米国ではド定番なのに、日本では超不人気で全然売れないルアーのカテゴリーがあります。
代表的なところではシンキングトゥイッチベイトやリザードなどがそれにあたりますが、ダブルアームバズベイトもなかなかの不人気っぷり。
ということで今回の千一夜はそんな不人気バズベイトに脚光を当ててみたいと思います。
D&Mカスタムベイツが誇るモンスターキラー、ダブルハマーバズベイトです。
ダブルハマーバズベイトとは
D&Mカスタムベイツって?
ダブルハマーバズベイトはカリフォルニアデルタの北、デイビスに拠点を置くD&Mカスタムベイツが2010年にリリースしたバズベイトです。
デール Dale とマイク Mike 親子のイニシャルを取って命名されたD&Mカスタムベイツはバスフィッシング好きが高じて…. というよくあるアレからスタートした完全なファミリーブランド。
創業当初から名前だけは知っていましたが、よくあるガレージビルダーでしょ?ぐらいの認識で特に意識することもありませんでしたが、とある釣行でその考えはひっくり返される事に。
初対面で衝撃的なカウンターパンチを喰らう
最初の出会いはダックハンティング解禁直後のカリフォルニアデルタでの釣行。
冷たい雨が降り続くコンデションの中、友人が投げるダブルハマーバズベイトをボート側で激しく引ったくった8パウンダーを筆頭に、4〜6ポンドクラスが立て続けに釣れてしまったのです。
のんだくれの投げるシングルバズは完全沈黙していたのに、です😭
しかものんだくれが通した所からもバコバコ出るのです。
そのあまりのパフォーマンスの差に絶句レベルの衝撃を受けたのんだくれは、すぐにD&Mカスタムベイツにコンタクトを取り、翌日の予定を変更して会いに行きました。

デール(左)とマイクのメドック親子。本業はミュールトレッキングのツアー会社を経営している。
そしてそこで聞いた話に、釣果以上の衝撃を衝撃を受け、一気にファンになってしまったのでした。
ダブルハマーバズベイトのサイズ
ダブルハマーはヘッド重量1/2オンス(実測27.5g)のバズベイトです。
【軽いバズベイト=早く浮き上がってゆっくり巻ける】 という間違った ”定説” が蔓延っている日本の市場では、その重量を聞くだけで敬遠されてしまう、ある意味無敵のスペックwです。
ダブルハマーバズベイトの特徴
このバズベイトの特徴は、言うまでもなくブレードが2枚ある事。
それぞれ逆方向に回転する2枚のブレードが接触しながら回転する事で大きなノイズを生み出し、強烈な威嚇バイトを誘発します。
そのノイズたるや相当なもので、人の多いフィールドだと使うのが恥ずかしくなるほどw
けたたましいという表現がぴったりのその音量は、ブレードに残るスクラッチ傷を見れば想像に難しくありません。
そしてそのスクラッチサウンドには、オフセットブレードによる強大なバイブレーションという最強の味方がいるのです。
現在市場に出回っているダブルアームバズのほとんどが、オンセンターアクシスブレード On-Center Axis Blade と呼ばれるセンターシャフト方式のブレードを採用しています。
センターシャフトのブレードはオフセットに比べてバイブレーションが弱いのですが、その分回転が安定しているので浮き上がりが早く、ダブルアームバズとの相性は抜群です。
しかしダブルハマーバズは回転の安定性よりもバイブレーションを取ってあえてオフセットブレードを選択しています。
そしてそのバイブレーションを殺さない最強のアームセッティングを編み出していたのです。
それがこのセッティング方法です。
ヘッドから伸びた2本のワイヤーをPEラインでぐるぐる巻きにして瞬間接着剤で固め、2本のアームに分岐しただけ。以上!w
一般的なダブルアームバズベイトはスリーブなどでアームをまとめたりするものですが、ダブルハマーバズはPEで縛っただけなのです。

他社ブランドのダブルアームバズ。 金属のスリーブでしっかりと固定している。
最初このPEライン工法?見た時はなんちゅうショボい作りだ!と思ったのですが、話を聞くうちに、これが非常に理に適ったセッティング方法だということが分かりました。
このダブルハマーは1.1mm径のワイヤーを採用しています。
一般的なダブルアームバズはアームが構成する”デルタ形状” をキープするためとバスの強大な顎パワーで破壊されないよう1.3〜1.4mm径ワイヤーを使うことが多いのですが、ワイヤーが太いとバイブレーションは消されてしまうし、なによりもデルタ形状を保つためには強靭なスリーブやワイヤーワークが必要となります。
そこでバイブレーションを殺さない細いワイヤーをラインアイの部分で一つにまとめ、ヘッドへはダブルワイヤーで繋げることで強度と機能の両立を図りました。
そして結束にPEラインを使う事により、スリーブなどを使用するよりもフロントが軽量化されるという嬉しい副産物も。
D&M曰く、このセッティングに行き着くまでは相当な苦労があったようです。
金属スリーブはもちろん収縮チューブや、ロウ付けで接合したりと、ありとあらゆる方法を試すもそのどれもがイメージ通りにならず、諦めかけていた頃にワイヤー仮止めのPEラインのまま使ったらそれが満点の答えだった。と。
ダブルハマーバズベイトのパフォーマンス
そんな産みの苦しみを経て造られたダブルハマーですから、投げれば納得のパフォーマンスを披露してくれます。
まず飛距離が素晴らしい。
ブレード同士がお互いに干渉する事で飛行中は回転しないのでキモチ良いぐらいに飛んでくれます。
しかも多少の横風があってもシングルブレードバズのように軌道がブレたり失速したりしないのがイイ。
もちろんキャスタビリティの良さはルアー自体の重量に寄与するところもありますが、サーチベイトにとって素直な飛行軌道と飛距離は正義。
これが広大なフィールドからバスを探し出さなければならないアメリカで受けている理由のひとつでしょうね。
そして巻き始めたらもうダブルハマーの独壇場です。
ブレード同士がぶつかるガシャガシャサウンドと気泡を水中に巻き込むバブリングサウンド、そしてアルミリベットによるスクイーク音。
さらに手元に伝わるバズベイトらしからぬ振動は思わずニヤリとしてしまうほど。
回転の立ち上がりがやや鈍いオフセットブレードゆえ、早く浮かせるためのコツを要しますが、そもそもぶっ飛びのキャスタビリティがあるのでそんな小さなデメリットなんて全く気になりません。
初速を早めにしてブレードさえ回してしまえばあとは割とゆっくり引けるので、スローリトリーブにこだわるバズベイトアングラーが見ても及第点をクリアしているのではないかと。
そしてダブルアームバズベイトならではのメリットも忘れてはいけません。
それはこの画像を見れば一目瞭然。
ダブルアームバズベイトはフロントのアームがウィードガードになるだけでなく、分厚いパッドの上に乗っても完全には横に倒れないので常にフックポイントを高い位置でキープ出来てウィードやゴミを拾わないのです。
これは水面のコンディションに関わらず、フロッグの様にあらゆるスポットをドラッギング出来ることを意味しています。
つまりシングルブレードのバズベイトが苦手とされるようなスポットにもガンガン投げ込めるという訳。
ゆえにダブルアームバズのメリットを活かした独特の使い方もあるのです。
ダブルハマーバズベイトの使い方
使い方は至ってシンプルです。
投げて巻くだけ。
基本的に水面キープさえできていれば設計者の意図を再現できます。
のんだくれはちょっと早めのリトリーブでガシャガシャ引きまくるが好みなので、あまりスローリトリーブでは使いませんが、ダブルハマーならではの使い方として、”何かに乗せる” という変化を織り込むのもアリアリのアリ。

入り組んだウィードエッジを気にすることなくフロッグのようにライン取り出来るのがダブルアームバズの最大のメリット。画像出典:www.thebbz.com
あえて水面まで伸びたウィードの上を通すようにライン取りしてパッド下のバスを焦らしたり、一旦岸にキャストしてから巻き始めるなど、あまりシングルブレードバズではやらない事が出来るのです。
そしてダブルハマーは真夏のどピーカンに強いのも特徴の一つです。
朝マズメが終わって陽が上がり、アングラーが少なくなったらダブルハマーバズの出番。
ガシャガシャサウンドがよほど癪に障るのか、先行者の後でも派手なバイトで楽しませてくれます。
ダブルハマーバズベイトのフック
ダブルハマーに採用されているフックはがまかつのラウンドベンド#5。
ベイトキーパーは無いので常時トレーラーを使いたいアングラーにはちょっと不満かも。
しかしのんだくれはバズベイトには一切トレーラーを装着しない派のでモウマンタイ。
なぜならトレーラーの形状によってはトレーラーにラバースカートが張り付いてしまって効果が落ちると考えてるから。
それゆえラバースカートの長さにはかなりこだわっています。
画像のスカートはデフォルトの長さに戻したものですが、実戦では空中で吊るした時にフックのベンド部と同じぐらいの長さにトリミングしたものを使用。
こうすることでスカートが大きくフレアして、ブレードの振動がスカートの先端まで伝わりフワフワとよく動くのです。
そもそもほとんどの米国メーカーはスカートをトリミングすることを前提として長めのものを装着しているのでデフォルトのまま使うのはナンセンスですからね。
長い方がミノーのシルエットになって…. という記述を見たことがありますが、一部のルアーを除いて長いスカートはバイブレーションを消すネガティブ要素にしかなりませんから。
ちなみにバズベイトにはトレーラーフックも使いません。
その理由はいろいろありますが、一番の理由は ”面倒だから” w
ダブルハマーバズベイトに合うタックル
一般的なバズベイトよりも重量があって巻き抵抗もそれなりなので、特性を生かすためのタックル選びも無視できない要素です。
まずロッドは7フィート以上で3/4oz程度がカバーできるヘビーアクション。
これにPEライン60lbを合わせます。
個人的にには7.6フィートのアイロッドIRG764C “Andy’s Light Flip/Junk Rod” を使っていますが、ナナハンゆえのキャスタビリティとラインメンディングのしやすさ、バイトを弾かないティップはヘビーウェイトバズには最強だと思っています。
ショートレンジを撃つ場合は短いロッドの方が有利ですが、ダブルハマーバズは長いストレッチを巻いてナンボのルアーと考えているのでロングロッド一択。
そしてナイロンリーダーも使わないPEライン直結。
セッティングだけ見たらほぼラバージグのフリッピング用タックルですけどねw
残念ながら欠点も
一見イイことだらけに見えるダブルハマーバズにも実は欠点があります。
それはやはりワイヤー強度が足りないこと。
先述の通りバイブレーションを生かすためにあえて標準よりも細いワイヤーを使っているのですが、それゆえある程度のサイズのバスを釣るとどうしても全体が歪んでしまうのです。
ワイヤー自体が歪むと本来のパフォーマンスを発揮できなくなり、その結果釣果も落ちてしまいます。
こう書くと、バズベイトのワイヤーなんて直せばイイのでは?とお思いでしょうが、実はなかなかそうはいかないのです。
これはダブルアームバズベイトだけでなくバズベイト全般に言えることですが、ワイヤーをベストなセッティングに戻すには非常にデリケートでシビアなスキルが必要で、個人的には素人では無理とすら思っています。
それを実感したのは、かつて激釣れバズベイトとして名を馳せたドラゴンスクラッチバズ。
話が長くなるので詳細は割愛しますが、袋から出したばかりの新品と、何度もバスを釣ったものとでは明らかにバスの反応が違ったのです。
両者の違いはほんのわずかな、本当にわずかなワイヤーの歪みだけ。
使い込んだ方が釣れそうなサウンドを出していたにも関わらず、明確にバイトの出方が違いました。

ワイヤーの歪み同様にリベットの摩耗もバズベイトのパフォーマンス低下の一要因。長く使い続けることで徐々に ”釣れる音域” から外れていくので、サウンドの旬を見極める事も大切。
その出来事以来、実釣用のバズベイトは新品しか買わなくなり、ある程度使ったら退役させることにしています。
実際、画像のダブルハマーバズもワイヤーが歪んでしまった ”使用済み” のもの。(何がどうダメなのかは自身の目で確かめてみて)
つまりのんだくれにとってバズベイトは、スキルを持った人が再調整できない限りは消耗品なのです。
もうここまでくると車のサスペンションやハンドリングと同じで感覚の世界になってしまいますが、ガチでバズベイトを使ってきた身としては絶対に譲れないポイント。
皆さんの手元に長年使ってるけど以前ほど釣れなくなったというバズベイトがあったら、その原因はワイヤーの歪みかもしれませんぞ。
おわりに
ぶっちゃけダブルアームバズについてこれだけ書き倒しても響かない人の方が圧倒的に多いと思いますが、釣ってる人は釣ってるんですよね。しかもデカいのを。
ダブルアームバズは日本では不人気ルアーの筆頭なので入手は海外通販に頼るしかありませんが、もしバズベイトの釣りに行き詰まりを感じてたら高い送料を払ってでも入手してみる価値はあるのではないかと。