人間の考えるリアルさとサカナの考えるリアルは違うと頭では理解していても、自然とナマっぽいものに目が奪われてしまうのは釣り人の性ですよね。
そんな哀しい性に真っ向勝負を挑んでいるこのホローボディフロッグは、日本人的な発想がそこかしこに散りばめられたルアーです。
2010年のICASTショーでいきなりベストソフトベイトアワードに輝くという衝撃的なデビューを飾って以来、北米はもちろん全世界で売れに売れているので、既に入手して使ってる方もいらっしゃることでしょう。
特に今年に入ってからこのライブターゲットブランドを展開するコッパースフィッシング社が、カナダの通産省に当たる省庁からめざましい躍進ぶりで表彰されたこともあり、カエルフィーバーに更に拍車がかかっているという状況です。
他のライブターゲットのルアーがそうであるように、このカエルもかなりのこだわりで作り込まれています。
ボディの凹凸はもちろん、目玉の形やカラーリングまで、ライブターゲットならではのリアル哲学を徹底して具現化していると言ってもいいでしょう。
その最たるものが指まで作り込まれたこの手です。
カエルが泳ぐ時の後ろに伸ばした手の具合を見事に表していますね。
実際のところ、元々カエルが持ってる手を表現しただけなんですが、今までの中空フロッグには有りそうで無かったテイストだけにこのルアーを見た瞬間にオオッ!と引き込まれるポイントになっています。
しかしその手を単なる造形だけで終わらせないのがライブターゲット。
こんなところにもしっかり機能性を盛り込んでるんです。
俯瞰図で見ると良く分かるんですが、ホディサイドから盛り上がった腕の造形がフックポイントをガードしているのがわかります。
中空フロッグでありながらもこの腕の部分だけは薄いラバーではなく、しっかりと中が詰まった構造になっており、ちょうどバンパーの様な役目を果たしています。
このバンパーは、比較的密集したアシの中などをすり抜ける時には非常に有効で、見事なまでに横方向からの邪魔者をはねのけてくれて、なーるほど!と納得させられるポイントです。
針先が内側を向いたオリジナルフックを採用しているのもスナッグレス効果アップに一役買っていますね。
こういう一大セールスポイントがカタログにもウェブにもパッケージにも一切謳われていないのが惜しいトコロ。
まあそこが舶来ルワーらしいところでもあるんですが。
このフロッグの生産を委託されている中国の工場のマネージャーと仕事をした事がありますが、彼曰く、ライブターゲットの製品クオリティに対する要求は “So tough, sometime harsh” との事。
このフロッグの仕上がりを見ると、それもなんとなく理解できますね。
しかしいくらスナッグレス性能が高くても、魚のバイトまでガードしてしまっては意味がありません。
その点も抜かりなく煮詰めてあるんです。
コシがありつつもしなやかなシリコンラバー製のボディは、バイトによってこのように簡単に牙をむいてくれます。
指で潰せばフックが出るのはあったり前じゃんと思うかもしれませんが、昨今のトレンドとされる中空フロッグ達と比較するとその違いははっきり分かります。
ウィードやブッシュは拾わずに魚のバイトだけを取るというウィードレスプラグの基本をしっかりと押さえていますね。
余談ですが、トレンド… と書いておきながらトゥルータングステンはもうトレンドではなくなってしまいました。
詳しくは言いませんが、いわゆるオトナの事情というヤツです😭😭😭
ラインアイの部分は水の浸入を抑える構造になっています… が、フック側から侵入してくるのであまり意味はなし。
それでも従来のアメリカ製フロッグに比べればかなりマシな方です。
画像には写っていませんが、アイの部分はしっかりとロウ付けされているので、多い日もデカいのが来ても安心です。
ウェイトはハラ側にしっかりと低重心装着されているので、水面でひっくり返らないだけでなく、キモチ良いぐらいに首を振ってくれます。
のんだくれは夏のナイトゲームではほとんどフロッグだけしか連れて行かないので、ペンシル的にも使えるフロッグは重宝するんですよね。
スカートは中で繋がっていますが、他社のフロッグの様に単にラバーを通したのではなく、中に大きな結び目のコブが作ってあるので引っ張ったぐらいじゃ抜けません。
こういう見えないところにひと手間かかってるのが分かると思わずニヤリングしちゃいますよね。
スカートはこれまたトレンドのラウンドラバーを採用しているのでフラットラバーのようにベタつくこともなく、水面で自然にフレアしてくれます。
全長80ミリにもなる長いスカートなのでカエルの首振りアクションに影響しそうな気もしますが、心配は全く無用。
ロッドアクションに機敏に反応してストレスなく犬歩きするだけでなく、長いスカートならではの独特の引き波を作り出します。
でものんだくれは実釣では1/3ぐらいスカートをカットしちゃってます。
だって、そうでもしないとボックスの中で他のカエルと乱交を始めちゃうし、短い方がクイックな首振りが出来るんですもん。
中空のフロッグとしては後発だけに、その分細かいところまで作り込んであるあたりが非常にジャポネちっくですよね。
いや、日本的というよりも打倒日本製ルアーを目指してかなり気合いが入ってるのが伺えます。
事実、2007年にこのブランドが立ち上がった直後の宣伝文句が『 我々のルアーの方がリアルなのに、わざわざ高価な日本製ルアーを買う意味があるのか? 』という挑発的なものでした。
その頃から脱アメルアというだけでなく、独自のオリジナリティでジャパニーズルアーも撃破してやるぞ!的な感覚だったんでしょうね。
それは2008年のICASTショー、ライブターゲットブースでルアーの写真を撮ろうとしてたら強く制止された事からも分かります。
それは単にのんだくれが中国工場のスパイに見られただけいう説もありますが🤣
従来のアメリカン中空フロッグに慣れ親しんだ人にはチューンの余地がないという点で物足りなさを感じてしまうかもしれませんが、逆にバス用国産カエルしか使った事がない人には新鮮なオドロキをもたらしてくれるでしょう。
しかしのんだくれ的に納得いかんのはコイツのネーミング。
ホロー(=中空の)ボディフロッグというそのものズバリを表したい気もワカランでもないんですが、もうちょっとイカした名前を考え付かなかったんでしょーか?