
釣具屋の売り場へと繋がる細い階段は、いうなれば買い物前の儀式みたいなもの。
下界で持ってた安っぽい理性をワクワクという魔法でキレイに断ち切ってくれる。
動画の渋谷サンスイ然り、古くは武蔵小山Gill、FS心斎橋、風來堂…etc etc.
この無意識に受けてしまう儀式のおかげで一体どれだけ血を吸い取られた事か。
しかし残念なことに今はこういった儀式が無い店がほとんど。
なんというか店に入る前の高揚感というか、今日は何があるかな的なワクワクが無いのだ。
入りやすさを目指してか、多くの店が路面店で小綺麗なエントランスと見やすい店内レイアウトばかり。
もちろんそれが悪いわけではない。
しかし入りやすい店作りは釣りがブームだった頃の王道スタイル。
ぶっちゃけ30年前のフォーマットなのだ。
釣具屋だけでなく、自身の経験を思い出して欲しい。
一体何が置いてあるのかわからない雑貨屋や、ホントにこんなところにあるの?というロケーションの隠れ家的バー。
それらにはもれなくワクワクがあった。
しかも不安要素からの開放、つまり緊張からの開放というワクワクが。
釣具屋がつまらなくなったと言われて久しい。
個人店は人気商品メインで扱うようになり、シーズンを跨いだ商品は厄払いするかのように値下げ販売、商品取り寄せを依頼しても不良在庫を抱えたくないが故メーカー在庫切れと平気で嘯く。
そりゃつまらなくなるのはCOWCOW当たり前体操。
なぜならこれらの手法は量販店の真似事でしかないから。
資本力で圧倒的な差がある量販店に同じやり方で挑むのは、風車を巨人と思い込んで突進する騎士ドンキホーテと何ら変わらない事に気づくべき。
しかしそんな巨大な風車を倒すには至らないまでも、苦戦させる方法はいくらでもある。
売り場へと繋がる動線にワクワクの要素を盛り込むのだ。
スペースマウンテンの最初のピーク超えにあるような、自分たちに向かって光がシュワーと差すアレを心理的に作るのだ。
でもうちは路面店で階段なんてないから… と思う店主もいるだろう。
だったら店の内部が分からないようにステッカーやポスターで覆い隠せば良い。
その上でワクワク要素を盛り込むのだ。
そのワクワクはスタッフのトークかもしれないし、何があるか分からない未知の品揃えとの出会いかもしれない。
のんだくれが実店舗を構えていた時、その店には看板はおろか呼び鈴さえ無かった。
勇気を振り絞ってドアを開けると、そこには狂った量のシーリング未開封ロッドと、陳列すらしていないディーラーボックスに入ったままのルアーが棚に積まれているだけの、まんま倉庫だった。
輸入実務と卸販売にも対応しなければならなかった為、倉庫スタイルでやらざるを得なかった部分もある。
基本倉庫なのでお世辞にも明るいとは言えず、奥の商品を引っ張り出すにはライトが必要な時も。
しかしこの状況を見て、来店した人はもれなくテンション爆上がりだった。
客のスタイルを聞き出して、こんなのもあるよと段ボールからルアーを出すと、ナニコレー!😍と更に狂喜乱舞。
今思えばコストコに似たテイストもあったと思う。
中には都内や岡山から月イチでロッドを買いに来る狂った客wもいたりして、こっちも最高に楽しかった。
高速とガソリン代考えたらもう一本ロッド買えるからね、と毎回注意してたほど。
反対に、いわゆる人気商品を目当てで来た人達はその状況にガッカリしてすぐに帰るので自然と客の選別が出来るという嬉しい副産物も生んでくれた。
個人店は量販店ではないので、全ての客を満足させる必要はないのだ。
そういう考えを前提に既存のショップを当てはめてみると、「儀式」を演出している店が多いことに気づくはず。
意図している/していないは別として、それらの店にはもれなくワクワクが備わった人気店、もしくは繁盛店であることが分かる。
そしてそれには釣具屋だけでなくレンタルボート屋も含まれるのは言うまでもない。
昨今の日本のバスフィッシングの衰退ぶりはもう治療不可のレベルまで来ている思う。
しかし、だからといってバス釣りが無くなることはないし、この先も細々ながら続くのは間違いない。
だとしたら個人店の店主はもちろん、一般アングラーが面白い店作りに協力してあげるのもこれからのバスフィッシングに必要なことじゃないかと思っとるワケです。
最後に。
この話を読んでその先をイメージできない、もしくはネガティブな言い訳が先に思い浮かぶ釣具店主が居たら、即廃業することをオススメします。
かのドン・キホーテも風車に勝てなかった際、魔女が自身の手柄のために巨人を風車に変えたと言い張ったのと同じで、言い訳が先に出る人はそもそも商売に向いてないのです。


