バンシースイムベイト / ABTルアーカンパニー

 

著名なルアーデザイナーが設計したベイトはいつも話題に上るのは皆さんご存知の通りですよね。

ほんの15年ほど前まではルアーデザイナーはブランド看板の陰に隠れてしまって、表舞台に出づらい存在でしたが、ゴッドハンド加藤さんの成功あたりからにわかに脚光を浴びるようになりました。

もちろんその傾向はアメリカにもあり、◎◎がデザインした… というキャッチフレーズが広告でも見られるようになりました。

今日紹介するバンシースイムベイトは、そんなデザイナーの実力が反映されている典型でしょう。

 

 

ところでABTルアーズってナニモン?な方が多いと思いますので、先にノー書きをタレておきましょう。

ABTルアーズはカリフォルニア州ヨセミテ国立公園にほど近いオーウェニーに拠点とするルアーマニュファクチャラーです。

大型建築の屋根設計/施工を生業としながら釣りを楽しんでいたアレン・ボーデンは、日々の釣りからひらめいたアイデアを具現化するためにABTルアーズを立ち上げました。

当初ABTルアーズはサイドビジネス的なものでしたが、2003年のICASTショーに出展した事から大きく歯車が回り始めます。

当時唯一の出展ルアーだったグラディエイタースイムベイトが、ストライクキングの目に留まったのです。

この10年間ほどストライクキングにはローカルマニュファクチュアラーのアイデアを会社の権利ごと買い取り、自社製品として売り出すパターンが散見されます。

その方が開発コストや開発期間を大幅に減らす事ができますからね。

あのビラビラカーリーテールのレイジテールシリーズなどはまさにその典型です。

 

 

当然ABTルアーズにも同じ条件が提示されたのですが、頑固オヤジのアレンは自社ブランドの売却を頑なに拒否しました。

しかし何としてもグラディエイタースイムベイトを自社で売り出したいストライクキングは、アレンを社外デザイナーという形で口説き落とし、キングシャッドの名の下に、グラディエイタースイムベイトにストライクキングの金看板を載せる事ができたのです。

その後の状況は皆さんご存知の通り。

キングシャッドはクランクベイトちっくなフォルムで扱いやすいスイムベイトとして爆発的ヒットとなり、その後に追加発表したベイビーキングシャッド、ウェイクシャッド、セクシースイマーも軒並みストライクキングの孝行息子になりました。

しかし日頃から自分の思う通りにルアー開発をしたいと思っていたアレンは、ストライクキングでの栄光の8年間を捨てて自社ブランドの再建に乗り出します。

それが2010年の事でした。

 

 

そして2011年、永年温めていたアイデアをバンシースイムベイトとしてリリースする事が出来、発表後はフィールド&ストリームなどのメディアが殺到してエラい事になったそうです。

このバンシースイムベイトの最大の特徴はシンプロファイル、つまり薄いボディ構造です。

オリザラよりも大きなボディでありながら、ボディ幅は最大で15ミリに抑え、低重心バランスにより一切ロールしないアクションを実現。

更に、ただ単にボディが薄いだけでなく、スイムベイトとしては珍しいラトルボールを仕込み、それを効果的に鳴らす事に成功しています。

文章で書くと簡単ですが、このアクションを実現するにはかなりの苦労を要したらしく、開発中は半ば夢遊病者の様だったと。

 


 

こだわりはアクションだけでなく、ボディの構造にも行き渡っています。

その最たるものがコレ、ジョイント部のヒンジパーツ。

キングシャッドがバカ売れする中、販売数に比例してジョイント部分の破損報告が増えていった事を鑑み、このバンシーではアクションの滑らかさと同時にジョイント部の強度を大幅にアップした金属パーツで武装しています。

 

 

断面がデルタ形状のヘッド部分にはカタカタとよく鳴くラトルボールを装備し、クランクベイトやウェイクベイトとしての性能も高めています。

よりナチュラルに… というのが我々が持つスイムベイトのイメージですが、音の要素を積極的に取り入れてるのはアレンの『スイムベイトは本来もっとアグレッシブなベイトなんだ』という言葉を表しているかのような仕様ですね。

 


 

人間から見た視覚的要素だけでなく、ロールを抑える重要な役目を果たしているヒレ達にも苦慮したようで、尾ビレは上部と下部とでは厚さが変えてあります。

これについても聞きましたが、なんか良く分かんない理論が出てきてケムに巻かれました  …というよりも単にのんだくれの集中力が足りてなかっただけですが😅

 

 

カラーは徹底してナチュラルフォトプリントを採用。

この辺は好き嫌いが分かれるところでしょうね。

あ、そういえば好き嫌いとはちょっと違いますが、このルアーには一つだけ大きな欠点があります。

それは薄いボディゆえフルスイングでキャストすると、ボディ自体が扇風機のハネのように回転してしまい、飛距離が伸びない事があるんです。

それは弟分の4.5インチサイズでも全く同じ。

テストサンプルを使ってすぐにそれが分かったのでアレンに報告したところ、待ってましたと言わんばかりに『知ってるよ』と。

なんでもこの泳ぎを実現するためにはこのボディフォルムというのが必要不可欠らしく、ボディを回転させない事に重点を置くと泳ぎが犠牲になってしまうんだそーな。

で、悩んだ挙句、泳ぎを優先して飛距離を犠牲にしたとのこと。

ただ、メーカーに届くフィードバックは飛距離不足の声が多く、これには対応せんとアカンなぁ… みたいなこと言ってました。

こういう風に、ルアーの設計者と消費者のリアルな声が聞けるのはルアーインポーター冥利に尽きますね。

 


 

フックはライブターゲットと同じダイイチのショートシャンク/ラウンドベンドフックを採用しています。

向こうではストライパーなどにも投入されるため、エイトリングも強化。

そういえば8インチだったか9インチのデカいバージョンも開発中とか言ってました。

 

 

あ、そうそう、ひとつ重要な事を書くの忘れてました。

実はこのバンシースイムベイト、なんとネームプリントが入っていません。

こんなにナイスなベイトなのに、名札すらもらえないのは惜しいっ!

このまま黙っていたのではネームヲタの名が泣くので、早速アレンにネームプリントを入れる事を進言。

 

 

最初はうーん… なんてシブってましたが、ネームプリントはオリジナルを主張するだけでなく、コピーキャットを抑制する効果もあるんだよー… など説得した結果、なんと次回の生産ロットからめでたくネームが入る事になりましたっ!

いやー、ダメもとでも言ってみるもんですねー😁

ちなみにバンシー(=Banshee)という名前は、人が亡くなる前に泣き叫ぶ精霊の名から取っており、泣き叫ぶほどオウサムなベイトという意味を込めたそうな。

仕事上だけでなく、個人的にも今後の展開が気になるブランドです。