国産ルアーと違って、モールド変更などのマイナーチェンジをしてもそれを告知しないのがアメリカンルアー。
そんな内輪の事情を告知する必要ないでしょ?とでも言わんばかり。
中には頻繁にモールド変更したため、製造時期によってそれぞれ違う性格になってしまい ”アメルアのバラつき神話” をより印象づけてしまったケースも。
しかし中にはモデルチェンジごとに明確に違いが分かり、その進化を楽しむことができるルアーもあったりします。
今日紹介するレーベルのジャンピンミノーはそんな進化がわかりやすいルアーのひとつです。
ジャンピンミノーとは
ジャンピンミノーはレーベルが1970年台後半(77年?)にリリースしたスティックベイト。
元々はストライパー用のトップウォーターミノーとして開発され、カタログ落ちと再生産を繰り返しながらも40年以上に渡って販売され続けているレーベルの最古参モデルのひとつです。
2020年、その古参モデルが Back to popular demand!(好評につき再登場) のコピーで、コットンコーデルのレッドフィンミノーと共に復活しました。
しかも新カラーを携えて。
時期を同じくしてへドンもスロープノーズを Forever Heddon Series の一員として復活させたので、プラドコ全体でクラシックモデルをリバイバルさせようという動きがあったんでしょうね。
ジャンピンミノーのサイズ
ジャンピンミノーは全長115ミリ、自重21.5gの標準的サイズのペンシルベイトです。
T20と呼ばれるこのモデルの他に、90ミリ 3/8ozサイズのT10という弟も存在しています。
当初は両モデル揃ってカタログに名を連ねる仲良しコンビでしたが、90年代以降はまるでお互いを避けているかのように交互に登場しては消えてという不思議な立ち位置で販売され続けています。
この背景には米国特有のマーケティングや生産計画もあると思いますが、いつまた生産が終了するのか分からないという危うさからついつい買い足してしまうルアーでもあったりします。
ジャンピンミノーの特徴
ダイビングアクションが得意なヘッド形状
ジャンピンミノーの最大の特徴は、ペンシルベイトでありながらも、ジャークベイト的な性格を持ったルアーである事。
それが如実に表れているのがこのヘッド形状です。
オリジナルザラスプークのように水をアゴの下へ逃して揚力を生み出すのではなく、上へ逃す事でダイブし、ミノー的な動きを演出しやすくなっています。
実際に動かしてみれば、その意図は誰もが理解できるはず。
サーフェスダーターというだけあって、立ち浮きの姿勢からロッドをチョンとやるだけで水面直下を大きくダートし、水中ドッグウォークも思いのまま。
動きはオリジナルザラスプークの系統とはちょっと違いますが、非常に素直なアクション特性に躾けられています。
デビュー当時のカタログには ”The easiest-to-use stickbait ever made” (かつてないほど使いやすいスティックベイト)と謳われていましたが、その広告に偽りはありません。

ジャンピンミノーとウィンドチーターミノー
おそらく開発のスタートラインはレーベルミノーのリップレスバージョンだったんじゃないかと思いますが、レーベルはジャンピンミノーの大ヒットを受けて同型のボディを持つウィンドチーターミノー(現在はボーマーに移籍)を登場させたことを見ると、レーベル的にはかなりの手応えがあったんでしょう。
ウィンドチーターはウィンドチーターでジャンピンミノーとは違う面白さがありますので詳しい話はまた別の機会に。
乾いた高音のワンノッカーラトル
ワンノッカーラトルを搭載しているのもジャンピンミノーの売りです。
5mm径のボールが40ミリのストロークを持つラトルチャンバー内を激しく暴れる事で強く甲高いワンノッカーサウンドを響かせます。
実はジャンピンミノーのワンノッカーサウンドとダートは製造期ごとに少しづつ違っており、これこそが冒頭で書いた ”進化が楽しめるポイント” なのです。
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モデルごとの細かな違いを挙げるとエンドレスになりますが、ざっくり言うとマイナーチェンジを重ねるごとに良くなってきており特にラトルサウンドの進化は目を見張るモノが。
つまりアクション特性もラトルサウンドも初期のモデルより現行モデルの方が良くなっているのです。
現行モデルが良いのは、おそらくスーパースプークのワンノッカー人気に寄せた結果だと思いますが、マイナーチェンジによって旧モデルよりもパフォーマンスが落ちてしまうルアーもある中で、入手しやすい現行モデルが最強に仕上がっているのはユーザーにとっては嬉しい事ですよね。
ジャンピンミノーの使い方
”ジャンピンミノーはペンシルベイトでもありジャークベイトでもある” という特性を理解すれば、使い方はおのずと見えてきますよね。
一番面白いのはやはり水面直下ダートで食わせる方法。
強めにロッドを煽ってヘッドを水に突っ込ませたらそのままテンションをかけるだけで右に左にと面白いようにダートし、止めればすぐに水面に戻ってくれます。
この動きを基本として水面ドッグウォークやポーズを絡め、その日のバイトパターンを見つけるのがジャンピンミノーの醍醐味でもあります。
バスの出方はその日のコンディションによって違いますが、ラッキー13を操作するのと同じように、ダイブさせたら2〜3回チャッチャッとダートさせて長めのポーズ… がのんだくれのお気に入り。
もちろん動かし方に正解はなくそれぞれのアングラーのパターンで動かせばいいのですが、どんな動かし方をするにせよ、自身の演出で魚を寄せるというペンシルベイトならではの面白さが味わえます。
特に魚がルアーを見に来るけれどもバイトまでには至らないという状況ではゲームチェンジャーになることも。
そしてその面白さはバスのみならずシーバスでも。
”ラトル入りのルアーではシーバスは釣れない” という間違った理論が蔓延っていた90年代終わりから00年代にかけて、のんだくれの友人はジャンピンミノーのラトルをカコカコ鳴らしてモンスターシーバスを連発していました。
彼曰く、誰もラトル入りのダイビングペンシルを投げていないので笑いが止まらなかった、と。
冷静に考えてみればストライパー用に開発されたんだからシーバスにも効くのは当然の事なんですけどね😁
ジャンピンミノーのフック
ソルトでも使われることの多いジャンピンミノーのフックは防錆カドミウム処理されたフックが標準装備になっています。
スパークルザラスプークに装着されていたフックもそうですが、プラドコのカドミウムフックは錆びにくいだけでなく、ドッグウォークなどで針先がボディに擦れてもポイントが甘くなりにくいのでのんだくれのお気に入り。
よってノーマルのまま使用しています。
このフックは単体でも売って欲しいですね。
ジャンピンミノーのカラー
かつてはクロスハッチを強力にアピールするカラーパターンが多かったジャンピンミノーですが、90年代以降クロスハッチは全てボディの内壁に刻まれていて、表面はスムースなグロスフィニッシュになっています。
これは外側にクロスハッチがあるとプレデターの鋭い歯でボロボロにされちゃう事への対応策と彩色の自由度を上げるためだと思われ。
のんだくれはログ表面の凸凹によるディンプル効果を薄目で見ていることもあり、スムースフィニッシュの方がダート幅も大きくなると信じてます。

上からチャートリュースアユ、クロームシルバー、ムーンスポット
歴史があるルアーの割にはカラーバリエーションが少ないのもジャンピンミノーの特徴だったりしますが、のんだくれ的にはこの3色は必須カラー。
トランスパレント(ゴースト)系、クローム、ボーン系の3種類です。
チャートアユは新色で初めて登場した透過系でもあるので外せませんし、クロームは言わずと知れた万能色。
ムーンスポットはボーンをベースに淡いブルーパープルが吹かれているのでストライクキングでいうところのオイスター要素が期待できるのと、ブラウンバックがあることで単色ボーンよりも明滅効果があるんじゃないかと信じてのチョイス。
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ぶっちゃけこの辺のカラーチョイスは自己マンの域を出ない思い込みもありますが、ルアーフィッシングはモチベーションありきの釣りなので看過できません。
過去にはOl’ Bass と呼ばれるクラシックなバスパターンや、Gフィニッシュカラーに大量のブラックフレークをまぶしたパンプキンカラーも出ていたので、好みのカラーを探して一投入魂するのもアリアリのアリですね。
余談ですがナチュラライズドのフロッグカラーと、目が赤くて頭部にクロスハッチが入っていないソリッドシルバーのレア度はなかなかなので、運良く見つけることができたらこの先一年間の運を使い果たしたと思って諦めてください😁

レッドアイシリーズのディープランナー。これと同じパターンのジャンピンが存在します。
ジャンピンミノーのネーム
デビューから現在に至るまでジャンピンミノーのボディにはネームプリントが入っていません。
レーベルのルアーは総じてネーム無しなので仕方がないといえば仕方がないんですが、大きなキャンバスがまっさらなままなのはちょっともったいない気もしますね。
余談ですがジャンピンミノーは今でこそ大小サイズとも同じ名前で呼ばれていますが、デビュー当時はT20の大サイズがジャンピン”ストライパー”ミノー、T10はトーキンミノーという名称でした。
サウンド特性を持ったミノーということでトーキンミノー Talkin’ Minnowという名前になったと想像しますが、正直ぱっとしない名前なのでジャンピンに改名して正解でしたねw
ちなみに画像では品番がT20Sになっていますが、末尾のSはカドミウムフック装着のソルトウォーターモデルであることを表しています。
ある時期からSが付いていない淡水フックモデルも併売するようになりましたが、いつの頃からか(おそらくエクスキャリバー登場のタイミング)は合理化のためか全てのモデルがカドミウムフック標準となり、品番もT20に統一されました。
アメリカンルアーの勢力図はエクスキャリバー誕生前と誕生以降とでは大きく変わったと言われていますが、こういうところにも影響があったんでしょうね。
ジャンピンミノーのチューニング・改造
ルアーとしての完成度が高いため、改造の余地がないと思われているジャンピンミノーですが、チューニングネタとしてはなかなか使えるやつだったりもします。
失敗のない簡単なところではラトルボールをレジンや瞬間接着剤で固定してノンラトル化させるチューニング。
あとリアのエイトリングを焼き抜いてペラをヒートン留めにするプロップチューンなんてのも。
穴を開けるのが嫌ならば、ラインアイのところに吸盤を装着してダイビングポッパーにする方法も。
この際、ポチュ!っという音を出すイメージで直径10ミリ以下の吸盤を半分にカットしたものを使うのがキモですが、いろんな大きさにトライして好みの音と動きを探すのも楽しい作業です。
過去にはペットボトル切り抜いたジタバグカップを装着したこともあり、割と良い動きをした記憶があります。釣ったことはありませんが😭
おわりに
ジャンピンミノーは幾多のマイナーチェンジを経ながらも現行モデルが最も使いやすく、しかも入手しやすいというルアーのお手本のような存在なので、ジャンピン未体験の人はもちろんオールド物しか知らないという人にも使って欲しい秀作です。
特にスーパースプークの威力を知っている人ならば、”ダイブするスーパースプーク”としてすぐにバディになれるはず。
近年日本ではペンシルベイトが超絶不人気で各メーカーもペンシルに及び腰になっているので、このジャンピンでペンシルベイトの楽しさを再認識してもらいたいなと。
そのクラシックな外観ゆえ、グランパズルアー Grandpa’s lure (お爺ちゃんのボックスに入っているような古いルアー)と揶揄されることの多いジャンピンミノーですが、プラドコが新色を出してまで再リリースしてきた意味は我々が思っている以上に深いかもしれませんぞ。