最近はあまり聞かれなくなってしまいましたが、かつては広く飛沫を撒き散らすポッパーがトップウォーターの主役だった時代がありました。
これはゼルローランドだったりポップRのHMKLチューンあたりをルーツとした流れでしたが、一時期ポッパーはツバを飛ばしてナンボ、スプラッシュを出せないポッパーはゴミというような扱いをされていたことも。
当然そんな時流に乗って数多くのスプラッシュ系ポッパーが登場してくるワケですが、マイケルやイエローマジックと共にツバ吐き御三家?として名を馳せたのが今日のゲスト、ゲーリーのSUGOIスプラッシュ。
当時、琵琶湖のシャローエリアでは無敵と呼ばれたスプラッシャーです。
スゴイスプラッシュは全長60ミリ、自重7gの標準サイズポッパーです。
このルアーが発売された当時は空前のバスフィッシングブームだったこと、そして釣れ釣れゲーリーグラブのブランドパワーも手伝って、多くのアングラーのボックスでシード席を獲得するなど日本ルアー史上において最も売れたルアーのひとつでした。
そこには ”ヤマモト” という日本人姓ゆえの親和性と応援したいという無意識の同朋マインドが作用してたのも少なからずあるでしょうね。
このルアーのキモはなんといってもこのカップです。
スパッと切り落とされた味気ないエッジに浅いカップという構造を見ただけではピンときませんが、小さくロッドをスウィープさせるだけで細かいスプラッシュをデルタ状にしかも広範囲に撒き散らしてくれるなど、そのパフォーマンスはバスでなくてもうっとりしてしまうほど。
のちにポップ-Xが登場した際に ”水面を薄く削る” というルアーコピー史上最高とも言える絶妙な表現が登場しましたが、このスゴイスプラッシュに求められるロッド操作はまさにそれ。
ルアーで水面を軽く削るイメージでロッドを動かしているだけなのに次々と魚が飛び出してくるんですから、そりゃスゴイスプラッシュのために一軍ボックスのシード席を空けたくなるのも分かりますよね。
しかし飛沫をキレイに吐くルアーなら他にも数多く存在しています。
特にこのルアーがリリースされた当時は、先述のマイケルやイエローマジック以外にも多数のスプラッシュ系ポッパーが市場に出回っている戦国時代でもありました。
その中にありながら、なぜスゴイスプラッシュが ”SUGOI” と言われたのでしょうか。
のんだくれが考えるに、それはこのフェザーのおかげではないかと。
他社のポッパーも同様のフェザードフックを装着していましたが、このスゴイスプラッシュのフェザーだけが突出して長かったのです。
スゴイスプラッシュは個体によってフェザーの長さに違いはありましたが、そのどれもがボディよりも長いフェザーを装備していたのです。
フェザーはより生物っぽい自然な動きが演出できるだけでなく、ルアーの挙動を安定させるスタビライザーの役割も果たしています。
つまりポッパーにおけるフェザーは、ルアーが水面から飛び出しにくくなるという安定性をもたらす効果があるのです。
これにより、水面に波が立つ様なチョッピーな状況で連続したポッピングアクションを仕掛けてもルアーがトビウオにならず、安定してスプラッシュを出し続けることができます。
スゴイスプラッシュは他のスプラッシュ系ポッパーに比べて、この連続ポップ時の安定性が素晴らしいのです。
そしてもう一つはポーズ時に見せるこのフェザーの挙動。
答えはスゴイスプラッシュでした。
ポーズ時に長いフェザーがゆっくり下がっていくので、バスの食いがイマイチな時でも口を使わせられるという貴重なポッパーです。 pic.twitter.com/1RIW2MNtrV
— のんだくれ@ルアー千一夜 (@lure1001) April 8, 2021
ポーズ時にゆったりと下がるこのフェザーの動きが強力にギルを寄せるのです。
バスが周囲にいるギルの一挙一動を凝視しているのはご存知だと思いますが、このフェザーに吸い寄せられたギル達が次のポッパーのワンアクションに驚いて身を翻した時にバスのスイッチが入ることが多いのです。
これは仮説なのででのんだくれの推測の域を出ていませんが、ギルにつっ突かれてショボくなったフェザーだと反応が明確に鈍くなるので、かなりの確信を持った”推察”。
そしてこの長いフェザーは連続ドッグウォーク時にはクネクネと、まるで小さな蛇が泳いでいるかの様な妖しい軌跡を作り出すという視覚的効果も。
普通のウォーキングポッパーに長いフェザーをぶら下げてもスゴイスプラッシュのようにキレイにクネクネと泳ぐことはないので、おそらく設計段階からロングフェザー装着が前提の設計だったのではないかと。
もちろん考え抜かれているのはカップやフェザーだけではありません。
ボディ内部にはラトルが封じ込められているのですが、これがなかなかの手練れっぷり。
前後方向のみに動くことを許された中音ワンノッカーラトルと横方向にも動く高音ラトルの二重奏を装備することで、スプラッシュを吐く時も、ドッグウォークでネチネチと動かす時も、どんな時でも確実にラトルが鳴ってプレデターのアテンションを惹き付ける常時全方位アピール設計になっているんです。
そしてワンノッカーは重心移動ウェイトの役割も果たしているのか、自重が7gしかないにも関わらず14lbナイロンを引っ張ってストレスなく飛んでくれます。
さらにさらに。
塗装にも抜かりはありません。
それがこのギラギラがべっとりと塗られたこのラメフィニッシュ。
我々日本人の目から見ると、ラメが塗られたボディは安っぽく見えてしまうので敬遠する人も多いのですが、ラメはアメリカでは非常に重要なファクター。
なぜならギラギラのラメフレークは、プレデターに襲われてパニックになったシャッドがプレデターの目を撹乱するために水中に撒き散らす小さなウロコを模しているから。
その効果はへドンのSSカラーやノーマンのゲルコートフィニッシュが何十年にも渡って売れ続けているという事からも分かりますね。

そういえば遠い昔にはグリッター入りのフィッシュフォーミュラや、水に溶けるとグリッターフレークを放出するアルカセルツァー(発泡錠剤)を仕込めるワームヘッドなんてのもありました😁
そんなおいしいグリッターが腹にべったり塗られているわけですから日本人はともかく、米人のチンコは勃ちまくりになるのです。
フックは前後ともファインワイヤーの#4が標準となっています。
しかし先述の通り、スゴイスプラッシュはロングフェザーありきのルアーなので、交換の際には注意が必要です。
なぜならここまで長いフェザーを装着した汎用フェザードフックが売られていないから。
ボリュームのあるフェザードフックはたくさん出回っているのですがどれも長さが足りず、フェザーの長さで合わせると今度はフックサイズが合わないという帯に短し襷に長しなアレ状態。
なので結局自分で巻くという羽目に。
当時もしスペアのフェザードフックもルアーに同梱してくれてたらゲーリーに命を捧げてたのになぁ😁
ネームは背中にSUGOIだけの超シンプル仕様。
これは同時期に発売されていたリップレスクランク SUGOIバイブも同じ仕様(スゴイバイブのネームは腹)なので、ゲーリー自身がネームプリントに全く興味が無かったいうことでしょう。
そういえばこのSUGOIスプラッシュがブレイクしてた時期、アメリカで釣りをするとガイドがやたらとスゴイ!スゴイ!(アクセントはもちろんゴw)を連発してウザかった思い出があります。
それも一人だけじゃなくて何人も😂
それだけこのルアーが売れていたという事と、極東からの客を楽しませようとしてくれてたんだとは思いますが、そういうのに愛想笑いを返すと、ウケると勘違いされてその後がヒサンになるので、無表情にOkay と流すのが正しい対処法。
ジャポネがいつもニコニコヘラヘラしてると思ったら大間違いなのである。
スプラッシュで小魚のざわめきを演出するのか、それともウィードに集うエビのピチピチを真似るのかはアングラー次第ですが、どのように使ってもしっかり結果を出してくれるのがスゴイスプラッシュのSUGOIところ。
でも残念なことにスゴイスプラッシュ2との世代交代で消えちゃったんですよね😭
2の方も釣れ釣れパフォーマンスを発揮してくれるのでアレはアレで貴重な存在ですが、できればこの初代モデルをもう一度再販してもらえたらなーと。
最近のトップウォーターはスローな羽根モノとチリチリ系のスイッシャーに引っ張られてて誰もポッパーを使ってないので、独り勝ちも夢じゃないと思うし、黒鯛ポッピングのエキスパートも再販を切望してるんだよなぁ…