近年マーケティングにおいて無視できない存在となったインフルエンサー。
SNSで注目を集めている人物やアカウントが商品やサービスを告知するという基本的なスキーム以外にも、インフルエンサー自身がオリジナル商品を開発販売するという流れを生み出し、その手法はもはやスタンダードと言えるまでになりました。
もちろんそれはルアーの世界にも。
今日紹介するスカウトは、そんなインフルエンサー発信型として成功したルアーです。
スカウトとは?
スカウトは2020年にリリースされた比較的新しいルアー。
しかし新参ながらも既にグーガンスクワッドの主力商品の座に君臨する、名実ともに実力派のジャークベイトです。
え?そもそもグーガンスクワッドって何よ?という方がほとんどだと思うので、ルアーのノー書きをタレる前に先にそっちを説明しておきましょう。
グーガンスクワッドは釣りYouTuber集団が主体となって2015年?に設立されたブランド。
LunkersTVのロバート、LakeForkGuyのジャスティンをはじめ、5つの人気バスフィッシングチャンネルの所有者が発起人となって始まったプロジェクトです。
最初はよくあるチャンネル同士のコラボ程度の活動でしたが、その展開に勝機を見た投資会社が入った事により法人化され、本格的にフィッシングインダストリーに参入して急成長を遂げます。
そして現在ではルアーのみならずロッド、ターミナルタックル、アパレルを扱うまでになり、バスフィッシング総合ブランド化を狙う注目株となりました。
そんな過程でルアーブランド、キャッチコー Catch Co.とのコラボレーションという形で誕生したのがこのスカウトなのです。
スカウトのサイズ・重さ
スカウトのサイズは110ミリ、13.8g。
一般的な3フッカージャークベイトとほぼ同等のスペックでレッドオーシャンに挑んでいます。
このモデル以外に4インチのJr.サイズもラインナップするなど全面戦争の構え。
そしてそんなタフな市場に殴り込みをかけただけあって、よーく考えられたジャークベイトに仕上がっています。
スカウトの特徴
個性的なヘキサゴナルボディ
スカウトの特徴は平面と曲面をうまく融合させたデザイン。
ジャークベイトには珍しく、背中がほぼフラットになっているのが目を引きます。
そしてサイドからベリーにかけては過度に直線が出ないよう柔らかなラインで平面をつなぎ合わせた逆デルタに近い独特の六角形ボディを実現しています。
細くシャープに絞り込まれたノーズ部とは対象的に、ワイドでバルキーなボディも個性的。
近年の、よりミノーライクでナチュラルな見た目に振ったジャークベイトを見慣れた目にはちょっと奇異に映るかもしれません。
さらにさらに。
スカウトはテールに行くに従ってボディ断面が扁平になっていくという複雑な形状になっています。
最初はインパクト狙いとはいえ面白いカタチだなーとしか思っていませんでしたが、実際に使ってみたところ、この形状が持つ重大な意味を知ることに。
ビジュアル的にもインパクトのある固定重心を採用

画像出典:tacklewarehouse
そしてウェイトシステムも個性的。
この手のジャークベイトに多用される重心移動システムは採用せず、5mm径のスチールボールをズラリと8個並べるという完全固定重心となっています。
同様の手法を採用したジャークベイトにシマノのJMシリーズがありますが、スカウトはそれよりもはるかに大きなウェイトを使っているところにも注目。

このウェイトが生み出す効果については後述しますが、シンキングミノーかと思ってしまうほど大量に詰められたウェイトはビジュアル的にもインパクトありますね。
個人的には空き部屋になってる一番後ろのチャンバーが今後の新展開のイントロのような気がして仕方ないんですがw
ラフに当てても安心の強靭リップ
そしてジャークベイトの命とも言えるリップは裏側をステイで補強。
リップラップなどハードな構造物が続くエリアでも派手にリッピングしたいのんだくれのようなアングラーでも心置きなく使える強靭仕様になっています。
ジャークベイトのリップ強度はほとんど話題になりませんが、過去に何度もリップを昇天させて涙を飲んだ事があるのんだくれにとってかなり重要なファクター。
どのルアーとは言いませんが、某社のジャークベイトでは何度も泣かされただけに、裏に補強ステイが入ってるだけでポイント3倍デーになるのです。
”跳ねて止まる” 瞬間移動アクション
スカウトのアクションは、”跳ねて止まる”。
この言葉に尽きます。
軽くムチを入れると約70度の前傾姿勢から大きく横にダートするのですが、その動きは ”飛び跳ねる” という表現がピッタリ。
そして多面体ボディを妖しくギラリとさせながら急停止します。
しかもそれは慣性移動なしの完全停止。
急停止ができるジャークベイトはいくつも存在しますが、スカウトはその中でもトップクラスのブレーキ性能です。
その秘密はやはり背中のフラット形状と固定ウェイト。
スカウトはダートした後、背中を前にした逆立ち状態となり、ヘッドからテールまで全身で水の抵抗を受け止めることで急停止するのですが、ボディの下に大きな重心があるので、どんなに激しくジャークしてもすぐに体勢を整えて前傾ブレーキ姿勢に入るのです。
この挙動を一番最初に見た時はちょっとした感動すら覚えました。
そしてメガバスのワンテンを一番最初に投げたときの事も。
ワンテンも大きなダートと急停止が得意なルアーですが、もしかしたらスカウトはそれを上回っているかもしれません。

スカウトとワンテン(右)
乱暴な言い方ですが、ワンテンは小さなリップで水を切り裂きボディを倒してブレーキにしているのに対し、スカウトはシャープなヘッドで水を裂き、リップで前傾姿勢にして背中でブレーキをかけるという感じでしょうか。
それぞれアプローチの仕方は違いますが、両者とも目を瞠るようなパフォーマンスなのです。
しかもスカウトは泳ぎもイイのです。
立ち上がりはローリングアクションですが、クランキンスピードになるとフロントフックあたりを支点とした大きなウォブリングが加味されます。
その泳ぎはエックスのように見える大きな振り幅で、ミノーらしからぬブルブル感とチキチキラトルサウンドを発生。
つまりクランキンミノーとしても十分使えるレベルに仕上がっているのです。
更にサスペンド精度が非常に高い。
フロロ使用を前提に開発されているのでナイロン使用だとスローフロートとなりますが、ナイロンでも調整さえすればかなり精度の高い ”だるまさんがころんだ” を楽しむことができます。
前情報のないマイナールアーを購入するのはなかなか勇気の要ることですが、たまにこういう極上レベルのルアーに出会えるからやめられないんですよねーw
フラッシーなカラーとの相性はバッチリ
そんなアクション特性にマッチしたカラーが揃っているのもスカウトの特徴です。
画像はイエローパーチとされているカラーですが、一般的なイエローパーチパターンとはちょっと違ったフラッシュ強めのタイガーバーパターン。
そしてベースにはビックリマンシールでいうところの扇プリズムを採用してアピールを高めています。
しかし全身をプリズム化するのではなく、ボディ下部はあえてトランスパレント/ゴーストにすることでアクション時の明滅効果を狙うなどなかなか狡猾なところもw
カラーチャートにはフラッシュ系でないペイントカラーもありますが、半数以上をフラッシーパターンが占めているのはやはりデザイナーがこのルアーの特性を一番理解しているということなんでしょう。
また、グーガンスクワッドメンバーのほとんどがステイン〜マディウォーターの多い米国南部在住ということもフラッシーカラーが多い理由かも。
つまり彼らがプロモーション用の実釣YouTube動画を撮るのは南部エリアであり、それらの水域で最も効果が見込まれるであろうカラーを多くラインナップしてるんじゃないかと。
どうです?のんだくれの相変わらずな妄想w
フックは好き嫌いが分かれるかも
フックはこのサイズのジャークベイトには珍しく#6サイズが装備されています。
#4フックのジャークベイトを見慣れたアングラーにはちょっと小さく感じるかもしれません。
大きなダートアクションを実現するためにフックサイズを小さくしたのかと思い、#4にサイズアップしたものも試してみましたが、挙動自体に大きな変化は無かったので#6サイズである理由はワカリマセン。
のんだくれはデフォルトのまま使ってますが、今のところ不満はありません。
いや、不満がないどころかむしろこのフックはなかなかイイのです。
米国製ルアーのフックにありがちなダルな感じが全く無く、まるでイチカワフィッシングのカマキリのような鋭さがあるんです。
ジャークベイトアングラーなら誰しも経験あると思いますが、ポーズ時にモゾッとしたバイトともいえない弱いバイトが出ることがあります。
バスが明確にルアーを咥えるのではなく、鼻先で突付くような、あるいはバスがルアーの真横で反転したときの水流を感じるような弱いバイトのことですが、おそらくこのフックはそういったバイトにも対応できるんじゃないかと。
このルアーを製造しているキャッチコーはフックのブランドを公表していないので、おそらく中国のサプライヤーのものだと思いますが、こういうのが出てきている現在の状況を見ると日本のフックブランドもうかうかしてられませんね。
目にはブランドロゴが
残念ながらこのルアーにはネームプリントに相当するものはありません。
腹に入っているのは欧州スタイルでルアーの潜行深度表記のみ。
しかもこのルアーではどう頑張っても6フィートには届かない(せいぜい4フィート)ので、無意味な表記になっちゃってます。
やっぱりここはちゃんと SCOUTとネームを入れて欲しかったですね。
ちなみにスカウトとは探査とか調査という意味。
おそらくバスがいるかどうかチェックするサーチベイトとしての意味合いを乗せたんでしょう。
そういえば昔ダイワにもありましたね、クランクスカウターというルアーが。
ネームが無い代わりに、目にはグーガンスクワッドの紋章が入ったデザインアイになっていますが、実はこのロゴがめちゃくちゃ見辛いんです。
画像ではコントラストと明暗を調整してるのでまだ見られますが、現物は肉眼ではほとんど読めないダメダメ仕様。
このルアーだけかと思いきや他のグーガンルアーの目も大して変わらんのです。
これはちょっともったいないですね。
いくら人気があるとはいえグーガンスクワッドという名前はまだ浸透してるとはいえないので、ネームは無いわロゴは見えんわではプロモーション上オハナシになりません。
人気急上昇の新興ブランドにありがちな、みんなオレたちの事知ってるぜ的なアレなんですかね。
実はめちゃくちゃ嫌われてるグーガンスクワッド
みんな知ってるぜの話が出たところで、ついでに米国内でのグーガンの評判についても書いておきましょう。
実はグーガンスクワッド、米国内ではびっくりするぐらい嫌われてますw
嫌われているというよりも熱狂的な支持者と超強力なヘイターHater(日本で言うところのアンチ)の二極にはっきり別れていると言った方がいいでしょう。
嫌われている理由はいくつか挙げられますが、一言で言うなら ”調子コイてるから” 。
グーガンスクワッドのメンバー全員がそうではないのですが、一部メンバーの一部の動画にいわゆる ”カレッジノリ” があることから、それを嫌悪する層がいるのです。
おそらく彼らは楽しい雰囲気を伝えるべくそういう演出していると思うのですが、ストイックに釣りをしているアングラーにとっては面白くないんでしょう。
YouTubeのコメントはもちろん釣りフォーラム(掲示板)でも叩かれており、なかなかの状況になってますw
でもこれ、日本でも同じような状況があるんですよね、気に入らん釣りYouTuberの一挙手一投足を徹底的にディスるという風潮が。
おそらくそれは「俺の方が釣りが上手い」とか「そのぐらい俺だってできる」という嫉妬と羨望の心理が渦巻いているがゆえの行動だと思いますが、それにしてもみっともない。
特にグーガンスクワッドは製品を販売していることもあり、釣りを知らないビギナー層を食い物にしていると罵られるだけでなく、グーガンに出資しているバスプロ、スコット・マーティンやロッドブランドのフェイバリットにまで批判が飛び火するなど、かなりのところまでイッちゃってます。
ネガティブな部分が浮き彫りになるのはSNSが持つ負の部分である意味仕方ありませんが、グーガンスクワッドの躍進にとってそれが足かせになっているのは否定できない事実かと。
おわりに
インフルエンサー発信のタックルは今後も増えていくことは間違いないでしょう。
一部ではインフルエンサーマーケティングはオワコン(←この言葉自体がもう終わってるんだけどw)だとの話も出ていますが、人々の手にスマホがある限りこの流れが大きく変わることはないかと。
日本でも既にオリジナルルアーを開発/販売しているYouTuberが居ることを考えると、10年後はSNS発信のルアーがもっともっと幅を利かせているでしょうね。
それを嫌うかどうかは本人次第ですが、感覚的な好みだけで判断した結果、このスカウトのような珠玉の逸品を逃すことになりかねないのはもったいないと思いません?