今日は激シブ系のルアーで攻めてみましょう。
帝王ラパラの牙城を崩すべく、ガルシアフロッグで有名なあのガルシア社が1970年代に世に放った刺客、その名もフィンランディアミノーでございます。
フィンランディアミノーとは
その名の通り、コイツはフィンランド生まれのミノー。
欧州ではウォブラーと呼ばれるカテゴリーのものですね。
ウッドボディにフォイル貼りフィニッシュ、ブラスのワイヤーワークに、テスト中しながら少しづつリップを削った痕が生々しいルックスとくれば、間違いなく北欧産。
フィンランディアは当時北米におけるラパラの勢力拡大に勝機を見出したアンバサダーの北米代理店ガルシアがフィンランドから引っ張ってきた秘密兵器の一つでした。
日本にはあまり伝わってきていませんが、当時北欧でのラパラの人気は相当なもので、その恩恵にあやかろうと登場したラパラのフォロワーはまさに雨後の筍状態。
クサモンやニルズマスターなどは当時日本でも流通していたので覚えている方も多いでしょう。
そんな玉石混交ひしめき合う中でガルシアのお眼鏡に適ったのがフィンランディアだったというワケです。

フィンランディアミノーのオリジナルモデル15cm ラパラとそっくりだがこのサイズでも2フッカー方式を採用
フィンランディアミノーのサイズ・重さ
フィンランディアミノーのサイズは90ミリ、14g。
ウェイテッド(=Weighted)という名前の通り、シンキングモデルなので結構な重量感です。
同サイズのラパラカウントダウンが12g前後なのでサイズ対比で考えると、ちゃんと泳ぐのか不安になる重さです。
正直なところ、のんだくれはこのルアー自体にあんまり興味はありませんでした。
だって入手経路すら思い出せないくらいなんですから。
でもこのルアーには一つだけ気になった事があったのでゲットしたのは覚えてます。
その気になった事とは…
ミノーらしからぬピンコ立ちリップ
ジャーン! このピンコ立ちリップです。
この垂直にいきり立ったリップがのんだくれの琴線をピィーン!とハジいてくれちゃったんです。
ミノーなのに垂直リップ? どんな動きするんでしょ?と思い始めたらもう止まらない。
ということで、お決まりのコースです。
結論から言っちゃいますが、肝心のアクションはどって事ありませんでした。
いわゆるフツーのミノーのアクション。
スモールフライシャッドの垂直リップ版の超絶バタバタアクションを想像していただけに、ちょっと肩スカシを喰らっちゃった感じ。
トローリング用ファーストシンキング
ただアクションよりものんだくれが感動したのは、こいつったら超ファーストシンキングだったこと。
特に体を震わせるわけでもなく、ほんの少しだけ頭を下げた姿勢で真っ直ぐにボトムへと急ぐその姿はどこか潔さすら感じさせるほど。
わざわざウェイテッドとネーミングしてるくらいだから、それなりの早さで沈むんだろーなとは思ってましたが、まさかここまでとは。
オカッパリで使うときは、リトリーブ中もロッドを高く保持してないと知らない間にボトムを掘ってます。
しかしこれはキャスティング用ではなく、ライトトローリング向けに開発されたものなのでその沈下速度の速さは当然の事。
レッドコアラインやダウンリガーを使わずにルアー単体である程度の深度までルアーを届けようとすると、この重量がなければ使い物になりませんから。
お約束のクチベニも
ラパラに対抗してたのか、それとも単に当時のトレンドだったのかは知りませんが、コイツもしっかりクチベニ塗ってます。
しかしラパラのそれとは正反対の、真っ赤なルージュベタ塗り仕様。
ラパラがヘルシンキの高級住宅街にお住まいの高貴な貴婦人だとすると、このフィンランディアはひと昔前のカッリオ地区に蠢くドラァグクイーン的な… なーんて言ったらガルシアファンに怒られそうだな😁
しかしホイルは通称スターホイルとよばれるパターンでマニアの心をくすぐります。
そういえばラパラの100周年記念モデルでしたっけ?
アレもこんな星型フォイルになってたけど、コイツとは何か関係があるんですかね?
のんだくれはラパラの歴史にはイマイチ疎いのでどなたかご存じの方がいらっしゃったらご教授下さい。
フィニッシュであることを強くアピール
通称ハラマキの上にはメイドインフィンランドの文字が燦然と輝いてます。
ルアー自体のネームもないのに製造国だけをスタンプしているのは、あの当時アメリカ市場では、フィンランド製ミノーであるという事が一種のステイタスというか品質の証だったから。
文字からはフィニッシュ(=Finnish、フィンランド人)であることのプライドが感じられます。
70~80年代のメイドインジャパンと同じですね。
ちなみに本国フィンランドではフィンランディアミノーという名前ではなく、オリジナルフィンランディアウィスティンOriginal Finlandia Uistinと呼ばれています。
ウィスティンとはフィンランド語でルアーやエサという意味なので、さしずめ純正フィンランド製ルアーといったところでしょうか。
しかし北米マーケットでウィスティンの名称をそのまま使ってもナニソレ?になるだけなので、売りやすいようにフィンランディアミノーにしたようです。
フックはラウンドベンドだが…
ブラスのフックハンガーにぶら下がるフックはラウンドベンドタイプですが、おそらくこれは交換されたもの。
先出のオリジナルウォブラーがマスタッド風味のロングシャンクであるので元々はこのルアーもそれと同じタイプが装着されていたと思われます。
既にフィンランディアが存在していないことから、ラパラとの覇権争いに破れたのは言うまでもありませんが、こういうルアーを見ると当時のメーカーの欲望が垣間見えて面白いですね。