昆虫すごいぜ!可愛さの内側に獰猛な牙を隠し持つ戦前の快作 ラトルバグ Rattle Bug / ミルサイトタックルカンパニー Millsite Tackle Co.

クランクベイトシャローダイバーミルサイトタックルカンパニー Millsite Tackle Co.

唐突ですが、のんだくれは映画「スターシップトゥルーパーズ」が大好きです。

巨大で獰猛な昆虫 (バグズ)とひたすら戦うという陳腐なストーリー展開、SFにラブコメを無理矢理ねじ込んだゴミ脚本を際立たせるイモ演技、宇宙船団で他の星に攻め込むほどの技術力があるのにヘルメット&防弾ベストで肉弾戦を繰り広げるという果てしない矛盾、そしてポール・バーホーベン監督ならではのグロ演出が一体となって、過積載で捕まるんじゃないかと心配になるほどツッコミどころ満載のクソ映画だからです。

しかし、そんなピースオブクラップなのに、バグズのカッチョ良さだけは最上級!

バグズの動きをスロー再生で見たいがためにDVDを買ってしまったほど😂

そんなバグ好きののんだくれが放っておけないルアーがあります。

それはミルサイトタックルのラトルバグ。

虫ルアー好きにはたまらない一品です。

ミルサイトタックルと聞いても、オールド/ヴィンテージルアーに興味のある人でないとほとんど知りませんよね。

このメーカーは1930年代にミシガンで産声を上げた、ヘドンやクリークチャブのいわゆるフォロワーです。

当初はウッド素材でルアーを制作していましたが、イースタンケミカルカンパニーが開発したテナイト樹脂によるプラスチック成形技術が一般化したのに伴ってプラ素材へシフトし、成功を納めました。

そんなミルサイトが放った虫ルアーがこのラトルバグなのです。

ラトルバグは48ミリ、12gのミニサイズクランクベイトです。

名前の通り内部にはラトルを擁し、リトリーブと共にカチカチ音を響かせてくれる、”期待を裏切らないヤツ” です 😁

このルアーが発売された当時にはそんな言葉はありませんでしたが、今で言うところのスーパーシャロークランクに当たります。

このルアーのウリはなんといっても “虫造形” に尽きます。

コガネムシ系の甲虫をそのまんま描写し、美味しいから私を食べてね、と言わんばかりの愛嬌のある目を置くなど、バスよりもアングラーを釣りたいだけじゃねーか!と突っ込みたくなるあたり、スターシップトゥルーパーズと同じにほひを感じずにはいられません。

しかーし! 実はこのルアー、見かけのキュートさに似合わず、トンでもない実力者なのです。

ラトルバグの泳ぎを司っているのはこのリップ。

一見小さくて頼りないリップに見えますが、ボディとのバランスが非常に良く、小さなボディなのに強い水押しを生み出します。

いわゆるウェイクベイトではないのでロッドティップを下げた状態では50センチほど潜りますが、ロッドポジション次第では引き波を楽しむことも可能。

金属製のリップをビスでねじ止めするという、今となっては古典とも言える手法ですが、しっかりとした厚みのあるリップでそこそこ重量があるため、これがカウンターウェイトとなってイイ感じにテーブルターンをしてくれるのです。

ラトル入りのチビプラグで強い水押しが出来て、さらに首振りもこなすなんて、もうおサカナ釣れたも同然ですよね。

実際、山間部の野池などで岸際を撃つ際にはこれほど頼もしいルアーはありません。

いうまでもなくサイズは選べませんが😂

しかし、先述の条件を備えている虫プラグは他にもゴマンとあるのに、なんでコレが釣れるのか不思議に思いますよね。

その秘密はこの “それほど強くない浮力” にあるのではないかとのんだくれは分析しています。

丸いボディなのでポッコン!とピンポン球のように浮くかと思いきや、意外にもその浮力は大人しめ。

狙って設計したのか、はたまた偶然の産物なのかはともかく、このラトルバグの水に絡む絶妙なバランスが魚を寄せる水攪拌を作り出しているのは間違いなさそうです。

実際、このラトルバグは当時アメリカで大ヒットし、それに味をしめたミルサイトはジタバグカップを装着した水面バージョンもリリースしているぐらいですから。

可愛くて釣れるとなれば、ヲタが行き着く先はもう溺愛しかありません。

虫を眺めてはニヤニヤするキモい日々の始まりです。

この時期のルアー(もう80年も経ってる!)ならではの塗装のヒビでさえ、虫っぽく見える!と溺愛ポイントにしてしまう盲目っぷり。

自分で言うのもアレですが、こんな小さなプラスチックのカタマリを前に目尻を下げてる姿は人には見られたくないですよねー😂😂😂

しかし古いルアーであるが故に色々問題もあるんです。

それはこのリグ。

フックハンガーがボディに固定されているので、フックの交換が出来ないんです。

フックをカットしてリングを入れれば問題ないじゃん!とお思いでしょうが、実はそれをやるとなぜかアクションが死んでしまうんです。

つまりボディとフックは一心同体、呉越同舟、一蓮托生。

なのでフックを研いで使うしかないのです。

しかしこのフック交換が出来ない仕様に当時もコンプレインが上がっていたようで、50年代のモデルでは交換可能なネジ留め式サーフェスリグに改良されています。

腹側にブランド名と名前を横書きで入れるという、ネームヲタを狙い撃ちしたかのようなネームプリントにもシビれます。

1930〜40年代のミシガンは、先述の通りへドンクリチャブの成功を目の当たりにして雨後の筍の如く幾多のルアーメーカーが産声を上げた時期でもあるので、生き残るためには自社の存在とオリジナリティをアピールするのが不可欠だった事が良く分かりますね。

ミシガン州というと、五大湖のうちの3つであるヒューロン湖、エリー湖、ミシガン湖に囲まれたロケーションというぐらいしかイメージが湧かないと思いますが、実際には州内全土に無数の池やレイクが点在し、そこにはラージはもちろんスモール、パイク、ウォールアイ、イエローパーチ、クラッピーなどが共生している、まさにゲームフィッシングパラダイス。

しかも1940年代後半のミシガンといえばモータウンの名の如く、戦後の好景気で自動車産業が黄金期に入ろうとしている時期ですから、そこで働く労働者達が休日になったらこぞってピクニックに行く(当時のアメリカのピクニックは釣りがセットだった。詳しくはトムとジェリーを見よw)という、いわばフィッシングバブル期でもあった訳です。

そんな時期の製品ですから、そりゃルアーのネームひとつ取ってもアピール大会になりますわな😁

しかし、そんな隆盛も長くは続きません。

1960年代も後半になると、その他のルアーブランドがそうであるようにミルサイトも消滅してしまいます。

通常だと他の会社が権利を買い取って事業継続するという流れになることが多いんですが、残念ながらミルサイトには後継者が現れなかったか、現れたとしてもルアー製造という事業を行わなかったようです。

よって、このラトルバグも一代限りで終わってしまいました。

釣れるルアーが一代で途絶えてしまうという事実は悲しいことではありますが、経営者が変わって名品がクソ💩に退化したという事例が山ほどある事を思うと、オリジナルのまま終わったという事を喜ぶべきなのかもしれませんね。

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