元バグリーのデザイナーが満を持して市場投入したラトル入りフラッグシップモデル ミノーメイト Minnow Mate 22 / リーシッソンルアーズ Lee Sisson Lures

ショートビルジャークベイトリーシッソンルアーズ Lee Sisson lures

 

現場で仕事のスキルやノウハウを身に付けてから独立するのはどの業界でもよくある話。

いや、むしろその手順を踏まずにいきなり独立する方がレアケースでしょう。

そんな ”お約束スキーム” はルアー業界にもしっかり当てはまり、有名どころではレーベル(プラドコ)から独立したビルノーマン(現ノーマンルアーズ)やダイワから独立した加藤さんなどなど枚挙にいとまがありません。

そしてあの名門バグリーもリー•シッソンと言う独立組を輩出しています。

 

ミノーメイトとは

 

ご存知の通りリー•シッソンは元バグリーズベイトカンパニーのデザイナー。

70年代後半から80年代初頭にかけてのバグリー黄金期は彼なくして実現はできなかったと言われるほどの功労者でした。

そんな彼は自身の名を冠したリーシッソンルアーズLee Sisson Luresを立ち上げ、打倒バグリーを目指して自社ルアーをリリースするのですが、今回紹介するミノーメイトはそんなシッソンのフラッグシップとなるティッカーシリーズの一員として85年に登場しました。

 

 

ティッカーシリーズとは、ウッド素材の内部に金属のラトルチャンバーを埋め込む事でそれまでウッドでは出せなかった高音で硬質なラトルサウンドを売りにしたラインナップのこと。

バグリーで得意だったクランクベイトではなく、あえてポッパーとミノーで勝負に出るあたりにシッソンの自信というか「クランクベイトだけじゃないんだぜ😤」と言うプライドが見え隠れしてますね。(後にダイビングティッカーというクランクベイトもちゃっかりリリースしましたがw)

ちなみにティッカーTickerとは英語で時計のチクタク音を表す単語。

時計の音とチキチキと響く高音ラトルサウンドを掛けたネーミングになっています。

今やトレンド発信ツールとなったTik-TokもTick-Tockが語源なのは皆さんご存知のとおり。

個人的にTik-Tokは吐き気がするほど嫌いですがw

 

ミノーメイトのサイズ•重さ

 

ミノーメイトのスペックは120ミリ、実測10.6g。

カタログ値では自重1/2ozとなっていますが、このルアーに限らずシッソンのルアーはカタログデータ通りだった試しがないので、良くも悪くも平常運転というところでしょうか。

 

他に類を見ない細さのボディ

 

このルアーの特徴はミノーとしては異常とも言えるほど細身のボディであること。

内部にラトルチャンバーを仕込んでいるとは思えないほどの細さなのです。

もしかしたらシッソンは極限まで細くしたボディシェイプによって自身の技術力を誇示したかったのかもしれませんね。

この細さでルアーに求められる強度を確保するのは難しいので素材はバルサではなくウッドを採用しています。

 

 

木材の種類について当時の記事では ”エキゾティックウッド(海外の木材)” としか説明されていなかったので種類までは不明ですが、リーシッソンに師事したロン・トロイヤーズRon Troyers(後にソーンウッドルアーズThornwood Luresとして独立)が雑誌記事で金属チャンバーを効率良く響かせるには硬いブラジリアンチェリーウッドでないとダメだと語っていたので、もしかしたらこのミノーメイトもブラジリアンチェリーウッドを採用しているのかもしれません。

 

ボディを貫通するラトルルーム

 

最大の売りである金属製ラトルチャンバーはボディが最も太くなっている部分に横穴を開けて仕込まれています。

うっすらとラトルルームが確認出来るのは貴重なニヤニヤポイント。

気になるサウンドは、現代のラトル入りインジェクションミノーと比較しても遜色ないレベルの音量と響き具合。

かつてHMKLのK-0ミノーが登場した時、アクションによって規則正しくカチカチと鳴るラトルを「メトロノームサウンド」と称したメディアがありましたが、そのサウンドよりもずっと高音に仕上がっています。

これでパテントを取得しただけのことはありますね。

ちなみにシッソンの古巣であるバグリーもこの製品に対抗するためか、ラトル入りのラインナップをチャターシリーズとして展開しました。

しかしバグリーのチャンバーはプラスチックケースに鉛を入れたものだったためサウンドは中低音で大人しめ。

とはいえ当時は低音ラトルの方がデカバスに効くと言われていた時代だったので特に不満はありませんでしたがw

 

ラトルを鳴らす事に特化したアクション

 

気になる泳ぎは典型的なローリングアクション。

はっきり言って目立つところもない至ってフツーのアクションです。

そしてアクションの立ち上がりがかなり鈍く、ジャークやトゥイッチしても最初はスーンと引っ張られるだけなのでイマドキのジャークベイトの感覚で使うとオイオイとなることマチガイなしでしょう。

しかしこれがこのルアーの「仕様」。

実はこのルアーは一般的なミノーやジャークベイトのように細かいトリッキーな動きで食わせるものではなく、あくまでもラトル音でアピールするものだったのです。

つまりラトルを鳴らすためだけにフォーカスしたルアーである、ということ。

そのため動き出しは鈍いのですが、一定のスピードで巻けばしっかりとトルクを感じる泳ぎで確実にラトル音を刻んでくれるのです。

そりゃそうですよね、バグリーの名作バングオーの開発にも携わった人がこんな鈍い動きのルアーをわざわざフラッグシップとして出すわけがないですもん。

 

 

その泳ぎへのこだわりはラインアイにも表れています。

このミノーメイトのアイは異様とも思えるほど下に曲がっているのです。

これはのんだくれの勝手な推測ですが、ベストのアクションを導き出す為にあえてラインアイを長く確保して調整の幅を広く取っているんじゃないかと。

なぜなら同じミノーメイトでもラインアイの状態が個体ごとに全く違っているから。

もちろん自然素材ゆえの品質のブレを調整する目的もあったと思いますが、泳ぎにシビアなバグリー出身だけに何かあると睨んでます。

 

カラーリングはいかにもシッソン

 

カラーリングはいかにもシッソンなタイガーパターン。

このパターンは多くのシッソンルアーに見られる定番で、2000年代初頭にシッソンがルアー業界に復帰した際にリリースされたプレミアムバルサシリーズにも多用されていました。

シッソンは普通に塗っているように見えますが、カラーリングパターンだけで出自が分かるのは実はマーケティング的には凄いことなので、実は相当緻密に計算していたんじゃないかと。

 

バグリーの伝統を引き継いだリグ&フック

 

リグは前後ともヒートンにクローポイントの太軸フックを採用しています。

これはバグリーの非バルサルアーにも採用されていたリギング手法でボディ自体はノンウェイト構造になっています。

つまりリグとフックをそのままウェイトにしてしまう事でボディのウェイトホール加工の工程を減らすという量産化手法のひとつ。

バグリーのDNAを感じることが出来るニヤニヤポイントその2でもあります。

 

 

80年代のバグリールアーにはママキャットやスモールフライなどこの手法を採用した物が多数あるので、是非手持ちのバグリーをチェックしてみてください。

また酒の肴が増えますから😁

 

残念ながらネームはなし

 

そんなナイスなミノーメイトですが、シッソン家の掟に従ったのか残念ながらボディにネームは無し。

唯一リップのエンボスモールドだけがシッソンの紋章になっています。

このルアーがフラッグシップ的な位置付けだった事を思うとちょっと物足りないですよね。

ちなみにこのミノーメイト、90年代にはあのヘドンからウッドシリーズの一員として再販されています。

 

 

ヘドン物にはしっかりとネーム(Heddon Woodしか入ってないけどw)が吹かれているので、シッソン物がノーネームなのが余計に残念に思えてきます。

 

 

どこかで出会えたらラッキー

 

そんなミノーメイトですが、既に生産が終わっているので入手は中古市場で探すしかありません。

そして実店舗はもちろんネットでもほとんど見かけないレア種なので遭遇率はかなりの低さ。

正規で日本に入っていたのかどうかも含めて当時の流通状況は不明なので見つけるにはそれなりの労力と時間を覚悟する必要があるでしょう。

でもご安心を。

なぜならこのミノーメイトはそこまでして入手するようなルアーではないからw

メトロノームサウンドは確かに注目に値するけど、同じような特性を持ったルアーなら他に沢山あるし、そもそもリーシッソンのルアーは個体差が激し過ぎるのでめでたくゲット出来ても全く泳がないなんてのは他のシッソンルアーを見れば明らか。

要するに所有欲を満たすだけのコレクターズアイテムなのです。

なのでもしどこかで出会っても余程財布に余裕が無い限りはオススメしませんので悪しからず😁

 

おわりに

 

ネットの進化、特にYouTubeの普及によって指一本で他人のノウハウが得られるようになった今、誰かに師事する事でスキルを学ぶという事がすっかり無くなってしまいました。

しかしいくら動画で詳しい手法を得る事が出来ても、本質や魂まで理解するのは到底無理でしょう。

独学は悪ではないけれど、先人からちゃんとしたDNAを受け継ぐのも文化継承の一環だと考えると、今のハンドメイドルアーとビルダーの在り方ももうちょっと考える余地がありそうですよね。

 

 

 

 

 

 

タイトルとURLをコピーしました