バスフィッシング黎明期のダイワの意欲作
指先一つであらゆる情報が得られる現代とは違い、80年代のバスフィッシング黎明期は雑誌やカタログなどの紙媒体、そして釣具屋の店頭が全ての情報源でした。
もちろん当時からTV釣り番組など映像メディアも有るにはありましたが、ルアーフィッシング自体がまだまだマイナーな存在であったため、バスフィッシングが取り上げられることは年に数回しかありませんでした。
それゆえ釣り番組でバスフィッシングが放映されるとなると、11PM以上にチンコを硬くしてブラウン管に食いついてましたね😁
そんな、誰もが情報に飢えていた時代にリリースされたのがこのザ・ミノーでした。
リアルハンドメイドミノーへのダイワからの回答
ザ・ミノーはダイワが86年にリリースしたルアーです。
当時は高度なフォイルワークとペイントを駆使した超リアルなハンドメイドミノーがトラウト方面で話題になっており、その分野にダイワが挑んだ意欲作でもあります。
今でこそ違和感はなくなりましたが、当時のハンドメイドミノーはとてもバス少年が買える代物ではありませんでした。
エンドウアートクラフトのウッドベイトに代表されるリアルミノーは当時でも軒並み5,000円以上、製品によっては10,000超えという異次元プライス。
当時高価と言われていたへドンやバグリーですら1,500円ぐらいでしたから、ハンドメイドミノーは手が出るとか出ないとかのレベルを超越した、眺められるだけでラッキー!ぐらいの存在でした。
そこに” リアル” を謳い文句にした安価な量産ルアーが登場したんですから、そりゃバス少年たちが食いつかないワケありません。
ダイワの強みを最大限に生かしたプロモーションによって送り出されたザ・ミノー
ダイワはこのザ・ミノーを自社の強みでもあるマーケティング力と強大な販売チャネルを駆使して大々的にプロモーションしました。
店頭にはプロモーション用のポスターが貼られ、ザ・ミノー専用にチラシも配られ、ダイワのルアーを買うとオマケでザ・ミノーのステッカーがもらえるなど、素人考えながらお金がかかった販促がされていたのを記憶しています。
当時の必殺技でした。
サイズは全く選べませんでしたがw pic.twitter.com/9sLYa5tpaS— ルアー千一夜☆公式 (@lure1001) February 25, 2021
新製品情報はもちろん、ありとあらゆるバスフィッシングネタに食いついていた頃ですから、このプロモーションはのんだくれのハートに深く刺さりました。
もうダイワの思うがままです。
国産ルアーの価格相場を大きく上回る1,200円という値段でしたが、ハンドメイドリアルミノーに比べたら激安?だったので躊躇なくバイト。
まあこの価格設定からの心理行動もダイワの計算通りなので、のんだくれは見事に釣られたワケですが。
その頃の自分は、まるでルアーを見たことがない無垢なバスでしたね。
すぐ釣られちゃうトコは今でも大して変わってませんけど😭
ザ・ミノーのサイズとバリエーション
ザ・ミノーのサイズは11cm。
一番最初にフローティングモデルが登場し、その後サスペンドがリリースされます。
画像のものはサスペンドで重量は実測9.2g。
のちに(確か翌年?)リップを別パーツに差し替えたポッパータイプがリリースされます。
それぞれに長所短所が有るのでここでは全部書ききれませんが、のんだくれはどのタイプにもお世話になりました。
9cmの食べごろサイズも一緒にリリースするあたり、ダイワのちゃっかり具合が見え隠れしていますね。
当時の技術の粋を集めた造形とペイント
このルアーの最大の特徴はなんといっても繊細なペイントでしょう。
プレデターの注意を引く大きな目、ベイトフィッシュのウロコの光具合も考慮したペイント技法など、それまでの量産国産ルアーとは一線を画した “リアル感” のインパクトは当時なかなかのものでした。
タックルボックスのルアーを眺めてニヤニヤするのに十分耐えられるクオリティとでも言いましょうか、当時としてはかなりのクオリティでしたね。
しかし、意に反してイマイチだったルアーとしてのパフォーマンス
が、しかし。
造形や見た目に注力してしまったせいか、ルアーの性能面ではイマイチ感が拭えないのも事実でした。
分厚いリップが足を引っ張るのか、動きが超もっさりなのです。
特にこのサスペンドモデルは泳ぎのレスポンス性が低く、トゥイッチ程度ではあまり動かず、リトリーブでも割と早く巻かないと泳がないというちょっと残念なレベル。
フローティングの方はそんなに悪くないんですが、サスペンドモデルはラトルを入れて浮力を殺すことだけに気を取られた感が否めません。
とはいえ当時はこれでもちゃんと釣れてたんですから、やっぱり時代だったんでしょうね。
それともI字系を先取りしてたのか?😁
フックによってボロボロにされてしまう最新の塗装
フックは当時のオリジナルのまま。
ロウ付けのもっこり感がいかにもな古さを感じさせますね。
このザ・ミノーは塗装のナチュラルさにこだわったせいか、トップコートがほぼ無いに等しく、ちょっと使うだけでフックサークルがついて塗装がボロボロに。
フックサークルで塗装がダメになるならまだしも、ボックス保管で擦れるだけでもダメージに。
ゆえに中古屋などではコンディションの良いものにはなかなか出会えません。
リアルさにこだわったのならば、せめて耐久性にも配慮して欲しいと当時は思ってましたが、そういった経験を積んで今のダイワがあると思うと、これはこれで酒の肴になったりもします。 …って結局なんでもエエんかい。
ダイワの自信が漲るネームプリント
腹のネームプリントとリップにエンボスモールドされた旧デザインロゴからはダイワの自信が伝わってくるようですね。
しかしなんでダイワは旧ロゴをやめちゃったんでしょうか。
今のロゴも悪くはないんですが、なんと言うかちょっと威厳が感じられないんですよね。
日本航空が伝統の鶴丸ロゴを捨てた時の失望に似たものを感じてしまいます。
JALのように原点回帰して、ダイワ製品に太陽ロゴが刻まれる日はくるんでしょうか… ってないだろうなー。
まとめ
このザ・ミノーはアクションの鈍重さがネックとなり、トラウト方面でも大きな釣果を残すことはできませんでしたが、その後クルーカーやTDミノーの礎となるなどダイワのルアー史に大きな布石となったのはみなさんご存知の通り。
今のルアーと比べたら明らかにパフォーマンスは劣るルアーですが、良くも悪くも無機質なグローブライドダイワルアーとは違ったテイストが楽しめるという意味では是非とも使って欲しいルアーのひとつです。
その時のタックルはいうまでもなくアモルファスウィスカーとマグサーボでね😁