”あのルアーってどうなの?”
仕事柄、最もよく聞かれる質問です。
ルアーの良し悪しは本人の好みに左右される部分が大きいので、基本的に何を聞かれても ”いいんじゃない?”と返してますがw、中には全力で褒めちぎるルアーもチラホラ。
今日のゲスト、バグリーのミノーBはそんな数少ない褒めちぎりチームの一員。
そしてこれから夏に向かって絶対に押さえておきたいルアーです。
このルアーは先日のバングオーのポストで触れたので覚えている方もいることでしょう。
旧バグリー時代には存在しなかったオリジナルプラスチック製ミノー(トップガンミノーはバグリーのオリジナルではない)として、新生バグリーのキックオフを飾ったルアーのひとつです。
しかしデビュー当時、このルアーに対するアングラーの目は冷ややかなものでした。
なぜならバグリーのプラスチック製品にはこんな黒歴史があったから😭😭😭
なのでバグリーがプラスチックのミノーを、しかもバングオーのプラ版をリリースすると聞いて眉をひそめるのは無理もなかったんです。
しかし当のバグリーは本気でした。
当時のプレスキットにはこんな力の入った個別のブローシャーまで折り込み、ヤルモがデザイナーとしてラパラで培ったノウハウをバグリー再生のために惜しげもなく投入している姿勢を全力アピールしてきたのです。

往年のバングオーのアクションを彷彿とさせるコピー ”トゥイッチ、ギラッ、ガツン”
しかも商品説明にはこんな文句が並びます。
” Designed with Bagley Purists in mind but build for those who simply love great topwater action. “
”真のバグリーファンを念頭において設計したが、それだけにとどまらず、シンプルに最高のトップウォーターアクションを求めるアングラーのためでもある” と。
一見、普通の商品説明にしか見えませんが、実はこの文章ががなかなかの曲者なんです。
このPuristという単語は直訳すると純粋主義者という意味ですが、受け止め方によっては ”オリジナルにこだわり過ぎるガンコ者” というネガティブな意味にもなるパワーワード。
ここであえて ”バグリー純粋主義者” という言葉を使う事によって、表向きは昔からのバグリーファンも納得できる仕上がりですよーとしておきながら、一方ではバグリー再生に対して否定的だった人たちへの宣戦布告になっているんです。
つまり商品説明であると同時に『お前ら見とけよ』と😅
こんな風にヤルモの意地を見せられたら、まるでボクシングの試合前に行われる対戦者同士のステアダウンを見ているような気分になって、嫌でも注目は集まりますよね。
この辺りのマーケティングの巧みさはさすがアメリカだなーと。
さてさて、そんな前フリを経てのんだくれの元にもやってきましたミノーB。
ミノーBには画像の5インチモデルの他に2フッカーの4インチも用意されており、両モデルともそれぞれに良いところがありますが、おすすめは断然5インチの方。
5インチはとにかくあらゆる面でスゴいのです。
そのアピールはパッケージから取り出した瞬間から始まります。
このミノーB、とにかく軽いのです。
それは中身が入ってると思って持ち上げたビール缶が実は空だった時のあの感覚そのもの。
数値的には実測9.5gとそれなりにあるのですが、ボディの大きさゆえ体感的にめちゃくちゃ軽く感じるのです。
オリジナルのバングオー5インチが10.8gなので、1gほど軽くなってるだけなのですが、たかが1g、されど1g。
おっさんアングラーにしか分からない例えですが、旧ストームのスーパーシャイナー/シャイナーミノーを持った時のあの感覚が蘇ってきます。
プラスチックなのにバルサを上回る軽さを見せつけられたら、否が応でも期待が高まります。
実際に投げてみてもその期待が裏切られることはありません。
US15ポンドラインを引っ張ってストレスなく飛び、そしてアクションレスポンスが素晴らしい。
バルサのオリジナルモデルを忠実に再現したという言葉に偽りなし。
バングオーのキモである、トゥイッチと同時に細かいバブルを身に纏って妖しく悶えるあの挙動が見事に再現されているんです。
しかも強い浮力を武器にした、水平姿勢のまま左右に揺れながら浮上するあの食わせアクションまで!
さらにミノーBがスゴいのはオリジナルの再現だけにとどまらないところ。
テールの幅を絞った効果なのか、キックによって動かされる水の量がスゴいんです。
それはアクション後に立ち上がるモワモワの量を見れば明らか。
オリジナルのバングオーもトップウォーターミノーの名に恥じない水押し野郎ですが、ミノーBはそれをも超えて来るんです。
そしてボディにはハイトーンでシャラシャラと鳴くラトル入りってんですから、もう恐れ入りましたという他ありません。
しかも驚くべきはその価格。
このパフォーマンスがなんと5.99ドルで手に入っちゃうんです!(2021.05 TWH価格)
なんかもうクラクラしてきますよね😅
しかしまだまだヤルモは追撃の手を緩めません。
ミノーBのアクション特性というか、ジャークした時の水の抵抗感が独特なんです。
ミノーBには一般的なジャークベイトが横っ飛びするようなキレが無い代わりに、ねっとりと水に絡み付くような独特な感触があるんです。
バングオーのリップは後ろに補強構造を持ったがっちり仕様なのに対し、ミノーBは水圧がかかると撓む、あのラトリンログのような素材になっているので、これが独特のフィールを醸し出す要因なのではないかと。
ルアーが水に絡む感覚は、トップウォーターフィッシングでは魚を上まで引っ張り上げるという重要な要素なので、おそらくこれも最初から折り込み済みなんでしょうね。
アクションだけでなくフィニッシュも手を抜かないのがヤルモ流の仕事術。
アクション時の明滅にも変化が出るように側線から上をスケールパターンに、下側をバーパターンにしてホログラムで強化するなど、プラスチック素材のメリットを最大限に活かしたフィニッシュでアメリカ人を唸らせます。
ぶっちゃけギラギラフィニッシュは我々日本人にはあまり響かないところではありますが、彼らは日本マーケットなんて考えてませんからね、新生バグリーに与えられたミッションはあくまでも本国でのポジション奪回ですから。
でもフィニッシュの好みはともかく、オリジナルバングオーのようにバルサの弱さを気にしながら投げる必要がないのは大きなアドバンテージ。
その軽さゆえ炎天下の車内では注意が必要ですが、ミスキャストによる破損を恐れる事なく岩盤の割れ目にブチ込めればまた一歩ビッグバスに近づけますよね。
フックはVMCのもの(#8580BN?)を採用。
オリジナルバングオーのフックよりも細軸ワイヤーのフック採用で軽量化し、レスポンスの向上も図ったと思われ。
しかしここで注目して欲しいのは、エイトリングを使わないフックハンガーのスタイル。
実はこれ、ラパラのルアーに使われているハンガーと同じなんです。
何もかもバグリースタイルを踏襲するのではなく、メリットがあるならばラパラ時代に培ったノウハウも積極的に盛り込むという姿勢が見え隠れしていてなんか嬉しくなりますね。
しかし諸手を挙げて褒めちぎる事ばかりではないんです。
残念なのはバグリーの伝統とも言えるボディのネームプリントがない事。
この通りリップには品番が入っていますが、ボディにはどこにもなーい!
これだけのパフォーマンスを見せてくれるルアーだけにネームがないのはちょっと寂しいですね。
新生バグリーのプラスチック製ルアーには全てネームプリントがないので、もしかしたらそういう掟になってるのかもしれませんが、のんだくれに言わせればネームのないルアーは臥龍点睛をナントカなので、是非とも考え直して欲しいところです。
そしてもひとつ残念ポイントが。
それはリップの取り付けがビミョーにズレていること😂
リップ取り付け精度を高めるためにリブがあるにもかかわらず、わずかにズレちゃってるところに悪い意味でのアメリカンさが残っちゃってます。
でも不思議なのはこの状態で、つまり箱出しの状態でもちゃんと真っ直ぐ泳ぐので、トゥルーチューンが全く必要ないのです。
ラパラのようにタンクテストをパスしたからオッケーなのかもしれませんが、リップのズレは意外と目立つところなのでこういうのが気になる人はガマンできないかもしれません。
発売から既に6年が経っているにも関わらずちゃんと流通しているということは、それなりに実力を認められて市場に浸透している証とも言えます。
日本のショップではなかなかお目にかかれないので、例によってタックルウェアハウスでポチるのが手っ取り早いかと。
あくまでもトップウォーターミノーという位置付けなので今風のジャークベイトの感覚で使うとズッコケちゃいますが、ウィードが成長するこれからの時期はとてつもない破壊力を見せてくれるでしょう。
”うっわ!デカ!ルアーは何?”
”ミノーB”
”??? なにそれ?何処のやつ?”
こんな会話の主人公になりたい方は是非。