今はプラドコチームの一員としてDD22などの名作を安定供給してくれているノーマンルアーズ。
しかしルアーの戦国時代と言われた1980年代は、今のプラドコチームメンバーのそれぞれがライバル心を剥き出しにして熾烈なシェア争いを繰り広げていました。
もちろんノーマンルアーズ(当時はビルノーマンルアーズ)も鎬を削る争いの真っ只中で、他社に先駆けて “Something New” を出すべく切磋琢磨していました。
そんな中で生まれたのが今日のゲスト、リフレクト’N。
プリズムシールの効果をいち早くプラグに取り込んだ先駆者です。
リフレクト’N が リトルN の派生モデルだというのはもうご存知ですよね。
ビルノーマンはアルファベットウォーズ戦士として既に実績のあったリトルNのバリエーションとしてナチュラルNなどの派生モデルを出して我々の琴線を弾きまくってくれたワケですが、リフレクト’Nのリリースにあたっては他のモデルとは比べ物にならないほど大々的なプロモーションを展開しました。

それもそのはず、ナチュラルNは既に巻き起こっていたナチュラルプリントブームに “乗っかって” リリースした、いわゆるフォロワー的な立ち位置でしたが、リフレクト’Nは量産ルアーとしてはプリズムシートを “内蔵” した初めてのクランクベイトだったんですから、そりゃノーマンの鼻息も荒くなります。
それまではアブのトビーなどスプーンやスピナーには多用されていたプリズムシールですが、当時のプリズムシートは今のものと比べて硬く厚みがあるので曲面の多いプラグの表面に馴染みにくく、あまり積極的にプラグ本体には採用されていませんでした。
その素材の硬さを逆手に取って他社に先駆けてインサートシートにしたんですから鼻フンガーになるのキモチも分かりますよね。
特にビルノーマンはプラドコの出身ですから、独立してからずっとレーベルの後塵を拝し続けていたのは想像に難しくない事で、このリフレクト’Nのデビューがオラオラ商品になったのもムリはないでしょう。
そんなリフレクト’Nですが、60ミリ、12.5gというスペックは基本モデルとなったリトルNと変わりません。
ラトルサウンドも基本的にはほぼ変わりません。
リトルNはほとんどのモデルが不透明のプラスチック素材を採用しているため、ラトルサウンドの音質は少し違いますが、当時は音質による釣果の差がクロースアップされることはほとんど無かったので。誤差の範囲内程度にしか見られていなかったと思います。
典型的なファット系クランクベイトシェイプと思いきや、実は横幅をかなり絞ったスリム体型なのがリトルNシリーズの特徴でもあります。
クランクベイトというより、どちらかというと今でいうシャッドプラグに近いシェイプですね。

こっち見んなw
そんなシャッド系ボディに合わせたリップもスッキリシェイプでゆったり傾斜角なので、必然的に泳ぎもタイトなバイブレーションに味付けされています。
実はこのタイトなバイブレーションがリトルNシリーズのキモなのです。
当時のクランクベイトはコットンコーデルのビッグオーのようにブリブリとした強い泳ぎのものが主流で、どのブランドもビッグオーに追いつけ追い越せとばかりに強いウォーターディスプレイスメントが実現できるクランクばかりをリリースしていましたが、ノーマンのリトルNシリーズはその流れに逆光したタイトバイブレーションで勝負を賭けたのです。
その読みは見事に当たり、リトルNのピリピリと緊張したエスケープアクションは他のクランクが沈黙している中でもサカナを連れてくるとして大ヒット商品となります。
そしてリトルNの影響の大きさは凄まじく、あのマンズもリトルNにクリソツなハンクスクランクHank’s Crankを発表するほど。

マンズがハンクパーカーシグニチャーとしてリリースしたハンクスクランクだが、スペックはリトルNそのもの。
その威力は令和の今でも衰えておらず、完璧にトゥルーチューンが施されたリトルNの早巻きはリップレスクランクを打ち負かすとして未だに厳寒期のマストアイテムだと唱えるアングラーもいるほど。
そんなピリピリアクションがプリズムインサートの妖しい光を纏ったら、そりゃ釣れないワケありませんよね。
そうそう、リップの話が出たついでにリトルNの兄貴に当たるビッグNにも触れておきましょうか。
リトルNとビッグNはそのネーミングからして単なるサイズ違いだと思っているアングラーが多いのですが、それは大きな間違い。
リトルNのピリピリタイトアクションに対してビッグNは大きなブリブリアクションですから、泳ぎの特性は全くの別物になっています。
それは両者のリップ形状を見れば一目瞭然。

左がビッグNで右がリトルN
リップ形状の違いだけで両者がサイズバリエーションとしてではなく、全く別のルアーとしてリリースされていた事がわかります。
これはのんだくれの勝手な推察ですが、おそらくビッグNの方は市場に溢れるビッグオー系クランクを迎撃するために開発し、リトルNは逆張りのゲリラ要員として開発することで、二種類の戦術を持って激化するアルファベットウォーズ市場の占有を目論んでいたのではないかと。
…ってもっともらしい事を書いときながら、実はただのサイズバリエーションだったりしたら、かなり恥ずかしいんですけど😅
リフレクト’Nというからにはやっぱりプリズムインサートにも触れないといけませんね。
のんだくれがハナタレの頃、初めてこの輝きを目の当たりにした時の衝撃は未だ忘れられません。
当時は白い紙のスライドパケでしたが、釣具屋のショーケースの奥で光り輝いてました。
いまでこそプリズムインサート入りのルアーは市場に溢れかえってますが、当時ペイントカラーしか見たことのないハナタレにとっては、ビニ本のマジック修正を初めてシンナーで消した時ぐらいの衝撃でした。
しかもこのリフレクト’Nの輝きは、ビニ本と違って強いシンナーで下の印刷まで消えちゃうようなもんじゃありませんからねw
画像ではちょっと見辛いのですが、リフレクト’Nに採用されているプリズムシートは、ビックリマンシールでいうところの扇プリズムパターン。
扇パターンが逆になっている逆扇プリズムを引き当てて釣具屋の前でヒーローになるというのがリフレクト’Nの隠れた楽しみ方でもありました。 知らんけど😂
でも真面目な話、最近ビックリマン風のパロディシールが流行ってるみたいなので、誰か聖フェニックスにバスとロッドを持たせた逆扇プリズムシール作ってくれませんかね😁
また脱線したので話を元に戻しましょう。
今のルアーだったら完全にB品としてハネられるであろうこんなインサートのヨレも当時は全く気になりませんでした。
しかしインサートを真っ直ぐ入れるのは至難の技だったでしょうね。
当時のノーマンは全部米国内生産で、当時のファクトリーを知る人の話によると制作スタッフが4〜5名しかいない小さな工房だったようなので、このインサート作業も一枚一枚手で貼られてたんだろうなと。
ちなみにリフレクト’Nという名称ですが、実はデビュー当時は正式名称ではありませんでした。
デビュー当時は Reflect’n Little Nとして発売されていたのです。
これは Reflecting Little N を口語的に省略した表記で、へドンのスピッティンイメージ Spit’n Image と同じアレ。
つまり “反射するリトルN” というネーミングだったのです。

これは当時のカタログや最初期のパッケージにもしっかり表記されています。
いつの頃からかリフレクト’N だけの表記となり、その後、Nの前の ‘(アポストロフィマーク)も消えて、 “リフレクトN” となったのです。
でも寂しいことにリフレクトNの名前は、その後リトルNやビッグNのカラーチャートに吸収される形で消えてしまいました。
ビルノーマンの名前を世に広めた立役者だけに、この名前だけは残して欲しかったですね。
さてさてウェイトはこの様に固定重心 x 2でラトルボールも兼任しています。
気になるサウンドは中低音のゴトゴト系。
近年はボーン系マテリアルの高音ラトルサウンドがもてはやされていますが、個人的には中低音派なのでこのリフレクト’Nのサウンドはストライクゾーンど真ん中です。
ちなみにビルノーマンは80年代後半にかなり高音を発するボーン系素材のものをリリースしていました。
でもそれは意図してボーン系素材を採用したわけではなく、クロームカラーの定着が良いという理由で選んだのがたまたま高音を発する素材だったという消極的なもの。
この素材ははリトルNだけでなくディープリトルNのクロームカラーにも多く見られ、その素材の色もボーン色ではなくブラックなので、気になった方は探してみてください。
後で人に言われて気づいたことですが、のんだくれが80年代に多用していたゴールドクロームのディープリトルNもこのボーン系素材のもので、確かによく釣れました。
それは西海岸に数多くの店舗を持つ Turner’s Outdoors というショップのセールワゴンに0.99ドルで大量に積み上げられていたもののひとつ。
ソリッドクロームブラックバックという、芸の無い?カラーはアメリカでは不人気だったらしく、マンズのフィンマンのクロームカラーと一緒にワゴンに放り込まれていました。
帰国後その釣れっぷりを目の当たりにして、もっと買っときゃ良かったー!😭とベソをかいた思ひ出のプラグでもあるのです。
フックはこの時期のノーマンのお約束で、ややゲイプが開き気味になったクローポイントフックを採用しています。
フックサイズに対して、異様にデカいスプリットリングがぶら下がってるのもこの時期のノーマンの掟ですね。
浮いた緑青が時代を感じさせますね。
このプリズムインサートのカラーは90年代の中頃まではリトルNのカラーのひとつとして販売されていましたが、それ以降定期販売はされず、プラドコチーム参加により、再生産の夢も潰えてしまいました。
プラドコ参加前(2010年頃?)にノーマンルアーズから取り寄せたプライスリストにはオーダーベースでリトルN・ディープリトルN共にリフレクトカラーに対応する旨の記載があったので、あの時注文しておけば!と悔やみましたが、今となってはあとのまつりですね😭
……とまあ延々とリフレクト’NとリトルNのノー書きをタレてきましたが、既に生産が終了していてなかなか手に入らないものゆえ、ケッ!てな感じの読者もいますよね😁
でもご安心を。
このルアーの釣れるアクションをちゃんと受け継いでるルアーがあるんです。
それがコレ。
バンディットのフラットマックス Flat Maxx シャローです。
このルアーはリトルN系のピリピリタイトアクションを引き継いでいるだけでなく、プラ素材の比重が本家よりも軽いのでアクションにキレが加わり、リトルNよりも完成度は高くなっています。
はっきり言ってフラットマックスは釣れます。 めちゃくちゃ釣れます。
一応このルアーも生産が終了していますが、リトルNやリフレクトNよりははるかに入手しやすいルアーなので、もしどこかで見かけたらマストバイですぞ。
