ルアーは生き物です。
生き物であるがゆえに、アングラーとは相性の問題が付きまといます。
その時のアングラーの嗜好やホームフィールドの状況、タックルセッティングによっても相性の良し悪しは大きく左右され、それは結果となって使い手に帰ってくるのです。
その傾向が顕著に表れるルアーの代表といえば、やはりジャークベイト。
セッティングはもちろん、動かすリズムや腕の筋肉の使い方ひとつで最終兵器にもゴミにもなるという、言わばアングラーのスキルが試されるルアーです。
今日紹介するスプロのマックスティックは、そんな相性を再認識させてくれたルアーでした。
マックスティック110とは
マイク・マクレランド監修による世界戦略ジャークベイト
マックスティックはバスプロ、マイク・マクレランド監修によって設計されました。
ロッククローラーと同時期にリリースされた、スプロの世界戦略ジャークベイトです。
自身の名を冠するあたり、マイクはこのルアーに相当な自信があったんでしょうね。
“Designed for finicky early and late season fish(シーズン序盤や終盤の気難しい魚を攻略するために開発された)” というお約束の謳い文句に誘われて購入しましたw

最初の印象は ”いたってフツーのジャークベイト”
が、そんな前フリとは裏腹に、のんだくれのファーストインプレッションはイマイチでした。
なんというかひとことで言うと、心に刺さるものがなかったのです。
ジャークすればそれなりにダートするし、水も動かしてる。重心移動があるから飛距離も出るし各部の作り込みも問題ナシ。
しかし、コレしかないでしょ!という決め手に欠けるのです。
それぞれの要素をソツなくこなしてくれるんだけど、何がなんでもマックスティックじゃないとダメ!という点が見当たらないんです。
そんな経緯から、マック君は三軍ボックスに落ちてしまったのでした。
本来のポテンシャルを見せつけられたデルタ釣行
しかし何年か後に友人と出向いたカリフォルニアデルタでマックスティックの実力を知ることに。
当日のデルタはデカいのは出ないけれど、2〜3パウンダー(35〜45cm位)はコンスタントに釣れ続ける割とイージーな状況でしたが、友人が投げるマックスティックに突如バイトラッシュが始まったのです。
そしてお前も投げろと渡されたセットでのんだくれも楽しい思いをさせてもらったのですが、その際に投げたマックスティックの印象が全然違ったのです。
あれ?コレってこんな感じのルアーだったっけ?と。
それはもちろんいい意味で。
その理由はタックルセッティングにありました。
ロッドがのんだくれのものよりもずっと柔らかく(感覚的には弱過ぎるぐらい)、ラインも米規格フロロ12ポンドと、のんだくれがジャークベイトの基準にしているナイロン20ポンドとは全く違ったのです。
そのセッティングで動かすマックスティックは、のんだくれの知るマックスティックではなく、完全なる別物。
タックルセッテイングが違えばルアーの動きが変わるのは常識ですが、まさかここまで違うとは。
その帰り、マンティーカのバスプロショップスでマックスティックを買い漁ったのは言うまでもありません。
これがまた絶妙なロケーションにあるのよね、どのBPSも😂
マックスティックのサイズ・重さ
マックスティックはその名の通り110ミリのボディを持つかと思いきや、何故か112ミリという変則サイズ。
この数値の違いに意味があるのかどうかは分かりませんが、ジャークベイトの王者ログARB1200(全長115ミリ)に負けない存在感が欲しかったんじゃないかと勝手に想像してますw
たかが2ミリ、されど2ミリだったんじゃないかと。


ラトリンログ ARB1200とマックスティック110
マックスティックはこの110サイズの他に115と95がラインナップしていますが、それぞれまた違った味付けになっているので、くわしくはまた別の記事で。
マックスティック110の特徴
しっかり水を押すワイドなリップ
マックスティック110はボディ幅よりも大きく張り出したリップが特徴です。
こんな大きなリップをジャークしたらさぞかし手首への負担が… と不安になってしまいますが、そこはさすがの後発らしくちゃんと水切れも考慮されており、”このサイズのリップにしては” 引き抵抗は抑えられている方ではないかと。
抜群の飛距離を叩き出す重心移動ウェイト
そしてしっかり仕事する重心移動ウェイトもマックスティックのウリのひとつで、軽く40mは飛ばせるキャスタビリティを誇ります。
思い通りに動かしてナンボのジャークベイトにとって、ロングキャストという要素はそれほど重要ではありませんが、遠くで発生したボイルを撃てる性能を備えているというだけでも意味はあるかと。
さらにこのウェイトが実に素晴らしいノイズメーカーでもあるのです。
ジャークの度にガチガチとスーパースプーク並のワンノッカーサウンドを発するのでアピール力では言うことナシ。
とはいえ、それは裏を返せばウェイトが動きすぎるということでもあるので、詳しくは後述します。
スプロお得意のバッドボーイアイズ
そしてスプロといえばやはりこのBad Boyz系の釣り上った目ですね。
この目のデザインに抵抗を感じる人もいますが、多くのスプロルアーはこの目でアイデンティティをアピールしており、セールス的にもプラスになっているようなのでおそらくこれが正解なんでしょう。
マックスティック110のアクション
各要素を高ポイントで満たした秀作
マックスティック110は、メガバスワンテンが見せるような派手な横っ飛びダートでバスにアピールするというよりは、リップで周囲の水を強く動かすことでバスの側線を刺激するタイプのジャークベイト。
しかしロッドワーク次第で小さなロールアクションも出せるので、フラットなボディサイドを活かした弱い明滅アクションもバッチリ。
リトリーブで見せる泳ぎもしっかり調律されており、メーカーがいうところの “タイトシャッドウィグルアクション” は偽り無しと言ってもイイでしょう。
重心移動特有のデメリットがあるが…
しかしどんなルアーにも欠点があるように、マックスティックにも欠点があります。
それは重心移動ならではの着水直後の姿勢。
ウェイトがテール側に寄っているのは仕方ないとしても、この姿勢から戦闘体勢に入るには少しリトリーブしてウェイトを定位置に戻してあげる必要があり、着水直後すぐにジャークすると水面から飛び出してしまうのです。
初期の重心移動ミノーでよく見られた症状ですね。
しかもこのウェイトは強くジャークすると定位置から外れるので、ジャーク後に止めると頭が上がったり下がったりと姿勢が不安定なところは否めません。
近年のジャークベイトは着水後に軽くチョンとやるだけでウェイトが定位置に移動し、激しくジャークしても外れないものが多いのですが、マックスティックはそれが出来ないのです。
よって最近のジャークベイトに慣れたアングラーが使うと、人によっては ”なんだコレ使えねー!😩” になるケースもあるかもしれません。
しかーし!それだけでマックスティックを評価するのはちょっと早い。
それを読み解くキーがマックスティックデビュー当時の紹介動画にあったのです。
マイクのジャークスタイルに合わせた設計
この動画の中でマイクは ” Make a really long cast and the first thing I wanna do is just wind the bait down(ルアーを遠くへ飛ばしたら最初にする事は、とにかく巻いて潜らせること)” と言っています。
つまりこのルアーは目的とする深度まで泳がせてからジャークさせるものであり、その深度に到達した時点でウェイトは定位置に戻っている、と。
さらに彼のジャークにも秘密が隠されていました。
動画をよく見ると、彼は強いロッドアクションをほとんどしていません。
ロッドを軽くチョンと振っているだけ。
横っ飛びさせてナンボ系の、腱鞘炎必至のビシバシジャークとは全く違います。
さらにロッドをチョンとやったら、次のジャークに入る前に僅かにリールを巻いてラインスラックを取るのと同時にルアーの姿勢も直していることが分かります。
この動画からはルアーとの距離がどれほどあるのかは確認できませんが、ロッドアクションの大きさから言っても彼のジャークアクションは弱いものであり、マックスティックのウェイトが定位置から外れるレベルではないのは明らか。
よって、マックスティックは強いアクションで使うジャークベイトではなく、弱いロッドアクションと巻きで誘っていく彼のスタイルに合わせて開発された物である事が分かります。
これを理解した上で改めて使ってみると、マイクが意図したアクションが見えてきて、見た目とは裏腹にフィネス要素が強いジャークベイトであることが理解できます。
しかし大きなアクションでウェイトが外れることにより、他のジャークベイトにはない強烈なワンノッカーサウンドが得られるのもこれまた事実。
強めのジャークで停止した時の姿勢なんて気にせずにジャカジャカやってもしっかり釣れるのです。
この辺りに ”ルアーをどう使いこなすか” というジャークベイト特有の面白さが隠されてますよね。
ひねったカラー名が多いのもスプロの特徴
画像のカラーはスプロブルー。
ミノー系ルアーには欠かせないプロブルーにスプロを掛けた造語になっています。
コレと同様にスプロにはカラー名だけではどんな色か分からない変則カラー名が多数存在しているのでネームヲタとしては目が離せません。


画像引用:tacklewarehouse.com
このカラーの名前はオールドグローリー Old Glory。
星条旗🇺🇸の愛称をカラー名に使った経緯は分かりませんが、湾岸戦争時に各社からオールドグローリーカラーが多数リリースされたのと同じように、この色にはアメリカ人としての栄光やプライドを重ねたんだろうなと想像を掻き立てられます。


画像引用:tacklewarehouse.com
しかし未だにワカランのはこのセルメイト Cell Mateというカラー名。
直訳すると ”囚人仲間” になるんですが、なぜこの名に行き着いた???😂
マックスティックはがまかつフックが標準装備
スプロはがまかつの子会社なので、フックはもちろんがまかつを採用。
3本とも#5の変則番手を採用しています。
ルアー自体のサスペンド精度が非常に高いので、パフォーマンスを落とさないためにもフック交換の際には重量にも注意したいところです。
ネームは腹に
ネームプリントはブランドロゴとルアー名がスタンプされたBパターンを採用。
画像ではトーンやコントラストを調整して見やすくしましたが、実物はオレンジの上にゴールドなので見にくいったらありゃしない。
ルアーにプリントされたネームは単にIDとしてだけではなく、美味い酒の肴にもなるのでもうちょっと見易さにも配慮してほしいもんですw
マックスティックはどこで買える?
そんなマックスティックですが、アメリカ製ルアーにも関わらず入手し易いのが嬉しいトコロ。
日本では魚矢が総代理店となってしっかり供給してくれているので、米国製ルアーを避ける店でない限りは大抵置いてあります。
発売から10年以上が経ち、メリケンジャークベイトのひとつとして定着しているのも入手し易い理由のひとつでしょう。
それはつまり日本でもマックスティックで釣っているアングラーが多くなっていると言う事。
ちょっと前までは海外製ジャークベイトの定番といえばログかロングAばっかりでしたが、マックスティックもそれと同等クラスとして認められつつあるのです。
でもちょっとだけ気になるのはそのお値段。
スプロのレギュラーラインが10ドルそこそこなのに対し、このマックスティックは15ドル前後とかなり強気なプライスタグになっています。
この差額がマイクの財布に?とも思いましたが、そうなるとディーンロハスやジョンクルーズなどマイクと同様にスプロと契約しているアングラーの立場がないw
製造コスト的にはクランクと変わらんはずなのにこの差はいかに。
おわりに
全く同じルアーを同じスポットに投げても釣果に差が出るのがルアーフィッシングの面白いところでもあり、難しいところ。
しかしその難しさはルアーのクセを知っているだけで乗り越えられるシンプルなものであることも少なくありません。
そういう意味では、良いことも悪いこともひっくるめてルアーのクセを知る事が釣果への最短距離なんでしょうね。(自戒😭)