悲劇のクランクベイトRPM
豹は死して皮を留め、人は死して名を残す
これは有名な漢詩の一文ですが、幸か不幸かルアーにも当てはまります。
その代表格とも言えるのが、かつてダイワが発売していたRPMクランク Mid-4。
命絶えた後にその名前を轟かせた悲劇のクランクベイトです。
マリーナで会ったガチアングラー激推しのPRM
このルアーが発売されたのは2010年頃。
”頃” というのは、当時のんだくれはまったくその存在を知らなかったから。
店頭に並んでるのを目撃したような憶えはありますが、その程度の認識なので手にすることも、もちろん投げたこともありませんでした。
ところがある日、琵琶湖のマリーナで会ったアングラーからこのルアーを激推しされました。
最強のクランクだと熱弁する彼の言葉が気になって後日探してみると、確かにそれは売られていました。
しかしプロパーの陳列ハンガーではなく、なんとセールワゴンの中。
しかもテンコ盛りで。
あらら。人気ないのね😅、と思いつつも、試しに一個連れ帰ったのがRPMクランクとの馴れ初めでした。
ところがいつもの悪い癖で、帰宅するなり開封することもなくストックボックスである衣装箱へ放り込んでしまい、その後RPMクランクは長い間幽閉されることに。
アメリカからも捜索依頼が!
事態を動かしたのは、アメリカの友人からのメッセージでした。
ダイワのRPMクランクMid-4を探してるんだが知ってるか? こっちではもう売ってないから手に入るんだったら送って欲しい、と。
ワゴンの記憶が残っているのんだくれは Why not? と安請け合いし、ネットで検索してみたところ…
ない!どこにも売ってない!
あれだけワゴンに溢れかえってたのにどこにも無いんです! 追記:ブログ読者からダイワがワゴン物を回収したとの情報アリ
しかもヤフオクでは何故か高価で取引されてる!😱
そこでいろいろ調べてみたところ、このMid-4はかなりヤバいルアーで、生産が終了してからその実力が知られて入手困難になっていたことが分かったのです。
RPMクランクの激ヤバポイントその①自己主張しまくりのデルタ型リップ
このクランクのヤバポイントその①はこの自己主張しまくりのデルタリップ。
その見た目から障害物回避性能に長けているんだろうなとは思っていましたが、そんなのんだくれの浅い予想は見事にかわされました。
確かに障害物回避性能は高いのですが、このリップの主な仕事は障害物回避ではなくかなり派手めのローリングアクション。
ダイワが出したクランクということで勝手にTDクランク系の泳ぎをイメージしていたこともありますが、それを差し引いてもなかなかのものです。
しかもその泳ぎがリップレスクランクのようにハイピッチなのです。
巻き始めた瞬間に他のクランクとの違いを感じるというか、オオッ!と思わせる味付けがされているんです。
RPMクランクの激ヤバポイントその②派手な泳ぎなのにフックがブレない安定性
そして派手なアクションなのにも関わらず、フロントフックがほとんどブレないというのがヤバポイントその②。
ラインアイとフロントフックハンガーを結んだ線がアクションの軸になっているので、大きく背中を振ってもフロントフックは静かに平行移動するだけなのです。
そして障害物から守るかのようにフックの前でハイピッチ振り子運動を繰り返すリップ。
琵琶湖で会ったアングラーが 最強!と激推ししていた意味が泳がせてみて初めてわかりました。
RPMクランクの激ヤバポイントその③かつての名作を再現したラトル音
でもそれだけでは許してくれないのがこのMid-4のオソロシイところ。
内部に仕込まれたラトルとそのセッティングがヤバポイントその③なのです。
音を正確に文字にできるほどの文才がないのでアレですが、このサウンドを一言で表すと、”接着不良により外れたウェイトが狭いルームの中で暴れるサウンド”。
もうお分かりですよね。
かつて一生を風靡したルアー、TDバイブは初期に出荷したサイレントモデルの一部にウェイトの接着不良があり、巻いているうちにウェイトが外れて意図せず “ラトル入り” となったものがありました。
その “アンサイレントモデル” がめちゃくちゃ釣れると話題になったのですが、このMid-4はそのラトルサウンドに非常に似ているのです。
いや、似ているのではなく、あえてそうなるように調律してますねこれは。
一般的に横幅に余裕のあるクランクベイトならば、ラトルが助走できる距離を多く取ることでより強い衝撃派を生み出そうとしますが、このMid-4は幅があるにも関わらず(外寸21.5mm)、あえてラトルルームの幅を狭くしてタイトなサウンドが出るようになっています。
これにより生み出されるラトルサウンドはまさに Baby Metal の Road of Resistance におけるハイスピードのツインバスドラ。
リールのハンドルを巻きながら Is The Time! と合いの手を入れたくなるぐらいのハイテンションなのです。
そしてこのラトルルームの幅はサウンド面だけでなく、おそらくMid-4の強みであるハイピッチアクションを阻害しないように最適化されていると思われ。
見れば見るほど恐ろしいクランクなんです、このMid-4は。
人間よりも魚の反応を追求したRPMクランクの外観
そういった観点で改めてルアーを見てみると、この不自然なほど大きな3Dアイも計算ずくなんだろうなと。
確かこのクランクは、見た目のイメージよりも性能を重視した的なセールス文句だったと思いますが、このアイも人間よりもバスの嗜好に重きを置いた結果なんでしょうね。
余談ですが、のんだくれはクランクのアクション特性を確認してからカラーを選ぶようにしています。
このMid-4のようにピッチの早いローリングアクションの場合は、上下で明確なコントラストが出るチャート/ブラックバック系。
ルアーのカラーはどうしても過去にイイ思いをしたものに手が伸びてしまいますが、クランクベイトのようなリアクションベイトはそのカラーがどのような効果をもたらすかを考えると良い結果をもたらしてくれます。
……なーんて書くとのんだくれがめちゃくちゃ考えてるみたいに思われちゃいますが、実はこれ、みーんなキャッチングコンセプトのハーマン・オズワルドからの受け売りです😁
キャッチングコンセプトのクランクベイトはクロー系のカラーだけでも20色近くラインナップしていますが、実はそれらは全てモデルごとに最適化されています。
詳しくは追々記事で紹介しますが、ハーマン曰く、ダーク系クローカラーに小さなチャートのドットが入るだけで大きく釣果が変わる事がある、特にスモールマウスは、と力説しています。
RPMクランクのフックサイズ
フックは前後とも#4が標準サイズですが、のんだくれは前後ともショートシャンクに交換して使っています。
その理由は、デフォルトでフロントだけに付いてた赤バリがあまり好きでないのと、カバー抜け性能をもっと突き詰めたかったから。
このクランクでカバーを通すと面白いようにスルスル抜けてくるんですが、時にはスタックすることもあります。
こんなに引っかからないんだったらショートシャンクでフックポイントを上げればもっと根がかりしないんじゃない?という考えでVMCショートシャンクに交換して使ってます。
でも根がかりしなくなった分、おそらくフッキング率は下がってると思います😅
このブログのプロフィールにも書いてありますが、のんだくれはオサカナ釣るよりもルアーを巻いてる方が楽しいのでこんな事してますが、ちゃんとオサカナ釣りたいならデフォルトのフックの方がイイと思いますですハイ。
RPMクランクのネーム
ネームは腹にご覧の通り。
RPMは Revolution Perfect Movement の略で、ラバージグなどもラインナップしていたシリーズでした。
直訳すると “革命的完成度を持った動き、動向” という意味で、それをメインコンセプトとしてアピールしたかったと思いますが、元マーケティングコンサルの目で見ると、このネーミングはマーケティング的には一番やってはいけないパターン。
その理由は、RPMという絵面とその響きはカッコ良いんですが、そのワードが定着していない場合、ほとんどの人の目には “なにそれおいしいの?” 程度の意味不明なものにしか映らないから。
のんだくれはこのシリーズがリリースされた当時のマーケティング展開を詳しく知らないのでアレですが、おそらくこの意味をちゃんと理解していた人はダイワのガチファンか、しっかりとカタログを読み込んだ人ぐらいだったのではないかと。
だからRPMの意味を知らないアングラーがショップで見ても「よーわからん」で終わったケースが多く、それがワゴン流出につながったんじゃないかと思います。
どんなに良い商品でもマーケティングをミスると死ぬという典型的な例ですねコレは。
結果論だったら何とでも言えるというヤツですけど😅
まとめ
そういえばアメリカからメッセージを送ってきた友達とのその後をまだ話してませんでしたね。
もう皆さんが想像してる通り、彼には一個も送ってません。
だって全然手に入らないんですもん。
いや、一応いくつかはゲットしたんですが、それらは全部、Mid-4のパフォーマンスの凄さにノックアウトされてしまったのんだくれの所有物となりました。
こんなすげールアーを人に使わせてなるものか!という釣り人ならではのイヤらしい物欲の勝利です😂
なのでもし余分のMid-4があったら、eBayに出品すれば小遣いが稼げるかもしれませんよ。
アメリカでは探してる人がたくさんいるみたいですから😁
しかしこのMid-4、こんなに良いルアーなのになんで再販しないんですかね?