
世の中には名品と言われるルアーがゴマンとあります。
当然ながら釣果が伴わずして名品の称号を授かるなんてことは有り得ないわけでして、そう呼ばれるものはそれなりの実績があるわけです。
しかしそれがすべてのアングラーにとって名品になるのかどうかは全くの別問題。
ひとりのアングラー視点で見れば、どんな名品と言われていようが、それでオサカナを釣った事なければ箸にも棒にも・・・ の世界。
言い換えれば、どんなルアーであれオサカナが釣れればそれが名品になり得るということです。
そういう意味においては今日のゲスト、ポーのセダークランクは名品かどうかの判断が極端に分かれるルアーですよね。

パックマンアイを持った素朴なデザインで・・・ という表現はそこらじゅうで使われてるので、もう聞き飽きてますよね。
コイツを一番最初に日本で大々的に紹介したのは、確か80年代中頃、田辺プロの仕業だったと記憶しています。
当時の田辺プロは、米トーナメントに参戦して上位に食い込むバリバリ(死語)の実力派トーナメンター。
彼がBasser誌で紹介する現地のナウでホットな情報にのんだくれもハァハァしてたもんです。
そんなガチアングラーの田辺氏が、お世辞にも釣れそうとは思えないルックスのルアーを超強力にプッシュする意外さというか、ギャップにヤラれて買いに走った覚えがあります。

しかし妄想モリモリでラインに結ぶも、釣果はいまひとつ。
爆裂期の琵琶湖でそこそこ釣ったことがあるだけで、名品と崇めるほどイイ思いはしてないので、のんだくれ的には一軍ボックスには登録されにくい存在なんです。
しかしセダークランクの信者でもある知人に言わせると、コイツは ネ申 だ! と。
ウッド製クランクベイトではコイツに勝るものはない!と断言し、事実彼のボックスはまるでパックマンの養殖場。
特にこのシリーズ300は、『迷ったら投げろ』とまで言わしめるほどの釣れっぷりなんですと。
この温度差は一体・・・
まぁのんだくれが下手クソでオサカナ釣れなかっただけの話なんですけどね。(T_T)


しかしルアーの性能としては必要十分。
バグリーのクランクとは違って、エッジがキレイに処理されたリップで水を切り裂き、タイトで小気味良いウォブリングを見せてくれます。
水流抵抗も考慮した補強もなされてて、手元に伝わるブルブル感もイイ感じに調律されています。これならモチベーションをキープできますよね。
それを思うと、このセダークランクはこのリップに随分助けられてるんではないかと。

典型的なオールドスクールクランクベイトの定石をしっかりと踏んでいるカラーリングもナイスです。
これを釣れそうと思うか、はたまたそうでないのかは、世代による差が大きく出そうなところ。
でもタックルベリーなどの中古釣具屋では値下げしても売れ残ってる感じなので、やっぱり今の時代には合ってないのかもしれませんね。
ボディ素材はもちろんシダーウッド。
ソリッドなので、ラトルは入っていません。
しかし一言でシダーと言っても、一般的にシダーウッドを称されるものにはかなり種類があるので、具体的にどの種を使ってるのかは分かりません。
どなたかご存知の方いらっしゃいます?

ポーのルアーで避けて通れないのがこの目です。
本国アメリカでもこの目がパックマンと呼ばれてるのを知った時は、妙に感動しました。
ちなみにこの画像は決してピンボケではありませんので念のため。
テンプレートをしっかり押さえないままブラックを吹いてるのでこんなボケた目になっちゃってますが、むしろこれがポーのアイデンティティを際立たせてるのかもしれませんね。

こんな感じで木目が浮き出してるのも素朴なポーならでは。
ポーの塗装は決して薄くないにも関わらず、ここまで木目が浮き出してるということは、サンディングや下地処理をちゃんとやってんのかというハナシですよね?
しかも経年劣化で塗装自体が浮き上がる個体が多いのなんのって。
このあたりの、ポーならではの症状を理解できない人は、絶対に買っちゃいけないレベルです。
でもニンゲンの感覚って不思議なもので、散々ブー垂れてたルアーでも一回良い思いをしちゃうと、こういったポイントですら溺愛対象になっちゃうからワガママというか自分勝手というか。
そういえば今思い出しましたが、25年ほど前、とある住宅建材メーカーの資材買い付けのエスコートでワシントン州の山奥にある大きな製材所に行ったことがあります。
その現場で、製材の際に出るシダーの端材を見てウッドクランク製作を思いついてテンションを上げてしまったのんだくれは、クライアントが怪訝な顔をするほど貰って帰ってきたんです。
その時は『日本に帰ったら本物のアメリカンウッドでクランクを作るぞー!』とか勝手に盛り上がってましたが、結局その端材が異国の地でクランクへと昇華することはなく、長い放置の挙句に市指定の可燃ゴミ袋に収まって静かに旅立って行きました。
よくよく考えてみたら、輸入木材なんてホームセンターに死ぬほど売っとるがな。(T_T)


リグは前後ともヒートン&リングで、フロントのみウェイト埋め込み式になっています。
画像の個体はちゃんとしてますが、ヒートンがナナメになってたりするものも珍しくないので、レジにエスコートする前にチェックしておきたいポイントです。
併せてリップの接合が真っ直ぐになってるかどうかもね。
ちなみにこのフックはデフォルトではありません。
標準装備のフックは確かブロンズのラウンドベンド/ショートシャンクだったはず。

肝心のネームはリップにしっかりと刻まれていますが、モデル名まで入ってないのがのんだくれ的にはおしいなぁ。
モデル名まで入れちゃうとリップを他に流用できなくなるから仕方ないんだけど、ボディにネームプリントがない分、そこは頑張って欲しかった。
とはいえ、これはこれでワンアンドオンリーなのでポーとしてのアイデンティティを誇示するには十分過ぎるくらいの存在感になってますね。

泳ぐものとそうでないもののバラツキが大きいルアーと言われてますが、よほどクランクを使い込んでない限り、単品を見ただけではどれがハズレでどれがアタリなのかを見極めることは難しいですよね。
使い手によっても釣れる動きの判断基準って違ってきますし。
なのでコイツを使うときは、小難しい事は考えずに単なる個性の違いとして見てあげましょう。
そうすれば釣れる釣れないなんて全く気にならなくなりますから。
あ・・・だからのんだくれはいつまでたっても釣り下手なのか・・・(号泣)
ところで、コレを今でも現役でフル投入してるぜ!って方、いらっしゃいます?