その昔「人は見た目が9割」という本が売れたことがあったが、ニンゲンはどうしても見た目で判断しがち。
それは人だけでなくルアーにもいえること。
しかしルアーの外見に頼ると肝心の実力を見誤ってしまうことも。
今日紹介するふく零はそんなルアーの筆頭かもしれません。
ふく零とは
ふく零はダイワがリリースしたクランクベイト。
ふく壱やふく鯰を兄弟に持つ、「ふく」シリーズのスーパーシャロー担当として発売されました。
近年のダイワは知らない間にいろいろ出して、知らない間に消えていることが多かったのであまり興味がなかったけれど、ウェイクベイトはのんだくれの大好物なのでゲットしてみました。
正直なところ出来損ないのおぼっちゃまくんのようなペイントアイが気に入らなかったけど、往年の名作バスハンターちっくなテイストが気になったというのも購入の理由。
しかし実際使ってみると、これがなかなかの手練だったのです。
ふく零のサイズ・重さ
ふく零のスペックは53ミリ、14g。
このサイズのクランクベイトにしてはしっかりと重量がある固太りタイプに仕上がっています。
ちびふく零とだいふく零が揃った3サイズでの展開を量販店で見かけたアングラーも多いことでしょう。
それぞれに特徴があるので、今回はふく零に焦点を絞って紹介したいと思います。
ふく零の仕様
キレと耐久性を生むサーキットボードリップ
ふく零の特徴はなんといってもこの屹立したサーキットボードリップ。
ボディ幅と同等に張り出したリップはいかにもな形状で、ウェイクベイト好きの脳髄を刺激してくれます。
アクションのキレを狙っている点にも思わずニヤリ。
これだけのサイズのリップをボディ一体成型にすると強度確保のため、どうしても厚みが出てしまいウェイトバランス的にもよろしくないのでこれはナイスチョイス。
高浮力を生むファットボディ
そしてクランクベイトのキモでもある浮力はボディ容積を大きく確保することで実現。
米国のハンドメイドクランクを彷彿とさせるファットなテール形状は、シリーズ共通のボディデザインとはいえ期待値が高まります。
低重心を実現する専用ウェイト
そんな暴れん坊の浮力をコントロールする重心担当は専用設計のウェイト×2。
実売800円そこそこのクランクベイトで専用ウェイトにサーキットボードリップを装備しているのはなかなかのコストパフォーマーではないかと。
グラスラトルのチキチキ音
音響は大きめのグラスラトルが担当。
グラスラトルというとシャラシャラ系サウンドを想像しがちですが、約6mm径のラトルは他にはあまり見られないチキチキなヒット感でアングラーに聞こえるのはもちろん、水中にもよく響くよう調律されています。
これは音質はどうあれウェイクベイトにはラトルが必須と断言するのんだくれにとっては嬉しい仕様。
金属ラトルのウェイクベイトとでローテーションを組みたくなります。
拡充性にも考慮したヒートンハンガー
そして前後のフックハンガーにヒートンを採用しているのもふく零のウリのひとつ。
よくあるエイトリングではなくオープンアイヒートンをカップ状になったボディにねじ込むことによってWフックやブレードなどチューニングの拡充性を見越した仕様になっています。
この価格帯のクランクでここまでやり込んだ開発者の気合いには脱帽せざるを得ませんね。
アクションは超絶ローリング
気になるアクションは背中を左右に大きく振る超絶ローリングアクション。
やや前傾姿勢からの立ち上がりも申し分なく、低重心ウェイトがしっかり仕事をしてくれるので泳ぎも安定しています。
このカテゴリーにはストームのアラシラトリンウェイクというパワープレイヤーがいるので、リップサイズの割に泳ぎが小さい気がしないでもありませんが、この価格でこの泳ぎが手に入るならモウマンタイでしょう。
潜行深度は20cm程度。
ロッドティップを下げた状態でもジュブジュブとバブルを伴った引き波が出せるので、護岸沿いの超シャローを撃ったり、ウィードトップをかすめるようなじゅうたん爆撃をしたりとSSR/ウェイカーとしての仕事はバッチリこなせます。
個人的にはクランクではあまりやらないけれど、移動距離を抑えた首振りも可能なのでアシ際をイヤらしく攻めることも可能だったりします。
しかし長所があれば短所もあるのが世の常。
このふく零にも弱点があります。
それは水面へのクラッチ感というか、食いつきが弱いこと。
この手のルアーはふく零に限らず、波っ気のある状況にはあまり強くありませんが、ふく零はちょっとしたチョッピーウォーターでもウェイカーとして使うとすぐにトビウオになってしまうのです。
ウェイクベイトの名品と名高いバンディットのフットルースは、ある程度の波があっても水面にへばりついて強い引き波を生み出す粘り強さがあるのですが、ふく零は持ち前の浮力の高さとリップの揚力が邪魔をするのかそこまでの根性が見られません。
のんだくれは水面に波が立ち始めたらウェイクベイトの出番だと思ってるのでこれはプチ残念ポイント。
とはいえウェイクベイトに偏執的でないアングラーであれば不満を感じることはないので、あまり気にする必要はないかも。
それよりもこれだけのパフォーマンスがこの価格で手に入るというメリットに注目すべきでしょう。
イマドキのダイワらしいカラーリング
カラーはささ濁りグリッターと命名されていますが、要はトランスパレントボディにチャートブラックバックを載せたクラシックカラー。
このカラーが欲しかったわけではなく、単に内部構造が見たくてこの色を選んだという実にオタ的な動機からでしたが、実際にフィールドで使ってみると、太陽光に当たったチャートはささ濁りでも強い明滅を放ってよく見えるのでネーミングの妙に思わずニヤリw
しかし決定的にダメダメなところも。
それがこのペイントアイ。
ベイトフィッシュ系からアトラクター系までいい感じのカラーチャートになってるのに、この目がそれを台無しに😩
ルアーとしての個性やアイデンティティを確立したいという気も分からんでもないけど、この目はなんとかならんかったんでしょうか。
もちろん個人的な好みであることは重々承知の上なんだけれど、ルアーとしてのパフォーマンスが平均点以上なのでこれは残念すぎる。
この目が嫌でスルーしているアングラーも少なからずいるはず。
せめてもの救いは3Dアイではないので塗り直しができる事でしょうか。
参考までにふく零に違うタイプの目を入れたらどうなるかをフォトショップで作ってみました。
皆さんはどう思います?w
近過ぎてむしろ絡まないフック
フックは前後とも#4サイズを装備。
フック同士を近づけるとむしろ絡みにくくなるというフラポッパー方式といったところでしょうか。
このサイズのクランクにこの番手は不釣り合いな感じで他ではあまり見られませんが、ウェイクベイトはミスバイトが多いルアーだけに#4サイズが使えるのはナイス。
ネーミングのダサさは史上最低級
ネームプリントは腹にダイワロゴと日本語でプリントされています。
が、このふく零というネーミングにも疑問を感じてしまいます。
これに限らずふくシリーズ全体に言えることなのですが、まず名前の響きがイマイチなので覚えにくい。
ふぐからインスパイアされたっぽいのですが、全然耳に残らないのです。
そして壱とか零とかの展開もそれに拍車をかける形になってしまってるのです。
国産ルアーとしてのオリジナリティだとかのコンセプトは理解できるけれど、ルアーの性能とはかけ離れたものになってしまってる。
リブンシケーダやマウスウォッシャー、ザ・リーガニーなど国産ルアーネーミング史に名を残してきたダイワの命名とは思えないダサさなのです。
そういう意味ではこの名前に最終的にGOサインを出した責任者は、過去のダイワルアーの栄光に泥を塗ったと言っても過言ではないでしょう。
もし遊びゴコロの表れだと思ってこの名前にしたとしたら、ダイワルアーには未来がないなと。
今からでも遅くないので改名を再考すべきではないかと。
どこでも手に入るお手軽さ
そんなふく零ですが、入手は超カンタン。
いつでもどこでもカンタンに手に入るお手軽さ。
中古市場にもそれなりに流れてはいますが、この価格なら変に安い中古品を探すよりも量販店で新品を入手した方がコスト的にも釣る機会損失を無くす意味でもベター。
これだけカンタンに入手出来るのは日本にルアーフィッシングが根付く前から綿々と綴られてきたメジャーブランドならではの流通網の強みでしょうね。
もちろん背景にある日本独自の問屋システムも入手しやすさを後押ししています。
中間マージンが価格を底上げしてるなど何かと批判されがちな問屋流通ですが、問屋という存在がなければこれほど手軽に入手することは出来ないのは疑う余地のない事実。
米国では問屋というシステムが日本ほど機能していないので、小売店が多品種を仕入れるのは想像以上に大変な作業。
日本はアングラーが思っている以上に釣具流通天国なのです。
おわりに
ルアーは実際に使ってみないと分からないのでどうしても見た目に頼ってしまいます。
ゆえに小さな欠点が気になるあまり大きな長所が見えなくなるという弊害が。
アングラーたるもの見た目だけに一喜一憂しない確固たる信念と本質を見抜く目を持ちたいものです(自戒😭)