ショボい外見、アクションも騒ぐほどのものでもないのに、何故か良く釣れちゃうルアーというのは確実に存在します。
ニンゲン様には分からない何かがオサカナに訴えてるんでしょうね。
今日のゲスト、ウェイクNはまさにそんなルアーです。
ウェイクNとは
ご存知の通り、コイツは70年代に北米バス市場を荒らしまくったビルノーマン・ハーフバックミノーの子孫。
かつては1/4ozサイズのクォーターバックと1/2ozのハーフバック、それにダイビングリップを持ったスクーパー達と共にノーマン家の中で一大派閥を形成し、レーベルのハンプバッカーズと熾烈なシェア争いを繰り広げていました。

しかしそのルックスの古さが時代について行けなくなったのか、一人また一人と引導を渡され、ついには古代ローマ帝国の如く滅びてしまったという悲しい過去を持った血筋でもあります。
新オーナーの熱意によって蘇った
ところがその実力を知るアングラーの熱い要望なのか、はたまたメーカーの気まぐれなのか、90年代終わり頃に、ウェイクNと名前を変えて突然復活しました。
なぜ突然蘇ったのかなどの詳細は全く分かりませんが、実力を持ったルアーが生き残ってくれるのは嬉しい事ですね。
2020年10月 補足:
90年代終盤からチャガーフラッシュなど旧ビルノーマン時代の名品たちが幾つか復刻リリースされましたが、これは “全盛期のノーマンを取り戻す” という当時の新オーナーのマーケティングプランの一貫だったようです。DD22の記事でも書きましたが、本当にノーマン愛に満ちたオーナーだったんですね。
ウェイクNの特徴
このウェイクNの最大の特徴は、ボディの全幅の割に小さめのリップです。
お世辞にもカッチョ良いとはいえない不格好ちゃんなので、店頭でのスルー率極めて高し。
ワゴンの構成員に成り下がっても相手にしてくれるような慈愛に満ちた人は少なく、ルアーの格差社会の底辺を味わった苦労人でもあります。
でもね、売れ残るのも分かる気がするんですよ。
旧ノーマンならではのショボい作り
だってリップの接着剤がこれでもか状態でこんもりしてるようなルアーですよ。
これを好んで買う人がいたらよっぽどの好きモンで間違いないでしょう😁
しかもコイツったら、ウェイクという名前から水面ブリブリ泳ぎの超シャローランニングクランクかと思いきや、意に反してフツーに潜ります。
しかもその泳ぎもどこにでもあるようなフツーのもの。
水面モワモワ泳ぎを想像してた買った人なら、間違いなくその場でFワードを叫んでしまうでしょうw
でも冷静に考えてみたら潜ってしまうのは当たり前のこと。
なぜならこのルアーの元となったハーフバックは1970年代の設計で、まだウェイクベイトの概念がなかった頃。
なのでいくらウェイクと改名したところで、ベースはあくまでもシャロークランクなのです。
ノーマンもそのあたりは十分承知しているようで、パッケージ裏には ”ロッドを高く保持してミディアムリトリーブしろ” との説明に続き、”ロッドティップを下げればスピードによっては水面に近いところを泳がせることも可能” 的な超ポジティブ解釈wでウェイクベイトとしての使い方を指南しています。
こういうアメリカンならではのアバウトさは嫌いじゃないですねーw
いやむしろ大好物です😁
それでも釣れちゃう不思議なクランク
しかーし! 侮るなかれ。
コイツにはニンゲン様には理解できない不思議な魔力があるのか、何故か釣れちゃうんです。
レーベルのハンプバックがバカ釣れルアーだと知ってる人には理解できても、それを知らない人にしてみれば、このウェイクNがめちゃくちゃ釣れると言われてもオーラ0%の激ショボクランクにしか見えないでしょう。
でも実際は全然違うんです。
アングラーの予想を見事に裏切ってくれちゃうんです。
ただ巻いてくるだけで不思議と釣れちゃうんです、これが。
こういう能あるタカ系のルアーがフツーに隠れてるのがアメルアのオソロシイところですよね。
それを自分だけが知ってるならニヤニヤ楽しめますが、同船者が密かに隠し持ってたりしたらヒサンな一日になりますから、ある意味キケンなルアーだったりもします。
話は変わりますが、仕事柄、海外のアングラーと釣行することが多いんですが、その際に毎回必ずやることは彼らの一軍ボックスの中身検査。
ボックスを見られる事を嫌がるプロを除いてほとんど全部、隈なくボックスをチェックします。
時にはマリーナでちょっと会話しただけの人にも別言語による別人格発動で割とズケズケとボックス見せてと言っちゃったり😅
タカさんチェックならぬのんさんチェックですよ。
するとアレ?っていうルアーが必ず1個や2個は入ってるんです。
そんなルアーを見つけたらお決まりの How do you use it? (コレどうやって使ってる?)などなど質問の嵐。
すると意外にもみんな親切に教えてくれるんですよね。
と言うよりも、単に自分の成功体験を喋りたいだけかもしれません。
やっぱり彼らも釣り人ですからね😁
で、ノウハウを教えてもらったら、節操なくタックルショップに走るという流れですよ🤣🤣🤣
そんな調子で沢山のアングラーからシークレットを教えてもらいましたが、中でも一番衝撃だったのはヒルデブラントのスナグレスサリー Snagless Sally 3/4oz。
一見ただのウィードレススピナーですが、使い方の説明をしながら目の前でバコバコ釣っていくのを見せられた時には文字通りアゴ落としました。
詳細はまた別の機会に記事にしますが、もしスナグレスサリーを見つけたら確保しといて損はないと思います。
大量のラトルが奏でる水面狂想曲
このウェイクNのボディには小粒ラトルが複数詰め込まれています。
シャラシャラとジキジキの中間ぐらいのサウンドで非常によく響くので、これも釣れる要素のひとつかもしれません。
コイツも昨日のZZトップと同様のゲルコート Gel Coat カラーですが、カラー名は… なんとかサンライズ… だったかな? あーもー忘れちゃいました。
ゲルコートの名に恥じない凸凹トップコートはさすがノーマンという感じですが、国産ルアーならば間違いなく検品でハネられるものを、こうして堂々と流通させてしまうあたりにノーマンの偉大さというか、畏怖の念すら抱いてしまいますw
テキトーな作りでもちゃんと泳ぐのがノーマンのスゴイところ
しかしそんなショボい仕上げなのに、実際に泳がせてみると力技で納得させられてしまうのです。
なんとリップに接着剤がこんもりしてるヤツでも、ノーマル仕様wと全く変わらん泳ぎを見せてくれるんです。
泳ぎさえすればオッケーという実質主義と、多少の難があっても泳ぎ切ってしまうアメルアの懐の深さの勝利ですね。
そういえばこの Gel Coat の呼び方も日本ではゲルコート派とジェルコート派に別れてますね。
トーピード&トピドゥ系の小競り合いがここでも勃発しています。
標準英語発音ではジェルの方が近いんですが、のんだくれは圧倒的にゲル派です。
ゲルの発音はいわゆる南部アクセントなのでいかにもノーマンというか、田舎っぽいにほひがしません?😁😁😁
ウェイクNのフック
ハーフバック時代のフックはブロンズのイーグルクローでしたがこのウェイクNは前後ともブラックニッケルになっています。
カップも省略されているのが分かりますね。
でもスプリットリングの不自然なデカさはノーマン家の伝統として今も息づいています。
名前に隠された秘密
ボディにネームプリントがされていないのは残念ですが、実はこのルアーはネームヲタをニヤリとさせてくれる、なかなかセンスの良いネーミングになっています。
”引き波のWAKEにノーマンの頭文字Nを付けてWake Nなんでしょ?” と思いがちですが、実はこれは、Waken(=目を覚まさせる、覚醒させる)に掛けたダブルミーニング。
さらにWaken の発音は Wake ‘em(Wake themの口語表記)に似ていることから、”引き波を起こせ”と”バスを叩き起こせ”の2つの強いメッセージが込められたワードプレイになっているのです。
どこかの記事でも書きましたが、ノーマンはリップレスクランクをエヌタイサー N-ticer と名付けることで発音が似ているエンタイサー Enticer(=誘惑者)に掛けるなど、言葉遊びが大好きなブランド。
他にもタイニークランクのマッドNも Madden(=発狂させる、怒らせる)の発音に掛けてバスがバイトするイメージを連想させるワードプレイに。
説明がないと全く気づかないけど、理解したら思わずニヤリとしてしまうこういう遊び心はアメリカンルアーならでは。
おわりに
大きさは65ミリ、ウェイトは1/2オンスと扱いやすい手頃なサイズ、実売価格も700円前後と非常にリーズナブル。(2010年当時。現在は生産されていません)
どこの店にも置いてあるというルアーではありませんが、出費に見合うどころか、必ず結果をもたらしてくれるルアーの一つですので、見かけたら是非ともエスコートしてあげてください。
そして、” これはウェイクベイトではないんだ ” ということを肝に銘じて巻き続ければ、ドヤ顔ができる日が必ず訪れるでしょう。