人は見た目が重要です。
”そんなことないよ、人はハートだよ” というのはキレイごとで、人格までは確かめようのない初見ではほぼ100%外見で判断します。
これは外見がよろしくないのんだくれが経験してることだから間違いありませんw
そしてそれはルアーの世界でも。
今日紹介するディープリトルNはそんな外見に左右される悲しい心理を実感させてくれたルアーです。
ディープリトルNとは
ディープリトルN(以下DLN)はビルノーマンルアーズ(現ノーマンルアーズ)が1970年代に発売したクランクベイト。
アルファベット戦争をサバイブした戦士として知られ、ノーマンがプラドコ傘下となった今もデビュー当時の仕様のまま生産され続けている数少ないルアーでもあります。
米国では超スタンダードなクランクベイトとして不動の地位を確立し、ずっと販売され続けていますが、ここ日本では90年代のリアルブームの際には虐げられた悲しい過去があります。
そのあたりの詳細はまたのちほど。
ディープリトルNのサイズ・重さ
DLNのサイズはボディ長65ミリ、自重1/2oz。
ウェイトは使用しているプラ素材によって大きく変わり、画像のモデルで15.5g、80年代中盤に発売されたいわゆるボーン系素材のモデルは14gを下回るなど、アメリカンルアーのアバウトさをしっかり持ち合わせています。
ダイビングクランクの基準にもなったプロファイル
女性的なボディライン
このルアーの特徴は、クランクベイトの超ド定番ともいえる流麗なボディライン。
今となっては何の変哲もない普通のデザインですが、ビッグオーやバルサBなど典型的なファットクランクが鎬を削っていたアルファベット戦争下においては女性的ともいえる伸びやかなデザインは新鮮に写ったようです。
それはルアーを上から見てみれば納得するはず。
他のクランクベイトに比べてボディの幅を狭くした扁平形状にすることによって、シャッド的な効果を狙った結果の造形だから。
むさくるしい男たちがバトルを繰り広げる戦場に登場した女性戦士みたいなもんですw
そんなボディを艶かしく泳がせるのはこのリップ。
リップの途中でクランクしている&付け根が絞られているので、リーチがある割にはリトリーブ抵抗が少なく、ディープダイバーなのに終日投げ続けられるというスグレモノ。
当然潜行深度もそれほど深くはなくカタログ値で12ft(3.6m)ダイバーとなっています。
が、感覚的にはギリギリ3m潜るか潜らないかぐらいの感じですね。
でもこのクランクは潜航深度で勝負するルアーではないのと、この潜行能力だからこその汎用性の広さでブレイクしたと言ってもいいので結果オーライでしょう。
そしてこのDLNが採用したこのクランクリップは、のちにありとあらゆるメーカーが真似をすることになります。
製造時期によって違うラトルサウンド
そんなジャンヌ・ダルクは胎内に固定重心となるラトルを2種類擁しており、小気味良いサウンドを響かせてくれます。
が、このサウンドは先述の通り採用されているプラ素材の違いによって大きく変わります。
初期の柔らか目のプラ素材ではこもったような低めの音、80年代のボーン系素材では乾いた高音カラカラサウンド、画像の90年代はちょっと高めのカチカチ音など、同じルアーとは思えないほど音質に違いがあります。
そしてモノによってはラトルが固着してサイレント化してしまっているものもチラホラ。
そのあたりは典型的なアメリカンクランクwなのですが、ここでアメルアは品質が…とか、バラツキが… となってしまうのは超もったいないオハナシ。
だって実際に手にするまでどんなラトルサウンドか分からないクランクってサイコーに楽しいと思いません?w
さすがにプラドコ加入後は製品も均一になったので以前のような ”バリエーション” は見られなくなりましたが、中古屋で見かけるノーマンはまだまだ ”表情豊かな” モノが多いので店頭でラトルを鳴らしてニヤニヤするおっさんが後を絶ちませんw
実はボーンカラーではないノーマンのボーン素材
ところで前出の80年代ボーンですが、ノーマンのボーンはいわゆる乳白色カラーではなく、黒いのが特徴なので探す際はご注意を。
ノーマンが80年代にリリースしたボーンモデルは、今のクランクベイトのようにラトルサウンドのために素材がチョイスされたわけではなく、クロームカラーが定着しやすい素材を選んだら結果的にそれがボーンだった、という消極的な理由によるもの。
よって、ボーンを探す際にはリップまでクローム塗装されたソリッドクロームのモデルが目安になります。
そしてこのソリッドクロームのモデルが曲者で、見た目が超ダサいのですw
クローム自体にムラがあって、光ってるところとマット塗装のようにくすんだ部分がまだらになっており、それをベースに背中にブラックやブルー、レッドがシュッとひと吹きされてるだけの激ショボ仕様w
ぱっと見ただけで誰もがスルーしちゃうような低クオリティなのです。
しかしその後、透明プラにもクローム塗装を定着させる方法が見つかったのか、このソリッドクロームカラーは短い期間(おそらく1〜2年)で販売終了となります。
そしてそれらのソリッドクロームはショボい塗りが災いしたのか米国ではバーゲンビンBargain Bin(日本で言うところのワゴン)で叩き売りされる羽目に。
偶然ですが、のんだくれは当時米国Kマートでその叩き売りに出くわし、一個0.99ドルでクロームカラーばっかり大量に購入できました。
当時はラトルの音質など全く気にしておらず、単に安いから気軽に使える程度の認識でしたが、今思えばあの釣れっぷりはなかなかだったなと。
今回の記事を書くにあたりそのソリッドクロームモデルを倉庫中大捜索したのですが、見つけられなかったので、見つかり次第画像をアップします。
ディープリトルNのアクション
シャッド系のピリピリアクション
DLNのアクションはアメリカンクランクらしくないタイトなピリピリ系のウォブリング。
そのフォルムからシャッドのエスケープアクションに寄せたのは間違いないでしょう。
DLNには兄貴分であるディープビッグN(のちのDD16)がいて、それとは正反対の味付けになっていますが、結果的にこの選択が吉と出てDLNをスターダムに押し上げたのです。
ブリブリ系クランクには反応が無くてもDLNにはバイトが続くなど、タフな時でも頼もしいバディとして全米にその名を知られるようになりました。
ザリガニ巻きに開眼したキッカケに
そしてこのクランクの良いところはピリピリエスケープアクションだけではありません。
強すぎず弱すぎない浮力設定ゆえ、水深1.5mほどのボトムをタップしながら巻き倒すのに最適なのです。
つまりリップの長いリーチを生かして障害物を回避しつつ、砂煙を上げてボトムを這い回わるザリガニを演じさせるのです。
実はのんだくれがディープクランクにハマったのは実はこのDLNがキッカケでした。
琵琶湖から野池まであらゆるフィールドでこのメソッドで釣りまくりました。
とある川のサンドバーでは、周囲が沈黙する中、友人と二人で連発しまくってパンツの中に生温かい広がりを感じそうになったほどw
釣れるクランクゆえにフォロワーも多い

上からディープリトルN、ディープリトルZ,名称不明コピーブランク品、ティムコファットペッパー
そんな釣れ釣れクランクなので当然フォロワーも数多く存在します。
プロデューサーズがディープリトルZの名でパクったのを筆頭に、コピー品の名前を挙げればキリがありませんが、その人気ぶりは米国ではDLNをベースにした未塗装のコピーブランクが大量に出回っていることからも分かります。

これらのブランクはカスタムペインター向けに販売されているものですが、釣れるクランクにローカルベイトフィッシュカラーを塗ったものが欲しいというクランカー共通の欲望を如実に表してますねw
ちなみに一番下のファットペッパーはアクション的にはDLNとは違って、ロールを伴ったガシャガシャ系の強い泳ぎですが、のんだくれはこのルアーの開発コンセプトには絶対DLNが絡んでるだろうと勝手に睨んでフォロワーの亜種としています。
というのも、ファットペッパーにはDLN使い達が抱いている ”もうちょっとココがああだったらな” という要素が詰まってるから。
DLNを使い続けると必ず出てくる要望や不満点をこのファットペッパーは見事に解決しているのです。
それが当たっているかどうかはファットペッパーの開発者のみぞ知るといったところですが、DLNのローテーションでファットペッパーを投げるとバイトが出る事も何度か経験しているので、持ってる人は一度試してみて。
伝説のバグリーカラー
レギュラーカラーとは仕様が違う?
カラーは90年代に上州屋が販売した ”伝説の” バグリーカラー。
バグリーの超定番カラーで、カラーコードでいうところの “6C9” グリーンクレイフィッシュオンチャートリュースです。
このバグリーカラーが発売された当時は、ノーマンがライバル会社であるバグリーのドレスを着せたクランクを発売した!奇跡のコラボレーション!と話題になりました。
バグリーカラーは他にもたくさんあるので、気になる人は【ノーマン バグリーカラー】で検索してみて。
そしてこのバグリーカラーにはちょっと気になる所もあるのです。


ノーマンの証とも言えるパーティングラインがほとんど目立たない
それはレギュラーカラーのノーマンに比べてバグリーカラーのモデルはボディ貼り合わせの際に出来るパーティングラインが目立たないこと。
ノーマンといえばパーティングラインと言われるほど粗い造りが有名なのに、このバグリーカラーは塗装前にちゃんと下処理したのか、ほとんど見えないのです。
そしてもうひとつ気になるのは、このリップ付け根にある未塗装部分。
おそらく型紙などを当てて吹いた名残だと思われますが、レギュラーカラーには見られないものなので通常とは違うスキームでペイントされたんだろうなと。
全てのバグリーカラーにこれがあるわけではないので推測の域は出ませんが、こういう具合にあれこれ妄想できるという意味でもバグリーカラーの存在意義は大きいかとw
そしてこれらのカラーは上州屋におけるノーマンの売上を大きく押し上げたのではないかと推察しています。
なぜなら当時のんだくれだけでもバグリーノーマンを大量に買ったからw
同じようにバグリー色にヤラれて買ったアングラーは相当数いるはずなのです。
実はこれが冒頭で述べた ”見た目が重要” である理由。
既に沢山持ってた事もあって食指が動かなかったノーマンなのに、大量に買い足すほどココロが動かされたのはやはりドレスが違ったから。
違うカラーが欲しくなるのは当たり前と言われればその通りですが、この時ほど見た目の重要さを痛感したことはありません。
バグリーカラーは苦肉の策だった?
しかし時を経て思い返すと、このカラーは上州屋がノーマンを売るための苦肉の策だったんじゃないかと。
というのも、このカラーがリリースされた90年代は、メガバスを中心としたリアル系国産ルアーの全盛期。
アメリカのルアーが釣れないゴミであるかのように扱われていた冬の時代でした。
そんな時代にノーマンのルアーを専売で売るのは逆風どころの騒ぎではなかったはず。
ここからはのんだくれの勝手な想像ですが、上州屋はノーマンとの交わした販売契約条件をクリアするにはレギュラーカラーだけでは数量的に無理と判断して、バグリーカラーによる販売数の上乗せを思いついたんじゃないかと。
上州屋は当時ハリーを始めとしたランバーファクトリーシリーズのプロジェクトでバグリーとは近い位置に居たので、カラーの使用許可交渉が出来る立場だったはずなのです。

そしてのんだくれがこう推理した理由がもうひとつ。
それは上州屋の染谷氏の存在です。
染谷氏は上州屋の偉い人であると同時にバストーナメントにも出場するガチのバスアングラー。
落ち着いた柔らかい物腰なのに一本筋の通ったナイスガイで、90年代には何度となくバス雑誌にも載るなど業界では有名人です。
氏は当然アメリカンルアーが主流だった80年代のバスフィッシングシーンも歩んできているワケで、バグリーとノーマンのコラボレーションを推し進めたのはマーケティング的にも染谷氏の存在が大きかったのではないかと。
でもバグリーカラーは上州屋以外でも売られていたというのを聞いたこともあるので真実がどうなのかはワカリマセン。
ここまで壮大に妄想しておきながら事実が全然違ったりしたら大笑いですが、ルアヲタは日々妄想するのが仕事なのでそれもまたヨシですかねw
この辺りの経緯は当時バグリーの社長だったマイクにも確認しようと思ってるので分かり次第アップデートします。
フックはショートシャンクの#4が標準
フックはショートシャンクラウンドベンドの#4を装備。
90年代のアメリカンクランクといえばコレというほどスタンダードなフックですね。
80年代の終わりまではクローポイントのブロンズフックを装備していたので、当時のトレンドに乗っかったのかもw
そして明らかにアンバランスな大きさのリングにも注目。
ノーマンのルアーは赤箱の頃からデカいリングを装備していたので、もしかしたら家訓にそうあるのかもしれません。
残念ながらネームはナシ
しかし残念なのはネームプリントがないこと。
せっかくのコラボモデルなのに、ネームがないのは死ぬほどもったいない。
元々ノーマンのルアーにはネームスタンプが無いので、いくらバグリーカラーとてそれは無理なオハナシとは理解してても、スペシャルカラーだけに特別に入れて欲しかった。
ネーム入れまでやったら本当の意味での伝説になれたのになぁ….. と思ってるのはのんだくれだけでしょうかw
おわりに
そもそもルアーは見た目から入るものなので、外見にについてあれこれノー書きを垂れても仕方ありません。
ルアーにおける外見は正義なんですから。
でも逆の見方をすれば、外見の要素を外すことで同じものが安く買えたりするのも事実。
それはノーマンクランクのバグリーカラーとレギュラーカラーの相場を見れば一目瞭然です。
ひいては外見を気にしなければ、激釣れのお宝ルアーにだって出会える可能性も上がるのです。
つまり、外見に惑わされず、どれだけルアーの本質を見ることが出来るかということ。
でもそれが出来てたら、こんなアホみたいに散財してないんですけどね😭😭😭