今更言うまでもありませんが、同じルアーでも使い方はアングラーによって全く違います。
バズベイトの「スローリトリーブ」ひとつをとってもその速度は人によって様々。
そしてあらゆる使い方に対応できるルアーの懐の広さがルアーの使いやすさや実力にも繋がったりします。
そんな幅広い使い方にしっかり対応したルアーがマンズのウェイカー。
ワンマイナスの弱点をカバーしたマンズの意欲作です。
ウェイカーはマンズが2007年にリリースしたサーフェイスクランクベイト。
トーナメントユースを念頭に置いて開発されたエリートシリーズの一員として登場。
当時市場を席巻していたスクエアビルムーブメントもあって、スクエアビルのC4と同時に発売されました。
マンズとしては、トップウォーターのウェイカー、サブサーフェスのワンマイナス、スクエアビルのC4、ダイバーの5+、10+、15+、20+、30+とラインナップすることでクランク王国を完成させる目的もあったと思われます。
もちろんその背景には王者ワンマイナスの牙城を脅かす他社クランク対策という側面もあったでしょう。
それまでは我道を行くマンズでしたが、このウェイカーをリリースしたあたりからマンズの勢いに陰りが見え始めましたが、その話はまた別の機会に。
ウェイカーはカタログ上は68㍉、3/8㌉となっていますが、実際には17gもある謎のアメリカンスペック。
1/4㌉サイズのベイビーウェイカーもラインナップしていました。
上からオリジナルワンマイナス、ウェイカー、ミッドワンマイナス
サイズだけを見るとミッドワンマイナスの戦闘力をアップしたモデルのように思えますが、中身は完全な別物となっています。
ウェイカーの最大の特徴は垂直に近い角度で屹立したフラットなリップでしょう。
余計な水圧を逃がすため前面がラウンド形状になっているワンマイナスとは対象的に、ワイドなリップでがっつり水を掴むオラオラ仕様。
優秀なデザインは見るだけで機能が分かると言われていますが、ウェイカーはそれを体現していますね。
ミッドワンマイナスよりもファットなボディに仕込まれたラトルもウェイカーのウリのひとつ。
内部が見えるトランスパレントカラーがラインナップされていないのでラトルの正確な位置や個数まで確認できませんが、フロントのエイトリングを挟んで大中各一個、その後ろに小ラトルが仕込まれていると思われ。
そしてこれらのラトルを効果的に鳴らすべく音響効果もしっかりと練り込まれているのではないかと。
というのも横方向はもちろん、前後の動きにもラトルが機敏に反応し、ジキジキ音とカタカタ音が複雑に絡み合った、ボディ自体が震える独特のサウンドを発するのです。
これがジャラジャラサウンド一辺倒のミッドワンマイナスとは明らかに違う点。
ゆえに水面だけでなく、潜った状態でもアングラーまでしっかりラトルサウンドが聞こえるのでモチベーション維持には大いに貢献してくれる反面、ラトル嫌いアングラーには耳障り極まりないことこの上なしw
そしてこのエリートシリーズのウリでもあるテクスチャードボディも忘れちゃなんねぇ。
日本人的にはどって事のないウロコ模様ですが、当時のマンズをはじめとしたアメリカンブランド達はこういうフィニッシュを超リアルと捉えてたので、めちゃくちゃ自慢だったりします。
今でこそもっとリアルなフィニッシュが市場に溢れていますが、このルアーが登場した2000年代の米国では日本製ルアーは西海岸などの都市近郊でしか見ることが出来なかったため、これでも充分「リアル」と言えたのです。
新製品にこの手のフィニッシュが採用されていようものなら、Look at this!😤とこれ以上ないドヤ顔をされるので、正直返事に困った事が何度もあったりw
こんな画一的なウロコ模様よりもラパラとかバグリーのフォイルドフィニッシュの方がよっぽどリアルだと思うんだけど、その辺は美的感覚の違いなんでしょうね。
そんなウェイカーは完全トップウォーター/サブサーフェイス仕様で3㌅までしか潜らないのがウリ。
ワンマイナスはその名の通り水面下ワンフィート、つまり30㌢の潜航深度をウリにしたシャロークランクであるのに対し、ウェイカーはあくまでも水面勝負。
そして早巻きでも水面が荒れ気味のチョッピーウォーターでもトビウオにならない水面への吸い付きを前面に押し出しています。
ちょっと早巻きするとバランスを崩して水面から飛び出したりするウェイクベイトが多い中で、これは特筆に値するトピック。
ミディアムリトリーブには反応しないけれど、鬼巻きだとバイトがあるような状況で圧倒的な存在感を示してくれます。
下世話な例えですが、それはまるで一度吸い付いたらイクまで離さない魔女的な吸引力w
これはワンマイナスがレッドフィッシュやスヌークなど、風で波が立つことの多いソルトシャローウォーターで多用されているので、そのマーケットを狙ったセッティングでもあるでしょう。
そして肝心のスイミングアクションは、ほぼロールのない強いウォブリング。
ラトルを激しく動かす目的もあるでしょうが、この強い泳ぎは魚の密度が低いスキニーウォーターで活躍してくれます。
魚のいる位置がある程度把握出来た上でアプローチするのが日本の釣りですが、北米の釣り、特にクリアなビッグウォーターでは釣れる魚を探す事が重要なステップとなるので、パイロットルアーに選ばれやすいウェイクベイトにおいて強い泳ぎは必須項目。
そういう意味ではフィネスとは真逆に位置するルアーと言えるでしょう。
そして立ち上がりのクイックさも重要項目で、ワンマイナスのスロースタートとは正反対に仕上がっています。
ワンマイナスは一度泳ぎだしてしまえば強いローリングを見せてくれますが、そのレベルに達するまでの助走距離が必要。
その点、ウェイカーは巻き始めと同時にブリブリと泳ぎます。
ワンマイナスはそういう設計なので決して悪いわけではありませんが、立ち上がりの早いイマドキのウェイクベイトやサーフェスクランクを使い慣れてると、あれ?となってしまうケースにも対応したんでしょうね。
そしてウェイクベイト命とも言える引き波の大きさと強さはさすがのマンズ。
スローからバーニングレベルの早巻きまで、しっかり引き波を楽しむことが出来ます。
それだけでなく、ガーグリングという、まるでうがいをするかのようにジャブジャブ音を出しての高速巻きもお手の物。
性能としては地味なポイントだけれど、このガーグリングがストレスなく出来るクランクはそれほど多くないのです。
それはこのウェイカーがあらゆるアングラーが意図する速度で引ける懐の深さを表しています。
冒頭で触れた「使い方は人によって違う」という事実に、かなりの精度で迫っているルアーであるということの証でもあるのです。
ワンマイナスに続けとばかりに大きな期待を込めてリリースしたエリートシリーズだけに、カラーリングは厳選した12色からのスタート。
それらのカラーは、メキシコ湾のドラムフィッシングの定番でもあるワンマイナスの弱みをリカバーする意味もあってか、ソルトにもフレッシュにも使えるカラーが多かった。
個人的にはナチュラルプリントのザリガニカラーとかホログラフィックカラーが欲しかったけど、この時期のマンズは何かとコストダウンに走り始めてた頃なので難しかったのかも。
でも画像のメタリックベビーバスをラインナップしてくれてるだけで大感謝なんだけれど。
そしてフックは前後ともレッドフックを採用。
ちょうどこのルアーがデビューした頃はレッドフックが脚光を浴びてた頃でした。
フロントは#2サイズ、リアは#4サイズのラウンドベンドフックでウォブリングを強調したセッティングであることがわかります。
個人的にレッドフックはあまり好みじゃないけれど、マンズが強力に推してるのでこのまま使ってます。
元々強いアクションでフックサイズを変えても問題ないのでいろいろセッティングを試してみるのもアリアリのアリ。
しかーし!
そんな気合の入ったモデルにもかかわらず、肝心のネームがどこにもなーーーい!
ネームスタンプはもちろん、マンズお得意のエンボスモールドすらもない!
これは由々しき問題。
これと同時リリースされたC4にもネームがないことから、コスト削減の対象になってしまった模様。
ネーム減らしたぐらいで大きくコストが下がるとは思えんけれど。
そんなウェイカーですが、手に入れようとするとちょっと手こずるかも。
日本にはそれなりに入ってるので時々中古屋でも見かけるものの、マンズにはワンマイナスという御大の存在もあって、どうしても知名度的に辛いもんがありました。
よって気にしてないとなかなか目に留まらないのです。
もちろんネームプリントがないのも影響しています。
それゆえ捨て値で出てることもあるので、気になる人は根気よく探してみる価値はあるでしょう。
かつてどっかの本で読んだけど、ジム村田曰く、良いルアーとは誰が使っても釣れるルアーだと。
それは初心者が使ってもオートマチックに釣れるという意味もあるけれど、正確には「どのレベルのアングラーの技量にも対応できる」という意味合いのほうが大きいんじゃないかと。
市場にあふれかえる名品と呼ばれるルアー達はどれもがその定義に当てはまっているのがその証。
このウェイカーもそんな幅広い対応力を持ってるルアーなんだけれども、そのレベルだと広く認められるにはちょっとプロモーションが足りてなかったね。
そう考えると、名品と呼ばれるルアーは奇跡の存在なのかもしれません。