
10年ほど前、マイク・ロングが制作しているルアーの買い付けも兼ねて彼の家に行った時、「今から釣りに行く?」とマイクが言い出した。
ルアーの制作者とはよく釣りに行くが、元生物学者であり、全米屈指のランカーハンター(あの一件まではそう呼ばれていた)である人物とは釣行したことがなかったので即決で彼のホームグラウンドであるレイク クヤマカ Lake Cuyamacaへ行くことに。
クヤマカはサンディエゴの山中にあるハイランドのシャローフラットレイク。
岩礁帯がメインだが、エリアによってアシやマディボトムがあるなど変化に富んだ釣り場として地元でも有名なフィールド。
マイクと会った翌日にマットルアーズのマット・サーバントにも会ったが彼もクヤマカをホームフィールドにしているなどビッグバスハンターからも愛されているフィールドなのです。
*下記動画はマイク自身によるクヤマカでのオカッパリ動画。彼は著名アングラーのなかでは珍しくウェーディングを得意としていた。
マイクの家を出た時には既に陽も上がっており、レイクの状況もイマイチという話は聞いていたので端から釣りには期待しておらず、行きの車中から話題をビックバスハンティングのノウハウに絞って話を振ると、出るわ出るわ普通のアングラーなら考えもしないようなテーマのオンパレード。
ベイトフィッシュの食性パターンにはじまり、水のpH値の推移と周囲の環境から割り出すミネラル含有量とそれらがサカナに与える影響、侵略種アジアンカープによるバスのネストへの影響などなど、生物学者ならではの着目点でレクチャーは目ウロコの連続。
実際、クヤマカを管轄しているレイクレンジャーも彼の知識をアテにしていてマリーナに着くやいなや情報収集に駆け寄ってくるような状態。
そして水辺に着くとそのレクチャーはさらに加速。
太陽の位置と障害物が作るシェードの関係性と、そのシェードを時間軸で観察することによるプランクトンの活性や太陽光線で温められた水の対流によるプランクトンの異動などなど、もう誰も止められない状態に。
中でも特に興味深かったのはシャローにおける太陽光線の入射角について。
アングラー視点だとバスはローライトコンディションの方が高活性だと思いがちだが、実際にはほとんどのケースで、シャローボトムにもしっかり光が当たっている方がボトムの泥の中に潜むプランクトンや水生昆虫が活発になり、それにつられてベイトフィッシュもフィーディングタイムに入るなどボトムに陽が当たる程度の入射角である方が水中が活性化し、特にザリガニは泥の中のエサを捕食している関係でこの傾向が強くなる、と。
そんな条件でバスが身を寄せられるような変化があれば、かなりの確率でランカースポットになるんだと話してくれた。
そしてそのタイミングはほんの十数分で終わる、とも。
つまり日本で言うところの「時合い」というやつ。
そんな具合で2時間ほどショアを歩き回って彼の個人レクチャーを受けた訳だが、この時の話はどんな有益なセミナーよりも濃い内容で、録画しなかった事を今でも後悔している。
その後マイクの自宅近くのメキシカンレストランでタコスを食べながら、数多のビックバスにまつわる話を聞いてアメリカンバスフィッシングの奥深さを思い知らされたりととにかく有意義な時間を過ごす事ができた。
そんな貴重な体験の後に報道された彼のチート事件はにわかには信じがたい内容だったが、あの動画を観る限り間違いないようで本当に残念としか言いようがない。
マイクがバスフィッシングの表舞台から去ってはや5年が経ち、おそらくもう彼は二度と公の場に出てくることはないと思うが、個人的にはあの日熱く語ってくれた豊富な知見がこのまま埋もれてしまうのは本当に惜しいなと。


