関西のカリスマアングラーによって日本に定着したルアー スピードシャッド Speed Shad 4S / ボーマー Bomber

クランクベイトシャローダイバーボーマールアーズ Bomber Lures

関西のカリスマアングラーによって定着したルアー

かつて関西バスフィッシングシーンでカリスマ的な人気を博していた人物がいました。

その人の名は力丸卓生。

東播野池を中心としたおかっぱりバスフィッシングの達人として知られ、80年代中頃には釣りサンデーなど数多くの媒体に登場し、東の西山徹に西の力丸卓生と言われるなど少年バスアングラーにとっては憧れの存在でした。

今日のゲストは、そんな力丸氏がブレイクさせたと言っても過言ではないスピードシャッド。

彼からこのルアーの威力を教えられて目ウロコになった未来のおっさん数知れず。

当時を代表する舶来ルアー

スピードシャッドはモデルAやロングAと同じボーマー家の出身。

70〜80年代の釣具屋には必ずと言っていいほど並んでいたルアーでしたが、良くも悪くもシンプルな外見はルアーとしてのインパクトに欠けていたこともあり、あまり売れている印象はありませんでした。

もちろん芦ノ湖などでの実績は伝わってきてはいましたが、人気商品という感じではなくいつも定位置に掛かっているルアー、のイメージ。

日本にはシャッドが棲息していないので、馴染みが薄かったというのも影響していたでしょう。

ひとりのアングラーがスターダムに押し上げた

しかしある時期からスピードシャッドによる釣果報告が相次ぐようになります。

今のようにSNSがなかった時代、釣果情報を得るには釣具屋かボート屋のオヤジ、そして釣り新聞などの紙媒体に頼るぐらいしか方法がありませんでした。

しかしその情報にはモノを売りたいがための眉唾であったり、古いネタのリサイクルだったりと信憑性に欠けるものもそれなりに含まれており、まさに玉石混交状態。

ところがそんな状況でもあちこちからスピードシャッドの名前が聞こえてくるようになったのです。

そしてその話には必ず “力丸さんの” という謎の所有格wと、”早く巻け” という指南がセットになっていました。

早巻きの効果を知らしめたスピードシャッド

そしてその情報通りに使ってみると…  結果はもうお分かりですね。

めちゃくちゃ釣れたのです。

サイズこそ大きくはありませんが、今でいうところの爆釣状態。

80年代の初めといえば、 “ブラックがルアーに追いつけない” という理由でルアーの早巻きを大真面目に否定する人もいた時代。

そんな謎のルールとは真逆の早巻きメソッドで次々とバスが釣れるんですから、そりゃ目ウロコにもなりますよね。

そうして “力丸さんはスゲー” という評判が一気に広まったのです。

リップとスナップがスピードシャッドのキモ

そんな力丸さんのアシストによって大ヒットとなったスピードシャッドですが、その命はなんといってもこのハート型のリップでしょう。

これはモデルAのシャロータイプなどでもお馴染みのシェイプですが、リトリーブ開始と同時に立ち上がるタイトなウォブリングでボディを揺らし、早巻きでも破綻する事なくピリピリとした緊張感のある泳ぎを見せてくれます。

今のルアーの基準だと、早巻きで結果を出すルアーと言われてもふーんとしか思いませんが、40年以上も前にそれをメインコンセプトとして開発するあたりにアメリカンバスフィッシングの奥深さを思い知らされますね。

…と書くと、スピードシャッドはボーマーが開発したルアーだと思ってしまいますが、実はスピードシャッドには元ネタとなる存在があります。

実は1940年代後半にトゥルーテンパー True Temper 社が同じスピードシャッドという名前の早巻きシャッドをリリースしているんです。

しかしそっちのスピードシャッドはボディシェイプがボーマー製ほど薄くなく、金属製リップでアクションにいまいちキレがないなど、早巻きで使うにはちょっと無理のある仕様。

これはのんだくれの勝手な想像ですが、おそらく当時のボーマーはオリジナルスピードシャッドのポテンシャルを早い段階から見抜いており、ボーマー流の解釈を実現するために権利を買い取ったんだろうなと。

スピードシャッドの強み”内蔵反射版”

しかし単なる量産化だけで完結しないのがボーマーのナイスなところ。

極薄ボディで得られたピリピリアクションの効果を最大化するためにボディ内部にこんな反射板を仕込んでくれたのです。

これによりスピードシャッドにはフラッシュの明滅効果が加味されて、誰が見ても、おー!スゲー!😲な仕様に。

マディウォーター対応のペイントカラーも

さらに米国南部地域に多く見られるステイン〜マディウォーターにも対応させるべく、反射板モデルだけでなく膨張色ベースのカラーもラインナップするなど、もう全方位攻撃体勢。

もしかしたらスピードシャッドが東播野池周辺から火がついたのは、反射板よりもこの膨張色カラーの影響もあったのかも知れませんね。

それを考えると、あの当時に水質も含めて状況判断をしていた力丸さんの洞察力はスゴかったなと。

少年たちと同じオカッパリという目線で、ルアーの使い方も含めて丁寧に発信した力丸さんが支持されるのは至極自然のなりゆきだったのかもしれません。

実釣能力だけでなくヲタ心をくすぐる作り込みも

そんな釣れ釣れのスピードシャッドですが、目とストライクドット部分は盛り上がったモールドになっているなど、オタ目線をも満たす仕上がりになっています。

このスピードシャッドは90年代と2000年代に何度か再販されていますが、それらも全て同じような仕様になっているので、製造時期の違うものを並べて焼酎の氷を鳴らすのにもピッタリ。

スナップは”あの”ブランドのもの

そしてモールドだけでなく、こんなヲタ燃料も投下してくれています。

もうお分かりですね😁

50年代から80年代にかけて米国ルアーマニュファクチャリングの屋台骨を支えていたといっても過言ではないラクソン Luxon 社のスナップです。

ルアーに最初から装備されているスナップは、ルアー交換の際に外して他のルアーに付け替えられることが多いため、オリジナルのままで残っているのが少ない貴重な存在。

しかしオリジナルであるトゥルーテンパーのスピードシャッドにもスナップが標準装備されていたし、90年代以降に再販されたスピードシャッドにもスナップがついていた(再販モデルはラクソンではなく汎用スナップ)ので、スピードシャッドの本来のアクションはスナップありきだったんでしょうね。

ちなみにボーマーはスナップ以外にもリップシャッドのプロップやウォータードッグのリンクパーツ、ブッシュワッカーのスイベルなど数多くのコンポーネントにラクソンのものを採用しているので、オールドボーマーを飼っている人がいたら是非確認してみてください。

 

スピードシャッドのフックサイズ

フックはカドミウム処理されたオープンポイントと呼ばれる鈎先がやや開いたものを採用しているのが初期モデルの特徴。

この形状のフックは同時期のモデルAやロングAなどには採用されておらず、このスピードシャッドだけの仕様です。

おそらく早巻き使用時のミスバイト抑止を考えた結果ではないかと。

ちなみに90年代以降に再販されたモデルにはショートシャンクのラウンドベンドフックが採用されています。

サイズはモデルによっても違いますが、画像の4Sには#4が採用されています。

まとめ

この令和の時代にスピードシャッドをガチ投入している人はさすがにいないと思います。

しかしこの記事を書くために25年ぶり?に投げてみたところ、懐かしいという感覚よりも ”あーこれ今でも絶対釣れるわ” という強い現役感を感じました。

なので、ボックスの奥底でスピードシャッドを眠らせている人がいたら、是非とも水辺に連れ出して早巻きの威力を思い出して欲しいのです。

そしてスピードシャッドの本当の力を広めてくれた力丸さんに感謝しつつ、追悼の意を表すのがかつて少年だったバスアングラーが今すべきことではないかと。

 

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