが破綻します。
しかもその限界点がかなり低いんです。
つまりおてんばボディの挙動を躾るには、このリップでは荷が重いのです。
三者の泳ぎの特徴を文字にするとこんな感じになります。
マグナムタイガーの泳ぎは縦扁平ボディのメリットを最大化するかのごとく、ローリングではためくようなスイミングアクションが特徴。 リトリーブを止めると、ゆらゆらとボディを揺らしながら水面に戻ってきます。
オリジナルタイガーの特徴は、泳ぎが破綻する寸前までボディを揺さぶるウォブルロールアクション。 浮力を殺してあるので連続で細かくトゥイッチをかけると深度をキープしたままその場で激しく暴れてくれます。
そして気になるビッグボーイのアクションはじゃじゃ馬アクションのダーター。
浮力のカタマリであるボディは、ロッドを煽るとスイムアクションというよりも、ラッキー13が気泡をまとって水に突っ込むようなダーター的な挙動を披露してくれます。
しかもそれが全く予測不能の動きで、トビウオになったかと思えばがっつり潜ったりとかなり気まぐれなのです。
しかしデッドスロー引きではウェイクベイトのような引き波を出してウネウネ泳がすことも出来るので、よりトップウォーター色が強い味付けとも言えるのではないかと。
もうわかりましたよね。
このビッグボーイは見た目こそタイガーのパチもんですが、そのアクション特性は限りなくラッキー13に近いダーターなのです。
こりゃ水面派アングラーに人気が出るのは当然ですよね。
ボディ内部に秘められたコーモランのオリジナリティ
水面派アングラーにから注目を浴びているのはアクションだけではありません。
ボディの中にはトップウォーターアングラーの大好物、反射インサートが挿入されているんです。
しかもその反射板は一般に使われているフィルム的なものではなく、反射する素材で作ったメッシュ的なもの。
つまり光線が透過するのです。
同じく80年代に、かのエビスコが “Gフィルム” なる透過する反射インサートを採用したモデルを大量に市場投入しましたが、なんとコーモランも違う手法で光の透過にチャレンジしてたんですね。
他社のルアーをパクったと思えば独自のアイデアを具現化してみたり、ほんとコーモランって理解不能な会社だなと。

80年代コーモランの代名詞でもあるイーグルクロー
フックはこの時期のコーモランお約束のイーグルクローが標準装備。
当時のカタログにも ” We use EAGLE CLAW Hook made in USA for all our lures in this catalogue” とわざわざ注釈を入れるほど強調していました。
まあこのアピールは日本国内向けというよりも、当時代理店契約をしていたイーグルクロー社へのご機嫌伺い的なモノでしょうね。
そしてそのフックを留めるリグはフロントがサーフェスリグ、リアがヒートン方式になっています。
ヒートンはそれなりの強さがあるように見えますが、岩盤直撃はもちろん、普通に軽くぶつけただけでポリッと逝ってしまうので、実釣の際には太いヒートンへの交換は必須です。
特にラインアイに使用されているヒートンはテール側よりも華奢なので、ちゃんとしたものに交換しておかないと釣り場で絶句することになります。
しかしこんなショボいリグでよくシーバス用とか言えたもんだな。
さすが世界に冠たる厚顔ブランドコーモラン。 もう怖いものナシですね😁
しかしリグにもパチ疑惑が…

左がビッグボーイ、右は80’sのスパターバズ
サーフェスリグは昔のフレッドアーボガストのリグをもっと薄い素材で雑に作った感じの、良くも悪くもコーモクオリティ。
当時のコーモランは既にジッターバグやフラポッパーもパクっていたので、サーフェスリグもこの辺りのリグから型取りしたんじゃないかと邪推してみたり😁
他のコーモランルアーの様に、このビッグボーイにもネームプリントありません。
コーモランのルアーはカタログなどの情報量の少なさに加えて、ルアーにネームが入っていないのでなかなか身元が確認しづらくなってるので、ネームプリントは欲しかったですね。
当時のコーモランはルアーの名前がディープの1〜4とかトップの1〜4などと超テキトーな上に、途中で改名される事もあるなど、アバウトを極めていたのでプリントしようにもできなかったのかもしれませんが。
まとめ
子供の頃に慣れ親しんでいたルアーに郷愁を感じ、おっさんになってからコーモランの沼にハマる人を数多くみてきました。
そんなコーモフリークですらこのビッグボーイは高くて手が出ないなど半ば伝説化しているルアーではありますが、ワカメカラーでなければそれほど高騰していないので、タイミングが合えば入手できるかもしれません。
もし入手できた暁には、イライラするほどのアンコントロール性と情けなくなるぐらいのチープ感が楽しめますので、心ゆくまで堪能してみてください。