はじめに
90年代のバスフィッシングブームで無数のルアーが誕生しては消えていったのは皆さん御存知の通りの事実。
実力がありながらも、混沌とした市場とアングラーの未成熟により実力に光が当たることなく埋もれてしまったルアーが非常に多かったのです。
いわゆる隠れた名品というやつですが、こういう類に限って生産終了後に良さが認められたりするもの。
そしてそんな名品には再販要望の声が上がるのが世の常だったりします。
しかし諸般の事情で再販とはならないものも沢山。
きょうはそんなルアーのひとつ、ディープシェイカーのオハナシです。
ディープシェイカーとは

ディープシェイカーは90年代の終わり(98年?)にバスデイがリリースしたクランキンミノー。
堅実派クランクとして知られるモーグルクランクなどと同系となるモーグルシリーズの一員として発売されました。

モーグルクランク60とディープシェイカー
ディープシェイカーが発売されるよりも前にレーベル スプーンビルミノーを筆頭とする革命的とも言えるダイビングミノー戦争を経てのデビューだった事もあり、春の低水温期に巻いて止めるものではなく、ひたすら巻くルアーという使命を背負ってのデビューでした。
しかしこの時期の市場は既にロングビルミノーに食傷気味となっており、その実力とは裏腹にビッグヒットには至らなかったという悲運のルアーでもあります。
バスフィッシングブームの頃は、実際のパフォーマンスよりも見た目で判断されちゃう傾向が強かったので仕方ないといえば仕方なかったんですが。
ディープシェイカー85のサイズ・重さ

サイズは表記の通り、ボディ85mm、リップ先端からは128mm、自重は17.5g。
ミノーとしては大型に分類される体躯の持ち主に仕上げられています。
このモデルの他にダウンサイジング版となる75Fもラインナップしているが、見た目は同じでもルアーとしての性格は全くの別なので、今回は75Fの詳細は割愛。
そっちはそっちでシビれるパフォーマンスなんですけどね。
仕様

まず目を引くのが大きなダイビングリップ。
モーグルクランクにも共通する厚みのある構造なので、ハードボトムでも遠慮なくガシガシ当てていける安心感がありますね。

リップの強度は地味だけれどクランクベイトとしては非常に重要な要素で、欠けるだけでアングラーのテンション降下はもちろん、泳ぎまで変わってくるので無視できない部分。
バスディにはシュガーディープというトラウトアングラー必携とされるダイビングミノーの名品があるが、シュガーディープよりもリップが強化されてるのでリップラップ好きには嬉しい限り。

ボディはミノーとクランクの間を取ったファットで美味しそうなデザイン。
このフォルムだけでも ”強いバスルアーとしてのオーラ” を感じる事が出来るので焼酎とともに愛でるのにもピッタリ。

見た目はリアル過ぎずデフォルメ過ぎずでちょうどいい具合。
このルアーがリリースされた90年代終盤はメガバスによるリアル至上主義に対してアングラー側が少しづつ疲れを感じ始めていた頃。
リアルもイイんだけど、ルアーってそれが全てじゃないよねという思いが芽生え始めていました。
そんな空気を察したのか、それまで追っかけていたリアル一辺倒の風潮から ”正気に戻った” メーカーもチラホラ。
それが良いか悪いかは別として、市場やメーカーにそういう思考が生まれたという意味ではリアルブームは有益だったんじゃないかと。

ウェイトは当時まだまだ高級品だったタングステンを採用した合金MZ-19を採用。
クリアボディではないので見えないが、フロントフックの前からテールまでしっかりと重心移動レールが確保されているので飛びは文句なし。
ロングビルミノーにありがちな横風の影響や飛行中の姿勢変化による失速もなく、着水点に向かってジャベリンミサイルのように飛んでくれるのは重爆撃手としてはありがたい存在。
このルアーに7ft前後のクランキンロッドと最新のリールを組み合わせたら当時では見えなかったナニカが見えるんじゃないかと思ってみたり。
ただ、テールのフックハンガーがボディエンドにあるので、遠投した先に護岸なんかが待ち受けてた日にゃエイトリングが曲がるぐらいでは済まないかも。

そして目の辺りとテールエンドにラトルを兼ねた固定ウェイトを配しているので着水時に立ち浮きになることもなく即潜行態勢を取れるのが国産ルアーらしいところ。
余談だが、MZ-19の数字は純タングステンの比重を指しているが、他の金属を混ぜた ”合金” となるとこの数字はちょっと怪しいかなと。
純粋なタングステンは加工が難しいので合金とするわけだが、このルアーに限らず市場に出回っているタングステンウェイトのほとんどは加工性を高めた合金である事と、昨今のタングステンの異常なまでの高騰っぷりを見ると、今後はタングステンを謳ったものでも含有率まで気にした方がイイのかも。
ちなみに解剖したわけではないので詳細は不明だが、前後の固定ウェイトはタングステンではないと思う。
アクションは水中のパワーステーション

肝心のアクションはクランキンミノーを目指してるだけあってミノーとしてはパワフルなウォブリング系。
フロントフックあたりを視点として力強くボディを揺さぶって水を撹拌してくれるその姿はまさに水中のパワーステーション。
もちろん巻き心地も申し分なく、ダイビングミノーにありがちなモワンとした巻き感とは一線を画した手応えが楽しめます。
泳ぎとラトルボールとの相性もすこぶる良く、スローでもしっかりガシャガシャ鳴ってくれるところはラトル好きにはタマらん味付け。
そして浮力もちゃんと配慮されてるのがこのルアーのいいところ。
その浮力の強さはミノーシェイプながらモーグルクランクと比較しても遜色ない容積が確保されているから。

クランクベイト操作の基本中の基本である【何かに当たったら止めて浮かせる】という流れがストレスなくこなせる絶妙な浮力に設定されています。
個人的にダイビングクランクの場合はUS17ポンド以上の太いラインを使うが、そのラインの抵抗を考えてもこの浮力設定には唸らざるをえない。
今さらながらだけど、さすがバスデイだなと。
海外遠征での意外な仕事ぶり
そんなディープシェイカーだが海外で意外な仕事をしてくれたことがある。
かつてレイクトホに行った時、日本から持参したルアーを見たガイドが「こんなんじゃ釣れん」的に鼻で笑った。
が、当日はバスディのディープシェイカーが大当たり。
次々とラージやガーを上げる様子を目の当たりにした彼に「売ってくれ」と言わしめたのはニポーン男子としてちょっと誇らしかった。— ルアー千一夜🌛公式 (@lure1001) April 1, 2026
仕事でフロリダに行った際、空き時間にレイクトホ(トホペカリガ)に出撃して楽しい釣りが出来たのだ。
実はこの時の大釣りには伏線があって、その前年に同じくトホで釣りをした際、ダイビングクランクベイトの必要性を強く感じたから。
フロリダの水域はほとんどがシャローなので、ベジテーション周辺のカバー狙いかトップウォーター、もしくはウィードレス性の高いスピナーベイトによる巻きの釣りとなるのだが、一箇所だけディープエリアがあってそこを攻めきれなかったという苦い経験があったのだ。
なのでディープシェイカーを日本から持参したわけだが、その読みが見事に的中し、そのディープスポットから数多くのスポテッドガーとラージマウスをキャッチすることが出来たというワケ。
その時使っていたカラーはパールのベイトフィッシュ系のものだったが、ガイド曰く、トホに多く生息しているゴールデンシャイナーにマッチしたんだろうと。
自身の読みが見事にハマった時の快感はバスフィッシングの醍醐味のひとつだが、この時ほどホテルで開けるビールが美味かったことはない。
カラーバリエーションはちょっと少なめ

カラーのデフォルメ具合もリアル過ぎなくてちょうどいい感じに仕上がっています。
このバスカラーの他に先述のベイトフィッシュやアユ、ライムコーチドッグなどがラインナップしていたが、個人的にはもうちょっとカラーバリエーションが欲しかったなぁ。
売れ筋からは離れてしまうが、ソリッドのパールホワイトや赤系があったらがっつり買ってたのに。
フックは#4サイズ

フックは#4サイズが標準。
テールフックのみ#6にしてアクションを大きくするという手もあるが、色々試した結果、デフォルトのままが一番イイんじゃないかと。
今でこそ聞かなくなったが当時は化学研磨針の是非を討論したりと何かとアツい時代でしたね。
ネームは筆記体スタンプ

ハラにはフルネーム入っててこれはこれでイイんだけど、筆記体のプリントは少しでもスクラッチが入ると読めなくなるのでそこだけが難点。
まあネームプリントなんて誰も気にしてないだろうけど。
入手は比較的簡単

既に生産が終わっているルアーなので入手は中古市場で探すか、田舎の釣具屋のハンガー奥をかき分けるしかありません。
しかしそれなりにタマ数は出てる上に今は話題にもなってないので比較的簡単に見つけられるはず。
今はなんでもナチュラル志向になっててパワフルに泳ぐクランキンミノーが少なくなってるだけに見つけたら定価でも買いの一品。
おわりに
そんなディープシェイカーは非の打ち所のないルアーにも関わらず、再販される事はないと言われています。
その理由のひとつはタングステン価格の高騰。
もしいま同じルアーを作ろうと思ったらコスト的に倍じゃきかないでしょう。
それに加え、今のバスフィッシングを取り巻く環境と市場の変化。
いくら良いルアーでもパワフルなダイビングミノーが通用するフィールドがどれだけあるか、とそれを受け入れてくれる市場があるのかという問題。
そして最も大きな問題は現在のバスデイの体制。
御存知の通り、バスティ軸足をバスからソルトなど他の魚種に移してるという状況で前述のようなリスクを負ってまでやるとは素人目に見ても考えにくいのです。
そういう意味では無理に復活させるよりも、名品という名声を冠したまま静かに消えゆくのを見守ったほうがいいのかもしれませんね。

