使わないのは超もったいない!日本人の嗜好にピッタリの国産グライドベイト グライドハスラー Glide Hustler / ヴァガボンド Vagabond

ジャークベイトリップレスヴァガボンド Vagabond

日本では人気のないルアーの筆頭に挙がりそうなシンキングのリップレスジャークベイト。

海外ではグライドベイトと呼ばれ、ラパラのサブウォークやミロルアーのキャッチ5、ボーマーのハーキージャーキーなど、各社からリリースされているにもかかわらず、日本ではその威力を知る一部のアングラーを除いて話題にもなりません😭

しかしそんなマーケットに抗うかのように登場した骨太な国産ルアーもあるんです。

それが今日のゲスト、グライドハスラー。

ヴァがボンドがリリースした漢気満々のグライドベイトです。

グライドベイトはソルトウォーターやパイクフィシングで使われることが多いのですが、日本ではグライドベイトが広まるよりも先にジョイクロなどのS字系スイムベイトが普及したことで、登場の機会を逸してしまったという不運な歴史があります。

それ故に国産として市場に出回っている数は非常に少なく、その実力に触れる機会もほとんどありません。

台湾のルアーメーカー、ストライクプロからもバスタージャークというグライドベイトがリリースされていて、かつてのんだくれも販売したことがありますが、その時も一部の熱狂的グライダーが大量買いするだけで一般受けすることはなかったので、もしかしたら根本的に日本人の感性には合わないルアーなのかもしれません。

グライドハスラーは2014年(だったと思う)にヴァガボンドがリリースしたグライドベイト。

ヴァガボンドはスイムハスラーやダイアモンドスタールなど日本人好みのリアル系スイムベイトを中心にリリースしているブランドなので、典型的な欧州系グライドベイトであるグライドハスラーを出してきた時は、えー!日本のメーカーからグライドベイトが出るなんて!と鼻血が吹き出しそうになりました。

言うまでもなく即購入。

いよいよ日本にもグライドベイトブームがやってくるのかーー?とワクワクしたもんです。

グライドハスラーは大き過ぎず小さ過ぎない全長130ミリにまとめられています。

”ビッグベイト”という抵抗感を持たせる事なく、且つバスフィッシングでも使い回しが効くというオリザラよりも少しだけ大きい絶妙なサイズ感には思わずニヤリとしてしまいますね。

気になるアクションは、グライドベイトの名に恥じない芸達者ぶり。

ペンシルベイトを操作するのと同じ要領で左右に大きく横っ飛びさせることもできれば、ロッドを大きくスイープすればS字系ベイトよりも高いレスポンスと回頭性能でウネウネッ!としたパニックアクションも演じてくれます。

タダ巻きでは気持ち良いほどキレイなS字軌道を描き、リトリーブを止めればその場にステイするので食わせの間を作ることもPiece of Cake、つまり朝飯前。

水面という二次元のステージで誘うペンシルベイトに対し、このグライドハスラーは三次元の空間を自在に動かせるのです。

しかもフラットサイドボディなので、水の攪拌力がスゴイ。

ローリングを抑えたアクションなので、ジャークすると、まるでパドルで水を掻いたような強いディスプレイスメントを生み出すのです。

水面近くでリトリーブするとルアーが生み出したモワモワがなかなか消えないというのがその証拠。

仕事柄、世界中のグライドベイトを取り寄せて試していますが、このグライドハスラーの水攪拌力はトップクラスと言ってもいいでしょう。

そんな強い水攪拌を生み出す原動力となっているのがボディ下部に設置されたこのキール。

一見どって事のない造形ですが、メーカーが説明している通りこのキールが大きな直進性をもたらし、キレのあるターンを実現しています。

そして特筆すべきはボディに内蔵されたラトルの性能。

このグライドハスラーはラトルサウンドの響きが素晴らしいのです。

重心移動などの機能は一切ありませんが、ほんの僅かにボディが傾いただけでラトルボールが内壁に強くヒットし、高音のラトルサウンドを響かせます。

え?ボディが傾いてラトルが鳴るのって普通でしょ? などと思うなかれ。

実はグライドベイトにおいて、横方向の動きに反応してラトルが鳴るという機能は画期的なのです。

出典: United States Patent and Trademark Office’s site

これはボーマーのハーキージャーキーの内部構造を表した図ですが、欧州型グライドベイトの典型的構造でもあり、プラスチック製の量産グライドベイトはほぼこの構造になっています。

図中の32aと32bがラトルボールを表していますが、26のラトルルームが垂直になっていることからわかる通り、ルアーに対して上下方向の運動に対してのみラトルサウンドを発します。

これは頭下げの状態でトゥイッチするとラトルルームの天井(つまり背中側の壁)にラトルボールがヒットする構造であることを表しているのですが、スイムハスラーはこの構造、つまり一般的な欧州型グライドベイトの構造を採用せず、横方向の運動でラトルを鳴らすという独自のセッティングが施されています。

つまり、S字系ベイトの感覚に慣れている日本のアングラー向けに調整されたグライドベイトなのです。

そしてそのラトルボールはサウンドを発するのと同時に重心を左右に動かすバランサーの役割も兼ねていて、欧州系ベイトよりも振り幅の大きなS字スイムとクイックなターンを可能にしているのです。

そしてラインアイもその横方向の動きを最大化するために横アイに。

単にダウンサイジングしただけでなく、こういう日本人的な緻密なアレンジを見せられるとクラクラしますよね、ホント😅

パイクフィシングではスタンダードであるワイヤーリーダー付き大型スナップに対応するためにアイの径は大きめに。

そしてテールのフックハンガーまでワイヤースルーの堅牢構造になっているところはグライドベイトのお約束ですね。

機能が日本向けならば外見もばっちり日本向けになっています。

個人的には過度に造り込んだ造形はあまり好みではありませんが、ウロコ一枚一枚のサイズや形状が微妙に違うあたりに日本の匠の技を感じざるを得ませんね。

この技は欧州人のハートにも強烈に刺さった様で、友人のフランス人から ”全色買って送ってくれ!” と鼻息フンガーなメッセージが届きました。

グライドハスラーのカラーチャートにはノーザインパイクやオールドレインボーなど、明らかに欧州マーケットを意識したカラーもラインナップされていたので、ヴァガボンド的にはしてやったりという感じでしょう😁

 

いや、もしかしたらこのルアーは最初から欧州マーケットだけを照準にしていたかもしれませんね。 日本マーケットはあくまでもオマケだよ的な。

そういう割り切りができる国産ブランドは少ないだけにそうあって欲しいなぁ。

フックは前後とも#1サイズを装着していますが、購入時はX2のカドミウムフックが標準装備されていました。

実はこれもマーケットに対応する仕掛けのひとつ。

オリジナルフックのままだと淡水ではスローシンキング、海水だとさらにスローな沈下スピードになるよう設定されているのですが、フックをバス用に替えるとややサスペンド気味のスローフローティングになるようにバランシングされています。

特筆すべきはその浮力セッティングの絶妙さ。

20lb以上のナイロンでこのグライドハスラーを使うと、リトリーブを止めてもラインの抵抗ですぐには浮上せず、ゆらりと漂う様な生っぽい挙動を見せるのです。

おそらくこのセッティングに行き着くまでにはバスだけじゃなくてシーバスでも相当テストしたんでしょうね。

こんな芸達者なルアーが3,000円弱で買えちゃうなんて日本はどうかしてますよね😂

ただ残念なのは、こんなにもスーパーなルアー、しかも海外で通用するルアーなのにボディにはネームはおろか、ブランド名すらプリントされていないこと。

SNSの普及で海外のルアーを目にする機会が増えたのに、このルアーの素性に辿り着ける情報がどこにもないのはまさに画竜点睛。

仕事柄のんだくれの元には、海外の業者から日本のルアーの素性を問い合わせるメッセージが頻繁に来るのですが、それらのほとんどがネーム無しのルアーであることを思うと、名前がないのは大きな機会損失になっていると思わざるを得ません。

一個当たり数円のコスト、もしくはほんのちょっとの手間をケチったがために海外のビッグディールを取り逃がすという事態が現実に起きているということを、日本のメーカーはもっと重要視すべきではないかと。

ここ1、2年は日本のハンドメイドクランクの素性調査依頼が増えていて、既に何度もビルダーや取り扱いしてるショップに話を回しているので、ハンドメイドビルダーの人も例外ではありませんぞ。

ネットには国境がないという超基本的なことをお忘れなく。

さてさて、そんなスゴいグライドハスラーですが、問題なのはその入手難易度。

一時期はショップでもちらほら見られましたが、最近はネットですら見かけることもなく絶滅危惧種となっています。

なので、店頭で見かけたら例えプロパーであったとしても確保しておいて損はないかと。

最近のビッグベイト/スイムベイトシーンは DRTのクラッシュに代表されるリップ付きのジョインテッドベイトの方向を向いているので、こういう時こそあまり使われてないルアーはチャンスだと思いますぞ。

知ってる人は既にこんなイイ思いをしてるんですから。

 

 

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