バスフィッシングに限った話ではありませんが、いつの時代も新製品は気になってしまうものです。
車にファッション、スマホにグルメなどなど、ついつい新しいものに目が引かれてしまうのは人間の哀しい本能なのかもしれません。
しかしそんな本能を理由に、楽しい思いをさせてくれるルアーから遠ざかってしまうのは超もったいない話。
ということで今日は本能に逆らってでも使って欲しいオールドタイマー、バグリーのバルサB3のオハナシです。
バルサB3とは
バルサB3は1954年にデビューしたバグリーブランド初のプラグです。
BBの通称で知られており、往年のアングラーならば誰しも一度は使ったことがあるという定番中の定番ルアーですね。
かの老舗アウトドア雑誌、Field & Streamが選ぶ ”The 50 Greatest Lures of All Time”の表紙を飾っていることからも、いかにバルサBの知名度が高く、そして信頼されているかを知ることができます。
我々日本人にとっては、大森貴洋プロに2004年バスマスタークラシック優勝をもたらしたルアーと言った方が馴染みがあるかもしれませんね。(大森プロはB2を使用)
バルサB3のサイズ・重さ
バルサB3は全長75ミリ、自重15gのフルサイズクランクベイトです。
製造期間が長いことと、大人の事情で何度も工場や仕様が変わるなどしたため、製造時期によって若干のブレはありますが、おおよそこのサイズに収まっています。
ボディサイズによってB1、B2、B3、B4と四兄弟がラインナップしており、それぞれ頭に ”D” の文字が与えられたダイビングモデルが控えているため(除くB4)、バルサBシリーズは結構な大所帯。
それぞれのモデルに特徴があって使い所も変わってくるため、それがガチクランカーの財政を圧迫する原因にもw
ちなみに画像のモデルは90年代終盤のドミニカ製。
良くも悪くもバグリーのターニングポイントとなった時期で、古くからのバグリーファンにはガマンならないとされているモノですが、それに触れるとエンドレスになるので今回は蓋をしておきましょうw
バルサB3の特徴
バルサBの特徴はなんといってもフルサイズのバルサボディとそれを制御するスクエアビル、そしてクラシックなペイントスキームです。
プラスチック製クランクベイトが主流となった今でも存在感を誇示しつづけられるのは、その背景に数多の実績があるからでしょうね。
かつては流行りに乗ってホログラムやナチュラルカラーに浮気してしまった時期もありますが、遠回りをした事で自身の強みに気付いて原点に戻るあたりはどこか人間っぽさも感じさせてくれますね。
バルサB3のアクション
気になるアクションはローリングとウォブリングが程よくブレンドされたキレのある動き。
バルサだけにアクションレスポンスは素晴らしく、リトリーブ開始と同時にレブカウンターも振り切る感じで泳いでくれます。
この立ち上がりの早さとキレを見ると、プラスチック製クランクがどう頑張っても超えられないのではないかとすら思ってしまいます。
バルサBシリーズはサイズの違いによってアクション特性も変わりますが、イメージ的にはB3が最もベイトフィッシュの逃走アクションに近いと認識しています。(サイズが小さくなるに従ってウォブリングが強くなる)
バルサB3の使い方
バルサB3は巻いてよし浮かせてよし障害物に当ててよしのマルチプレイヤーなので、あらゆる使い方に対応します。
特に大きく張り出したレキサン樹脂リップの仕事ぶりは素晴らしく、水深3フィート前後までの倒木やブッシュなどのタフカバーをキモチ良いほどに躱してくれます。
個人的にオキニの使い方は超ファーストリトリーブからの急浮上。
大昔の雑誌にあった ”急浮上するクランクは水面へ逃げるベイトを連想させるのか、バスが本能的にアタックしてしまう” というヒロ内藤氏の記事を読んで以来、バルサB3を急浮上パターンの先鋒として投入しています。
バルサB3はその体躯ゆえ浮力が大きく、ピリピリとした早い横移動からの垂直急速浮上という動きの変化が最も演出しやすいのです。
浮力が高いと言われているプラスチッククランクでも同じ演出はできないので、これこそバルサB3ならではの使い方ではないかと。
それ以外の使い方としてはスローなウェイキング&ストップ。
これはスローでも瞬時に立ち上がるレスポンスを活かした使い方ですが、プラスチック製のウェイクベイトには真似できない短距離で刻んでいくことができるのでオーバーハング奥の小さなシェードなどプロダクティブゾーンが小さいスポットで有効です。
バルサB3には重大な欠点も
バルサ材ゆえの強度の低さ
しかし良いことがあれば悪いこともあるのが世の常。
バルサB3にも欠点はあるのです。
それは柔らかいバルサ材ゆえ、強度が低いこと。
使っているうちにどうしても塗膜が割れて浸水してしまうのです。
どこかにぶつけようものなら瞬時に凸凹になってしまいます😭
バルサ材には軽くてレスポンスが高いという大きなメリットがある分、対極となるデメリットも大きく、中にはこのデメリットを相容れないとするアングラーもいるほど。
ルアーは釣れば釣るほど愛着や信頼が増すものなのに、釣るほどに寿命が縮まるのはアングラーにとって辛いものがありますからね。
特にプラスチックプラグの強度に慣れてしまった世代には難しい問題でしょう。
バグリー自身もその辺りは重々承知しており、長年にわたって塗膜強化に取り組んできました。
そしてヤルモによって再生された近年のバグリーでは、” Victory Is Not Pretty(栄光はキレイ事では済まない)” と、ボディの弱さを逆手に取って釣れるイメージを強調するキャンペーンを打ち出すなど、旧バグリーにはなかった取り組みで市場奪回に挑んでいます。
製造時期によっては品質のバラツキも
そしてバグリークランクの最大の問題は、製造時期によって品質に大きなバラツキがあること。
この場合の品質とはモノとしてではなく、泳ぎの品質のこと。
特にドミニカメイドの物は画像の様にワイヤーワークが中途半端で変に捻れているモノが多いため、潜行アングルやリトリーブスピードによって泳ぎにクセが出るものが数多く見られます。
中にはトゥルーチューンでは対応できないレベルのモノもチラホラ。
バグリー全盛期といわれる80年代のモデルではこういった部分はほとんど見られなかったため、これによって旧バグリーファンの反感を買ってしまうハメに。

80年代中頃のBB3。ラインアイワイヤーがねじれていない。
のちに当時のバグリー社長とコミュニケーションしていく中で、この品質は当時としては最善を尽くした結果だと理解しましたが、のんだくれは全盛期を知っているだけにドミニカ期のバグリーには納得できなかったなぁと。
とはいえ、現在のヤルモバグリーはラパラの技術がふんだんに取り入れられているのでこういった不安はありません。
箱出しのまま気持ちよく使うことが出来るのでご安心を。
カラーは伝統のウィンターヘブン流だが…
バルサBシリーズはクラシックプラグだけあって、やはりテネシーシャッドのようなクラシックなカラーリングが似合います。
バグリーの工場がまだフロリダ州ウィンターヘブンに有った頃からの伝統色ですね。
テネシーシャッドの色彩効果については過去のバグリー記事で散々書いてるので、気になる方は過去記事をめくってみてください。
しかしここにもドミニカ品質が出ちゃってるんですよね。
分かります?ボディサイドの黒い汚れが。
これは使用の過程で付いた汚れではなく、塗装の過程で付いたペイント汚れ。
つまり80年代であれば検品で間違いなくハネていたであろう塗装失敗品を、そのまま流通させていたということ。
個人的にはエラー品など製造過程の人間仕事が見えるモノは大好物なので全く気にしていませんが、人によっては失望しちゃうでしょうね。
バルサB3のフック
フックは前後ともブラックニッケルの#2サイズを装着していますが、これはおそらくオフトがオーダーした仕様と思われます。
なぜなら同時期に米国内の店頭に並んでいたバルサBシリーズにはシルバーニッケルフックが装着されていたから。
当時のんだくれがフックを確認したのはB2だけですが、前出のバグリー社長曰く、オフトからは仕様に関する膨大な数の指定が来ていたらしいので、その際にフック指定もされていたと思うのが自然でしょうね。
ちなみに当時の日本は米国内でも流通していないカスタムバグリー製品の宝庫でした。
90年代はメガバスをはじめとした国産ルアーブームでその存在は霞んでいましたが、日本市場だけに007(ダブルオーセブン)やラットフィンクを再生産したり、バルジンリップを持ったSSRなどの日本オリジナルモデルがテンコ盛りだったのです。
これはオフトが頑張ってくれたという事もありますが、それよりもオフトがバグリーと強固に繋がっていたからこそ実現できた偉業ではないかと。
それゆえオフトの廃業は残念でなりませんね。
参考までに80年代バルサB3のリグは真鍮のワイヤーを採用した、通称ブラスハンガーになっており、90年代バグリーとの判別の目安になっています。
2000年代にはブラスハンガー仕様が復刻という形でリリースされましたが、作り込みの品質は90年代のステンレスワイヤーのものと同じなので、あまり話題にはなりませんでした😭
バルサB3のネーム
ネームはご覧の通りハラにレターのみが入った80年代仕様になっています。
B-III のー(ダッシュ)無しネームやバグリーロゴのみのモノも存在します。
ちなみにこの頃の社名はバグリーズベイトカンパニーではなく、”バグリーズ” だけになっています。
おわりに
この数年、日本では今までにないほどクランクベイト熱が上がっており、ハンドメイドクランクをガチで突き詰めているクランカーも多くなりました。
しかしその反面、バルサBやビッグオーなど実力のある往年のクランク達の存在感が薄くなっているのも事実です。
釣りはどこまでいっても趣味なので好きなモノを好きなだけ追っ掛ければいいのですが、”フツーのクランク好き” としてはこういう定番にスポットライトが当たらなくなるのはちょっと寂しい気もします。
冷静に考えると、こんなクラシックなバルサクランクが安定供給されているのは驚くべき事なんですけどね。
ラパラのクオリティを持ったバグリーが、2022年の今でも10ドルそこそこで手に入るって、トンでもないことだと思いません?
いつか手に入らなくなったら、あん時たんまり買っときゃ良かったー!って間違いなくチマナコになるんだから、スペアがすぐに入手出来る今のうちにガンガン使い倒してデカいのを釣りまくっておいた方が、充実したニヤニヤライフが送れると思うんだけど、皆さんはどう思います?😁