星の数ほどあるルアーの中には、”あー惜しいなー” と思わせるルアーも数多く存在します。
今日はそんなルアーの筆頭チームの一員、AMPウェイク。
バイオベックスブランドがリリースしたウェイクベイトです。
AMPウェイクとは
AMPウェイクはL.S.D.デザインが擁するルアーブランド、バイオベックスが放ったウェイクベイト。
このルアーに関してのんだくれが知ってるデータはこれだけ。
ぶっちゃけこのルアーの開発コンセプトや詳細は全く分かりません。
中古屋でたまたま見つけて連れ帰った、というのが全てだからです。
しかし使ってみたところ興味深い事が見えたのでご登場願いました。
サイズ・重さ
AMPウェイクのサイズは全長60ミリ、自重17g。
ウェイキングアクションのクランクベイトとしてはやや大振りなサイズになっています。
このオリジナルサイズ以外にJr.なるダウンサイジング版もリリースされているようですが、現物を見たことは無し。
バイオベックスのルアーは量販店などでは割と見かける方ですが、このオリジナルも含めてJr.が並んでるのを見たことないので、供給量はそれほど多くないと思われます。
AMPウェイクの仕様
ヤル気満々のデカ頭&ワイドリップ
最大の特徴はこのデカ頭と屹立したワイドリップ。
水の抵抗を全面で受けてやるぜ!という意気込みが造形から伝わってきますね。
そんなヤル気を象徴しているのがこの目。
ルアーの大きさに対して目のサイズが不自然に大きいので違和感すら覚えますが、バイオベックスのルアーは総じて大きなドールアイを採用しているのでブランドのアイデンティティにもなっています。
まあこのサイズでサカナ系の3Dアイを採用したら、キモいのを通り越して恐怖でしかありませんがw
そういえば昔アルカディアリーフがこんな感じのドールアイを採用してましたね。

デカピーナッツⅡSRとのサイズ比較
更に目のインパクトに加えて体高も。
デカピーナッツのフォルムはシュッとした感じなのであんまり比較にはなりませんが、迫力ボディなのはお分かりいただけるかと。
意外にもフラットなボディサイド
ボディはよくあるファット系かと思いきや、意外にもフラットサイドちっくな造形。
アクション特性と相まって強い水の撹拌とフラッシングを生み出します。
クリック系チキチキラトル
音響は大小2個の内蔵ラトルが担当していますが、よくあるウェイクベイトのゴトゴトサウンドではなく、ラトルボールの移動ストロークを短く抑えた高音チキチキのクリック系サウンド。
ウェイクベイトではあまりないタイプのサウンドなので、音のローテーション要員に使えるかも。
類を見ない超絶アクション
超絶ローリングサンダー
気になるアクションはほぼウォブリング無しの超絶ローリングアクション。
柴犬ドリルのようなグワングワン系の撹拌アクションが楽しめます。
潜行深度もほぼゼロなのでウェイクベイトとしてはかなり優秀…. といいたいところですが、実は決定的な欠陥が。
リトリーブスピードへの追従性は最悪
それはウェイクベイトでありながら対応リトリーブスピードの範囲があまりにも狭いこと。
一般的なウェイクベイトのつもりで巻くと、すぐに水面から飛び出してしまうのです。
市場に出回るほとんどのウェイクベイトは、トゥルーチューンさえ完璧にやっておけば高速リトリーブでもちゃんと泳ぎ切りますが、このAMPウェイクはそれらの半分位のスピードが限界。
しかもちょっと波っ気のあるところではすぐにトビウオになってしまうので使い物になりません。
ホームページの製品説明には『スローリトリーブでもしっかりと引き波をたてて泳ぎ』とありますが、『スローリトリーブでないと引き波を立てられない』が正解なんじゃないかと思ってしまうほど。
本来ウェイクベイトは、水面直下までウィードが伸びた広大なエリアを効率よくチェックするためのルアーなのですが、AMPウェイクはテンポ良く探れないという致命的な欠陥があるのです。
ゆえにバコーン!と投げてグリグリしまくりたいアングラーにはオススメしません。
逆にスローリトリーブメインで使うアングラーにはどハマリなクランクとも言えます。
これはおそらく潜行深度ゼロと大きなローリングアクションにこだわった結果だと思うんですが、ヤル気のあるルックスだけにこれはちょっと残念ですね。
使い所を選べば化けるかも
そんな極端なセッティングのクランクですが、考えようによってはかなり使えるクランクかも。
なぜならアクションの立ち上がりは類を見ないほど俊敏なのでほぼ助走距離は必要なく、しかも超スローリトリーブでもしっかり泳ぐため、オーバーハング奥やウィードポケットなどプロダクティブゾーンが小さなスポットでもちゃんと演出できるからです。
あのビッグバドですらアクションが完全に立ち上がるまで25cmぐらいの助走距離が必要なのに、このAMPウェイクは5cmもあればギラギラ泳いでくれますから。
アメリカのように広大なフィールドで巻き倒すウェイクベイトではなく、ピンスポット専用、もしくは超スローリトリーブ専用のウェイクベイトとして登板させるのです。
そういう意味では日本の小さなフィールド向けに開発された純和風ウェイクベイトと言えるかもしれません。
とはいえ、ウェイトバランスなどをもう少し煮詰めればメジャー組の仲間入りが出来たかもしれなかっただけに惜しいキモチの方が勝ってますけどね。
良くも悪くも遊びが無いカラー
カラーはクローム系、ペイント系に加え、反射板内蔵モデルまで揃えたアピール系が中心。
アクションの特性に合っているのは間違いないのですが、個人的にはちょっと優等生過ぎて面白味に掛ける気がします。
これはバイオベックスのルアー全般に言えることですが、これを使ってみたい!と思わせる ”バスルアーらしさ” の成分が少ないのです。
大きなドールアイを生かした目玉の親父”風” や、大きなへの字口を利用したハンギョドン”風” など、いくらでも拡張できる可能性があるのに、この個性的な造形がまったく生かされていないのです。
なのでせっかくのドールアイも死んじゃってるし、ブランドとしてのアイデンティティも霞んじゃってる。
これぞ宝の持ち腐れ。
バイオベックスはシャロークランクなど良いルアーを沢山抱えてるのに、マーケティングが追いついてないのです。
これではルアー達が可哀相ですよね。

フックの正解はアングラー自身が探す仕様
フックはフロントが#2、リアがフェザードの#6となっていますが、実は吊るしの状態ではフロントは#4が装備されていました。
なぜ#2に交換したのかというと、デフォルトの#4サイズでは泳ぎが不安定すぎて全く使いものにならなかったから。
#2サイズにしたことでそれなりにリトリーブ出来るようになりましたが、デフォルトの状態ではもう涙なしでは語れません😭
のんだくれはオタなのでルアーが泳がなかったらベストのセッティングを求めてあれこれ試してみますが、世の中のほとんどのアングラーは一回投げて泳がなかったらゴミの烙印を押して即中古屋行き。
このAMPウェイクもそんな扱いをされてるんじゃないかと他人事ながら心配になってしまいます。
しかしギモンなのは、なぜこんなフック/ウェイトバランスでリリースされたのか、ということ。
開発テストの段階でちゃんと泳がないことに気付いてるはずなのに、なぜこのまま製品化されたんでしょうか。
何か意図があっての事ならばホームページ等でそれなりの説明があっても良さそうですが、そういった類いのキャプションはどこを探してもナシ。
さらに不思議なのは、HPにはチームバイオベックスなるフィールドスタッフが複数紹介されてるのに彼らからの指摘は無かったのか、ということ。
フィールドスタッフはちゃんと役目を果たしてる?と、ツッコミどころ満載なのです。
部外者からこんな事を言われたらハラ立つと思いますが、ルアーの素地が良いだけに言わずには居られないのです。
ネームのバランスはGOOD
とはいえネームプリントはローガンGGYにもちゃんと読めるボールドフォントで大きく入っててニヤリポイント高いですw
背中のネームはフックで擦れて消えることがないのでネームオタには嬉しいですね。
しかしAMPって何の略なんでしょうか。
アンプリファイAmplify(増幅)から?
知ってる人が居たら是非ご教授を。
おわりに
ルアーの評価は使い手の好みによって大きく分かれるのは皆さん御存知の通り。
でも設計の詰めの甘さで素地の良さが台無しになってしまうのは評価以前の問題。
今も生産されてるのかすら分からないルアーではありますが、乱獲ベイトに化ける可能性があるだけにバイオベックスには再トライして欲しいところです。